公共交通から公共の交通へ
ＲＡＣＤＡは今年ＮＰＯ法人となるべく手続きに入るが、そのＮＰＯ法人では「路面電車と都市の未来を考える会ＲＡＣＤＡ」から「公共の交通ラクダ」と名称を変更することにした。
思えば岡山市の路面電車環状化を目指して１９９５年に設立されたＲＡＣＤＡだが、ＬＲＴの新設運動から始まったものの、全国に仲間を増やしてＬＲＴを支える法律制度や財源づくりを模索するうちに、様々な交通分野に目を向けていくようになった。
ひとつはバスマップに代表されるバス活性化、またＬＲＴ化の可能性ある地方鉄道や路面電車の問題に取り組む中からの地方鉄道存続運動だ。そうした過程で今年７回目を迎えたバスマップサミット、また低床路面電車ＭＯＭＯ、和歌山電鉄のたま駅長などという副産物も生まれた。それなりにどれも意味があり、話題にもなったのだが、ここで我々は満足していいわけではなかったのだ。
こうしたおりに衆議院選挙が行われ、民主党政権が誕生した。民主党は政策の一つの目玉として「交通基本法」の検討を始めた。辻本副大臣の当初の記者会見では来年の通常国会での上程を目指すとのことだった。
われわれＲＡＣＤＡなど全国４０数団体で組む「全国路面電車ネットワーク」ではこの四月から民主党の交通基本法を実際に書いたメンバーと「交通基本法」についての勉強会を行ってきた。交通の監督官庁である旧運輸関係者はもともと「交通権」というあらたな権利を前提としたこの法案には反対だったのだが、新政権ができ、政治主導が貫かれれば、いやおうなく法律はできる。ただ我々だって単に交通権を主張すればいいとは思っていない。心は案外運輸官僚と同じで、より使いやすい法律を作ろうというわけである。
とはいうものの、フランスでのＬＲＴ推進の流れを見れば、交通基本法制定、交通税による財源確保、地方分権の徹底、という３本の柱が整っていたことがわかる。そしてさらには自動車社会を一定変更するという市民合意を作るだけの「民主主義の熟度」が必要なことも確かだ。宇都宮や堺のＬＲＴの挫折もそうした流れを考えれば理解できる。そしてＲＡＣＤＡの地元岡山でもまだまだ民主主義の熟度は高いとはいえない。
そこで私はよく「ＬＲＴは民主主義の教科書」という言い方する。自動車というそれぞれの人にとっては絶対的に便利なもの、すなわち個人の利益を考えるなら自動車ほどいいものはない。ところが全員がその便利さを享受しようとすると、目で見えるものとしての渋滞は、全体の利益にならないということは、比較的だれにでもわかる。もちろん過度の自動車社会が温暖化や公共交通への影響などさまざまな問題を引き起こすのは、今やかなりの人々が理解している。しかし大事なのは、全体の不利益になるのだからといって、自動車を少しだけ制限できるだけの民主主義の熟度は、まだないということだ。そして欧米にはそれがある。
地図研究家でいま鉄道地図本でめちゃ売れてる今尾恵介氏は、数年前「路面電車」という本で、ＲＡＣＤＡが市民として提案する公共事業である路面電車の環状化が具体化するのを見て、「路面電車は民主主義の学校」だと言った。私はこの言葉を気にいって少し言い換えているのだが、我々はこれからＬＲＴ推進を民主主義の熟度を高める道具としても使っていかなければいけない。
そういう思いから、交通基本法の必要性を訴える、あるいはＬＲＴ推進を訴える資料を作成し、先般国交省３役にお会いして説明した。
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ＲＡＣＤＡは今年ＮＰＯ法人となるべく手続きに入るが、そのＮＰＯ法人では「路面電車と都市の未来を考える会ＲＡＣＤＡ」から「公共の交通ラクダ」と名称を変更することにした。
思えば岡山市の路面電車環状化を目指して１９９５年に設立されたＲＡＣＤＡだが、ＬＲＴの新設運動から始まったものの、全国に仲間を増やしてＬＲＴを支える法律制度や財源づくりを模索するうちに、様々な交通分野に目を向けていくようになった。
ひとつはバスマップに代表されるバス活性化、またＬＲＴ化の可能性ある地方鉄道や路面電車の問題に取り組む中からの地方鉄道存続運動だ。そうした過程で今年７回目を迎えたバスマップサミット、また低床路面電車ＭＯＭＯ、和歌山電鉄のたま駅長などという副産物も生まれた。それなりにどれも意味があり、話題にもなったのだが、ここで我々は満足していいわけではなかったのだ。
こうしたおりに衆議院選挙が行われ、民主党政権が誕生した。民主党は政策の一つの目玉として「交通基本法」の検討を始めた。辻本副大臣の当初の記者会見では来年の通常国会での上程を目指すとのことだった。
われわれＲＡＣＤＡなど全国４０数団体で組む「全国路面電車ネットワーク」ではこの四月から民主党の交通基本法を実際に書いたメンバーと「交通基本法」についての勉強会を行ってきた。交通の監督官庁である旧運輸関係者はもともと「交通権」というあらたな権利を前提としたこの法案には反対だったのだが、新政権ができ、政治主導が貫かれれば、いやおうなく法律はできる。ただ我々だって単に交通権を主張すればいいとは思っていない。心は案外運輸官僚と同じで、より使いやすい法律を作ろうというわけである。
とはいうものの、フランスでのＬＲＴ推進の流れを見れば、交通基本法制定、交通税による財源確保、地方分権の徹底、という３本の柱が整っていたことがわかる。そしてさらには自動車社会を一定変更するという市民合意を作るだけの「民主主義の熟度」が必要なことも確かだ。宇都宮や堺のＬＲＴの挫折もそうした流れを考えれば理解できる。そしてＲＡＣＤＡの地元岡山でもまだまだ民主主義の熟度は高いとはいえない。
そこで私はよく「ＬＲＴは民主主義の教科書」という言い方する。自動車というそれぞれの人にとっては絶対的に便利なもの、すなわち個人の利益を考えるなら自動車ほどいいものはない。ところが全員がその便利さを享受しようとすると、目で見えるものとしての渋滞は、全体の利益にならないということは、比較的だれにでもわかる。もちろん過度の自動車社会が温暖化や公共交通への影響などさまざまな問題を引き起こすのは、今やかなりの人々が理解している。しかし大事なのは、全体の不利益になるのだからといって、自動車を少しだけ制限できるだけの民主主義の熟度は、まだないということだ。そして欧米にはそれがある。
地図研究家でいま鉄道地図本でめちゃ売れてる今尾恵介氏は、数年前「路面電車」という本で、ＲＡＣＤＡが市民として提案する公共事業である路面電車の環状化が具体化するのを見て、「路面電車は民主主義の学校」だと言った。私はこの言葉を気にいって少し言い換えているのだが、我々はこれからＬＲＴ推進を民主主義の熟度を高める道具としても使っていかなければいけない。
そういう思いから、交通基本法の必要性を訴える、あるいはＬＲＴ推進を訴える資料を作成し、先般国交省３役にお会いして説明した。
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このページへのコメント
uYZrH5 I cannot thank you enough for the article post.Really looking forward to read more. Fantastic.
t8PxRz I appreciate you sharing this article post. Much obliged.