527 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/12/28(月) 22:46:15 ID:1mudrMho
528 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/12/28(月) 22:46:58 ID:1mudrMho
529 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/12/28(月) 22:47:44 ID:1mudrMho
530 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/12/28(月) 22:48:32 ID:1mudrMho
531 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/12/28(月) 22:49:22 ID:1mudrMho
532 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/12/28(月) 22:50:32 ID:1mudrMho

「みんな、ごめんなさい」

 なのはの声も耳に入らないように、一同はテキパキと動く。
 謝罪を聞く時間があれば身体を動かして一刻も早く準備を整えたい。それが全員の本音なのだ。

「シグナム! そっちは」
「完了しました。シャマルの結果待ちです」
「私は大丈夫。はやてちゃんはどうですか?」
「任せとき、準備はバッチリや。いつでもいけるで。エリオとキャロは?」
「はい」
「間に合うと思います!」

 そこへ駆け込んでくる二人。

「はやてさん、遅くなりました!」
「何か手伝える事は?」

 二人の姿を確認したはやてはニッコリと笑う。

「ティアナ、スバル。来てくれたんか」
「当たり前じゃないですか」
「あたしたちだって、こう見えても元六課ですよ」
「おおきにや。そしたら、エリオとキャロのフォローよろしく」
「はいっ!」×2

「あ、あの……」

 誰にも謝罪を受け入れてもらえないなのはは、途方に暮れて立ちつくす。

「なのは」
「フェイトちゃん」
「そんなに気を落とす事無いよ」
「でも、みんな忙しいのに私のために」
「それは違うよ。なのは」
「え?」

 フェイトは温かい目でエリオとキャロのほうを見やる。

「なのはのためじゃない。これは、あの子のためなんだから」


 事の起こりは三日前。

 メガーヌ・アルピーノは娘であるルーテシアの様子に気付く。
 なにやら物思いにふけっている。そして、明らかに気落ちした様子。

「なにかあったの?」

 ルーテシアは首を振って何も応えない。
 メガーヌはとりあえず、普段から娘の近くにいる召喚蟲ガリューに尋ねることにした。

「ガリュー、何か知ってる?」
「いえ、私にもさっぱりです」

 もちろん、ガリューがこのように話したわけではないが、この程度の細かい意思疎通までがメガーヌには可能なのだ。

「なにか、心当たりはある?」
「さあ……。ただ、あのように心を痛めておられるのは先日の朝からであったと思いますが」
「朝?」

 先日、ではなく具体的な時間の指定にメガーヌは首を傾げる。

「朝なの?」
「正確には、起きられてから数分後でしょうか? あの日、起きられてすぐにお嬢さまは枕元で何かを探しておられる様子でした」 
「夜の内に何か置いておいたのかしら?」
「いえ。夜の見回りでも何もありませんでしたが」
「ガリュー? 貴方、夜中にルーテシアの寝室に入っているの?」
「はい。私は殆ど寝る必要がありませんので、基本的には不寝番をしております」
「いつから?」
「ゼスト殿と別れてからは殆ど毎晩ですが」

 メガーヌは少し渋い顔になるが……

「まあ、いいわ。貴方が蟲族でなかったら吹き飛ばしているところだけど」
「なにか、ご無礼をしてしまいましたか?」
「いいえ、気にしないで。貴方の忠誠は希なるもの、何物にも代え難いルーテシアの宝だわ」
「身に余るお言葉です」

 その、少し後……

「私、まだ悪い子……」

 ルーテシアは、ぽつんと一人、玄関横の大木の麓に座っている。

「悪い子だから……来てくれないんだ」

 込み上げるものを隠すように俯く。

「良い子にしてるよ……もう、悪いことなんてしないよ……」

 それでも、数粒の涙が地面に落ちる。

「ごめんね、キャロ。ごめんね、エリオ。ごめんね、ヴィヴィオ。ごめんね、なのはさん、フェイトさん、はやてさん、スバルさん、ティアナさん」

 六課の、いや、当時戦った相手の名前を一人一人挙げては謝っているルーテシア。
 ちなみに直接攻撃した某狙撃手の名前は最後まで出なかった。素で忘れているらしい。一年以上経ってるので仕方ない。

「ごめんね、ごめんね、みんな……」

 その姿を、メガーヌは見ていた。しかし、話しかけることはできない。
 自分がいなかった頃のルーテシア。その体験が娘に何を与えたのか。
 それは決して理解できることなどないだろう。
 しかし、一つだけは言えた。
 スカリエッティラボから救出された自分。その自分のリハビリのため、あるいは事情聴取のために姿を見せた六課メンバー。彼女たちは信用できるとメガーヌは感じていた。
 その彼女たちが原因だとは思えない。彼女たちは、すでにルーテシアとは交友関係と言っていいものを築き上げている。ルーテシアが彼女たちに対して必要以上の罪悪感を抱くことなど無いはずなのだ。
 メガーヌは一つ決意すると、通信装置に手を伸ばした。


 珍しい物を見た。とはやては思う。
 泣く子も黙る、というか、泣く大人も砲撃する、敵無し容赦無し浮いた話無しの三無教導官、高町なのはの土下座である。
 正確には土下座ではなく、限りなく土下座に近い最陳謝なのだけれど。

「なのはちゃん。何やったんかな?」
「なのは。何をしたの?」

 状況はなのはにとって最悪だった。
 そして、メガーヌからの通信はたまたま三人一緒にいるときに送られてきた。
 まず、六課時代の話と言うことで、はやての目が厳しい。ルーテシア……というよりも子供が絡んでいると言うことで、フェイトの目も厳しい。
 とは言っても、さすがに二人もなのはがルーテシアを苛めたという結論には達していない。

「えっと……何をしたというか、話したというか……」
「思い当たる節があるんやね?」
「なのは。お話しようか?」

 二人の重圧に耐えかね、なのはは言う。

「……多分……サンタさん」
「は?」
「え?」

 ナンバーズとルーテシアの矯正施設での生活。そこには、六課のメンバーも入れ替わり立ち替わり訪れていた。
 ただ訪れるだけでなく、色々と話をすることもあったのだが……

「良い子のところにはサンタクロースがプレゼントを持ってきてくれるの」

 なのはは確かにそう言ったのだ。
 ちなみに、チンクとウェンディとルーテシアが目を輝かせていたらしい。
 チンクとウェンディはナカジマ家に引き取られたときにその誤解を正された。
 ルーテシアの誤解を解く者は誰もいなかった。

 そして、ルーテシアは考えた。
 良い子の所にサンタさんが来る。
 悪い子のところにはサンタは来ない。
 サンタさんが来ないルーテシアは悪い子。
 事件が終わって一年経ってもやっぱり来ない。
 サンタさんはルーテシアを許さない。

「なのはちゃんが悪い」
「それは……なのはが悪いよ」

 親友二人から下されたのは有罪判決。

「ど、どうしよう」

 なのはにしてみても、今のルーテシアの反応は不本意以外のなにものでもない。
 いや、メガーヌにサンタの話を教えておけば問題はなかったのだ。

「だって、ガリューだって聞いていたのに! 何とかすると思ってたのに……」
「召喚蟲にそこまで期待する方がおかしいよ」

 言いながらフェイトは、やや逆ギレ気味のなのはが地球出身であることを再認識する。

「だって、使い魔ってアルフやザフィーラみたいな人ばっかりかと……」
「アルフは特別だよ」
「なのはちゃん、ザフィーラは使い魔ちゃう。ヴォルケンリッターや」
「ザフィーラさんは別としても、ガリューはアルフよりもフリードのタイプに近いからね」
「うう……どうしよう。ちゃんと謝らないと」
「それはそうだけど……」

 この期に及んで謝って済むだろうか、とふとフェイトは考える。
 悪気がないとはいえ、ルーテシアを傷つけてしまったことは確かなのだ。

「よし。サンタさん、呼ぼか」

 はやての言葉に、フェイトは驚く。

「え、もしかして、本当にいるの!?」
「いやいや」

 はやては苦笑しながら、フェイトが地球外出身だと再認識する。

「私らが、サンタになる。三日遅れのプレゼント付きクリスマスパーティーや!」

 ルーテシアは、サンタを待つことを止めました。

 サンタはもう、こなくてもいいのです。サンタがいるかいないかなんて、どうでもいいのです。

 だって、サンタよりももっともっと素敵な、もっともっともっと会いたい人たちがいるのだから。

 だから、ルーテシアは、良い子です。


著者:野狗 ◆NOC.S1z/i2

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