306 名前:野狗[sage] 投稿日:2009/02/13(金) 21:15:32 ID:sX2dDDeh
307 名前:野狗[sage] 投稿日:2009/02/13(金) 21:16:14 ID:sX2dDDeh
308 名前:野狗[sage] 投稿日:2009/02/13(金) 21:16:54 ID:sX2dDDeh
309 名前:野狗[sage] 投稿日:2009/02/13(金) 21:17:28 ID:sX2dDDeh
310 名前:野狗[sage] 投稿日:2009/02/13(金) 21:18:07 ID:sX2dDDeh
311 名前:野狗[sage] 投稿日:2009/02/13(金) 21:18:41 ID:sX2dDDeh


 私、ルーちゃんと仲良くしようと思うんだ。

 キャロはフリードに相談しました。とは言っても、フリードは返事をしません。キュクルと鳴いて、首を傾げるだけです。

 どうすれば仲良くなれるのかな。

 困ったことに、キャロには同じ年頃のお友達はいません。村を追われてから、お友達だっていなかったのです。
 ハァハァキャロちゃんって言うの? ハァハァ可愛いねハァハァお友達になろうハァハァと言ってくる大きなお兄さんやおじさんは放浪時にもいたけれど、
何故かフリードが囓ってしまって、みんな逃げてしまいました。
 だから、キャロにはお友達の作り方がわかりません。
 ティアナさんやスバルさんはいい人だけど、お友達というには年が違いすぎます。
 エリオくん。エリオくんは男の子です。ルーちゃんとは違うのです。 
 ヴィヴィオも、同じ年とは違います。キャロのほうが少しだけ大人です。そのうえ、向こうは聖王でこっちは平民です。
やんごとない御方とは違うのです、不敬なのです。

 そうだ。
 キャロはいいことを思いつきました。
 自分と同じくらいの年の女の子はいないけれど、同じくらいの年同士でお友達になっている人が六課にはいます。
 その人たちのアドバイスをもらえばいいんだ。
 とってもいい考えです。
 キャロはいいことを思いついたので、今夜はもう寝ることにしました。実行は明日です。


 健やかな目覚めでした。
 早速、昨夜思いついた計画通り、ティアさんとスバルさんの所へ向かいます。
 そうです、あの二人はパートナーとしても友達としても最高にコンビです。きっと、仲良くなる方法を知っているに違いありません。

「おはようございます、スバルさん」
「あ、おはよー、キャロ」

 食堂で、スバルさんはいつものように大盛りサラダを片づけています。大盛りというより特盛り、ギガ盛り、ペタ盛りです。
 さすが、食堂主任に「無限胃袋女」と渾名を付けられただけはあります。

 おや? よく見ると、ティアさんがいません。珍しく、スバルさんだけでごはんを食べているようです。

「あの、ティアさんは?」
「ティア? ティアはまだ寝てるよ。今日は午前中訓練ないし、ゆっくり寝かせてあげようと思って」

 スバルさんもゆっくり寝ようと思ったけれど、お腹が空いたから食堂にごはんを食べに来たそうです。
 知りませんでした、お休みの日のティアさんは、ねぼすけさんのようです。

「あー。それがね、昨日の夜……。今日の午前訓練なしだってわかってたから、ちょっと無理し過ぎちゃって……」

 無理ってなんでしょう?

「やっぱり、IS振動破砕の力でバイブレーターはまずかったかなぁ……」

 IS、ということは、何か極秘の訓練でもやっていたのでしょうか。さすがはスバルさんとティアさんです。スターズのフォワードです。
 
「バイブレーターって何ですか?」
「ん? ああ、え、あ。御免。つい口走った。忘れて、キャロ」
「じゃあ、後でフェイトさんに聞いてみます」
「駄目ぇ!!!! めちゃくちゃ怒られる! まだ死にたくないよ!!!! ザンバーで三枚におろされるのは嫌ぁ!!!」
「じゃ、じゃあ、なのはさんに」
「SLBも嫌ぁ!!!」
「えっと、じゃあ、部隊長?」
「父さんとギン姉、チンクにまで怒られる……。お願いキャロ、今のは忘れて、お願い」

 スバルさんがこんなに一生懸命に頼んでくるなんて…………はっ、もしかすると戦闘機人の秘密だったりするんでしょうか。
 だったら、とっても大切な秘密です。誰にも言えません。
 わかりました、スバルさん。これは二人の秘密ですね。

「ありがとう、キャロ」
「いいんです。ティアさんとスバルさんの秘密ですね」
「そう、『夜の振動破砕』はあたしとティアだけの秘密だから」

 あ。誰か走ってきました。

「こぉの、馬鹿スバルぅうううううぅっ!!!!!」

 凄いです。ティアさんのパンチでスバルさんが吹き飛ばされてしまいました。
 食堂の皆さんも呆気にとられています。

「キャロ!」
「はいっ?」
「あんたもっ! 今ここで聞いたことは全部忘れなさい! いいわねっ!?」
「は、はい」



 でも。
 やっぱり。
 気になります。
 だから、夜中に密かに覗くことにしました。

 フリード、静かにね?

 キュ?

 そうだよ。静かにするんだよ?
 いい子だね、フリード。

 キャロは、夜中にこっそり部屋を抜け出します。フェイトさんに見つかると、きっと怒られてしまいます。
 だけど、ルーちゃんと仲良くなるためなのです。友情なのです。
 キャロは、頑張ることにしました。

 だけどどうしてだか、キャロはスバルさんたちの部屋にはまっすぐ向かいません。遠回りをして、リネン室に向かいます。
 そっと中に入ると、そこにはふかふかのシーツが綺麗に折りたたまれておいてあります。
 キャロは辺りを見回すと、通風口を発見しました。
 これです。この通風口を探していたのです。

 そのとき、誰かがリネン室に入ってくる気配がしました。
 キャロは慌てて洗濯物入れの中、シーツの間に潜り込んで隠れます。ちょっと臭いですけれど、我慢です。

「ふむ、新しいシーツはこっちだったな」
「そう、そっちね。多めに持っていったほうがいいかしら?」

 この声は……なんと、シャマル先生とシグナム副隊長ではありませんか。

「その…………それほど、シーツが必要なのか? ……あの……ああ……ごほん、主はやてには」
「必要だから取りに来てるのよ?」
「そ、それはわかっている。しかし、いささか量が多すぎるような……」
「そうね。多いかも知れないわね」
「ど、どうなんだ。あまり多いと、その……業務に差し支えるとか、そういう心配は」
「相手はナカジマ三佐だから、その辺りはわきまえていると思うけれど」
「そ、そうか、それなら、いいんだ」
「シグナム?」
「なんだ?」
「自分がご無沙汰だからって、主の性生活を詮索するのは感心しないわね」
「ち、違う。私はただ、純粋に疲労の面から心配してるのであって、シーツの交換がこれほど頻繁なほどの行為は、
その……身体に……よろしくないのでは……と……」
「ふーん。そんなに溜まっているのなら、ザフィーラに言えばいいのに」
「シャマル、お前なぁ」
「それとも、趣旨替え? フェイトちゃんのほうが良かった?」
「そうやって言葉で人を弄ぶのはお前の悪い癖だぞ!」
「ふふっ。ちょっと嫉妬が混ざってるんだけど?」
「……シャマル……?」
「シーツ、私たちの分もいるかしら?」
「ああ………多めにな」
「……馬鹿」

 二人が仲良く出て行ったのを見計らって、キャロは洗濯物入れから這い出てきました。
 なんだかよくわかりませんけれど、シャマル先生とシグナム副隊長が仲良しなのはいいことです。
 そして、部隊長もナカジマ三佐と仲良しのようです。きっと、夜更かししてお菓子を食べたりお話ししたりしているのだろう、とキャロは思いました。
 堂々と夜更かししていいなんて、やっぱり大人はいいなぁ、早く大人になりたいなぁ。
 おっと、大切なことを忘れないようにしなくては。
 仲良くなると、シーツがたくさんいるようなのです。お洗濯がたいへんです。
 ルーちゃんと仲良くなると、キャロもシーツがたくさんいるようになるのでしょうか?

 キャロはもう一度通風口を確認しました。この通風口はそれぞれの部屋に通じていると、前にリイン曹長から聞いたことがあります。
そして、キャロくらいの大きさなら何とか入り込むことができるはずなのです。
 つまり、ここから入り込めば各部屋を安全に覗くことができるのです。

 よし、と心の準備をしようとして、再びキャロは洗濯物入れに飛び込みました。また、誰かが来ています。

「フェイトちゃん、お腹の中は空っぽにしとかないと」
「ごめん、なのは。もう少し我慢できると思ったんだけど。本当に御免ね」
「ううん、私もちょっと調子に乗りすぎたかも。だけど、フェイトちゃんがあんな可愛い顔するからいけないんだよ?」
「だって、なのはが上手だから。つい、あんな顔になっちゃうんだ」
「そう? えへへ、実は、頑張ってみたの」
「そうなんだ」
「いつもいつも、フェイトちゃんのほうが上手なんだもの」
「それは仕方ないよ。私は、クロノとエイミィのをずっと覗いていたもの。ある意味、クロノ直伝だよ」
「うーん。お兄ちゃんは忍さんと家ではキスくらいしかしなかったし、お姉ちゃんは彼氏いないし」
「お父さんたちは?」
「うちのお父さん、私が覗くと気配で気付くから怖いの」
「サーチャーを使ってみたら?」
「それがうちのお父さん、サーチャーの気配にも気付くの」
「……それ、ナンバーズより凄いんじゃないかな?」
「うん。クアットロは気付いてなかったものね……」
「あ、シーツ、これくらいでいいかな?」
「………」
「なのは?」
「私はいいけれど……フェイトちゃんはいいの?」
「え?」
「フェイトちゃん、ヴィヴィオが来てから凄いことになってるって気付いている?」
「そ、それは……」
「あ、気付いているんだ」
「だって、ヴィヴィオに聞かれちゃダメだって思うと、なんだか、凄く興奮して……」
「結界張ってるんだから、叫んでも大丈夫なのに」
「気分の問題だよ、これは」
「やっぱり、フェイトちゃんはMだ」
「いいよ、なのはがSなんだから、私はMで」
「にゃははは」

 二人の声が遠ざかるのを待って、キャロは洗濯物入れから出………てきません。

 翌朝、キャロを起こしに行ったエリオはびっくりしました。
 キャロがいません。
 部屋にも、食堂にも。

 少しして、何故かリネン室の洗濯物入れの中で眠っているキャロが発見されました。
 隠れているうちに眠ってしまったようです。

「で、なんでそんなところに?」

 部隊長が尋ねるけれど、まさか覗きをしようとしていたとは言えません。

「……キャロ、念のため聞きたいのだが、リネン室にはいつ頃からいたのだ?」

 シグナム副隊長の声が微かに震えているような気がします。
 キャロはよく考えました。
 いつ頃と言われても、時計は確認していません。部屋を出た時間はわかっても、リネン室で眠ったしまった時間はわからないのです。

「あの……なのはさんとフェイトさんが来たことまでは覚えてます」

 けくっ、となのはさんの喉から妙な音。何故かフェイトさんも青ざめています。
 何故だろう、と首を傾げながら、キャロは言葉を続けます。

「あ、それから、シグナム副隊長とシャマル先生よりは先に来てました」

 げふっ、とシャマル先生が吐血しました。シグナム副隊長は俯いて震えています。

「なのはとフェイトはまだしも、シグナムとシャマルは珍しい取り合わせだな」

 ヴィータ副隊長も首を傾げています。

「いったい、どういうことなん?」

 部隊長がおかしな様子の容認に首を傾げています。

「キャロ、こっちおいで。詳しく話聞かせてな」
「はやてちゃん! 親友の間でもプライバシーは必要だと思うの!」
「はやて、キャロは私の監督下だから、私がお話を聞くよ!」
「主はやて、誤解なきよう!」
「はやてちゃん、違うのよ!」
「なのはちゃん、フェイトちゃん、シグナム、シャマル。四人ともそこにおり。ヴィータ、ザフィーラ、ちゃんと見張っといてや」
「おう」
「御意」

 美味しいお菓子をたくさん食べながら、キャロは夜に聞いたことを全部お話しました。
 部隊長はニコニコとその話を聞いて、お友達と仲良くなる秘訣を教えてくれました。
  

 隊長室からキャロが出ると、入れ替わるようにして四人が呼ばれていきました。

 その後どうなったかは、キャロは知りません。


著者:野狗 ◆gaqfQ/QUaU

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