[92]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:16:47 ID:M3UxtyRV
[93]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:20:07 ID:M3UxtyRV
[94]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:23:55 ID:M3UxtyRV
[95]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:27:07 ID:M3UxtyRV
[96]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:30:37 ID:M3UxtyRV
[97]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:33:54 ID:M3UxtyRV
[98]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:37:29 ID:M3UxtyRV
[99]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:40:25 ID:M3UxtyRV
[100]名無しさん@ピンキー<sage>2007/08/04(土) 14:41:41 ID:M3UxtyRV


フェイト執務官の憂鬱


「えへへ、実は〜」
目の前には、照れ臭そうに笑う自分の使い魔とどこか居心地の悪そうな親友である上司の守護獣。
「ほら、ザフィーラから言ってよ〜」
「お、俺からか!?テスタロッサはお前の主だろう」
「もぉ〜、ザフィーラはお父さんなんだから!」
「口を滑らせてるぞ、アルフ」
夫婦漫才とはこういうのを言うのだろうか。
目の前は幸せの光景。
「あ、あ〜。そうなんだよね〜。妊娠しちゃった〜」
幸せそうな笑顔のアルフ。
魔力によって繋がっているアルフの体内に新しい命が生まれたことは、自分にとっても幸せなことだ。
「そっか、幸せそうだね、アルフ」
直接の言葉に照れ隠しに頭をポリポリと掻くアルフ。
「はやてには言ったの?」
「いや、今から報告に行く…だが、主を守るという使命を持ちながら、行為に溺れ…」
「何?ザフィーラは嬉しくないの?」
自分の主に挨拶しにいくのに、妊娠させてしまった娘の父親に挨拶しにいくような態度の
ザフィーラの頬を引っ張りながら、アルフはこめかみをヒクヒクさせる。
「ふぃあわふぇです」
「よろしい、それじゃあ行くよ」
ザフィーラの手を引くアルフの後姿を見送ってフェイトは、溜息をついた。
確かに自分の出生は他人とは違う。
勿論、そのことは当の昔に克服して、今、ここにいる。
だが、この格差は一体なんなのか…

「あ、エリオ、キャロ」
午前の仕事が少し残っていたがもうすぐ12時なので、食事を取ることにしたフェイトは、
食事を始めようとしていた2人を発見し、頼んだ冷製スパを手に近付いた。
「一緒にいいかな?」
「あ、フェイトさん、はい」
「どうぞ」
2人は笑顔で快く了承する。
そこで、フェイトはあることに気付いた。
「あれ?キャロの分は?」
2人の前にあるのは2つサラダと山盛りの炒飯が1つ。

炒飯は、小さい体に何故そんなに入るのかと思うほど食べるエリオのものだろう。
では、キャロはサラダだけなのだろうか。
食欲が無くても食べなければ午後に響く、と注意しようとしたが、エリオがすぐに疑問の答えを返した。
「これを一緒に食べるんです」
なるほどと思ったがまた新たな疑問が浮かぶ。
2人の前には、取り分け用の皿もスプーンも無いのだ。
その疑問には、キャロが行動で答えた。
「はい、エリオ君、あーん」
キャロがスプーンに炒飯を乗せ、エリオの前に運ぶ。
エリオは躊躇する様子も恥ずかしがる様子も無く口に含んだ。
「次はキャロの番だよ」
そう言ってエリオはスプーンを受け取ると、キャロに炒飯を運んだ。

―…
昔、自分が保護した2人の子供は互いに支え合う存在となったのだ。
こんなに嬉しいことはない、とフェイトは無理矢理自分に言い聞かせる。
暫く2人の世界を黙って見ていたフェイトだったが、やがて料理を持って立ち上がり、他の開いてる席を探し始めた。
しかし、エリオとキャロがそれに気付くことはなかった。

フェイトが次に見付けたのは、グリフィスとシャーリー。
先程と同じように近付こうしたフェイトは、2人の様子に再び硬直した。
「はい、あーん」
「は、恥ずかしいよ、シャーリー」
エリオとキャロのように―炒飯とパスタの違いはあるが―グリフィスに食べさせようとするシャーリーがフェイトの目に映ったのだ。
「はい、あーん」
「…んっ」
エリオとは違い、恥ずかしがるグリフィスだったがシャーリーに圧されて、口に含む。

フェイトは再び足を動かし始めると、開いている席を見付ける。
その端の席に腰を落ち着け、1人寂しく食事を始めたのだった。

一体なんなんだろう…何がなんなんだろう…もう良く分からない…
フェイトは、食事を終え、落ち込みながら自室への道を歩いていた。

すると、自分の前を歩いている人物に気付く。
特徴的なオレンジの髪を両サイドで2つに分けた後姿。
「ティア」
名前を呼ばれたティアナは「はい?」と後ろを振り返った。
「どうしたの?」
振り返ったティアナの顔に何か憤りというか苛立ちみたいなものを感じたフェイト。
「あ、いえ」とか言っていたティアナだったが、溜息をつくと話し始めた。
「男って生き物は…」
この娘もか…と話を聞いても虚しくなるだけな気がしたので、気付かれないように
こっそりと逃げようとしフェイトだったが、ティアナの言葉に止めた。
「ホントッ、下らない生き物ですよね」
流石、執務官を目指すだけはある。
「うん、そうだよね」
「変なところでカッコつけたがるっていうか、主導権握りたがるっていうか」
実際のところ、男なんて良く理解していないフェイトだったが、頷き続けた。
「男の人なんて要らないよね」
そうだ、私は女として立派に生きていく。
この娘と同じ意志を持って!
勝手にティアナを独身の道に引き吊りこもうとしていたフェイトだったが、
ティアナにはそんな意志はないとティアナの言葉に気付かされた。

「え、いや、要らないなんて…でも、優しいところもあるんですよ、ヴァイスさ…ヴァイス陸曹。
この前だって、私がバイクのパーツを壊したのに笑って許してくれて…それで2人で…」
ティアナは喋り続けたが、そこにはもうフェイトの姿は無かった。

フェイトは、残っていた仕事もやらずにベット俯せになっていた。
もう嫌だ…
げんなりとした顔で時計を見ると、1時過ぎ。
仕事の期限は、2時までだった。
だが、仕事をする気にならない。

今日、なのはは休暇で直接そうとは言わなかったが、恐らくユーノといるのだろう。
この六課隊舎では、同僚達のイチャイチャを見て、自室では、なのはの惚気話を聞くのだろう。
家に帰っても義兄夫婦のイチャイチャを見て、アルフの惚気話を聞くのだろう。
皆が翼を生やして光の中を楽しそうに飛んでいるのに、自分は地べたではいつくばっている気分だ。
体を左に傾けると、鏡が見えた。
―私ってそんなに魅力が無いんだろうか…
鏡の中の自分を見る。
自分で言うのもなんだが、悪い顔はしていないと思う。
この金色の髪にだって自信があるし、胸など体もなのは達に負けない自信がある。
なのに、何故…
考えるのが嫌になり、現実から逃げ、夢の世界に入ろうと目を閉じた。

そう長い時間寝たわけではないが、通信により睡眠は終了を告げた。
―はやてからだ。
内容はすぐに分かった。
アルフとザフィーラの来訪から全くやる気の起こらなくなった仕事のことだろう。
もう3時半だ。
今まで1度足りとも、仕事を遅らせたことのないフェイトに、はやては疑問を感じていた。
「ごめんね、はやて、急いでやるから」
ベットから起き上がりながら、フェイトははやての言葉を聞きもせずに返した。
「そんな急がんでもええで。なんかフェイトちゃん、疲れとるみたいやし。
今日中にやってもらえればそれでええから、無理せんといてな」
そう言うと、はやては通信を切った。
はやての気遣いが弱ったフェイトの心に染みる。
ならば、仕事を早く終わらせなければならない。
自分が遅れた皺寄せは、隊長である優しい親友に行くのだ。
雑念を振り払い、フェイトを仕事をようやく再開した。
「ごめんね、はやて。遅れちゃって」
現在4時。
差し出される仕事の成果のディスクを受け取りながらはやては、しまったと思っていた。
あんな言い方をすれば、この娘は余計頑張ってしまう。
分かっていたはずだったのに…

未だ疲れた顔をしているフェイトを見る。
激務と呼ぶ程の仕事が最近あったわけではないが、1人で頑張り続ける質なので、
疲労が少しずつ溜まっていたのだろう。
「ちょっと、お茶でもしながら、お話せぇへん?」
気分転換にでもなれば、と考え誘ったのだが、これがフェイトを更に追い詰めることになるのを
はやては知るよしを無かった。

「それでな?やっぱりゲンヤさんも歳やん?硬さが足りん時もあるんよ。
体調に左右されるんと思うんやけど…でも、うちがこうやって舐めてやるとな…」
―誰か助けて…
お話しよう、と言ったはずなのに、やっていることははやての言葉をフェイトがひたすら聞いているだけであった。
他に比べ、直接的で下世話な話。
親友の実体験であるだけに生々しいものである。
「でも、歳の甲って言うだけあって、テクニックは凄いんやで。イカされ噴かされ…」
「噴かされ、って?」
噴く、とはなんなのか分からない。
まさか、笑ってしまうという意味ではあるまい。
「潮を噴くんや」
「塩?」
やっぱり意味が分からない。
フェイトの顔からそれを察知したはやての目に、管理局の乳揉み魔と呼ばれる時の輝きがあった。
「分からんなら…教えたるで…」
ゾンビよろしく両手を突き出し近付いてくるはやてに、危機感を感じたフェイトは、逃亡を開始する。

「待ちぃや、フェイトちゃーん」
「いやーーー」
しつこい。
いつもなら割とあっさり諦めるのに今日は、なんだかしつこい。
それは、先程はやてが飲んでいた黒みがかった赤いアルコールのせいなのだが
フェイトがそんなことをしるわけもなかった。

「ようやく…巻けた…」
自慢のマイカーでなんとか逃げ切ったフェイトは周りを見る。

仲睦まじそうに手を繋いだり、腕を絡めたりしていてる男女の姿。
もう自分がいるべき世界は無いのか…
フェイトは溜息をついて、少し考えた後、車を駐車して外に出る。
何を考えたのか、暇そうにガードレールに腰を預けて始めた。

1時間後、フェイトは自分が女として駄目なのだろう、と真剣に落ち込んでいた。
着いていく気は全く無かったが、初めてやってみたナンパ待ちという行為。
しかし、誰もフェイトに話し掛けたりはしなかった。
彼女の容姿が悪いわけではない。
寧ろ、10人中10人が美人と答えるだろう。
だが、それは同時に並の男では届かない美しさであった。
しかも、19歳でSランクと執務官の地位を持つフェイト・T・ハラオウンを名前と顔だけでも知っている人は、
このミッドチルダならばそれなりにいるのだ。
そんな女性をナンパ出来る男はそうそういない。
フェイトは、がっくりとしながら車に戻り、貼られていた駐禁ステッカーを見て、再び、がっくりした。

違反キップを切られた後、フェイトは隊舎に帰り、食事を取ることにした。
食堂には、エリオもキャロもシャーリーもグリフィスもティアナもヴァイスもいた。
だが、ティアナは、自分と同じ雰囲気を持っていた2人の元へ向かった。
「ここ、いい?」
「はい、どうぞ」
ギンガとスバルのナカジマ姉妹。
この娘達も出生が普通とは呼べないが、整った顔立ちをしている。
そして、この3人のテーブルの雰囲気は明らかに暗かった。
周りからはピンク色の声が聞こえる。
「はい、エリオくん、あーん」
「あーんっ」
「ティアはあーんってしてくんねーのか?」
「っ!そんな恥ずかしくて出来るわけないじゃないですか!
…ヴァイスさんがして欲しいのなら、その、してもいいですけど」
「シャーリー、明日の休暇どうする?」
「うーん、どうしよっか」

「なんなんでしょうね、これ…」
「なんなんだろ、これ…」
「なんなんだろうね、これ…」
3人は暗いまま、黙々と食事を続けた。

「ただいま〜」
「あ、おかえり、なのは」
シャワーも浴びずにボーっとしていたフェイトの元になのはが帰ってきた。
いつもなら楽しかったという気持ちと、その楽しかった時間が終わってしまった
残念さが混ざった複雑な表情なのだが、今日のなのはの顔には喜びが満ち溢れている。
「なにか嬉しそうだね?」
フェイトの問い掛けに、待ってましたと言わんばかりになのはは、左手を突き出した。
その左手の薬指には、燦然と輝いているものがあった。
結婚を約束されたものだけに許される指輪。
「プロポーズされたの!?」
「えへへ〜、されちゃいました〜」
眩しいほどの笑顔で輝くなのは。
それは、2人の差が更に開いた瞬間でもあった。
「ユーノ君、いつもと雰囲気が違うな〜って思っての。緊張してるっていうか気合いが入ってるっていうか」
聞きもしてないのに、話し始めるなのはと、うんざりした表情のフェイト。
「それでね、凄い高そうなホテルの最上階で食事してね。しかも個室なんだよ!夜景がすごく綺麗だったんだ」
フェイトの中の糸がミシミシと音を立てていた。


3時間後、なのはの惚気話はまだ続いていた。
プロポーズの話がいつの間にか、フェイトが耳に胼胝が出来るほど聞いた話になっていた。
「ユーノ君が怪我してたのを私が見付けてね…フェイトちゃん?」
話に夢中になっていたなのはは、下を向き小刻みに震えているフェイトに気付いた。
「ダマレ…」
フェイトの中でなんとか繋がっていた糸がついに限界を超え、切れる
「フェイトちゃん?」
「…うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
この世のものとは思えない雄叫びを上げたフェイトは、ベットを腕の力だけで持ち上げてしまう。
「ふぇ、ふぇふぇ、フェイトちゃん!?」
同じ歳の親友が魔法を使わずにベットを持ち上げるという、信じられない光景に
ベットに乗ったままのなのはは、混乱する。

「悪魔と淫獣の馴れ初めなんざ何百回と…聞いたわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
再びの絶叫と共になのはの乗ったベットを投げるフェイト。
「きゃ〜〜〜」
なのははベットから転げ落ち、尻餅をつく。
「バルディッシュ!!セットアップ!!」
鬼のような形相でBJを纏うフェイトをなのはは呆然と見ることしか出来ない。
「ザンバーーーモーーードォォォォォォォォォォォァァア!!!」
三度の叫びが、バルディッシュをザンバーモードへ変化させる。
ちなみにバルディッシュも「YES」やらなんやら言っているが、フェイトの声で聞こえやしない。
「どいつもこいつもいちゃいちゃしやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

バルディッシュを一閃し壁を破壊して、外に飛び出ていったフェイト。
『なのはちゃん!一体どないしたん!?』
呆然としたままだったなのはは、親友からの念話に意識を取り戻す。
『はやてちゃん!私、ユーノ君にプロポーズされたの!』
『ほんまか?ユーノ君もついに決断したんやね、ってちゃうわ!!』
「きゃーーー」
「うぎゃーーー」
「滅びろ、バカップルどもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
なのはのズレた話とはやてのノリ突っ込みの間も、誰かの叫びは響いていた。
『フェイトちゃんのリミッターが外れとる!一体何が、きゃーーー』
「部下の親に手ぇ出してじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
はやての元にやってきたフェイトによって、念話は途切れた。
「レインジングハート!」
なのはBJを装着すると、外に飛び出した。
そして、なのはが見たのは、鬼の形相で電撃を放ちながら、剣を振りかざす雷神様の姿だった。

暴虐無人に暴れ狂うフェイト・T・ハラオウン(処女、彼氏いない歴=年齢)の雄叫びに賛同した
ギンガ・ナカジマ(処女、彼氏いない歴=年齢)、スバル・ナカジマ(処女、彼氏いない歴=年齢)も加わった、
後に『黒い雷神の暴走』と呼ばれ、機動六課隊舎に多大な被害を齎したこの惨劇は、
天空から舞い降りた星の光によって一応の終結を見た。
その後、六課一同は、フェイト、ギンガ、スバルの3人の為の合コン開催やお見合い相手探し、
恋愛に発展するように仕掛けたりするのに四苦八苦だったという。

著者:23スレ92

このページへのコメント

見てて思いっきり笑った(笑)
こういうのもありですな(≧▽≦)

0
Posted by RINK 2010年07月20日(火) 00:37:19 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます