553 名前:パンデミック 1[sage] 投稿日:2008/08/12(火) 00:05:53 ID:ixK1EFH2
554 名前:パンデミック 1[sage] 投稿日:2008/08/12(火) 00:07:09 ID:ixK1EFH2
555 名前:パンデミック 3[sage] 投稿日:2008/08/12(火) 00:08:13 ID:FP0kuJej
557 名前:パンデミック 4[sage] 投稿日:2008/08/12(火) 00:09:33 ID:ixK1EFH2
558 名前:パンデミック 5[sage] 投稿日:2008/08/12(火) 00:11:04 ID:ixK1EFH2
559 名前:パンデミック 6[sage] 投稿日:2008/08/12(火) 00:12:03 ID:ixK1EFH2

 キャロ・ル・ルシエは官舎の自室で正座をしていた。
 ひどく、緊張した面持ちである。そして彼女の目の前には、一枚の下着がおかれていた。
 勿論、下着泥棒をして怒られている真っ最中という訳ではない。その為に必要な叱る人間がこの部屋にはいないことからも、それは容易に判断できるだろう。
第一、時空管理局から選りすぐりのエリートを集めた機動六課である。そんなことをする人間は一人しかいないし、彼女はそれに該当しない。
 それでは何故、JS事件で死地を潜り抜けた猛者である彼女が下着一枚を相手に緊張しているのか?
 フェイトの私物と同じ、黒いレースの下着を思わず買ってしまったからなのか?
 否。そんな大人の魅力たっぷりの下着にも、まぁ憧れないではないが、彼女のお気に入りはリボンがついていたり、苺柄だったりするカワイイ系だ。
そも、幼いキャロの体型に合うアダルティな下着を揃えている店を彼女は知らない。
 それとも今週の洗濯当番であるスバルが間違えてキャロの洗濯物に下着を一枚間違えて混ぜ込んでしまったのか?
 おそらく、それが正解であろう。前にもティアナがキャロのところに、こっちに一枚混ざっていたと言って、制服のジャケットを持ってきたことがある。
何故そこで混ぜ込んでしまうのか不思議ではあるが、あの天然吶喊娘を相手に合理的な理由を見いだすことなど不可能であるから、キャロはその辺について考えないことにしている。
 だがこれだけでは、キャロが紛れ込んだ他人の下着ごときを相手に緊張している理由の説明とはなっていない。
 さすがにシャマルの死蔵コレクションであるパピヨン(もっと愛を込めて!)なパンツとかなら気後れもしよう。
しかし、周り番で行っている洗濯は、スターズ・ライトニングのフォワード陣の分だけを対象にしている。
うっかりシャマルのコレクションが混じることなどまずあり得ないし、仮にそんなことが起きたのなら、スバル→アルト→バックヤードのみんなのルートを辿り、持ち主不明のエロ下着として三時間以内に六課中に知れ渡る。
 それが起きていないことからも、取り立てて際どい下着が混ざっていたわけではないと知れよう。
 そもそも、彼女の目の前にあるのは色気などとはほど遠い、木綿製の官給品だった。
 だが、キャロの心をとらえて放さないだけの理由がそこにあった。油性ペンで所有者の名前が書かれていたのだ、エリオ・モンディアルと。


 □

 キャロにとってエリオは、ほんの数ヶ月前までは同い年でたった一人のお友達だった。
 それが友達ではなくなったのは、ルーテシア・アルピーノと拳で語り合った後のことだった。
 大切なお友達のエリオは、その決闘の場で、自分と一緒に戦ってくれた。
 そして三人は、敬愛するフェイトやなのは、はやて達みたいに親友になれた。
 それはとても嬉しいことで、初出動の時にエリオが手を差し延べてくれたのにも負けない、この一年でもっとも大切な思い出だ。
 だのに、ルーテシアがエリオに微笑むと胸がチクリと痛む。
 エリオが、人造魔導師計画とかの話でルーテシアと盛り上がっていると、何も知らない癖してつい、二人の会話に割り込んでしまう。
 そんな自分の気持ちが解らなくて、エリオがルーテシアと喧嘩してくれたらいいのに、なんて思ってしまう自分が嫌いになったりもした。
 それが恋なのだとキャロが気付かされたのは、ルーテシアと喧嘩をした日の事だった。
 喧嘩の切っ掛けは覚えていない。だがそれがエリオに纏わる事だったのはきっと確かなのだろう。
 今でも覚えている、普段は寡黙なあのルーテシアから投げつけられた罵詈雑言を。

「弱虫」と、

「卑怯者」と、

「私たちの友情が、たった一つの恋で砕けるほど脆いものなの!」と。

 今思い返せば、ルーテシアはとても優しい子なのだと解る。
 自分だってあんなにエリオの事が好きな癖をして、自分の方がキャロよりもずっと不利なスタートラインとコースを走らなければならない癖して、
ライバルの背中を、友達だからという、たったそれだけの理由で押してくれたのだ。
 その時から、エリオはキャロにとってお友達ではなくなった。朴念仁という名の俊敏で、強力な獲物となったのだ。
 だが、キャロにも矜持がある。友情がある。
 天衣無縫なあの頃のふりをして一緒に入浴しようと迫ったり、シャーリーの企画立案したデートプランを実行したりするわけにはいかなかった。
 だけれども、偶然紛れ込んだ下着を相手に、一時の至福を味わうくらいの事はあってもいいのではないだろうか?
 その結論に達したのは、もう、三〇分も前の事だった。
 何度か目の勇気を振り絞って、キャロは木綿の下着に手を伸ばす。
 しかし、その手は白い下着に触れる前に止まった。

「フリード、エリオ君が部屋に来ないように、外で見張っててもらえないかな?」

 自身の痴態を見られたくなかったからではない。万が一、有耶無耶のうちに自分の想いが知られるのは避けたかったからだ。
 ルーテシアがキャロの背中を押してくれたように、キャロもまた、ルーテシアとの友情を裏切りたくはない。


 □

 フリードに部屋の外で見張ってもらってから二度、キャロはその下着に触れる事を挫け、三度目になってようやくそれを両手で摘み上げた。
 官給品なのだから当たり前ではあるが、その手触りは、キャロの下着とさして変わらない。
 目を皿にして、まじまじと見詰める。
 膨らみを持った不等辺五角形は、動きやすいという理由で近頃ではトランクスを愛用するスバルは別として、キャロやティアナのショーツと大きく変わらないシルエットだ。
 しかし、変わらないのはシルエットだけ。
 キャロの下着の小さな、それこそ前後の区別をつけるためにしか役立たない、なおざりなリボンがあしらわれているのに対して、エリオのそれにはリボンがなく、代わりに前だけ一部が二枚の布を重ね合わせた形になっている。
 ルーテシアと出会う前は気にもしていなかったし、無自覚の嫉妬をしていた時期は自己嫌悪でそんな事にまで気が回らなかった。
そして、恋だと気づいた後は、恥ずかしくて直視などできずにいた。
 だから、こんなにも真剣に男物のパンツを観察するだなんて、キャロの人生において初めてだ。だからこそ、違いに気付いた。
 試しに、重なり合った場所を両手でまさぐると、そこが縫い合わされておらず、内側へと指が入る事を確認できた。
 ならば。と、前後を返すと、後ろの生地は自分のと同じで、一枚きりの作りになっていて、穴など開いていない。
 つまりエリオのパンツに開いている前方の穴は、排泄用ではないという事だ。
もし前方の穴が小用の為の物だとしたら、後ろにも排便用の穴を設けない道理がない。全くに、この穴の用途が想像できない。
 しかし、知りたいとキャロは思う。大好きなエリオの事なのだ、どんな些細な事だって知りたいと思うのが乙女心という物だ。
 ならば、試してみればいい。出身世界が違うとはいえ同じ人間なのだ。
 立ち上がり、フックを外すと、タイトスカートがストンと床に落ちた。
 制服の下に手を潜らせ、親指をショーツの中に通して膝まで一気におろす。それから、まず右足を、そして左足を抜いた。
 見聞を終えたならまた穿くからと、スカートはハンガーに吊し、ショーツは折りたたむ。
 それから、逆の手順でエリオのパンツを穿いた。
 姿見の前に立って、エリオのパンツが見えるようにと制服の上着をたくし上げる。
 くるりと一八〇度回転して鏡に背を向けて、上半身を捻って、後ろ姿の確認。パンツが見えにくいからとおしりを突き出す。
キャロには少しだけ緩いエリオのパンツは、その動きの製でずり下がり、尾てい骨が鏡に映る。

「エリオ君。て、やっぱり私よりも大きいんだ」

 そんなささやかな事にキャロはエリオの背中の大きさを思い出す。
 そして、ふと零れたその呟きはキャロに、自分が今何をしているのか自覚させた。
 羞恥でカァッと顔が赤くなるのを感じた。
 本当にフリードを見張りに出してよかったと、目的外の理由で二〇分前の自分を褒めてやる。
 「早く脱ぐべきだ」と、心の中のヴォルテールが語りかけるが、心の中のフリードは「きゅくるぅ?」と、可愛く小首をかしげてスルーした。
 故にアルザスの巫女は、パンツを脱がずにクッションに腰を下ろす。
 普段なら両足を揃えて横に倒すが、今日はパンツがよく見えるようにと膝を立て、その上不作法に踵も膝も開き加減。自身の股間をのぞき込む。
 パンツを見るには制服が邪魔になると気づき、ボタンを外し、リボンもほどく。黒いインナーシャツはたくし上げて、ずり落ちないようにとその裾をくわえる。
 それからパンツに開いた謎を探るため、キャロは右手を穴の中に差し入れた。
 そこには「女の子の大切な場所」があった。
 それで、趣味で作ったクッキーをお裾分けするために、スバル達の部屋を訪れたときの事を思い出した。



 □

 エリオに渡す前に、公正なる第三者の意見としてティアナ感想を聞きたかったのだが、その時は部屋にスバルしかいなかった。

「ティアなら直ぐに戻ってくるよ」

 キャロのクッキーだけでは不足だったのか、大量のスナックの袋を開きながら、女の子二人だけのちょっとしたお茶会が始まった。

「そうそう、ティアったら、ヴァイス陸曹との来るべき決戦の日のために、すっごいもの買ったんだよ」

 その言葉と共に、スバルは相棒のタンスの底を漁り、キャロはマッドティーパーティーだと気がついた。
 危険な匂いがしたが止めなかったのは、世間一般の恋愛に関する知識を得られる貴重な機会だと思ったからだろう。

「ジャ・ジャーン!」

 という掛け声と共に、スバルが掘り当てたのは真っ赤なショーツ。

「しかも、エロ仕様・・・ほら」

 脚を通すにはあまりにも小さな穴が開いている事を、スバルは広げて見せてくれた。

「まだ告白もしていないのに、気が早いよねぇ〜〜」

 ケラケラと笑っていたスバルはその後、涎をしとどに垂らしながら、ティアナの堅くて大きなクロスミラージュを喉の奥までくわえ込んだのだが、それは今のキャロにとってどうでもいい記憶だ。
 重要なのは勝負下着にはHな目的で小さな穴が開いているという点であり、エリオのブリーフにも穴が開いているという事だ。
 齢一〇歳にて時空管理局の精鋭戦闘部隊に配属されるほどの才児であるキャロが、この二つの事実を単なる偶然と片付けるはずがなかった。



 □

「エリオ君、だれの為にこのパンツを穿いたんだろう」

 あの優しいルーテシアの為であろうか?
 それとも、母であり、姉でもあるフェイトの為か。
 もし自分の為であったなら、これほど嬉しい事はない。だが、それを確認する事はできない。
ルーテシアとの友情を反故にして抜け駆けしたくなかった。それ以上に自分以外の誰かの名前が出てきたならば耐えられそうになくて、そんな勇気はでなかった。

「・・・エリオ君・・・」

 もしかしたら、この一枚の布を挟んで既に、エリオは誰かいい人と繋がっているのかも知れない。
 そんな不安を紛らわそうと、指を秘所に埋める。

「・・・ん、ンン・・・」

 くすぐったいような刺激が、背中を遡る。
 エリオのブリーフを穿いたときから湿り気を帯びていた秘所が、その快楽に溺れる。
 親指でブリーフの上から秘豆を押しつぶす。
 頭に浮かんだ不安を欲情が塗り潰していく。
 起こしていられなくなった上半身を横倒しにして、それでも右手は半ば自動的に動く。
 体を支える必要のなくなった左手で胸の突起を摘んで捻る。

「エリオ君、エリオ君エリオ君・・・・・」

 もはや体が止められない、止めようとする意志すら浮かばない。
 思い浮かぶのはエリオの笑顔・笑顔・笑顔。
 それ以外のあらゆる物がキャロの意識からこぼれ落ちていく。
 快楽の霧が彼女の意識を覆い、声も吐息も、秘所から響く水音も、只々部屋の隅々まで広がって消えていく。

「ン、ア・・アァ・・・・」

 右手の動きがどんどんと加速していく。
 口から紡ぎ出される物は言葉ではなく喘ぎ。

「キャロ、ちょっといいかな?」

 不意に、小さなモータ音と共に扉が開く。

「・・・・・」

 言葉の意味も、状況に置ける意味もわからずに、キャロは首を小さく曲げて視野の片隅に扉と来訪者を写し込む。
 手の動きは未だ止まっていない。
 その代わりではないが、来訪者は扉を潜ろうとした姿勢で動きを止める。

「・・・・フェ・・・見ないで! 見ないでくださ・・・ン、アア!」

 置かれている状況、来訪者の姿。この二つを理解した瞬間に、キャロは背を仰け反らせた。
 真っ白いブリーフに大きくシミが広がっていく。
 驚愕する赤い瞳に見守られ、キャロは達した。



 □

 フェイトはあまりオシャレに気を遣う質ではないが、下着にはポリシーがある。
 素材は断然シルク、色は黒だ。
 故に、つい今し方洗濯機に放り込んだ白い木綿のブリーフはフェイトの持ち物ではない。
 キャロの部屋の前でぽつねんと佇むフリードを見かけ、何かあったのかと様子を伺った結果、キャロに代わって洗濯する事になった代物だ。決して、フェイトが盗んだ物ではない。
 それにしても、あれは非常に居たたまれなかった。
 と、フェイトは溜息をついた。
 それはそうだろう。子供だとばかり思っていた我が子の自慰、しかも好きな男の子のパンツを穿いて、を目撃してしまったのだから。
 あの後、羞恥心を主な理由として自殺しかねないほどに思い詰めたキャロを宥め賺し、そこに至る経緯や理由を聞き出すのにも骨が折れた。
 そして、恋愛相談に変化していったのもつらかった。
 フェイトとて、恋愛という意味で人を好きになった事がないではない。
しかし、ユーノは友達になった頃には既になのはと断ち切れない絆を築いていた。クロノも、告白しようと決心が付いたときには過去形でなければならない相手となっていた。
 要するに、フェイトは彼氏居ない歴=年齢なのだ。

「それにしてもキャロ、エリオの事が本当に好きなんだなぁ」

 誰もいない洗濯場で、フェイトは小さくつぶやき、溜息をつく。
 初めて見たキャロの恍惚に満ちた表情。
 親離れしてしまった我が子に対する寂しさがフェイトの胸に去来する。

「パンツでするの、そんなに気持ちいいのかな?」

 幼なじみの中で唯一恋人居ない歴を更新中の身として、何やら思うところもあるらしい。

「誰も、来ないよね」

 出入り口から見えないように、洗濯機の陰にしゃがみ込む。
 懐から一枚の布を取り出すと、彼女はそれを顔にあてがい、大きく息を吸い込んだ。石鹸と太陽の匂いがフェイトの胸を満たす。

「これが、エリオのおちんちんの匂い」

 パンニーは感染する、持ち主のあずかり知らないところでも。

                              完



著者:超硬合金

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