947 名前:レジアス中将メタボ症候群 [sage] 投稿日:2010/12/16(木) 23:54:02 ID:k6iPwXT. [2/3]

レジアス中将メタボ症候群



「ぬぅ……ぐぉ」


 地上本部の一室で、くぐもった男の呻きが漏れる。
 低い声音が部屋の中に木霊する。
 喘ぎと共に悶える体。
 声は苦しげだが、男は手を緩めなかった。
 その太く逞しい手は、己を戒める装身具に一層と力を込め、締め上げた。
 自分で自分に苦しみを与える様は、まるで倒錯的なマゾヒズムを思わせる。
 男は己を徹底的に締め上げると、ようやくその手を緩めて深く息をついた。


「ふう……」


 男はそうして、自分自身を締め上げていたモノを見た。
 それは……腰のベルトである。
 正直、かなりきつく締められたベルトだった。
 大きく突き出た腹に食い込む様は少々見ていて痛々しい。
 己の腹を見て、つぶやく。


「むう……やはりオーリスの言う通り、少しは減量すべきだったか……」


 愛娘の苦言を思い返してそう言うのは、何を隠そう時空管理局地上本部所属の中将、レジアス・ゲイズその人であった。
 彼の目下最大の悩みは、そう……その大きく出た自身の腹であった。
 昔は少なからず鍛えて体型を維持していたのだが、さすがに寄る年波には勝てず、いよいよ贅肉と言うありがたくない装甲が付き始めた。
 今ではすっかり娘から食事量を控えろだの、メタボリックだの言われている始末。
 以前はちゃんとサイズが合ったベルトも、レジアスの腹の前で悲鳴を上げている。
 やはり新しいものを買うべきか。
 そう思案するが、時計を見れば既に出勤時刻が迫っている。


「ええい、構わん!」


 そう断じ、レジアスは構わず上着を羽織って家を出た。
 まさかそれがあんな悲劇を招くだなんて知らずに……。





「――であるからして、地上本部には今以上の戦力強化が望まれるのである!」


 さて、今日もレジアス中将は仕事である、演説である。
 力のこもった彼の言葉は会場のみならず、TV中継も介して全国ネットで流れていた。
 多くの人々に地上本部の現状を訴えかけようと、中将の演説にも力が入る。


(ぬう! き、きつい……!)


 そうなれば自然と、腹に力が入るわけで。
 無理やり止めたベルトは食い込む。
 だがこんな事に負けるレジアス・ゲイズではない。
 腹に力を入れ、食い込むベルトもなんのその、声を張り上げる。


「だ、だからこそ我々地上本部はぁ……ぬぉおお!」


 一層力を込めた、その瞬間だった。
 ブッツン! と音がした。
 腹から。
 何かが飛ぶ。
 レジアスの視線が追いかける。
 見慣れた金属物、ベルトのバックルだった。
 全てを理解した時には、もう既に遅かった


「き、きゃー!!」


 会場でレジアスの演説を聞いていた前列の女性が悲鳴を上げた。
 そして広がるざわめき。
 きっと会場どころか、TV中継を見ていた全ての人が驚愕に叫んでいる事だろう。
 レジアスのベルトが決壊し、ズボンのフックも千切れ、そうして露になる……彼の下半身。
 見よ! その姿を!
 何たる事か、彼の下着は驚くなかれ、純白である。

 気持ち良いくらい純白のフンドシであるッ!!

 肌に密着した事で分かる、股間の雄々しき膨らみ!
 溢れるギャランドゥ!
 後ろでの食い込む尻!
 あまりの光景に泡を吹いて倒れる女性の数々!


「……」


 当のレジアスは、思考がフリーズしたのかマイクを持ったまま直立不動だった。
 そうして長々と、彼の白フン姿は全国ネットで放映され尽くされ、彼の局員生命を絶つのに大いに貢献した。


 地上本部の中将の職を追われた彼は、今では居酒屋を営んでのんびり暮らしているという。


終幕。


著者:ザ・シガー

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