外国人参政権反対―児童ポルノ規制反対―etc...

第12号 平成21年6月26日(金曜日)


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午後一時開議

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○山本委員長 これより会議を開きます。

 第百六十九回国会、森山眞弓君外二名提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案及び細川律夫君外四名提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。森山眞弓君。

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 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

○森山(眞)議員 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党及び公明党の提出者を代表して、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 まず、本法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 児童ポルノの所持、提供等の行為は、描写された児童の心身に有害な影響を与え続けるのみならず、このような行為が社会に広がることにより、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長し、ひいては身体的及び精神的に未熟である児童一般の成長に重大な影響を与え得るものであります。したがって、児童ポルノについては、法律の施行状況や児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえつつ、厳しく規制していかなければなりません。

 私は、平成十一年に各党議員の御協力をいただきまして児童買春、児童ポルノ禁止法の成立に骨を折りましたが、あれから十年たちまして、世の中の様子は大きく変わりました。特に、インターネット等の発達により、映像が瞬時に世界じゅうに広がるようになりました。この法律が施行され、さらに平成十六年の改正によって厳罰化され、それなりに効果を上げてはきましたが、今日の状況は、児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書等の国際条約を初め、児童ポルノをより厳格に取り締まるべしとする国際的潮流があり、我が国の現行法については、G8諸国のうち六カ国が罰則をもって禁止している児童ポルノの単純所持が禁止されておらず、このことが児童ポルノの蔓延を助長しているとの国内外の批判が高まっており、我が国の信用にもかかわる問題になっています。また、インターネットを通じた児童ポルノの拡散による被害の拡大についても看過できない状況となっております。

 そこで、児童ポルノをめぐるかかる国内外の状況と、平成十六年改正時に三年を目途とする検討規定が置かれたことを踏まえ、児童ポルノについてさらに厳格な規制を設け、もって児童の権利の擁護に資することとするため、本法律案を提出することとした次第であります。

 次に、本法律案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、適用上の注意規定を明確化しております。すなわち、この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないものとしております。

 第二に、児童ポルノ所持等の禁止規定を設けております。すなわち、何人もみだりに児童ポルノを所持等してはならないものとしております。

 第三に、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等についての罰則を設けております。すなわち、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した者は、一年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するものとしております。なお、罰則の適用については、施行後一年間は適用しないということにしております。

 第四に、インターネットの利用に係る事業者の努力規定を設けることとしております。すなわち、インターネットの利用に係る事業者は、捜査機関への協力、管理権限に基づく情報送信防止措置その他のインターネットを利用した児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとしております。

 第五に、児童ポルノに類する漫画等、すなわち、漫画、アニメ、コンピューターグラフィック、疑似児童ポルノの規制や、いわゆるブロッキングの措置に関する検討規定を設けることとしております。すなわち、児童ポルノに類する漫画等の規制及びインターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限については、改正法施行後三年を目途として、児童ポルノに類する漫画等と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究及びブロッキングの技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○山本委員長 次に、吉田泉君。

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 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

○吉田(泉)議員 おはようございます。

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、民主党・無所属クラブの提出者を代表して、その趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 まず、本法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 児童ポルノは、児童に対する性的搾取及び性的虐待であって、その心身に有害な影響を与えるものであり、児童に対する重大かつ深刻な人権侵害であると言えます。しかしながら、従来の法律では、保護すべき子供の権利が必ずしも明確にはなっておりません。

 そこで、前回、平成十六年の改正時に、法律の施行状況や児童の権利の擁護に関する国際的動向等を踏まえて、三年を目途として検討すべき旨の規定が置かれたことから、児童ポルノに係る行為についてさらに厳しい規制を設けるとともに、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度の充実及び強化を図り、もって児童の権利の擁護に資することとするため本法律案を提出することとした次第であります。

 次に、本法律案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、「児童ポルノ」の名称の改正及び定義の変更であります。児童買春、児童ポルノ禁止法が、風俗犯に関する法律ではなく、あくまでも児童に対する性的搾取及び性的虐待に係る行為等の処罰に関する法律であることを明確にするため、その対象である「児童ポルノ」の名称を「児童性行為等姿態描写物」に改めることとしております。これに加え、その定義を明確にするため、第二条第三項第二号を「殊更に他人が児童の性器等を触り、若しくは殊更に児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態又は殊更に児童の性器等が露出され、若しくは強調されている児童の姿態」との客観的な要件に改めるとともに、同項第三号を削除することとしております。

 第二に、児童性行為等姿態描写物取得罪の新設等であります。

 その一は、児童性行為等姿態描写物の取得について罰則を設けております。すなわち、みだりに、児童性行為等姿態描写物を有償でまたは反復して取得した者は、三年以下の懲役または三百万円以下の罰金に処するものとすることとしております。

 その二は、児童性行為等姿態描写物の製造の罪について処罰の範囲を拡大しております。すなわち、提供目的以外の児童性行為等姿態描写物の製造の罪について、意図的に児童に一定の姿態をとらせて製造した場合に限らず、盗撮等の場合にも処罰範囲を拡大することとしております。

 その三は、適用上の注意規定を明確化しております。すなわち、これらの罰則の新設等にかんがみ、この法律の適用に当たっては、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護し、その権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して、他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない旨を明確にすることとしております。

 第三に、罰則の法定刑の引き上げであります。すなわち、児童買春罪、児童性行為等姿態描写物等提供罪等の罰則の法定刑をすべて引き上げることとしております。

 第四に、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度を充実及び強化することとしております。すなわち、心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体として、厚生労働省、都道府県、児童相談所、福祉事務所及び市町村を例示し、措置を講ずる主体及び責任を明確化することとしております。これに加えて、社会保障審議会は、児童買春や児童性行為等姿態描写物に係る行為により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとすることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○山本委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

○山本委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官園田一裕君、法務省刑事局長大野恒太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、本日午後二時、参考人として首都大学東京法科大学院教授前田雅英君、弁護士一場順子君、財団法人日本ユニセフ協会大使アグネス・チャン君、上智大学文学部新聞学科教授田島泰彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

○山本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

○牧原委員 おはようございます。自民党の牧原でございます。

 きょうは、私、本来は法務委員会のメンバーではないんですが、特に御指名を受けて、こうした大切な法律についての質疑の機会をいただきましたことに、まず感謝を申し上げます。

 この法律は、非常に重いということでございます。多くの皆様の人生や、あるいは権利や、あるいは人権や、こうしたことに物すごくかかわる、大変重くて、しかしながら大変重要な法律であるということをかみしめております。両案の作成者の皆様におかれましては、この大変重要な、大変重いテーマについて、法律の作成という形で御尽力をいただいておりますことに、まず心から敬意を表させていただきたいと思います。

 トップバッターでありますので、まず最初に、改めて議論の前提として、平成十一年、そして十六年に続いて法改正を行うということについての理由をお聞きしたいと思います。

 今、提案理由説明の中で、それぞれに、平成十六年までの法律ではまだまだ足りない、さらに厳しい規制を設けて、そしてそのことが児童の権利の擁護に資するんだということがともに述べられたような気がしております。このような理解、つまり今回の法案というのは、基本的には、今までの法案でまだ足りなくて、より規制を厳しくして、そして、もって児童の擁護に資するようにしたいんだ、こういうことでよろしいでしょうか。まず、民主党案の提出者の皆様にお伺いしたいと思います。

○西村(智)議員 お答え申し上げます。

 冒頭、これは全員の共通の思いだと思いますけれども、児童ポルノは児童に対する性的虐待以外の何物でもないということであります。被写体となった児童は、撮影されたことのみならず、これが広く流通し、拡散していくことによってさらに被害を受け続けるものであります。児童ポルノによる被害を受けている子供たちのことを考えますと、私どもはしっかりとした法改正を一刻も早く行わなければならないと考えていたところでありまして、そういう思いで、平成十一年の法律制定時、また平成十六年の改正時と取り組んでまいりました。

 他方、刑罰法規であります児童ポルノの定義規定について、抽象的であいまいな主観的要件を中心とする規定のもとで捜査権力が不当でないものまで処罰するようなことがあってはならないし、また逆に、運用する当局にとっても、あいまいな規定のもとでは腰が引けたような運用になってしまって処罰すべき行為が処罰されないということにもなりかねません。こうしたあいまいさが、例えば小学生や中学生の水着姿の写真集が広く流通しているような現状にも影響していると思われます。

 加えて、いわゆる単純所持を処罰することについては、気づかないうちにメールで送りつけられていたなど、何らかの悪意で知らない間に持っていた場合なども不当に逮捕される事態が起こりかねないということであります。

 与党案では、目的犯という形で限定を加えておりますが、定義規定のあいまいさを残したままで所持を処罰し、さらに、自己の性的好奇心を満たす目的という主観的要件を課すことになれば捜査機関の運用に対する不信感はぬぐい去れないし、また、これを避けようとすれば過度に抑制的な運用に陥ることにもなりかねません。真に悪質なものについては処罰されるようにしながら濫用の危険性を排除するものでなければならないと考えておりまして、こうした考え方のもとで初めて、過度に抑制的な運用に陥ることなく処罰すべき事例が適切に処罰されることになると考えております。

 そういった背景で民主党案を提出しておりまして、具体的な全体の考え方については、また御質問いただければ答弁をいたします。

○牧原委員 次に、今伺いましたが、同じ十六年に続く法改正についての理由を与党の提出者の皆様にお伺いします。

○葉梨議員 お答えいたします。

 総論においては民主党さんが言われていることと与党が言っていることはそれほど違いがないように聞かれるかもわかりませんが、各論において相当違いがあるというふうに私は思っておりまして、そこら辺のところは本日の質疑でも明らかにさせていただきたいというふうに思います。

 私、個人的な経験から申し上げますと、平成九年から平成十一年までの間、警察庁少年課の理事官というのをやっておりまして、また、この制定時の立法過程において事務方からかかわらせていただきました。また、平成十六年の法改正においてはやはり提案者の一人として参議院でも答弁をさせていただいたというようなこともございますので、その経緯等を申し上げますと、もともと、日本の国は児童ポルノに対して甘いんじゃないかというような国際的な非難が相当ございました。

 一九九六年のストックホルム会議、これに当時社民党の清水澄子議員が出て、大変な国際的な非難を受けた。そういうようなところから、やはり我々としても、子供を物として、あるいは性的な虐待の対象として見るということ、これはあってはならないんだということで、この児童買春、児童ポルノ法の制定を見たわけですけれども、当時から定義等について、あるいは目的等についてしっかりと厳格な運用ができるようにというような配慮がなされたこともございます。

 ですから、この法律においては、例えば刑法にあるような、卑わいですとか、あるいはわいせつ物的なような表現は使わないで、できるだけ具体的に運用ができるような法律の定義ということで児童ポルノの定義も工夫をしたというようなことを覚えております。

 そして、その上で、当時から単純所持についてどうだという議論は国際的にもあったんですけれども、児童ポルノの関係について言うと国内的なコンセンサスがまだできていないだろうということで、検討過程ではございましたけれども、単純所持の規制というのは制定時には盛り込まれなかった。平成十六年にやはり与党から提出いたしましたのも、単純所持については罰則を設けないで一般的な禁止を置きましょうというような規定を提案させていただいたんですけれども、これも与野党協議の中で、基本的には罰則を強化するという形で単純所持の一般的禁止までは盛り込まないという形になったわけです。

 しかしながら、先ほど森山筆頭提案者からもお話がございましたように、非常に世の中が進んでいるわけですね、特にインターネットの普及等で。そして、さらにはこれで蓄積された児童ポルノというのは本当に大量なものがございます。これをそのままにしておいて、やはりそれを写された子供たちというのは、おびえて一生過ごさなきゃいけないんじゃないか。だから、やはりここは、十一年、十六年と議論した中で単純所持の禁止というところにしっかり踏み出していくということが今の段階ではどうしても必要になってくるんじゃないかというような思いから今回与党案を提出させていただいたわけです。

 翻って、民主党については、またこの質疑の中でもいろいろと質問、答弁等させていただきたいと思いますけれども、基本的に、今明らかな児童ポルノとして規制されているものが、民主党案によれば相当部分児童ポルノとして規制されなくなります、野放しになります。そういうようなことで本当に子供の保護が図れるのかどうかということがありますし、また、先ほど、蓄積されている児童ポルノについてどうだということについて議論を避ける形で、反復あるいは有償の取得ということを禁止する、それはちょっと取り繕い、びほう策ではないかというような感じを私自身は個人的には持っております。

 捜査の運用の過程あるいは捜査がしっかりと行われるような形にするというのはまさにこの国会で議論すればいい話であって、捜査に対する不信があるからといって、定義を狭めたり、あるいはびほう策に陥ることが本当にあっていいんだろうかというような感じを私は個人的には持っております。

 十一年、十六年、そして今回の提案の経緯については以上でございます。

○牧原委員 今伺った理由、背景によりまして、児童の擁護に資するという観点、両方が思いをお持ちでありながら、若干各論で違っているということがわかりました。

 まず、今各論で違っていることのそれぞれの中で挙げられました単純所持という新たな規定についてお伺いをしたいと思っております。

 今、葉梨先生の方からも若干御回答がありましたけれども、平成十六年の改正のときの質疑におきましては、吉川春子委員に対する葉梨先生の見送りについての答弁の中で、やはり、国民意識の高揚や運用の積み重ねがその当時としてはまだ必要だという話がございました。この国民意識の高揚や運用の積み重ねが必要とされていたものが具体的に今回どう変わったのかということについて、もう少し国際的なことも含めて御説明いただけますでしょうか。

○葉梨議員 重複することになるかもわかりませんけれども、国際的には、当時、平成十一年に法律を制定して、平成十二年に児童の権利条約の選択議定書というのが採択されたわけですけれども、当時から、単純所持についても国際的にはやはりある程度規制していくんじゃないかというような一般的な世論、国際世論みたいなものはございました。ただ、日本国内においてはまだまだそこまでいっていないということで、先ほど申し上げましたように、平成十一年の提案では単純所持の禁止というのを取り下げたわけです。

 平成十六年でございますけれども、これは私も答弁をさせていただいたわけでございますが、まさにその次の段階としては、罰則を強化するけれども、国際的な動向はどんどん進んでおりますし、また、国内的にもコンセンサスを広げるという努力をしていかなきゃいけない。そしてその中で、次の改正点、検討点としてはやはりこの単純所持の禁止というところに本当に真正面から取り組むということが必要じゃないかという、まさにそのステージに今あるんだろうと思います。

 国際的に申し上げますと、これはもうよく知られているとおり、G8諸国の中でロシアと我が国だけが単純所持についての禁止を設けていないというようなこともございます。そして、さらには我が国発の児童ポルノというのは、提供は禁止されているといいながら、今現在非常にネット社会が進んでおりまして、提供の禁止をされていながら国際的に何十万回も児童のポルノ画像がダウンロードされる。それが日本発である。

 ですから、先ほど申し上げましたように、そういったような蓄積されている児童ポルノについて、その被害に遭った子供たち、これについてしっかりと対処するという実態的な理由と、やはり、今現在、提供を禁止してそれを厳しくすればいいじゃないかというような意見もあるでしょうけれども、現実の問題として、日本発の児童ポルノというのが全世界的にこれだけ広がってしまって、世界的にこれだけの非難を受けているという状況に対応していくためには、今回、真正面からこの児童ポルノの単純所持の禁止、これに対して取り組まなければならないというように考えております。

○牧原委員 よくわかりました。

 今の背景の中で、今回の与党案、そして民主党案というものが出てきているわけですけれども、今のお話によれば、多分与党案の方が規制が幅広いというか厳しいということなのかなというふうにお伺いをしましたが、この点について、今回の与党案の単純所持というものと、民主党案の反復あるいは有償での取得というそれぞれ新設されている罪がございますけれども、この対比において、具体的な事案ではどういうような差が出るのか。民主党案ではこんな事例がカバーできないんじゃないか、私たちとしてはこんな事例をカバーするために単純所持が必要である、この点について教えていただきたいと思います。

○葉梨議員 単純所持の禁止について、私ども二つの提案をさせていただいております。

 一つは、一般的な禁止規定として、みだりに児童ポルノを所持、保管すること、これについては一般的な禁止規定を置いております。これについては罰則はございません。そして、自己の性的好奇心を満たす目的で所持、保管をする者については一年以下のということで、罰則の規定を置かせていただいている、この二段構えということになります。

 これはどういうことかといいますと、みだりにというのは正当な理由なくということなんですけれども、一般的な禁止規定を置くということ、それと、その中でも性的好奇心目的というのは罰則を付するということで、例えば、他人の性的好奇心を満たす目的、例えばお父さんが見ている、お父さんが見たいということで子供が無理やり持たされている、そんなことで子供を罰するわけにもまいりませんし、また、別の正当な目的、例えば捜査目的、これは正当な理由にもなりますし、みだりにということにも、また性的好奇心を満たす目的にもなりませんけれども、例えば捜査目的で児童ポルノを持っていますよというようなものまでこれを禁止するということではございません。

 ですから、そういった意味では、みだりに児童ポルノを所持すること自体を罰則をもって禁止するべきだという意見もあるんですけれども、基本的にこの法律というのは、ペドファイル、小児性愛者との戦いということでございますから、自己の性的好奇心を満たす目的で所持をしているというような場合を罰則をもって禁止しているというわけなんです。

 そして、民主党案についてのお尋ねでございますけれども、まず一つは、一般的な考え方として、児童ポルノを持つこと、これが悪いことである、つまり我が国として悪いことであるというような宣言、これは一切ございません。悪いことでないということであれば、それはいいことなんです。

 ですから、そういった意味でいいますと、児童ポルノを持ち続けても構わないということ、今の法律もそうはなってはいるんですけれども、それを議論する過程で、児童ポルノを今後持ち続けても構わないということを、まさに真正面から単純所持の禁止ということをこの国会で議論して、そしてその中で民主党案がいいということになれば、それを国会が認めてしまうということになってしまうのかなというような感じもいたします。

 また、有償でまたは反復で、そこのところは、私は民主党の提案者ではございませんので、民主党案について有権解釈をする立場では、立法者として解釈をする立場ではありませんけれども、拝見するところ、有償で取得をする、それから反復で取得をするというような行為、これを禁止するだけということになりますと、先ほど言っていましたように、持ち続けても構わないということですね。それで、だれだれさんの子供時代の写真を私はたくさんうちに抱えているんですよというようなことをそこらじゅうで言いふらして回ったって構わないということですね。テレビで言ったっていいし、新聞で言ったっていいし。

 そして、さらには、ビデオを他人に見せる、提供じゃありません、単に見せるだけですから。自分のうちに、ある友人を呼んできて、児童ポルノのビデオを他人に見せる、そして見せてお金を取る。これは営業としてやりさえしなければ、この法律は風俗営業ではございませんので、営業を規制しているわけじゃありませんけれども、少なくともこの法律は、例えばお金を取ったとしたって、そのような行為は多分禁止することはできないんだろうというふうに思います。

 また、家宝として児童ポルノを持っている。大量の児童ポルノを、これを相続によって取得する。相続というのは反復がありませんね、一回限りですから。そういった場合もこの法律によっては禁止することはできないんだろうというふうに思います。

 ですから、一般的な禁止規定を置きながら、ペドファイルの方々が自己の性的好奇心を満たす目的でこれを所持するというものについてはやはり罰則をもって対処するという、それぐらいのところまでは、我々としても、日本の子供あるいは世界の子供、これを守るために踏み込んでいかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えています。

○牧原委員 よくわかりました。

 所持のところと取得という能動的な行為の違いで差が出るということだと思いますが、逆に、民主党の案ではこういうことがカバーできるんだけれども、今の与党案ではこんなことがカバーできないじゃないか、こんなことが民主党案ではあるんでしょうか。

○枝野議員 私どもも、児童ポルノ、特に悪質な児童ポルノを性的好奇心を満たす目的で持っているということがいいことであると思っているわけではありません。

 ただ、所持という構成要件は、どういう手法で入手をしたかということが全く問われません。提案理由等でも御説明をしたかと思いますが、例えば、インターネットをつないでいてメールをやっていれば、皆さんのところにも多々わけのわからないメールが飛び込んできます。一件一件内容をチェックして、そこに児童ポルノが含まれているのかどうかということをチェックされておられる方はいらっしゃらないだろうというふうに思いますし、仮にパソコンのごみ箱に捨てたとしても、映像は残っておりますから、所持という状態は続きます。

 仮にごみ箱を空にしても、すぐに復元できる状態でパソコン上に残りますから、これを本当に所持じゃない状況にしようと思ったら、復元不可能なところまで削除をするということは、普通、パソコンを使ってネットをつないでいる人間からすれば、ほぼ不可能を強いるということになります。しかしながら、こうしたことまですべて所持に入ってしまう。

 その上で、所持の故意という観点からすれば、これは未必の故意であっても故意が認められますから、つまり、多分そういってむやみやたらに送られてきているわけのわからぬメールの中には児童ポルノのような種類のものが含まれているかもしれないなということは、ほとんどの皆さん、ネットをつないでいらっしゃる方は、逆に言えば知っていらっしゃるわけでありますから、未必の故意は成立をします。

 そうすると、あとは性的好奇心を満たす目的という一点で、そうやって勝手に送られてきたものがどこかに残っていたものと、それからまさに性的好奇心を満たす目的で排除をされるべき対象、処罰を与えるべき対象とが区別をされるということになりますが、この点について外形上違いを判断する方法はなかなか困難、つまり内心の問題でありますので、最終的には、一般的に考えれば自白の有無というところに行かざるを得ないのではないだろうかというふうに思っております。

 自白の有無ということになれば、これはもう皆さん御承知のとおり、足利事件を初めとして、罪を犯していなくても、あるいは今回の足利事件の場合は暴力等はなかったかもしれないという状況であったとしても、やっていないことを詳細に自白をしてしまうというようなことが普通に起こり得る捜査の手法と捜査の手続というのが我が国の状況でありまして、こういった意味では、国際的な標準、スタンダードに我が国の刑事司法手続がまだそろっていないという状況がありますので、できれば、その問題についてこそ法務委員会で先にやっていただければ、そこは国際標準に並んだ時点で、では、こちらの方の国際標準をどうするのかということがむしろ筋かなというふうに思っております。

 いずれにしても、そこで性的好奇心を満たす目的とか、所持の故意とかということについて自白に頼らずに立証しようと思ったらどうするのか。それは、入手のプロセスを立証するしかないということに結果的にならざるを得ない。

 である以上は、結局、そういった場合の虚偽の自白による冤罪等を防ぐという観点からは、いずれにしろ、自白に頼らないならば、入手のプロセスについて立証せざるを得ないということを考えたときに、その入手そのものを可罰的な行為として取り上げれば足りるというふうに考えました。その限りでは、私どもは、冤罪になる可能性のものが与党案に対してそれよりも少ないというふうに思っておりますが、それを超えて我々の案の方が小さいということはないというふうに思っております。

○牧原委員 済みません、今、質問は、構成要件でいうと所持、取得ですね、それぞれのまず客観的な行為についての質問だったので、若干、内心の主観的要件の話とは違うんですが。

 今御指摘があったように、今回、私もいろいろな御意見を伺っていますと、所持という客観的事実に加えて、自己の性的好奇心を満たす目的というのが主観的要件であります。

 これは、具体的に言いますと、例えば、かばんの中にいつの間にか大量に児童ポルノが入れられていて、そして通報がされて、警察がちょっとかばんをあけてみてくれと言って、調べてみたら児童ポルノが出てきた、これは所持という要件を満たしますから、その上で、これが自己の性欲を満たすための目的だったかどうかというのは取り調べてみないとわからないということで、警察としては一回そこで捜査に着手せざるを得ないんじゃないかというような懸念は確かにあります。

 このような捜査の恣意性ということが指摘をされていることについて、与党案ではどのようにお考えになっているのでしょうか。

○葉梨議員 捜査の恣意性ということで今るるお話がございました。

 この点については、実は後で枝野委員の方から私もたんまり質問をいただいておりますので、いろいろと議論をさせていただきたいなというふうに思うんです。

 冤罪といいますけれども、例えば足利事件の場合ですけれども、まことに菅家さん、私は本当にお気の毒だと思います。また、当時DNA鑑定というのに頼り過ぎてああいうことが起こってしまったということは、本当に反省をしなければならないというふうに思いますけれども、具体的に、例えば犯行行為について、私はやった、やりませんという冤罪と、あとは内心の意思についてという冤罪と二つあるわけです。

 例えば、殺人の場合は、殺人の故意、つまり内心の意思、私は殺す意思を持って相手を殺したという事実。まず事実について、殺していません、傷害も加えていませんということが、多分、足利事件の場合は当然全くやっていないわけですから、そこにおいて争いとなったわけです。ですから、その意味で、性的好奇心を満たす目的を立証するのは自白によるんだということで足利事件を引かれるというのは、ちょっとレベルが違う話じゃないかなというふうに私自身は思っているんです。

 所持ということであれば、持っているという事実については、これは所持ですから、もう明らかなんですね。現行犯的なものでやっていかざるを得ないでしょうし、物がなければ所持ということになりません。

 そして、一つは所持の故意性です。ですから、先ほどの例で、もしかしたらこんなメールが送りつけられてくるかもわかりませんよというようなものが来たとして、私はそれで、個別に、全体として、単にパソコンを開いているということだけで未必の故意が成立するとは思えないんです。このメールというのはもしかしたら児童ポルノかもわからない、そういうような認識というのはやはり必要になってくるだろうと思うんです。

 さらには、それがたまたま人に入れられたものかどうか、そういうような抗弁というか話があれば、やはりそれはよく確認をしなければならないし、例えば、十分に信じるに足りるような弁解があったときに、警察において、捜査機関において、それで逮捕というようなことになるかといったら、私はならないというふうに思います。

 また、自己の性的好奇心を満たす目的でというのを、それは自白に頼らざるを得ないというふうに言われますけれども、例えば、殺人の故意というのは、私は殺すつもりはなかったんです、殺すつもりはなかったんですと言ったって、けん銃を持って相手をぼんと撃てば、どんな自白が、否認をしていたって、殺人の故意というのは客観的にやはり認められるわけです。

 ですから、自分の性的好奇心を満たす目的というのは、たとえその自白がなかったにしたって、うちに大量の児童ポルノを持っている、その横に大人のポルノもたくさん持っているというようなうちで、児童ポルノを持っている方が、私は自分の性的好奇心を満たす目的じゃございませんと言ったところで、それは裁判所では多分通らない話になってくるだろう。ですから、自白だけに頼るということじゃなくて、やはり客観的な証拠に基づいて捜査というのはできるんだろうというふうに私は確信をしています。

○牧原委員 わかりました。

 ここはきょうの質疑で中心的なところになると思いますし、私自身は、今、葉梨先生はまさに警察にもいらっしゃった先生でありますし、最後は捜査機関への信頼性にかかるのかなと思っておりますが、おっしゃるとおり、客観的な状況というものをきちんと踏まえて、それ以上にいかないということになるだろうなと思います。いずれにしても、きょうの審議で尽くしていただきたい点でございます。

 ちょっと時間もなくなってきたんですが、両案についてはもう一個大きな違い、つまり、法律名と定義について民主党側が変更されたということがございました。この「児童ポルノ」というのを「児童性行為等姿態描写物」ということに変えるとともに、この定義が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という部分が削除されたということでございます。

 これについては、先ほど来述べられているように、捜査の濫用の危険だとかあいまいさをなくすという観点だと思うんですけれども、このような理由で削除をされたことについて、与党側はそのままになっているわけであります、与党側としてこれを変えるべきではない、そして削除すべきではないと思う理由について述べてください。

○葉梨議員 児童ポルノという用語が本当にいい用語かというと、私は個人的には必ずしもそうは思わないです。

 当時、この法律をつくったときに、いろいろな形でこの定義規定についても工夫をいたしました、どういう名称を使いましょうかと。ただ、わいせつな画像という言葉も使えませんし、それから、卑わいな画像ということも使えない。やはりそこにおいては、日本が国際的なペドファイルとの戦いの戦列に加わるという意味からも、当時議論されていました、平成十二年に採択された児童の権利条約の選択議定書、さらには平成十三年に採択されましたサイバー犯罪条約、こういったものにおけるチャイルドポルノグラフィー、これをいわゆる国際的スタンダードとして禁止していこうという中で、そのチャイルドポルノグラフィーという言葉を、まさに日本もそれに加わるんだということで、児童ポルノを使ったということであって。

 ですから、ポルノが風俗犯、風俗犯と言われますけれども、風俗犯を規制する法律、取り締まる法律でポルノなんという言葉を使った法律は今までなかったんですね。一番最初に法律用語として、児童買春の禁止法の中でこの児童ポルノという言葉を使わせていただいたんです。むしろ、今までの風俗犯の体系とは全然違うんだ、そして国際的な戦列に加わるんだという意味で、果たして、言葉が個人的に好きか嫌いかという話は別として、児童ポルノということを使わせていただいたということの経緯を覚えております。

 性欲を興奮させ刺激させるということについては、また後の質疑でもあろうかと思いますけれども、基本的な当時の考え方としては、やはり医学書ですとかあるいは家庭内の成長の記録、こういったものは除かなきゃいけない。その中で、性欲を興奮させ刺激させるというような法令用語もあった、あるいは運用の積み重ねもある、現実に幾つかの判例も出ているわけでございまして、その言葉を使わせていただいたわけです。

 我々の考え方としては、児童のヌード、それから児童の性器等をさわる、さわられる、あるいは性行為、性交類似行為等の姿態、こういったものについては基本的に児童ポルノなんだろうというような考え方を持たせていただいたというわけであります。ですから、その考え方を今変える必然性は私はないと思います。

○牧原委員 質疑時間が終了してしまいまして、用意した質問の全部は聞くことができませんでしたが、目的は同じだということだと思います。児童の方で被害を受けられた方は、この法律については本当にどうなるんだという思いで注目をされておるわけでございます。他方で、表現の自由やプライバシー権ということを心配されている方もいらっしゃるわけでございます。どちらを重んじていくのかというところも、非常にこの法律案の両案の違いにあるような気がします。審議を通じて、そして今国会でぜひとも成立をさせていただきたいということをお願い申し上げて、質問を終了させていただきます。

○山本委員長 次に、葉梨康弘君。

○葉梨委員 自民党の葉梨康弘です。お手やわらかにお願い申し上げます。

 主として児童ポルノ、この問題について、民主党の提案者に、三十分の時間をいただきまして質問させていただきたいと思います。時間もございませんので、特に、主に定義等について具体的な質問をさせていただきたいと思います。

 民主党案においては、第二条において、もともと与党案にありました三号というのを削除する、それから、性欲を興奮させ刺激させるという言葉を削除するというようなことがあるわけですが、先ほど私も述べさせていただきましたとおり、幾つかやはり私が懸念しておりますのは、現在児童ポルノとして規制されているもの、これが相当抜け落ちてくるんじゃないかというような懸念を持っております。そこで、解釈について伺います。

 まず、民主党案にあります「露出」とは、あらわれ出ることですから、見えるということですね。それから、「強調」とは、特に目立つように表現するというふうに日本語辞書にございますけれども、こういう解釈でよろしいでしょうか。

○枝野議員 それは、そのとおりでございます。

○葉梨委員 あと、この「殊更に」というのは、私も民主党の提案理由、それから解説、解釈というのも見させていただいて、ちょっと日本語とは違うなと思ったんですけれども、「殊更」というのは、正当な理由なく、必要以上に、わざわざという意味のようですけれども、いずれにしても、例えば児童のヌードであっても、つまり性器などをさわったりさわられたりはしていないような児童のヌードでございまして、性器などの露出や強調がない限り、これは規制対象にならないという理解でよろしいでしょうか。民主党さん。

○枝野議員 私どもが「殊更に」と言っておりますのは、殊さらに露出をしたり強調したりされている映像ということでございますので、例えば、性器の部分だけが写っているとかということで強調あるいは露出ということではなくて、全体の映像の状況として、必然性なく例えば裸でいるというような状況等については「殊更に」に入る、合理的な理由なく性器などが露出をしているということになるというふうに考えております。

○葉梨委員 「性器等」というのは、余りここの用語としては使いたくないですが、性器と肛門と乳首ですね。

○枝野議員 そう認識をしています。

○葉梨委員 では、性器、肛門、乳首が露出していなければ規制対象にはなりませんね。

○枝野議員 「露出」のほかに「強調」ということを入れた意味は、今回の規制で、従来、いわゆる着エロというんでしょうか、性器や乳首だけはちょっと特殊な水着のようなもので隠されているけれどもまさにそこが強調されている、こういったものを明確に規制の対象の範囲内なんだということにしたいという趣旨でございまして、例えば乳首のところにだけ何かシールが張ってあってそこが露出をしていないということが、逆に、むしろそのことによって強調されているということになるというふうに考えています。

○葉梨委員 それでは、後ろ姿のヌードはどうでしょう。肛門は見えません。

○枝野議員 個別の状況によって、もちろんそれはお互いわかっていることですけれども、判断しなければならないと思いますが、肛門そのものが写っていなかったとしても、肛門と周辺部のところが殊さらに強調されているという状況、つまり臀部の肛門周辺のところが不自然な形で、つまり必然性のない形で露出をしているということになれば、結果的にそれが強調に当たるケースは十分あり得るというふうに思っています。

○葉梨委員 では、パンツをはいた後ろ姿はどうでしょう。

○枝野議員 パンツの種類にもよります。それこそ、先ほど申し上げましたとおり、この間、大変ひどい状況になってきているいわゆる着エロと称するものは、大変特殊なというか普通には着用しないような、パンツと言っていいんでしょうかね、というようなものをはいていることによって結果的に肛門等を強調しているというケースはありますので、はいていればいいということではない。そのパンツの形態とか、そのことによって全体の映像として肛門、性器等が強調されているかどうかということで判断されるというふうに思います。

○葉梨委員 上半身裸で下はスカートをはいている、そういうような後ろ姿の画像はどうでしょう。

○枝野議員 上半身裸ということによって、例えば乳首が露出をしていなくてもいいわけですけれども……(葉梨委員「後ろ姿」と呼ぶ)

 後ろ姿であったとすると、一般的には今回のこの法律の要件には該当しないというふうに思いますが、ただし、上半身が背中であるから、あるいは下半身にスカートをはいているからといって、では全部当たらないということになるかというのは、まさに着エロのような、はいている形はとっている、あるいは乳首、性器、肛門そのものは写っていない、けれども、まさにそこが強調されているという、まさに法の抜け道をやろうみたいな話のところというのは、「強調」という言葉でしっかりとカバーはできるというふうに思っております。

○葉梨委員 どうとでも解釈できるということじゃないですか、要は。強調とは、特に目立つように表現することなんですよ。

 では、背中だけでスカート、それも強調だと言われるわけですね。

○枝野議員 ですから、スカートといってもいろいろなスカートがあるわけですよ。つまり、実際に、多分葉梨委員も本案の作成とかあるいは審議に当たって、最近問題になっている着エロのいろいろな映像とかを心ならずもごらんになっているかというふうに思いますが、例えば、水着を着ている、水着を着ていれば全部オーケーかといったら、現実には、まさに本当に一センチか二センチぐらいの細い上の部分、それで乳首だけは隠していますという水着も現にあって、それでそういった写真が、とりあえず性器等が写っていない、そして着衣、つまり水着を着ているということで、ようやくつい最近こういったものについても摘発が始まっていますが、まさにあいまいで、そういったものをやっていいのかどうか、そして、厳密に現行法の、着衣の一部または全部を着ていないということのときに、それはそれで一応水着ですという抗弁に対してどうするのかということがあるように、例えばスカートだって、まさにスカートの態様によります。

 それから、背中だけで乳首そのものが写っていなければいいかということについてでも、それは撮影の角度とかなんとかで、そのことによって乳首を強調しようとしている、あるいは、スカートによって逆に肛門あるいは性器等を強調させようとしているという映像があり得ることを全面的に私は否定はできませんから、そこが、まさに全体の映像として殊さらに強調しているかどうかということで決まる。そこのところはしっかりと、悪質なものは「強調」という言葉で十分に取り込み得るんだというふうに私たちは思っています。

○葉梨委員 何か、「強調」ということがよくわからないんですけれども。

 では、これで、(パネルを示す)どうも、おしりが見えていると強調だというふうには、通常の法令用語あるいは日本語の世界だったら、そうはならないと思うんですけれども、この資料一です。お配りしています。

 こちらで、下はちゃんとした着衣だと。この人は、性器、胸などを強調するつもりは全然ございませんね。これを撮りますと、これは強調になるんですか、下はちゃんとはいていた場合は。

○枝野議員 まず、「強調」「露出」というのは、当該行為をしている児童の主観的な問題ではありません。本人が強調するポーズをとったのかとか露出するポーズをとったのかということは、私どもの定義では全く問題にされていません。映像そのものが殊さらに露出をし強調するものになっているかということを、映像全体の客観的な状況から判断をするということになります。

 今の漫画は、いわゆる盗撮的な部分のところのことを取り上げているのかというふうに思いますが、一般的に申し上げれば、例えば浴場とか更衣室等について、本人に知られないようなところから撮影をされている映像というものは、その中で例えば性器等が写っているような状況があれば、まさに、ふだん隠していて本人も隠そうとしているところで、ふだんは普通の人に見えないようなところで、そういったものを隠れて写すという、そういう映像であるということに映像の客観的な態様としてなりますから、そうした場合には、性器等が写っていれば露出に当たるということになるというふうに思っています。(葉梨委員「写っていなかったらどうなんですか。写っていませんよ」と呼ぶ)

○山本委員長 発言者は立って発言してください。

○葉梨委員 はい。

 これは写っていません。おしりも隠れています。どうでしょう。

○枝野議員 おしりそのものが完全に隠れているという状況、つまり更衣、脱衣の途中ということでない映像であるならば、それは問題にはならないと思いますが、まさに脱衣の途中で、これからおしり、つまり肛門や性器等が見える直前の状況というのは、映像の態様によっては、強調しているということには十分なり得るというふうに思います。

○葉梨委員 これは、いつまでたったって、性器、肛門が見えるというオケージョンじゃないんです。これは水着で、着がえている。通常、着がえるときに、性器、肛門は見えません。

 では、これは、ならないということでいいですね。

○枝野議員 露出という定義からは、肛門等が見えなければ露出には当たりませんが、まさに着がえているところを盗撮されているという客観的映像は、基本的には、そこで肛門とか性器とかというものを強調している映像であるということに客観的に判断されるケースが多いと私は思いますけれども。

○葉梨委員 それは、性器、肛門を強調するためじゃなくて、臀部を強調するというんだったらわかります。胸部を強調するというんだったらわかります。

 枝野先生も法律家ですから、最後の最後まで性器、肛門が見えないもの、見えないことが明らかにわかっているにもかかわらず、それで強調というのは、どういうような解釈でされているんでしょう。

○枝野議員 最終的に見えなくても、例えば、先ほど来申し上げているいわゆる着エロなどというのは、例えば乳首の部分のところは全部隠しているし、肛門も性器も全部隠していても、それでもそれは強調に当たるというふうに言えるはずであります。

 最終的に見えるかどうかということではなくて、その映像を見た人たちがということになると主観的な要件になる。その映像からうかがわれる状況というのは、まさに間もなく肛門が見えようとしている、まもなく性器が見えるかもしれない、見えるか見えないか、どういう状況なんだろう、そういう状況にあるということが結果的に肛門とか性器とかということを強調しているという映像になるということは、見える見えないを問題にしているんじゃなくて、そのことによって、ふだんでは、例えば、きちっとした普通の水着を着て、あるいは普通の洋服を着ているという状況では、まさにもちろん臀部は見えませんし、性器や肛門が見えそうでもあるはずはないわけですけれども、それを、着がえをしている、しかも普通の脱衣所とかそういったところで着がえをしているという状況で、もうちょっと下げればもしかすると見えるかもしれないという状況の映像は、それは、客観的に見て、肛門とか性器とかそれから乳首とかという今回の法案の対象になっているところを強調している映像であるというふうに十分解釈ができるというふうに思いますけれども。

○葉梨委員 これで明確な取り締まりは、今の答弁でできるんだそうですよ、民主党の方々。

 性器等がいつか見えるだろうじゃないんですよ。いつまでたっても絶対見えないんですよ。見えないんだけれども、おしりの強調ではあるのかもわからないです、無理くり「強調」ということを特に目立つように表現するということであれば。

 これも強調だと言われるんでしょうけれども、(パネルを示す)では、これは上着を着ていたらどうなんですか。性器見えません。乳首見えません。肛門見えません。いつまでたっても見えません。これはどうなんでしょう、当たるんでしょうか。

○枝野議員 いつまでたってもとおっしゃっていることの意味が私には余りよくわからないんですけれども、静止画像の場合もあるし、動画の場合もいろいろあるんでしょうけれども、それは動画のことをおっしゃっているという……(葉梨委員「静止画」と呼ぶ)

 静止画像については、いつまでたっても、つまり、強調という定義を入れた以上は、いつまでたっても性器等が写らないのも強調に入るのは当たり前で、別に服を脱ごうとしている状況ではなくても、先ほど来何度も繰り返し申し上げていますが、着エロ的な映像というのは、別に何かを脱ごうとしているわけじゃないんですから、いつまでたっても乳首も性器も肛門も見えるような状態になるわけではないという映像であります。

 今御示しになった映像についても、その態様によって、まさに、例えばその形で半分パンツを脱がしているという状況とか、あるいは上半身が裸の状況で、胸のところ、乳首のところを手で不自然に隠しているとかという構造があれば、それは強調しているということに当然なるというふうに思いますけれども。

○葉梨委員 相当細かに見ていかないといかぬということですが、ただ、この強調という意味、多分、委員の皆さんも聞かれていて、さっぱりちょっと、私も頭が悪くてわからないんですよね。要は、背中だけのヌードなんだけれども、下はちゃんと着衣を着ていますといったものも強調になるかもしれないし、ならないかもわからないということでいうと、現場は混乱しますね。

 そして、多分、衣服を脱いだ人の姿態というのは、性器などを露出、強調するものよりも、相当やはり広いは広いんです。今のお話を聞いていると、衣服を脱いだ人の姿態で性欲を興奮させ刺激させるといった方がよっぽど明確じゃないか、私自身はそういうような印象を持ちました。

 ただ、いずれにしても、この「強調」ということで、今現在児童ポルノとして規制されているものが、やはり抜ける部分というのは出てきますね。それはよろしいですね。

○枝野議員 実はこれは、十一年前、まさに超党派の議員立法の当事者でございまして、そのときからこの今回外そうという三号というのは重要な議論のポイントになっておりまして、議員立法なのになぜ霞が関におられた方がかかわってこられたのか、私にはよく理解できないんですが。

 それはいいとしても、あのときから私自身、国会でも申し上げているんですが、この二条三項三号の条文を素直に読めば、例えば十六歳、十七歳の、わかりやすく言うとジャニーズなどの若い男の子が上半身裸でいる映像とかそういったステージとか、そういったものはたくさんあります。これは明らかに同世代の女の子たちの性欲を興奮させ、または刺激をしているというふうに思います。なおかつ、着衣の一部、つまり、上半身裸になって、あるいはステージの途中で着ていたものを上半身脱いだりするということがありますが、明らかにこれは条文上は入ってしまう。

 もちろん、それは社会通念上、そんなものは取り締まらないという現実になっているんでしょうけれども、こういったものが条文上入っていってしまうということは、もしかすると取り締まりの対象にされるかもしれない、そういう危険性があるという状況はやはり避けるべきである。

 一方で、この間、先ほど来繰り返しておりますが、着エロなどに対する取り締まりが大変腰を引けた状態でやってきた。これはやはりこの条文からでは、なかなか読み取ることについて迷いが出てくる、こういうことなんだろうというふうに思っていまして、そういったものをしっかりと取り締まりの対象に入れる一方で、私が申し上げた、例えば十六歳、十七歳の男の子が上半身を途中で脱いで裸になるというような映像は当たらない。まさにそういったものを外すことを目的としています。

○葉梨委員 そうすると、では、十六歳、十七歳の男の子が上を脱いだものはすべて当たらないということですね。

○枝野議員 わかってお聞きになっているんでしょうけれども、すべてこういうものについては、すべてということで果たして答弁できるのかどうかということについては、無責任なことは言うべきではないというふうに思っておりまして、つまり、例えばその態様によっては「殊更に」というところで基本的には扱われる。つまり、合理性を持ってということ。

 つまり、一種若い男の子に対する性的虐待というものも世の中には存在をしているわけでありまして、そういったことをうかがわせるような状況の中で、例えば男の子の乳首が写っている、それはむしろ一号や二号前段のところでカバーできるケースが多いかなというふうに思いますが、今ここで一切ないということを言うつもりはありませんが、先ほど例で挙げたようなケースについては明確に外すべきだということであります。

○葉梨委員 ここの議論をしていても、そもそもその強調というのがどういう意図なのかというのが私自身もさっぱりわからない中で、アメーバのようにいろいろな答弁が繰り返されるものですから、これは相当やはり現場は混乱するなというふうに思います。

 私自身も平成九年から十年にかかわったときも、役所の立場という公的な立場というより結構私的な立場で、覚えていますのは、堂本先生が当時いらっしゃって、もう役人は出ていきなさいといって私も大分いじめられ、私個人でおるんですからということでいたような懐かしい経験もございますけれども。

 ところが、「性器等」といった場合には男性の乳首も入りますよね。ですから、ジャニーズが上が裸になったものは入らないというのは、これは性器等は明らかに露出はしている。露出をしているけれども、それは、ジャニーズの場合は「殊更」ということにならないけれども、普通の男の子が裸になったら、これは「殊更」になる場合もある。では、「殊更」というのは一体何なんだろうと。

 では、殊さらそれを強調するようにジャニーズが胸をこうやって乳首を出している、これはならないということですか。

○枝野議員 「強調」も「殊更」も、その行為をしている児童の行動についてではない、映像そのものの性格である。

 ですから、例として申し上げたのは、ジャニーズの、一般的に我々が思っている、しかも現に行われている、例えばステージの上で上半身裸になるというようなことについては、これは「殊更」には当たらないだろうと。つまり、合理性がある、合理的理由があるだろうというふうなことを申し上げているので、仮に、ジャニーズの男の子であったとしても、先ほど申し上げたような、つまり一種同性愛的、あるいは男の子に対する性的虐待的なことをうかがわせるような映像において乳首の露出または強調があったりすれば、それは「殊更」「強調」、あるいは「露出」をしたものに当たる可能性は否定をしない。

 普通の男の子も、普通に、例えば海辺で、海岸に着いたから上半身裸になって、水着じゃないですよ、海水浴に行ったわけじゃないけれども、海に行ったから上半身をぱっと裸になってそこら辺で遊んでいる、これは、普通の男の子だって、それの映像を撮ったからといって、普通には殊さら強調した映像にはならない、こういうことだと思いますけれども。

○葉梨委員 「殊更」と「強調」というところがみそで、どんなものでもなり得るし、どんなものでもなり得ないし、その場その場で見るしかないというようなことだとすれば、今の定義の範囲としては、私がこう言っては申しわけないんですが、ちょっとできがよくないというふうに言わざるを得ないかなというふうに思います。

 そもそも、今の三号の児童ポルノ、これについて、後で枝野先生からもいろいろと質疑いただきますけれども、実際に、捜査が恣意的に運用されるということについて、これは私も大変な懸念を持っていますので、それはそうならないように絶対していかなきゃいけないけれども、やはり今のお話を聞いていると、民主党案というのは、定義の明確化というよりは定義のアメーバ化で、何だかよくわからなくなっちゃったというような感じを持っております。

 後でまた議事録、もう一度御自分の答弁を読み返してみていただいて、また議論もさせていただきたいと思います。

 ちょっともう時間もありませんので、別の題に移りたいと思います。

 民主党が、「児童ポルノ」という用語を「児童性行為等姿態描写物」と変えようとしています。先ほどお答えいたしましたが、サイバー犯罪条約では、いわゆる疑似児童ポルノというのも児童ポルノに入っているんです、サイバー条約ですが。これは日本の法律の定義には入っておりませんけれども。

 これを、ただ「児童性行為等姿態描写物」とすることにすると、この法律の世界では、いわゆる疑似の児童ポルノ、漫画、アニメについては一切さわらないというようなことになりますけれども、そういう理解でよろしいわけですね。

○枝野議員 これも、過去二回の制定、改正のとき、常に一貫して私どもの立場として、そういったものを仮に規制をしなければならない状況があったとしても、保護法益が児童が性的な虐待を受けたことという個人的保護法益であるこの法案、法律と、それから、そういった映像等がはんらんをすることによる弊害を防ぐという目的とでは、目的に大きな違いがある。

 もし仮にそういったことを立法する必要があるとしても、それは別の法律であるべきである。そのことの方が、この法律ではとにかく、実際に性的虐待を受けた子供たちを守らなければならないという趣旨が明確になるということで、我々はそこを分けるべきだと考えておりますので、本法には入らないということで結構でございます。

○葉梨委員 そこのところは大変いろいろ議論のあるところで、例えば、今の法律でも実在の児童ということになっていますけれども、二百年前に製造された、明らかにその児童がもうこの世にいないといったものも、実はこの児童ポルノの対象にはなる。

 ですから、その意味では、いわゆる個人的な法益、社会的な法益ということで、我々は、ただ、二〇〇二年の米国の連邦裁の判決もよく承知しています。ああいう形でアメリカが強い規制をゲームとかアニメにかけたというのは、やはり表現の自由の関係から違憲であるというような判示がなされたわけですけれども、ただ、やはりゲームとかアニメでも、ひどいものはひどいんです。

 ただし、同じような規制を、実在の児童を被写体としたような児童ポルノと一緒にすべきだというふうには私は思わないんですけれども、少なくとも、エビデンスというのをそろえてこういう研究はしていかぬといかぬということから、与党案は研究という規定を入れているということを御理解願いたいと思います。

 ちょっと時間がないので、単純所持の関係ですが、児童性行為等姿態描写物の有償、反復取得の禁止で規制されない行為についていろいろと伺います。

 まず、先ほど言いましたけれども、大量の児童ポルノの蔵書を保有して、私は実はだれだれさんの子供時代のポルノを持っていますよ、私は実はだれだれの子供時代のポルノを持っていますよというのをだあっと宣伝して回る行為というのは、民主党案では禁止されないということですね。もうイエスかノーかで結構です。

○枝野議員 民主党案では規制されませんが、与党案でも、「性的好奇心を満たす目的」が満たされるのかどうか、非常に疑問があると思います。

○葉梨委員 多分、そうやって宣伝して回る方はペドファイル、小児性愛者ですから、与党案ではここのところを禁止されるだろうというふうに思います。

 自分が保有する児童ポルノを、友人であるばりばりの小児性愛者、ペドファイルに見せて、見せるだけよという代価として百万円をもらう行為、これは民主党案では規制対象となりますか。

○枝野議員 お言葉ですが、持っていて見せるからといって、ペドファイルであるという推定がどうして働くんでしょうか。私は、そこがまさに、持っているということだけでこいつは悪いやつなんだということをうかがわせるという、それに基づいて自白が強要されるのではないかという危惧のまさに一番のポイントだろうというふうに思います。

 今の点についても、私どもの案でも入りませんが、残念ながら、一人にだけ見せるということはどちらの法案でも対象になっていないわけで、そちらは所持は対象になる。だけれども、その人が人に見せてお金を取ることを目的としているのなら、自己の性的好奇心を満たす目的というのはむしろ排除される推定が働くんじゃないですか。

○葉梨委員 それはそうでもないと思いますね、一緒に楽しむということもあるわけですから。(枝野議員「こともあるわけでしょう。だけれども、違う場合もある」と呼ぶ)

 答弁者、それは客観的によく実態に即して考えてみたらいいと思いますよ。百万円をもらって、それを持っていて一緒に楽しむという形であればということで、もちろん、それを営業としてやっているような形であれば、自己の性的好奇心を満たす目的ではないということもあるでしょう、他人の性的好奇心を満たす目的で。ただ、営業としてやっているようなことであれば、それは別途の営業法の規制があるし、そもそも、「みだりに、」にということで一般的な禁止規定を入れていますから、そういったものについてはやはり廃棄するということは、与党案では期待をされるということです。

 小児性愛者、ペドファイルでありますお父さんが亡くなりました、その子である子供もやはり小児性愛者、ペドファイルでございます。大量の児童ポルノを家宝として相続する行為は、民主党案では規制対象となりますか。

○枝野議員 小児性愛者であるかどうかということは内心の問題なので、客観的に判断できないというふうに思います。どなたかが持っていた大量の児童ポルノが、結果的に相続で違う方になったとしても、そのこと自体を違法性のあることとして排除することは、残念ながらできないというふうに思います。

○葉梨委員 私、捜査機関じゃないものですから、小児性愛者であるかどうか判断できないというのは、これは具体的な捜査の事例に即して言っているのではなくて、ある小児性愛者が小児性愛者である子供に対して相続をした場合はどうですかというふうに聞いているわけで、立証できないからどうのこうのというのは、レベルの全然違う話なんです。

 最後になりますけれども、今回、民主党が単純所持について踏み込まないと。

 たしか十六年の改正でも、次の段階ではそこのところに検討を入れなきゃいけないなということは、実は武山百合子さんが委員長でした。私、委員長代理として参議院でも答弁したんですけれども、必ず次の段階で単純所持の禁止に踏み込みますよというようなことまでは言えない、それは当然ですけれども、やはりそこまでについては検討しなきゃいけませんねというような、次の段階ですというようなことにしたわけですけれども、民主党案においては、今のところそういうふうにはなっていないということでございます。

 ちょっと時間が来てしまいました。また本日、一日長いですから、議論をしてまいりましょうということで、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

○山本委員長 次に、丸谷佳織君。

○丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日、与党案そして民主党案がこの法務委員会で審議入りをしましたこと、また、この審議入りをするまでに、それぞれのいろいろな意見をまとめてそれぞれの案をまとめてこられました皆様に心から敬意を表したいと思いますし、また、質問の時間を与えてくださいまして、心から感謝を申し上げます。

 今回の法務委員会での審議入り、本当に待ちわびていた方がたくさんいらっしゃいます。私も、被害者の方ですとか、あるいはNGOの団体の方とか、いろいろかかわらせていただきました。その中で、本当に切実な思いで、被害に遭っている児童の皆様、あるいは被害に遭ったという経験を持っている方々からも、お手紙を拝見しております。

 被害を拡大させないためにも、大まかな御紹介をさせていただきますけれども、大学生の女性、小学生のころから親戚のおじさんによって性的な虐待を受けていた、それを写真に撮られていた、しかしながら、自分は何をされているのかわからないから、本当に笑顔でその写真に写っている、今、自分はインターネットを使えるような世代になって、自分で、もしかしたら自分の写真がインターネットの中であるんじゃないかと毎日インターネットを検索せずにはいられない、本当に自分の将来がつぶされたような思いがするといった声も届いております。世の中を変える力のある人がいるのであれば、どうか助けてくださいというお手紙も。

 本当に、きょう、ようやくこの審議に入れたこと自体をこの方たちがどんな思いで喜んでいただいているのか、また、ではこの被害に遭った自分をこれからどのような形で法律は救ってくれるのかという期待を持って見ている、そういった方たちのためにも、この法務委員会の審議が本当に、机上の空論で終わることなく、充実したものになるようにという思いで私も質問をさせていただきたいと思います。

 まず、与党の提案者にお伺いいたします。

 九九年に議員立法でようやくこの児童買春、児童ポルノ禁止法が成立をいたしました。実際には、この法律が成立をしたことで、コンビニですとかあるいは書店で児童ポルノの購入ができなくなったわけでございますけれども、今は、それから十年たちまして、インターネットあるいは携帯での技術が格段にアップいたしまして、より秘匿性を高くした中で、個々人のレベルに児童ポルノ画像がおりてきているという状況でございます。そういった国内の状況、また、この十年間、国際社会は児童ポルノへの取り組みを一層深めておりまして、日本に対する取り組みの不足というところが指摘をされているところでございます。

 まず、この法の改正の理念ともつながると思いますけれども、改めて、今回の法改正で何を変え、何をしようとしているのか、この点について御説明をしていただきます。

〔委員長退席、大前委員長代理着席〕

○富田議員 今、丸谷委員が最初にお話しされましたように、被害に遭われた方の思いというのは本当に大変なものがあると思います。いつ自分の映像が他人に見られるのか、それをずっとおびえながら暮らしていかなきゃならない、この思いというのは多分我々の想像を絶するものだというふうに思います。そういった意味で、委員会の審議が始まって、一刻も早い改正案の成立を、被害者の方、また、それを支援されているNGOの皆さんが望んでいるというのは気持ちとしてもわかります。

 我々自民党、公明党、与党は、昨年の六月十日に改正案を提出させていただきました。それまで公明党としてもプロジェクトチームで議論をしてきました。丸谷委員がその中心。また、与党としてプロジェクトチームで議論させていただいて、森山先生の方から提案理由の説明でお話ありましたけれども、最初の成立からもう十年たってきている、インターネット社会が進展して、当時とまたかなり状況は変わってきています。そういった中で、どういうふうに被害者を救っていくのか、また被害の蔓延を防いでいくのか、そういったことを考えたときに、単純所持が禁止されていない、そういった状況が被害を蔓延させている一番の原因になっているのではないかというところを、特にNGOの皆さんから与党PTにも御意見をいただきました。

 そこをどうにかしなきゃいけないというところで今回の法改正の議論が始まったわけでして、十六年改正時にも、三年を目途として改正しようというような規定がされております。先ほど来、葉梨委員の方からその経過もお話ありましたので、我々としては、何とか単純所持をきちんと禁止して、また、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持に対して刑事罰もきちんと置かせていただいて、児童ポルノについてさらに厳格な規制を設けて、児童の権利の擁護に資する法律にしていきたい、そういう強い思いで今回の改正案を出させていただいて、今審議しているところであります。

○丸谷委員 一方、民主党案には、先ほど来議論になっておりますけれども、単純所持ということではなく、反復あるいは有償での取得というところで規定をされました。

 枝野議員も、この法律に当たっては最初からずっとかかわってこられて、何が問題で、何をどうしていかなければいけないのかというところを踏まえて十分に議論をしていらっしゃると思うわけですけれども、二〇〇七年の内閣府の世論調査では、単純所持を規制すべきだ、あるいは、どちらかといえば規制すべきという世論が九割を超えております。また、昨年リオで行われました第三回の児童の性的搾取に反対する世界会議では、各国に、児童ポルノの製造、販売、配布、所持のみならず、インターネット上のアクセスや閲覧さえ法的に禁止や罰則の対象とするよう求める宣言も採択をされております。

 昨年、ユニセフ協会あるいはNGOの皆さんが中心となりまして、児童ポルノに対する働きかけの署名を集められました。実に全国で十一万人を超える方が署名に賛同してくださったわけですけれども、そこのイの一番、一丁目一番地が単純所持の禁止の法制化でございました。

 こういった国内外の声にどういうふうにこたえていこうとしているのかが、今の議論を聞いていても私にはわかりません。この点についてお伺いいたします。

○枝野議員 単純所持を違法化し、それに罰則を加えなければならないという意見、そして思いというものは私も共有をいたします。

 ただ、問題は、まさにネット社会ということの中では、本人の知らないうちに、あるいはほとんど気づかないうちに、いわゆる児童ポルノに該当するような映像を自己の所持のもとにしてしまう、あるいはさせられてしまうというケースは簡単にできる、こういう状況にあります。

 そうした中で、みずからそうしたものを集めて、そういったものにお金を出して、そういったものにアクセスをするという人については可罰性があるというふうに思いますけれども、どこかから勝手に一方的に送りつけられてきた、その映像について、しっかりと完全に消去して除去しないと処罰をされる可能性がある。しかも、それをおれは勝手に送りつけられたんだとかということを抗弁するといっても、結局それは主観的意思、目的と故意という、密室の中で行われる自白によって実は大部分証明せざるを得ない要素である。

 そういった現実を考えたときには、一方で刑事法は、処罰すべき人間をしっかりと処罰しなければならない一方で、処罰に値しない人間を処罰してはいけないということがあります。その両面を両立させようということの中で私どもは苦慮をいたしまして、最終的に、今回提起をいたしましたとおり、その取得のプロセスを客観的に立証するということによって、販売目的等の目的を有さない所持の大部分といいますか、ほとんどはきちっと処罰することが可能であり、なおかつ、処罰してはいけない人が間違って逮捕されてしまうなどということがないように、両面を両立させることができる、そういう知恵を絞ることができた、こういうふうに考えています。

    〔大前委員長代理退席、委員長着席〕

○丸谷委員 通告をしていないんですけれども、今出てきた議論についてちょっと与党の提案者にお伺いをしたいと思います。

 今、目的所持ということで、自白の強要あるいは冤罪に対する懸念という意見が出てまいりました。しかしながら、既に刑法の中には目的所持の罪というのはございます。例えば刑法百七十五条のわいせつ物販売目的所持の罪というものがございます。これは、実際には、自白に頼ることなく、外形的な理由から判断しているわけでございまして、今までのそれぞれの刑法に照らし合わせても、しっかりと、自白に頼ることなく、また強要することなく、冤罪をということの懸念なく運用されている、私はこのように思うわけでございまして、児童ポルノに限って、この所持の目的について、自白の強要、冤罪というところでのこの目的所持というものが制定されないというのはちょっと違うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○富田議員 今、丸谷委員がおっしゃるとおりだと思います。

 枝野先生の御答弁を聞いていますと、所持の故意と性的好奇心を満たす目的というところが、あたかもすべて内心の問題であって、それが自白として強要されるんだというような御答弁に、ちょっと後ろで聞いていると思えるんですが、所持をしているという故意も、その目的も、それぞれさまざまな客観的状況から認定されるものであって、すべて内心で決まるわけではありません。

 これまでのいろいろな刑法犯、またそれぞれの司法の過程においても、客観的な事情から認定される内心の問題だと思いますので、今、枝野先生の答弁を聞いていますと、やはり可罰性のある所持というのもあるといいながら、冤罪を生む可能性があるからそれは防がなきゃいけないんだ、その防がなきゃいけないというのはわかるんですが、可罰性がある所持を認めておいて、その所持が違法でないというのは、ちょっと我々与党からしたら理解に苦しむなというふうに思います。

    〔委員長退席、大前委員長代理着席〕

○丸谷委員 民主党案では、有償または反復の取得罪がございます。逆に言えば、有償または反復でなければ児童ポルノの取得というのは合法だというお墨つきを与えるように私には思えますが、これについての見解はいかがでしょうか。

○枝野議員 まず、先ほどのお話で、販売目的所持という場合には、販売目的というのは、販売をしようとしていたというような客観的な事実から、その目的を類推することが容易です。ただ、しかし、今回のような、性的好奇心を満たす目的ということについては、それこそ入手のプロセスとか、大量に持っている、大量に持っているということは、逆に言えばその入手のプロセスを立証することが容易です、いずれにしても、その取得のプロセスを立証しないと、性的好奇心を満たす目的ということを客観的に立証することはほとんど不可能であると私は思っています。

 したがって、結局は、取得の部分のところをしっかりと処罰することができれば、自白に頼らずに立証可能、事実、単純所持については処罰可能であるというふうに考えています。

 一方で、今のお尋ねですが、一回限りだったらいいのかと。一回限りの取得というのもいろいろあります。つまり、例えば、皆さんもほとんどの方がインターネットをお使いだろうというふうに思いますが、メールで勝手に送られてくるケースだけではなくて、インターネットのいわゆるネットサーフィンをしていますと、わけのわからないクリックボタンがたくさんあって、そこを知らないうちに、間違ってクリックをしてしまって変な映像が飛び込んできていたなんということは、皆さんも御経験あるんじゃないかと思います。それも、取得ということからいえば取得に当たってしまいます。では、その中に児童ポルノが入っていましたということが可罰的な行為か、違法な行為かといえば、それはそうではないというふうに思います。

 なおかつ、これも、間違ってクリックしたのか、それとも、なるほど児童ポルノだと思ってクリックしたのかなんということは、そのクリックをしたという客観的な事実の立証だけではわかりません。つまり、主観的な要因、つまり自白に頼らざるを得ない部分で、意識的にそのボタンをクリックしてしまったのか、それとも、何かよくわけのわからないところで間違ってクリックしてしまったのかということが分かれてくるという話ですから、やはり、これを処罰対象にするということは、処罰範囲が広きに過ぎることになるというふうに思います。

    〔大前委員長代理退席、委員長着席〕

○丸谷委員 私の質問は、有償または反復でなければ児童ポルノの取得というのは合法ということですかという質問でございました。

 例えば、ただで一回に百枚の児童ポルノを取得した、これは有償でもございませんし、反復でもございません。これは民主党案では合法になるわけですか。

○枝野議員 刑罰法規を科するに値をする違法ではないというふうに思います。

 というのは、百枚といっても、例えば雑誌のようなものを百冊だったら、それは違法性があるかもしれません。しかし、まさにインターネット上などでは、一度に百枚の映像がどんと送られてくるとか、クリックしたらどんと来てしまうなんということは日常的にあり得るケースでありますから、量が多いか少ないかということでは一律にはいけない。一回だけだったら、よくわからないうちに何か手に入ってしまった、自分の管理下に入ってしまったということは十分あり得るというふうに思いますので、そこは量ではなくて、やはり、ああ、この人は意識的にこれを集めているんだなということが客観的状況から類推できる、そういう要件を課さなければならない、こういうことです。

○丸谷委員 わかりません。

 今、枝野議員は、送られてきた、送られてきたという前提でしか御答弁していただかないんですね。

 見たい、自分が児童ポルノを見たい、なぜなら自分は児童の裸体あるいはそういったものが好きだからということで見たい人が、今回、民主党案が成立した場合、ああ、これは民主党案であれば、だれか小児性愛のグループの皆さんから、見たいものに関してただで一回に百枚送ってもらう。送る方に関してはこれは罪に問われるわけですけれども、では、取得した人はこれは合法行為になるということですね。

○枝野議員 議論がかみ合っていない理由が大体わかってきたんですが、自分が見たいと思って所持に至った人なのか、それとも間違って所持に至った人なのかということの区別は、それは客観的には、一義的にはすぐにはわからない。わかりませんよね。

 それは、特にネット上などが一番典型ですけれども、自分が小児性愛の趣味があって、そういった児童ポルノを見たいという意思でネット上から例えばそういったものを取得した人と、何か知らないボタンを押してしまったらそんなものが送られてきてしまった人というのはどうやって区別をするのか。結局は、その区別をする方法がないじゃないですか、自白以外に。

 自白以外にあるとすれば、この人はお金を払ってでも手に入れたということは、それは少なくともかなり違法性の高いかもしれない、お金の価値のあるものかもしれない、そういったことについての推定が働きます、意識的に入手をしたということが働きます。あるいは、同じようなことを繰り返していれば、間違って何かボタンを押しちゃってということではないということが類推できます。

 でも、一回に大量に入手をした、入手をしたというのは、手元の、自分の管理下に入ったという人が、そのことだけで、小児性愛者だからそういったものを大量に入手したのか、それとも間違って自分の管理下に入ってしまったのかということはわからないじゃないですか。どうやってわかるんですか。だれがどうやって判断するんですか。わかりようがないんですよ。

 それは、この人は小児性愛者、自分で私は小児性愛者だと言えばわかりますよ、だけれども、それ以外に何か区別のしようがない。結局は、繰り返し取得をしたり有償で取得をしたりすることによってという要件をかけることによって、ああ、なるほど、この人は間違えて手元に入ったのではなくて、本人の意図で手元に入ったということが客観的証拠から判明できるというふうに考えているんです。

○丸谷委員 私もちょっと理解のスピードが遅いのかもしれないんですけれども、今の御答弁を聞いていますと、結局、何の目的で取得をしたのかというのはわからない、自分で取得をしたのかもわからないし、送られてきたのかもわからない、なので、例えば一回に百枚児童ポルノを取得したとしても、それは刑罰を科すに当たらないということを御答弁されたということですね。

○枝野議員 正確に答えれば、刑罰を科すに当たらないのではなくて、刑罰を科するに当たるものかどうかが判断不可能であるというふうに判断しています。

○丸谷委員 そうしますと、そういうことは、児童ポルノの存在そのものを肯定するものにつながってしまうんだと私は思います、その法改正によりますと。だって、見たい人にとっては、反復で有償でなければ、取得をしても、それはどうなのかわからないから国はノータッチだよ、逆に、一回に百枚だったら取得できるよということを指南するような法改正につながってしまうというふうに私は思います。

 また一方で、単純所持というものに関して、警察権力が悪用されるという可能性への懸念をそこまでお示しになるのであれば、警察権力の悪用に対しては、それ自体真っ正面から取り組むべき問題であって、所持というものを容認することで懸念を払拭するべきではないと私は考えます。別の問題だというふうに思いますが、この点については御答弁いただけますでしょうか。

○枝野議員 私、理事じゃありませんので、理事の方から間接的に伺っているので正確ではないかもしれませんが、だから可視化法の審議を少なくとも同時並行でやるべきだと。つまり、これは主観的な要素の問題が問われているので、基本的には自白をとる、主観的な要因は自白をとることが一番簡単なんですから。自白をとった上に、それに合ったところで、客観的な状況があったとしても、それに合わせた自白をとらないと、故意とか主観的な性的好奇心を満たす目的というのはなかなか立証は困難ですから。

 いずれにしても、自白が大変大きな問題になる構成要件に与党案ではなっている。その自白がなぜ例えば強要されたり、あるいは事実と違う自白がなされたりするのかといえば、自白をとるための捜査が密室の中で行われているからである。だから、この部分のところを世界的なグローバルスタンダードにまさに合わせましょうよということで可視化の法案を出しているにもかかわらず、こちらの審議には入らないでこちらだけやる。少なくとも同時並行することが必要だというふうに思います。

○丸谷委員 私も、法務委員ではございませんし、理事でございませんので、委員会の運営についてはよく存じませんけれども、今おっしゃったこととこの法律の審議というのは別問題だと思います。いろいろなことを背景にして、この単純所持についての前進あるいは解決を図れないということ自体が、先ほど質疑の冒頭で申し上げました彼女たち被害者の声にこたえることになるのか。今、例えば可視化法案が同時並行で入らないからということで、あなたたちの写真を今所持している人は合法なんですよ、あるいは、これからあなたたちの写真を一回に百枚取得すること自体は法で規制されませんでしたという説明で彼女たちの思いにこたえることができるのかというと、私はやはりそこにはかなり大きな違和感を覚えるところでございます。

 民主党案で、有償または反復での取得罪というのを制定されました。この罪が制定されても、過去に所持をしているものは破棄はしなくてもいいわけですね。この点を確認させていただきます。

○枝野議員 児童ポルノということで取り上げられている、まさにおぞましいといいますか、児童に対する性的な虐待、ひどい虐待に当たる典型的な児童ポルノだけが対象であるならば、それは過去にさかのぼってすべて廃棄をしろということもあり得るかというふうに思いました。

 しかしながら、少なくとも、現行法の要件などを考えると、本法施行前には、十八歳前後の、特に女性の乳首等が露出をした例えば雑誌のグラビアや映画や、あるいは一般の書店で並ぶような書籍、それも大手出版社から、具体的に言いますと、これが出版時は十八歳でしたが、撮影時は十七歳なのか十八歳なのかわかりませんが、宮沢りえさんの「サンタフェ」などは典型だと思いますが、こうしたものが過去にさかのぼってたくさんあります。

 これらをすべて、持っている人たちに、これが現行法の、先ほど来、ある意味ではどちらの定義だとしてもあいまいさが若干残る、その定義の児童ポルノに当たるかどうかを判断して、持っているものは全部捨てろというのは、これはやはり無理を強いるものであるというふうに判断をいたしまして、それを仕分けして、もしも捨てろということが可能な法律構成ができるならばそれを否定するものではありませんが、やはり残念ながらそれは不可能であろうというふうに思っています。

 少なくとも、これから提供だけではなくて取得なども処罰をされるということになれば、こうしたものが流通をして広がっていくということについては十分に抑えることができると思っています。

○丸谷委員 これからの取得は防げる、一回に百枚の取得は防げないけれども、これから反復をして有償での取得は防げる、しかしながら、今までの児童のポルノについて、被害者に対して、今までの持っているものは防げませんよということだと思います。これでは私は、児童の権利を守る、児童ポルノを撲滅するという視点からは全く不十分だというふうに考えます。

 また、次の質問に移りますけれども、今回、民主党案では、法律の「児童ポルノ」という名前を「児童性行為等姿態描写物」という変更をされました。私は、これは国内外ともに誤った政治的なメッセージを与えてしまうのではないかということを懸念しております。

 国際会議の場におきまして、今、現在法の公定訳というのは、チャイルドポルノグラフィーというものが使われています。最近、国際社会の中では、チャイルドポルノグラフィーにスラッシュ、そしてセクシュアル・アビューズ・イメージという形の表現になっておりますけれども、例えば、児童性行為等姿態描写物、これを国際社会で議論する際に、日本はこういった法律になりましたということで、タイトルをどのように英訳されるかわかりませんけれども、全く今まで使っていた児童ポルノというところからかけ離れてしまって、日本は何をやっているのか、後退してしまっているのではないかというイメージを与えることになるかと思いますが、いかがでしょうか。

○西村(智)議員 児童ポルノの名称の変更でございますけれども、児童ポルノに係る犯罪が被害児童に対する性的虐待行為であると冒頭申し上げました。これは委員共通の思いだと思いますが、そういう認識のもとで、児童ポルノがなぜ悪質な犯罪なのかという根拠を明らかにするために行うものであります。むしろ、児童への権利侵害行為である児童ポルノへの取り組みの必要性を強調するためのものであって、この点は強調をさせていただきたいと考えております。

 個別の児童の権利擁護だけではなく、全体としての児童とか風潮といった趣旨を盛り込んで考えていこうという方向もあるようではありますが、民主党としては、あくまでも実在の児童の保護のための政策を充実させていこうという考え方でありまして、児童ポルノの名称の変更、既存の罰則の引き上げ、そして、ここは重要なところだと思いますが、被害児童の保護の充実など、すべてこのような考え方に基づいて改正案を提出しているところであります。

 また、国際的にも、先ほど委員おっしゃったように、セクシュアル・アビューズ・イメージズ、チャイルド・アビューズ・イメージズなどという児童虐待画像という言葉が用いられるようになってきております。この言葉は、児童ポルノが児童に対する犯罪行為を記録したものであるという現象の深刻さを反映しておりまして、また、そのことを強調するために使われる言葉です。

 民主党案においては、このような国際的動向も踏まえて、定義規定の内容を正確に反映する趣旨を含めて、用語の改正、見直しを行ったものでございます。

○丸谷委員 例えば世論調査を今後行うとしても、児童性行為等姿態描写物に対する質問ということを言われても、国民の皆さんは、何なんだろうと、全くわからないことになってしまうのではないかと思います。こういった定義も非常に狭めたものに今回民主党案はなっていますし、この法律の「児童ポルノ」という名前も取って違うものにしてしまう、非常に私にとっては目くらましをされたような法改正になっているのではないかというふうな感想を持っている次第でございます。

 最後に質問をさせていただきたいと思うんですけれども、民主党の提案者の方に質問をさせていただきたいんですが、ちょっと通告をしていないので申しわけないんですが、今、児童ポルノに対する取り組みの国際的なスタンダードと、我が国の議論の基準というか、法律に対するこの差異というものは感じていらっしゃるんじゃないかというふうに私は思います。この点についてお伺いをさせていただきます。

 児童ポルノというのは、簡単に今インターネットで国境を越えていく犯罪ですので、一国だけでは解決しません。だからこそ、国際スタンダードに合わせる必要というのがあります。その大きな一つが単純所持の規制というものでございました。

 児童ポルノ自体が悪であるという国際スタンダードの今、キーワードはゼロトレランスでございますので、つくる人もだめ、売る人もだめ、ただで上げる人もだめ、もらう人もだめという、その存在そのものがだめというゼロトレランスで取り組んでいる。しかしながら、きょうの答弁を聞いていますと、では一回で百枚取得するのはいいのか、あるいは、今まで持っていたものは破棄されないということを考えますと、トレランスだらけという感じになりまして、国際スタンダードとはかなりかけ離れることになると思います。最後にこの点についてお伺いをさせていただきたいと思います。

○枝野議員 まず、各国ごとに児童ポルノの定義が違っています。少なくとも、私どもが認識している限り、アメリカの児童ポルノの定義は、もしかすると、私どもが今回提起をしているものよりもさらに狭い定義で児童ポルノということになっています。

 それから、先ほど来申し上げておりますが、各国ごとに刑事司法手続が違っています。アメリカはかなり捜査の可視化が進んでいますし、あるいは、弁護人立ち会いでなければ取り調べができないというような州もあると聞いておりますが、そういった形で、自白の強要に対する予防、防止策というのが十分にできている国とそうでない国と、刑罰法規において同じでなければならないということにはならない。むしろ、そうであるならば、アメリカなどで取り入れられている可視化や、弁護人立ち会いでなければ取り調べができないということを一刻も早く日本に入れて、そちらも同時にそろえなければいけないというふうになります。

 それから、では日本が国際社会の中でどれぐらい、児童ポルノが世界じゅうに蔓延していることの中で、日本の法律がいわゆる単純所持が規定されていないことがそのことの大きな要素になっているのかということを見れば、単純所持が規制をされているとされているアメリカにおいてむしろ多数の問題が生じている、製造あるいは提供のもとになっているというようなことなどを考えたときには、むしろ、そちらのこと以上にやらなければならないのは、各国の協力をして、例えば日本における現行法においても、幾らでも取り締まれるところがまだ取り締まれていないところもたくさんある、そこのところの努力を怠らずにしっかりとやっていく、あるいは、アメリカとかロシアとか、提供をたくさんしている国の取り締まりをしっかりやらせるというようなことこそが、むしろ現実問題として児童ポルノによる被害を防ぐということにつながっていく、こう考えています。

○丸谷委員 ありがとうございました。

 児童ポルノに関しましては、無関心こそが最大の敵だと思っておりますので、その意味で、この委員会において審議をしていることは非常に重要だと思いますけれども、見直しされるべき時期からもう二年も過ぎておりますし、充実した審議とともに、院の決断がされますように、採決が行われますことを期待しまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

○山本委員長 次に、枝野幸男君。

○枝野委員 まず、所持の故意と、性的好奇心を満たす目的というこの主観的要件について、特に今回、このいわゆる単純所持罪について、自白以外にどういう客観条件、つまり、自白を得られないときにどういう客観条件があればこうしたものの立証が可能なんでしょうか。

○葉梨議員 答弁に入ります前にちょっと、先ほど来、この議論のやりとりを聞いていまして思いましたことは、この所持の禁止とも関連するんですけれども、まさにその肝になるところですね、枝野委員が御懸念されているのは、インターネットで勝手に送りつけられてしまう場合がある、それについては、自白以外に立証するすべがないから、そういったものは、もしかしたら可罰的なものはあるかもわからないけれども禁止すべきではないというような御議論なわけですけれども、世の中がどんどん進んでまいりまして、自宅に勝手に、郵送ではなくて何か物がどんどんどんどん届くというような、魔法の穴みたいなものができまして、そういうのができて麻薬もどんどん送りつけられてくる可能性があるという場合だったら、やはり麻薬のそういった所持というのも禁止すべきじゃないということになるのかどうか。

 そこら辺のところで、世の中が進めば、そういったものに対して対抗する姿勢というのをリトリートすべきであるというのはやはりちょっといかがかなというふうに思うんですが、ただ、捜査自体を恣意的に行わないというのは明らかに大事なことですし、また、ちゃんと立証していくということも大事なことです。

 そこで、今、枝野委員からお話のありましたのは、所持の故意と、自己の性的好奇心を満たす目的、この二つですけれども、まず所持については、まず、所持をしているという事実は、通常、所持罪の場合ですと、やはり物がないと捜査というのはなかなか難しい面はございます。それはもう御存じのとおりだと思います。ですから、現行犯的に物がありますよ、それから、パソコンの中にそれが保管されていますよと。

 そして、それについて、やはり所持については故意が必要です。実際にそれが児童ポルノであります、あるいは児童ポルノである可能性がありますということを本人がちゃんと認識している必要があるわけです。ですから、単にパソコンを開いただけで、メールが送りつけられてくる、どんなメールが送りつけられてきたかわからないというような状況のパソコン、これが未必の故意に当たるとはちょっと思えないなというふうに私は思います。

 それで、その部分が、必ずしも自白だけではなくて、実際にそれをクリックして見たかとか、そういった記録というのはあるわけですから、必ずしもそれは自白だけではなくて、とれるものだと思いますし、また、送信をいろいろなところから受けているわけですね。ですから、そういったような記録というようなものと客観的に合わせていくということがあれば、それは相当客観的な捜査はできるんじゃないかなというふうに思います。

 次に、自己の性的好奇心を満たす目的、これについてもお答えをしなければならないというふうに思います。

 自己の性的好奇心を満たす目的犯。目的犯が、全部これが自白によらなければいけないというのは、これは相当な誤解であろうかというふうに私は思います。ここは目的犯という形でしていますけれども、販売目的あるいは公然陳列目的、これについてはより重い罰則をかけるという形で、すべてこの所持の関係は、提供目的、販売目的、公然陳列目的といったような目的犯になってくるわけです。

 翻って、自己の性的好奇心を満たす目的というのは、自分が自白して、私の性的好奇心を満たす目的でしたというふうに自白をしなければそこのところは出てこないのかどうか。

 目的犯といいますのは、ちょっと故意とダブってきてしまいますけれども、先ほどちょっと例として申し上げましたが、殺人をする、殺意があるというようなことが、内心の意思ですけれども、果たして自白がなければそれが立証できないのかどうか。そんなことはございません。人を殺す器械であるけん銃、これを相手に向けて撃てば、まさか死ぬとは思いませんでした、そういった抗弁はなかなか通用しないわけです。

 ですから、例えば、自宅を捜索したところが、自宅の中にたくさんのポルノビデオがあって、そしてその中に児童ポルノもありましたというような場合は、相当、自己の性的好奇心を満たす目的ということが立証できる場合がやはり多いだろうというふうに思いますし、また、自分の自白だけじゃなくて、その方のいろいろな周りの方、そういったようなお話から、その人の生活行動、どういったような行動をしていたか、よくよく児童ポルノの店に出入りしていましたとか、あるいは、その方が児童ポルノを取得するためにいろいろな形で、手紙を書いたりあるいはメールを書いたりする、そういう中で、提供してくださいというような依頼をしたとか、そういったことも、やはりもろもろの要素というのを客観的に捜査した上で、相当客観的に立証はできると思います。自白だけということはないと私は思いますよ。

○枝野委員 まず最初の、覚せい剤みたいな話との違いは、物と情報との違いというのは決定的に違うと思っていまして、どんなに科学が進んでも、ドラえもんのどこでもドアができるわけは物理的にあり得ませんから、まさに今回、情報は勝手に飛び込んできて勝手にパソコンなどに落ちる話があるということですし、それから映像、例えば郵便で送られてくる場合であっても、例えば、それなりの容積のある物と、紙一枚でも児童ポルノに当たるということで、厚い雑誌の中に一ページそんなものが入っているかもしれないということとの違いは決定的にあると指摘をしておきたいと思うんです。

 私は、今伺っても、結局、単純所持罪をつくっても、故意とか性的好奇心を満たす目的ということを立証しようと思えば、その取得のプロセスをそれなりに立証せざるを得ないということになるのではないのか。

 例えばパソコン上に映像があった、パソコン上に映像があったことだけで所持の客観的要件は満たします。でも、そこに所持の故意や性的好奇心を満たす目的ということを立証しようと思ったら、なるほど、本人がこれを積極的に手に入れようとしていた、あるいは繰り返し手に入れていた、お金を払っていた、こういったことが立証されて初めて所持の故意が認められる、あるいは、そういったことが立証されて初めて性的好奇心を満たす目的が立証されるということであるならば、実は両案は余り変わりはない。そして、むしろ欠けるところがなくて、与党案の方がいいのかもしれません。だけれども、そのことはどこにも担保されていないんですよ。

 逆に言えば、自白さえあって、自分の占有下に当該物があったときに、裁判官は無罪にしますか。明確な自白があって、客観的な証拠、物として、その人のパソコン上に児童ポルノの映像が残っていました、所持あるいは保管に当たるんでしょうね、そういう証拠はちゃんと出ていますと。そして、取り調べの中で、例に余り出すなとおっしゃいましたが、それこそ足利事件のように、本人は全くやっていなくても、まさに一種迎合的に、全部つじつまの合うような自白をしていますと。その二つの証拠を出されて、そして、あの足利事件だって、一審の途中までは本人は認めていましたよね。裁判でも争わなかったらそういう人は有罪になりますよね、当然、客観的に、裁判所は。

 逆に言えば、そのときに必ず入手したプロセスを証拠として挙げろということであるならば、我々の案と変わらないじゃないですか。だとすれば、冤罪を防ぐ見地から考えれば、取得のプロセスについてちゃんと立証する、そのこと自体が構成要件であるという制度にした方が安全じゃないですか。

○葉梨議員 まず、自己の性的好奇心を満たす目的ということについての立証の仕方ということですが、先ほども申し上げましたけれども。

 ほかの法律にも同じような用語は多く使われていまして、その中で冤罪というような事例が起こっているということを私は承知はしておりません。

 そして、必ず取得の過程というのを立証しなければならない、これはちょっと違うんじゃないんですか。例えば、パソコンで、自分の外づけのHD、ハードディスクにある画像がありました、それを自分がダウンロードした、どこから取得したかわかりませんね。外づけのHDの中にある画像、もとはどこから取得したかというのは立証しないでも、自分のHDに、ハードディスクにそれをみずからダウンロードして、それを何回も何回も自分が開いて見ているということであれば、相当これは、自己の性的好奇心を満たす目的というのが立証の大きな材料になるんじゃないですか。そこにおいては、どこのサイトからとりましたということまで構成要件上必要はないというふうに思いますよ。ですから、必ず取得の過程というのを立証しなければならないということではないわけです。

 それと、先ほどからパソコン、インターネットの世界のことをずっと言われていますけれども、どこから入手したということは全く問題ないけれども、実際、有体物だったらどうでしょう。有体物として児童ポルノを持っている、それは、どこで買いましたということを立証しなければ、自己の性的好奇心を満たす目的というのは立証できないんですか。そんなことはありませんでしょう。自宅の中にたくさんの児童ポルノのビデオを持っていて、それをどこから買ったなんて関係ないですよ。そんなこと立証できなくたって、何回も何回も見て、にやにや笑っていれば、それは自己の性的好奇心を満たす目的で所持しているということになるでしょう。

 必ず取得の過程を捜査で立証しなければならないということは、それはちょっと違うと思います。

○枝野委員 本棚にたくさん児童ポルノの映像が、ビデオが並んでいたというケースは、それは可罰性があるケースがほとんどでしょう。だけれども、逆に、この法律、与党案が通れば、一つでも持っていたら処罰されるんですよ。一つでも机の引き出しに何か入っていたら、あるいは本棚の本のすき間に入っていたら、あるいは自分の持っている雑誌の中に一枚でも入っていたら、客観的要件を全部満たすんですよ。パソコンの中で何度も何度も見ていなくたって、一度見ただけでも客観的構成要件は満たすんですよ。そのときに、それに自白がくっついてしまったら有罪になるじゃないですか。なりますね。そのことだけ。

○葉梨議員 可罰性があるけれども、民主党案で、たくさんの児童ポルノを蔵書として所持している場合は罰せられないんですよ。そのことを踏まえて議論をしてくださいね。

 そして、一つの例として、それをとりました、自白がございましたと。でも、やはりその周りの状況というのは、つまり、それを開いてもいないというような状況であれば、果たして性的好奇心を満たす目的であったというふうなことが言えるのかどうか。あるいは、そのサイトの名前を、私は実はそのサイト、どこも全然知りません、知りません、知りません、けれども性的好奇心を満たす目的でしたというような自白、それにはやはり捜査の過程においても合理的な自白というのは必要だと思いますよ。

 ですから、一概にすべて、さっき、すべてということは言えないということを枝野委員もおっしゃられましたけれども、自白プラスそれがつけば必ずイコールということじゃなくて、やはりそれは外形的にいろいろな状況の中から、自白というのはもちろん証拠の王者ですから、大きな要素として判断されるだろうというふうに思います。

○枝野委員 やっていないのに、合理性の、つじつまの合う自白をとっているじゃないですか、現実に足利事件で。そういうケースが起こり得るんでしょう。開いたのだって、一回しか開いていなくたって、開いたら見ていますよ。見て、何だこんなおぞましい映像はといって、パソコン上のごみ箱に捨てているかもしれませんよ。それでも、それに自白がくっついたら有罪になるんですよ、与党案では。

 それが本当に自分の意図で取得をしている人だったら、それは処罰に値すると思いますよ。変なボタンを間違って押しちゃって、送られてきて、あけてみたら、何だこれはといってごみ箱にほうり投げる。でも、ごみ箱にほうり投げても、これは保管に当たりますね、映像が残っているんですから。あるいは、パソコン上のごみ箱に捨てたらいいんだということになれば、逆になれば、悪質な人が、自分が見たい映像を全部ごみ箱に残しておけばいいんですから、ごみ箱に入れたかどうかは全然関係ないですね。処罰される可能性があるんですよ、そういったことを。そして、残念ながら、今の日本の刑事司法の現状からすれば、そういった自白がとられる可能性というのは相当ある。

 しかも、なぜか自分の知らないうちに自分の管理下に入ってしまったというのを、郵便であれ、メールであれ、第三者が陥れるために勝手に送りつけることは可能なんですよ。それこそ、政権を持っている権力が野党の議員のところにそういうものを送りつけておいて、それで令状をとって入っていって、実物があるといったら逮捕できますね、まず物があるんだから。それで、自白をとったら起訴できるんですよ。私のそこのかばんの中に知らないうちに入れられていました、それで、あ、一枚入っていましたと、逮捕されるんですよ。別に政治家じゃなくたって、みんなそうですよ。

 それが果たして、それは、そんなむちゃなことを警察はやりませんとおっしゃるのかもしれない。でも、やっているんですよ、足利事件で。現にやっているという現実を考えたときに、そういうことが起こらないような制度をつくるのは立法府の責任だというふうに私は思いますが、確認はいたしません。

 もう一点、法務省、わざわざ大臣に来ていただいたので、現行の児童ポルノ提供罪における十八歳未満であることの認識の必要性は、現行法であるんでしょうか。

○森国務大臣 現行法二条一項は、児童の定義について十八歳に満たない者と規定し、二条三項の児童ポルノの定義も、児童の一定の姿態を描写したものであるとされています。したがって、現行法七条の児童ポルノ提供等の罪が成立するには、児童であることの認識、すなわち十八歳に満たない者であることの認識が必要であると解されます。

○枝野委員 この行為も未必の故意でもいいんですよね。これはどちらでもいいんですけれども、提案者でも内閣でも。

○森国務大臣 お尋ねの未必の故意とは、一般に、犯罪事実が存在するかもしれないことを認識しつつ、これをあえて認容していることを意味するものと思います。

 児童であることの認識という点でいえば、十八歳に満たない者であるかもしれないことを知りつつ、あえてそのことを認容しているという場合には、未必の故意が認められることになるものと考えられます。

○枝野委員 先ほど質問にもお答えしました、例えば宮沢りえさんの「サンタフェ」を初めとして、本法施行のずっと前から、十八歳以上なのか、十八歳未満なのか、調べれば「サンタフェ」はわかるのかもしれません、撮影当時十七歳だったのか、十八歳になっていたのか。あるいは、初期の関根恵子の映画とか、いろいろなものがありますよ。十八歳未満の特に女性が裸になっている、しかも、大手の一般の出版社や大手の一般の映画会社から配給されたDVDなどが出ているというものはあります。

 こういったものを、自分の家の中にあるかどうか探して、全部捨てろということを与党案は言うんですね。

○葉梨議員 先ほどから、答弁を求めていないので簡単に申し上げますけれども、自分のかばんの中に入れられたら陥れられる可能性があるといったら、それはけん銃だって入れられるかもわかりませんし、薬物だって入れられるかもわからないんですよ。非常に捜査機関に対しての不信感があるというのはよくわかるんです。よくわかりますけれども、だからといって、やはり実体法の世界でこの規制というのを緩めるとかいうことがあってはならないと思いますよ。

 それから、この法律ですけれども、もう昨年の六月に提出して一年。これは法務委員会の運営ですから、ここで言う話ではないので、もうこれ以上言いません。まあ、一年たつ、やはり早くちゃんとこういう審議をやろうやというようなこと、これが大事なことだと思います。

 そして、今の御質問ですけれども、大手の出版社が出したからといってオーソライズされるわけじゃないんですよ。大手の新聞社だって時々間違いを書くんです。ですから、その意味でいったら、社会の中で、十八歳未満の児童のポルノ、これについてはしっかり廃棄をしていきましょうというようなことがあれば、それは、この一年間の猶予期間があるわけですから、そういったものをやはりちゃんと廃棄していくということは、私は当然のことじゃないかと。

 要は、児童ポルノというものを持っているという状態、これは先ほどの捜査に対する不信とかいうのは別として、子供に対する保護のために、児童ポルノというのを持っている状態はいけないことだというふうに日本国民が考えるのであれば、それが有名な女優であろうが大手の出版社であろうが、それは関係ない話だというふうに思います。

○枝野委員 まず一点目、御指摘をされたことについて申し上げれば、けん銃とか覚せい剤というものと、例えば映像一枚というものとでは、それこそ、それが例えばかばんの中に勝手に入っていたというときに、児童ポルノだったら、自分でどこかで知らないうちに、少なくとも、現状ではネット上とかなんとかで手に入れることが可能なんですよ。だから、持っていることだけで、単純所持を違法にしようと思ったら、何かどこかから手に入れたりしてできるんですよ。

 けん銃や覚せい剤はそんなことできませんでしょう。それこそ暴力団関係とかそういうところとか、何かからどこかから手に入れなきゃ、普通の人はかばんの中に入らないものですよ。そういうものは全然違うわけだから、陥れようと思ったって、けん銃や覚せい剤で陥れるのは簡単じゃないんですよ。だけれども、映像一枚だったら、ネット上かどこかから手に入れたんだろうということで、全然容易さが違うということをまずしっかりと認識をしていただきたいというふうに思います。

 その上で、私も、大手が出したからいいということを言っているんじゃないんです。かつて合法的に製造、販売をされて所持をしているものが世の中たくさんあるんです、いい悪いは別としても。その中には、例えば芸術性もあったりするというものがあると思うんですね。だけれども、これは、お互いどちらの党の案も、芸術性が高かろうと何だろうと十八歳未満の女の子の裸はだめだと。私はこれは正しいことだというふうに思いますが、過去において、芸術性もあったりとかして社会的に容認もされて、合法的に手元にあるものを、全部皆さん探して捨ててくださいということが、例えば「サンタフェ」を初めとして、可能なのか。

 「サンタフェ」は、十八歳なのか十七歳なのか、私も調べてみましたが、わかりませんよ。わからないですよね、十八歳ぐらいの女の子が実際の年齢が何歳だったのか。特に十年前、二十年前、三十年前に製造、販売されて手元にあるもの、そんなものをみんな調べるんですか。

 しかも、未必の故意でオーケーなんですから。どうも昔はそういうものがあったらしい、うちにももしかするとあったかもしれないな、まあ、それでもしようがないや、探すの面倒くさいから。私自身だってありますよ。平成十一年にこの法律をつくるときに、こんなにひどいものがコンビニなどでも売られているんですよといって、たしか野田聖子さんにだと思いますけれども、見せられて、サンプルとしてもらいましたよ、その児童ポルノの雑誌を。もちろん資料として、もしかすると審議が終わったころに捨てたかもしれない、だけれども、また児童ポルノを改正するときの参考になるかもしれないからとっておいたかもしれないな。自信ありませんよ。

 自信がないということは、未必の故意だったら、私は、あらゆる事務所を全部家捜しして、まさか残っていないか確認しなきゃいけないんですか。そんなことが日本じゅうの人に起こるんですよ。それは現実的じゃないですよ、残念ながら。

○葉梨議員 枝野委員、もしかしたら事務所に持っていらっしゃるかもわかりませんね。でも、あなたの性的好奇心を満たす目的じゃありません。私も、児童ポルノをたしか中央教育審議会か何かで回覧したことがあります。これは正当目的です。みだりにもならないんじゃないかなというふうに思うぐらいですけれども、少なくとも、自己の性的好奇心を満たす目的、これにはならないです。

 それで、大家捜しをしなきゃいけないとかいう話もありましたが、例えば「サンタフェ」であれば、あれだけ有名なものであれば、未必の故意という話もありますが、大体、具体的に、それが一体十七歳なのか十八歳なのか、そこら辺のところはいろいろなところでまた問い合わせをしていただければいいし、それぐらいのサービスは政府の方もやってくれるんじゃないかというふうに思います。そして、児童ポルノであるかどうかということについて、児童ポルノかもわからないなというような意識のあるものについてはやはり廃棄をしていただくということが当たり前だと私は思う。

 ただし、それは、昔、うちの蔵の中に、蔵なんて私のうちはありませんけれども、旧家であれば蔵もあるんでしょう、蔵の中に、何百年か前の児童ポルノがあるかもわかりませんよ。そこまで家捜ししようという話じゃないので、これはあくまで、罰則がありますのは、自己の性的好奇心を満たす目的で所持、保管するという故意犯、これを罰しているわけです。そして、みだりに児童ポルノを所持し保管しちゃいかぬ、みだりにですから。それで、たまたま地震で蔵が壊れた、そういうものがあったといったときは、それはちゃんと廃棄してくれればいい、そういうことじゃないかと思います。

○枝野委員 何百年前だったら、写真がないので、まずそういうことは現実としてあり得ないということを指摘しておきたいんです。

 それから、確かに、私のどこかの事務所の片隅に野田聖子さんからかつてもらったものが残っていても、それは抗弁がきくかもしれませんね。それは、ずっとこの問題に私が取り組んできていることをみんなが知っていますから。でも、そういうことがみんなに起こり得るんですよ、この法律は。

 今の法律では児童ポルノに当たる、児童ポルノに当たるのだって、まさに、それこそ二歳、三歳の女の子に性交をしているような、こういうものから、「サンタフェ」は十七歳だったら児童ポルノに当たるというところまで、いろいろな種類のものがあるわけですよ。それについて、どれか持っていた可能性があるよなと、いや、ちゃんと考えればみんな普通そうだと思いますよ。本法施行前は、現実問題として、十八歳前後の女の子の裸の写真は普通の雑誌にもたくさん載っていましたから。だからいいということじゃないですよ。いわゆる特殊な幼児性愛者向けの雑誌じゃない普通のところにも載っていましたよね、十七歳とかの女の子の裸の写真が。ああ、そういったものがあったはずだよなと、未必の故意はみんなあるじゃないですか。そんな何十年か前の週刊誌をたまたまとってあることはありますね、みんな。そのことが目的じゃないかもしれない。

 そうすると、それが立証されてしまったら、あとは主観的な目的なんですよ。主観的な目的も、確かにこの人は幼児性愛があって性的好奇心を満たす目的であるということがはっきりしている人を他の客観的な事情で立証すること、これはできます。おっしゃるとおりです。本人の自白がなかったとしても、自白に頼らなくても、なるほど、この人はこれこれこういう趣味で、こういったことを今までやってきている、あるいは周辺の人の証言でということは可能かもしれません。

 でも、逆に、そういう幼児性愛などの性向がなくて、御本人に性的好奇心がなかったとしても、現に持っている人が、いや、おれは幼児性向ではない、私は性的好奇心を満たす目的ではないということをどうやって抗弁できるんですか。結局は、性的好奇心を満たす目的であるという自白がとられてしまったら、それ以外にそれを否定する客観証拠を出して否定することはできないじゃないですか、まさに内心の問題ですから。それも処罰の対象になるんだというこの法律の問題点を我々は指摘しているんですよ。

 いや、それは仕方がないと。そういう人がたまたま一枚持っていた、たまたま一枚。大体、どうやってその単純所持を立件するのかというのはよくわからないんですけれどもね。つまり、単に自分で持っているだけという状況であるならば、そこに捜索が入るということは基本的には考えられない。たまたまかばんに入れて持っていたら、任意で荷物検査をしてその中に入っていましたとか、そういうことかもしれませんね。そこで一枚出てきましたと。そして、捜査官の方が大変熱心な捜査官で、おまえ、こんなものを持っていたんだから性的好奇心を満たす目的だろう、そういうことで、足利事件のようにつじつまの合う証言を得られてしまいました、こういう人は冤罪でも処罰されても仕方がないというんだったら、この与党案は正しい法案だと思います。

 でも、そういったことは絶対に起こしてはいけない。絶対起こしてはいけない中で、なおかつきちっと処罰をしなきゃならない人たちについては処罰をする、それが私たちに求められているので、少なくとも、現状の与党案は、その部分のところで決定的な問題があると思いませんか。

○葉梨議員 冤罪は絶対にあってはなりません。これは絶対なくしていくように、お互いちゃんと努力をしていきましょう。

 しかし、今のお話を聞いてみると、ちょっと本末転倒じゃないかなというようなところもあります。

 一つの児童ポルノを持っている、これについて冤罪があるというのであれば、それはなくす努力をしっかりすべきであります。しかしながら、だからといって、そういうことがあるんだ、もしかしたらみんな陥れられてしまうかもわからないんだというような、私はそんなことはないと思います、ないと思いますけれども、そういう考え方で、たくさんの児童ポルノを蔵書として抱えている、それは許される、そっちに行ってしまうというのは考え方として違うんじゃないか。そういうことをもし言われるんだったら、何で民主党案は大量の児童ポルノを所持している場合を禁止しなかったんだというふうに私は思いますよ。一枚だけだったら大丈夫ですというように書くべきじゃないですか。

 それと、もう一つ申し上げますと、具体的に、自白だけでといったって、さっきの例でいえば、昔、確かに週刊誌の中には児童ポルノというのはあったかもわかりません、それは私もよく知っています。でも、家を見たら、それが本当に何十年前のほかの雑誌と一緒に束になって、それで全然見た形跡もないし、ほこりをかぶっているといって、それでこいつは性的好奇心をとる目的だと自白を強要する捜査官なんて私はいないと信じていますよ。

 そうじゃなくて、やはり、児童ポルノであれば、有体物であればそれを何回見たとかいう態様ですとか、それから、パソコンの情報であれば、それをダウンロードしているとか何回開いたとか、そういったことから、やはりこれは自分が見ているんだな、性的好奇心を満たす目的で見ているんだな、それで所持しているんだなということをおのずと明らかにするようなしっかりした捜査を行われることが私は求められていると思うし、もしも、捜査に対する配慮というのを、我々がしっかりしなきゃいけないということをさらに求めるんだったら、この国会でちゃんと捜査機関に対してしっかり求めていきましょうよ。

○枝野委員 捜査機関が冤罪を防ぐためにしっかりとやるだなんてことは、別に今さら繰り返さなくたって、我々の条文に載っけましたけれども、そんなこと書かれなくたって当たり前なんですよ。当たり前なんだけれども、現に繰り返されているじゃないですか。

 立法は、民主主義社会は、基本的に公権力に対する性悪説で、間違いを犯すかもしれない、でも、間違いを犯しても、その間違いによって基本的人権を害すことのないようにしなきゃいけない、それが民主主義社会における、特に刑罰法規のつくり方じゃないですか。基本ですよ。性善説で、ちゃんとやってくれるでしょうと。ちゃんとやってくれなかったケースがあるから、民主主義国家にして、立憲国家にして、法律をつくって罪刑法定主義にしているんですよ。ちゃんとやってくれない可能性がある、ちゃんとやってくれないことがあったとしても間違いが起こらないようにする立法をするのが我々の責任だと思います。

 それから、もう一点だけ。

 大量にと。大量に所持している場合については、一枚だけについて、それの取得の経緯ということを立証するのはなかなか難しいかもしれません。しかし、大量に持っていれば、そのうちの何本かについては、あるいは蓋然的に、具体的な話じゃなかったとしても、反復継続して、あるいは有償でという我々の要件を満たす形で、その人たちは我々の法律にひっかかる可能性は十分にあると私たちは思っていますし、なおかつ、さらに言えば、今の点について私たちは、別に修正をすることについては、単純所持はだめだけれども、取得のあり方とかそういったことについては、我々自身も、単純所持的なものは全部だめだからといって否定をしているんじゃなくて、今回だって、何とか問題が起こらない範囲の中で、いわゆる単純所持として問題にされている部分を処罰するために我々なりに知恵を出してここまで持ってきているんですから、今のようなケースについて切り出してやることが可能であるなら、我々は否定するものではありません。

 しかしながら、一枚でも処罰されるという法形式であって、主観的要因については自白だけでも立証することは可能であるという、この法律を認めることは到底できません。

 終わります。

○山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。


続く

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