アイピース
天体望遠鏡の主要部品のひとつ。接眼レンズとも言う。これがなければ天体を見るとこはできない。アイピースは天体からの光の出口のため、光の入り口である対物レンズ(鏡)と並ぶ重要な部品である。
【焦点距離】
アイピースには必ずその焦点距離が明記されている。単位はmm。望遠鏡の倍率は対物レンズ(鏡)の焦点距離を、アイピースの焦点距離で除することで決定するが、対物側の焦点距離は固定されているため、アイピースを差し替えることによって倍率を変える。この焦点距離が長いほど低倍率になり、短いほど高倍率になる。
現在一般に市販されているアイピースでは、2.5mmから50mmまでの焦点距離が揃えられている。天文台用の特殊なものでは100mmのものも製造されている。
【差し込み径】
アイピースは接眼部に差し込んで使用するが、その径にはいくつかの規格がある。
【見かけ視界】
アイピースを覗いたときに、像が見える範囲のこと。単位は度で表す。通常使用されてるアイピースでおおむね40°から50°程度である。一般に広角アイピースと呼ばれるアイピースでは65°以上の見かけ視界を持っている。
広角アイピースは手動追尾で観測するときや、低倍率で星雲星団を見る場合などに用いられる。広角アイピースは視野周辺の像が歪んだり、多くのレンズを使っているために像のシャープさやヌケが比較的良くなかったりと、必ずしも万能のアイピースではない。
【アイレリーフ】
アイピースを覗くときのレンズから目までの距離。単位はmmで表すのが一般的。短すぎるとレンズに眼球をくっつけるようにしなければならなくなり、不便である。眼鏡をかけている人はある程度の長さがないと眼鏡とアイピースが干渉してしまい、うまく見ることができない。アイピースの焦点距離や形式によって変わる。一部にバローレンズを内臓することで、短焦点のものでもある程度の長さを確保している製品もあり、眼鏡使用者には重宝されている。ただし、バローレンズを使うことができないなどの制約もあり、万能のアイピースではない。
【アイピースの種類】
アイピースは内部のレンズの組み合わせによっていくつかの形式がある。以下に主なアイピースの形式を載せた。
焦点距離：50mm〜6mm 見かけ視界：35度〜40度
比較的単純なレンズ構成であるが、アクロマートの色収差を打ち消す働きがある。また、太陽観測に使えるほぼ唯一の形式である。その一方で、アイレリーフがとても短いために覗きずらい。また、見かけ視界も狭いために現在では24.5mmサイズのものが、一部の格安望遠鏡に添付されているのみである。なお、過去にボーグから2インチサイズで焦点距離50mmという冗談のようなハイゲンス式アイピースが実売価格980円で発売されていた。
焦点距離：40mm〜6mm 見かけ視界：40度程度
ある程度の長さのアイレリーフがあり、見かけ視界も40度以上確保できる。主に長焦点のもので使われ、短焦点のものは少ない。明るい対象を見ると盛大にゴーストがでるという欠点がある。
焦点距離：4mm〜50mm 見かけ視界50度程度
製造が容易で安価であるが、低倍率でも高倍率でも非常に良く見えるため、初心者からベテランまで広く使われている。「整った像」という意味の「オルソスコピック」という形式名を与えられて売られているものもある。見かけ視界は50度程度で、アイレリーフも焦点距離の70%程度と覗きやすい。
焦点距離：4mm〜40mm 見かけ視界40度程度
製造が難しいために価格は高いが、PLよりもヌケが良く見えるのでベテランを中心に高い人気がある。見かけ視界は40度程度、アイレリーフは焦点距離の70%ほどで。これもPL同様オルソスコピックと呼ばれる。Orの記号はオルソスコピックの意味なので、 Orの表示があっても中身はPLというアイピースも売られている。
市販のアイピースには上記のような形式のほかに、独自の形式をしたものもある。以下にその主なものを載せた
Vixenが発売しているアイピース。全ての製品でアイレリーフ20mmを確保しており、眼鏡使用者でも楽に覗けるアイピース。拡大率の異なるバローレンズとアイレリーフ20mmのアイピースを組み合わせて、これを実現している。そのためバローレンズを付けると結果的にバローレンズの二枚重ねとなってしまい、結果的に像が悪化する。したがってバローレンズとの相性は悪い。
テレビューが発売している超広角アイピース。80度を越す見かけ視界は発売当時、天文マニアを驚かせた。現在でも改良を重ねて発売が継続されている、超広角アイピースの代名詞的存在。欠点としては非常に高価格であることで、焦点距離31mmのものは10万円近い価格が付けられている。また、短焦点のものでは、アイレリーフが短いため、眼鏡使用者にとっては使いずらい。
比較的古い設計のアイピースで、宝石鑑定用のルーペなどにも用いられている形式。非常にヌケが良く、鋭い像を結ぶ反面、見かけ視界が30度あるかないかという非常に狭いものであるため、手動追尾が主流の時代には受け入れられていなかった。ところが電動追尾が一般的になってくると、その像質の素晴らしさから、惑星観測をする人の間で評判になり、入手も容易になった。また、アイレリーフは焦点距離の2倍あり、眼鏡着用者でも楽に覗ける。
日本の超広角アイピース。今は無くなってしまったユニトロンから発売していた。現在では国際光器が発売している。ナグラーとほとんど変わらない見かけ視界にもかかわらず、ナグラーよりもずいぶん安い価格で売り出されたので、有名になった。視野周辺がナグラーと比べてやや劣るが、その低価格から愛用者は多い。
PENTAXから発売されているアイピース。アイレリーフ20mm・見かけ視界70度・防水で統一してある高機能なもので、価格はナグラー並の高価格であるが、視野周辺まで歪みのない、高いクオリティーの像質は価格に見合うだけのものはある。買って後悔しないアイピースのひとつ。
PENTAXから発売されているアイピース。プローセル式を基に透過率を高めコントラストを非常に高くした高倍率用のアイピース。
【手入れ】
アイピースは、まつ毛と接触するために汚れが付きやすい。そのため、定期的にレンズを清掃する必要がある。清掃を怠ると、視野が白っぽくぼやけて見えてしまい、大変よろしくない。アイピースの清掃の仕方は以下の通りである。
(1)[ブロワー]でレンズ表面の埃を吹き飛ばす。
(2)レンズ用の[クリーニングペーパー]を綿棒に巻きつけ、市販の[レンズクリーナー]を数滴たらす。
(3)レンズの中心部から外周部へ向かって、円を描くように軽く拭き取る。
注意点として、上記の手順で清掃できるのは直接目に触れるほうのレンズだけである。差込側のレンズはブロワーで埃を拭き飛ばす程度にしておく。というのも、目に触れるほうのレンズは使用者による清掃を意図して、比較的強いコーティングが施されているため、上記の清掃方法でもコーティングに傷は付きにくい。一方、差込側のレンズのコーティングは弱いため、拭くなどすると傷がつきやすいからである。
【焦点距離】
アイピースには必ずその焦点距離が明記されている。単位はmm。望遠鏡の倍率は対物レンズ(鏡)の焦点距離を、アイピースの焦点距離で除することで決定するが、対物側の焦点距離は固定されているため、アイピースを差し替えることによって倍率を変える。この焦点距離が長いほど低倍率になり、短いほど高倍率になる。
現在一般に市販されているアイピースでは、2.5mmから50mmまでの焦点距離が揃えられている。天文台用の特殊なものでは100mmのものも製造されている。
【差し込み径】
アイピースは接眼部に差し込んで使用するが、その径にはいくつかの規格がある。
- 24.5mm径 別名ドイツサイズまたはツァイスサイズとも呼ばれている径。一昔前のアイピースに採用されていた規格で、現在ではごく一部の望遠鏡にのみ採用されている。
- 31.7mm径 別名アメリカンサイズ。現在多くのアイピースがこの径を採用している。24.5mm径のものよりも広い視野を得ることができる。
- 36.4mm径 ねじ込みの規格。一昔前の望遠鏡で採用されていた規格で、主に24.5mm径では視野が狭くなってしまう長焦点のアイピースは、このねじ込み規格を採用していた。現在ではほとんど見られない。
- 50.8mm径 別名2インチサイズ。非常に広い視野が得られるため、現在発売されている広角アイピースの多くがこの規格を採用している。この規格のアイピースは重量もあり、価格も高い。
【見かけ視界】
アイピースを覗いたときに、像が見える範囲のこと。単位は度で表す。通常使用されてるアイピースでおおむね40°から50°程度である。一般に広角アイピースと呼ばれるアイピースでは65°以上の見かけ視界を持っている。
広角アイピースは手動追尾で観測するときや、低倍率で星雲星団を見る場合などに用いられる。広角アイピースは視野周辺の像が歪んだり、多くのレンズを使っているために像のシャープさやヌケが比較的良くなかったりと、必ずしも万能のアイピースではない。
【アイレリーフ】
アイピースを覗くときのレンズから目までの距離。単位はmmで表すのが一般的。短すぎるとレンズに眼球をくっつけるようにしなければならなくなり、不便である。眼鏡をかけている人はある程度の長さがないと眼鏡とアイピースが干渉してしまい、うまく見ることができない。アイピースの焦点距離や形式によって変わる。一部にバローレンズを内臓することで、短焦点のものでもある程度の長さを確保している製品もあり、眼鏡使用者には重宝されている。ただし、バローレンズを使うことができないなどの制約もあり、万能のアイピースではない。
【アイピースの種類】
アイピースは内部のレンズの組み合わせによっていくつかの形式がある。以下に主なアイピースの形式を載せた。
- ハイゲンス式、ミッテンゼーハイゲンス式
焦点距離：50mm〜6mm 見かけ視界：35度〜40度
比較的単純なレンズ構成であるが、アクロマートの色収差を打ち消す働きがある。また、太陽観測に使えるほぼ唯一の形式である。その一方で、アイレリーフがとても短いために覗きずらい。また、見かけ視界も狭いために現在では24.5mmサイズのものが、一部の格安望遠鏡に添付されているのみである。なお、過去にボーグから2インチサイズで焦点距離50mmという冗談のようなハイゲンス式アイピースが実売価格980円で発売されていた。
- ケルナー式
焦点距離：40mm〜6mm 見かけ視界：40度程度
ある程度の長さのアイレリーフがあり、見かけ視界も40度以上確保できる。主に長焦点のもので使われ、短焦点のものは少ない。明るい対象を見ると盛大にゴーストがでるという欠点がある。
- プローセル式(オルソスコピック式)
焦点距離：4mm〜50mm 見かけ視界50度程度
製造が容易で安価であるが、低倍率でも高倍率でも非常に良く見えるため、初心者からベテランまで広く使われている。「整った像」という意味の「オルソスコピック」という形式名を与えられて売られているものもある。見かけ視界は50度程度で、アイレリーフも焦点距離の70%程度と覗きやすい。
- アッベ式(オルソスコピック式)
焦点距離：4mm〜40mm 見かけ視界40度程度
製造が難しいために価格は高いが、PLよりもヌケが良く見えるのでベテランを中心に高い人気がある。見かけ視界は40度程度、アイレリーフは焦点距離の70%ほどで。これもPL同様オルソスコピックと呼ばれる。Orの記号はオルソスコピックの意味なので、 Orの表示があっても中身はPLというアイピースも売られている。
市販のアイピースには上記のような形式のほかに、独自の形式をしたものもある。以下にその主なものを載せた
- LV
Vixenが発売しているアイピース。全ての製品でアイレリーフ20mmを確保しており、眼鏡使用者でも楽に覗けるアイピース。拡大率の異なるバローレンズとアイレリーフ20mmのアイピースを組み合わせて、これを実現している。そのためバローレンズを付けると結果的にバローレンズの二枚重ねとなってしまい、結果的に像が悪化する。したがってバローレンズとの相性は悪い。
- ナグラー
テレビューが発売している超広角アイピース。80度を越す見かけ視界は発売当時、天文マニアを驚かせた。現在でも改良を重ねて発売が継続されている、超広角アイピースの代名詞的存在。欠点としては非常に高価格であることで、焦点距離31mmのものは10万円近い価格が付けられている。また、短焦点のものでは、アイレリーフが短いため、眼鏡使用者にとっては使いずらい。
- モノセントリック
比較的古い設計のアイピースで、宝石鑑定用のルーペなどにも用いられている形式。非常にヌケが良く、鋭い像を結ぶ反面、見かけ視界が30度あるかないかという非常に狭いものであるため、手動追尾が主流の時代には受け入れられていなかった。ところが電動追尾が一般的になってくると、その像質の素晴らしさから、惑星観測をする人の間で評判になり、入手も容易になった。また、アイレリーフは焦点距離の2倍あり、眼鏡着用者でも楽に覗ける。
- Wide-Scan
日本の超広角アイピース。今は無くなってしまったユニトロンから発売していた。現在では国際光器が発売している。ナグラーとほとんど変わらない見かけ視界にもかかわらず、ナグラーよりもずいぶん安い価格で売り出されたので、有名になった。視野周辺がナグラーと比べてやや劣るが、その低価格から愛用者は多い。
- XW
PENTAXから発売されているアイピース。アイレリーフ20mm・見かけ視界70度・防水で統一してある高機能なもので、価格はナグラー並の高価格であるが、視野周辺まで歪みのない、高いクオリティーの像質は価格に見合うだけのものはある。買って後悔しないアイピースのひとつ。
- XO
PENTAXから発売されているアイピース。プローセル式を基に透過率を高めコントラストを非常に高くした高倍率用のアイピース。
【手入れ】
アイピースは、まつ毛と接触するために汚れが付きやすい。そのため、定期的にレンズを清掃する必要がある。清掃を怠ると、視野が白っぽくぼやけて見えてしまい、大変よろしくない。アイピースの清掃の仕方は以下の通りである。
(1)[ブロワー]でレンズ表面の埃を吹き飛ばす。
(2)レンズ用の[クリーニングペーパー]を綿棒に巻きつけ、市販の[レンズクリーナー]を数滴たらす。
(3)レンズの中心部から外周部へ向かって、円を描くように軽く拭き取る。
注意点として、上記の手順で清掃できるのは直接目に触れるほうのレンズだけである。差込側のレンズはブロワーで埃を拭き飛ばす程度にしておく。というのも、目に触れるほうのレンズは使用者による清掃を意図して、比較的強いコーティングが施されているため、上記の清掃方法でもコーティングに傷は付きにくい。一方、差込側のレンズのコーティングは弱いため、拭くなどすると傷がつきやすいからである。
2006年02月20日(月) 09:27:12 Modified by planet3rd