さとるとジョン
「勝負だ、さとる!!」
俺は、マウンドに立つ坊主頭の男に向かって叫んだ。
奴の名前はジョン。
『さとる』と呼びかけておいて言うのもなんだが、本来はジョンだったのだ。
アメリカンスクールへとやってきた留学生だが、日本で受けた差別の数々により精神が不安定になり、新たな人格「さとる」を作り出してしまった……。
逆にアメリカ人を差別する日本人となることで、精神を防衛する。、
差別が生んだ、哀しき矛盾に満ちた存在。
彼は自分自身に罵声を浴びせかける。
だがそんなジョンも、俺の説得という名の買収、いや、買収という名の説得によって、劇的な人格再統一を果たしたのだ。
なぜか統合後は完全に『さとる』になって敵チーム側に回ってしまったのが気がかりだが、そんなことはもうどうでもいい。
もう奴にアメリカ人を差別する気がないのなら、それでいい。
あとは純粋に、野球を楽しむだけ……!
「ほぁぁあぁぁ〜」
ジョン、いや、さとるは気の抜けた声と共にボールを放った。
まずい、どうやら人格統一のショックが抜け切れていないらしい。心神喪失状態だ。
そんな状態で放った球でも、さすがは本場のチームでエースだっただけのことはある。かなりの剛速球だ。
このままでは俺に当たる。だが、これを逆に利用してやろう。
俺はとっさに、自慢の身体能力を使った。
「身体能力、ナンバー1!」
身体能力ナンバー1は、"がまん"だ。
緑の髪の女の椅子攻撃を受けても、血が滴る程度の傷に抑えてしまう。いわば防御力アップの身体能力。
他にも、俺は数々の身体能力を隠し持っているのだ。
ちなみに身体能力ナンバー43は"みきり"。相手の心の動揺を見抜くことができる。
球は俺の股間にもろに当たった。
だが、身体能力ナンバー1を使った俺は、せいぜい肩をたたかれた程度の衝撃しか感じない。
「純一、ダイジョブデスーカ!?」
ジェニファーが俺に駆け寄ってきた。
このままベタなギャルゲー的展開をするならば、患部、つまり股間をジェニファーに診てもらうことになる。
それは魅惑的なシチュエーションでなくもないような気がしないでもないが……?
「俺は、ロリコンじゃねえ……」
俺は全身の力を振り絞ってそう言い放ち、ジェニファーを残して1塁へと向かった。
今のは死球だ。こちらのチームのチャンスとなる。
次のバッターは……
そして気づいた。
次のバッターがジェニファーであることに。
今のさとるの球はコントロールが利かない。
もし、ジェニファーに球が当たりでもしたら……!
さとるとジェニファーを勝負させるわけにはいかない。
そう決心した俺は、今この場で決着をつけることにした。
かつて、その破壊力に自ら恐れをなし、封印した究極の身体能力を開放するときが来たのだ。
俺は気合を込めて、さとるに向けてそれを放った。
「身体能力ナンバー15、"はかいこうせん"!!」
こうして俺達は試合に勝ったのだった。
俺は、マウンドに立つ坊主頭の男に向かって叫んだ。
奴の名前はジョン。
『さとる』と呼びかけておいて言うのもなんだが、本来はジョンだったのだ。
アメリカンスクールへとやってきた留学生だが、日本で受けた差別の数々により精神が不安定になり、新たな人格「さとる」を作り出してしまった……。
逆にアメリカ人を差別する日本人となることで、精神を防衛する。、
差別が生んだ、哀しき矛盾に満ちた存在。
彼は自分自身に罵声を浴びせかける。
だがそんなジョンも、俺の説得という名の買収、いや、買収という名の説得によって、劇的な人格再統一を果たしたのだ。
なぜか統合後は完全に『さとる』になって敵チーム側に回ってしまったのが気がかりだが、そんなことはもうどうでもいい。
もう奴にアメリカ人を差別する気がないのなら、それでいい。
あとは純粋に、野球を楽しむだけ……!
「ほぁぁあぁぁ〜」
ジョン、いや、さとるは気の抜けた声と共にボールを放った。
まずい、どうやら人格統一のショックが抜け切れていないらしい。心神喪失状態だ。
そんな状態で放った球でも、さすがは本場のチームでエースだっただけのことはある。かなりの剛速球だ。
このままでは俺に当たる。だが、これを逆に利用してやろう。
俺はとっさに、自慢の身体能力を使った。
「身体能力、ナンバー1!」
身体能力ナンバー1は、"がまん"だ。
緑の髪の女の椅子攻撃を受けても、血が滴る程度の傷に抑えてしまう。いわば防御力アップの身体能力。
他にも、俺は数々の身体能力を隠し持っているのだ。
ちなみに身体能力ナンバー43は"みきり"。相手の心の動揺を見抜くことができる。
球は俺の股間にもろに当たった。
だが、身体能力ナンバー1を使った俺は、せいぜい肩をたたかれた程度の衝撃しか感じない。
「純一、ダイジョブデスーカ!?」
ジェニファーが俺に駆け寄ってきた。
このままベタなギャルゲー的展開をするならば、患部、つまり股間をジェニファーに診てもらうことになる。
それは魅惑的なシチュエーションでなくもないような気がしないでもないが……?
「俺は、ロリコンじゃねえ……」
俺は全身の力を振り絞ってそう言い放ち、ジェニファーを残して1塁へと向かった。
今のは死球だ。こちらのチームのチャンスとなる。
次のバッターは……
そして気づいた。
次のバッターがジェニファーであることに。
今のさとるの球はコントロールが利かない。
もし、ジェニファーに球が当たりでもしたら……!
さとるとジェニファーを勝負させるわけにはいかない。
そう決心した俺は、今この場で決着をつけることにした。
かつて、その破壊力に自ら恐れをなし、封印した究極の身体能力を開放するときが来たのだ。
俺は気合を込めて、さとるに向けてそれを放った。
「身体能力ナンバー15、"はかいこうせん"!!」
こうして俺達は試合に勝ったのだった。
2007年11月01日(木) 02:21:44 Modified by paraskeue