最終更新: nano69_264 2009年09月12日(土) 20:27:16履歴
81 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 1/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:52:56 ID:yIiRtzQI
82 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 2/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:53:48 ID:yIiRtzQI
83 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 3/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:54:41 ID:yIiRtzQI
84 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 4/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:55:30 ID:yIiRtzQI
85 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 5/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:56:12 ID:yIiRtzQI
86 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 6/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:57:28 ID:yIiRtzQI
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88 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 8/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:58:46 ID:yIiRtzQI
89 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 9/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:59:29 ID:yIiRtzQI
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91 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 11/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 20:01:09 ID:yIiRtzQI
92 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 12/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 20:01:42 ID:yIiRtzQI
ヘリの整備をしていたヴァイスのもとへやって来たシグナムはいきなり、ヴァイスに言った。
「ヴァイス・グランセニック陸曹。好きだから付き合え」
……。
ちょっと、冷静になろう。いわゆるセルフ少し頭冷やそうか。
なにが起きたのか、脳内巻き戻しボタンできゅるきゅるっと巻き戻し。
いきなり整備所にやって来たライトニング02が、慌てて敬礼で出迎えたヴァイスに、直球勝負の言葉をぶつけてきた。
「好きだから付き合え」
もう一度だけ繰り返しちゃおうかな、とあまりのことに軽く酩酊状態に陥るヴァイスに、シグナムはずずいと顔を近づける。
「なっ、なんすか!?」
思わず仰け反るヴァイスに、冷静に一言。
「顔が赤いな。風邪でも引いたか」
誰のせいだよ馬鹿! と思わんでもないが、数歩シグナムから後ずさりしつつ取り繕いの笑顔で答える。
「そ、そんなことないっすよ。あ、そっか。姐さん、冗談言って俺のことからかったんすか。危うく引っかかるところでしたよ。あはは、考えてみたら姐さんが俺のこと好きになるなんてそんなワケないっよねー」
「女が男を好きになるのにワケなどいるか! そして私は女だ!」
格納庫内に響きわたる逆ギレ? の声。わんわんと残響する中、なんだなんだと同僚たちがこちらを向く。
「始めて見たときから、お前には何か心引かれるものを感じていたんだ。好敵手としてではない、いうなれば生涯の友としての何かをだ」
「そ、それって普通に友なんじゃ……」
「いや、シャマルに相談したら、『それは恋よ、シグナム。シグナムも女の子だったのね〜』といわれた」
(シャマル先生……!)
嬉しいんだか迷惑なんだか、判断しづらい感情がヴァイスの拳をふるふると震わせる。
いや、迷惑なはずがない。
こんな美人に熱烈に告白されるなど、男冥利に尽きるではないか。
ただちょっと、ヴァイスの趣味とは違っていたけれど。
「お前はどうなのだ。私のこと、どう思う」
「そ、そうっすね」
正直……、ヴァイスの趣味からは外れていた。だからこそ今まで、彼女のことは「美人で強い、頼もしい上司」としてしか見ていなかったのだが……。
「ティアナか」
「へ!?」
「ティアナなのか。お前の想い人はティアナなのか」
「違いますよ! ティアナはただの妹分で……」
「……そうか」
背を向けたシグナムの姿が、一瞬にして騎士甲冑に包まれた。
どこからか流れ来る華麗なピアノの調べ――そして決意を秘めた歌姫の歌声。BGM:Pray 唄・水樹奈々
「ちょい待ちーーーーっ!」
慌ててヴァイスはシグナムの肩をぐいっと掴んだ。
「どこ行くつもりですか、姐さん!?」
肩を持って振り向かされたシグナムの、その蒼い瞳は涼しく細められている。
「ちょっとティアナと お 話 し て く る」
(殺る気だ……この女殺る気だ……!)
内心ガクブルなヴァイスだが、割と男前であると自覚している面をキリリと引き締めて、己より少し低い位置にある烈火の将の蒼い瞳を見つめる。
「勘違いしないでください、姐さん。俺は確かに妹萌えです。けどそれはティアナだけじゃない……姐さんだって立派に妹じゃないですか!」
「そうか?」
「そうです!」
言い切ってしまった。冷や汗を背筋に感じつつ、ヴァイスは必死に頭を働かせ言葉を続ける。
「ヴォルケンリッターの方々は八神家っていわれてますよね? ええっと八神部隊長がお母さんとして……ザフィーラの旦那がお父さんとして……シグナム姐さんは……シグナム姐さんは……」
シグナム姐さんは? ……ええと、シグナム姐さんは……なんだろう。ここまで出かかっているのだが……。
はっ!(ひらめきのSE)
「次女です! 次女です! シャマル先生とヴィータ副隊長との間に挟まれた次女です! 次女は姉であると同時に妹でもありますよ!」
「そ、そうか。なんだか照れるな」
ぽっと頬を赤らめて視線を落とすシグナム。
誰かに自慢したい。ヴァイス・グランセニックは、ただ今人知れずティアナの命を守りました。
まあそれはいいとして――。
上気した頬で視線を落とすシグナムは、普段の凛々しさが薄まって年相応の、というか推定年齢相応の乙女みたいである。
(こんな美人が俺のこと……)
単純だが、それだけでヴァイスの心は決定的にシグナムに傾いた。もはや妹系に未練はない。これからはポニーテール萌えで生きていこう、そう決意する。となるとリンディ総務統括官まで……? いや、今は後ろで一つに束ねているんだっけか?
雑念は捨てよう。目の前のピンク髪の騎士に萌えの全てを捧げるのだ。
「……あ」
ヴァイスは今さら、シグナムの肩に手を掛けていたこと(それもかなりがっしり掴んでいたこと)を思い出し、慌てて放した。
「す、すいません。俺……」
「うむ。まあその、なんだ。お前の好みも理解した……その好みに私が合点しているということも理解した。それはつまり、私と付き合ってくれる、ということだな?」
「はっ、はい。よろしくお願いしますっ!」
思わず踵を合わせて敬礼してしまうヴァイスに、シグナムはふっと優しく微笑んだ。
「そう堅くなるな。他人行儀に見えてなんだか悲しいぞ?」
「すみません! ……あ」
癖で敬礼してしまうヴァイスにふふふと笑いかけ、シグナムはきびすを返した。
「それじゃあな。話はそれだけだ」
烈火の将はまさに炎の舌が嘗めるがごとくぶわっとヴァイスに襲いかかって、そして去っていってしまった。
呆然と、彼女が去っていったまばゆい外界を見ているヴァイスの耳に聞こえてくる、同僚たちの囁き声。
「おい、今の。勤務中に告白だと?」
「しかもヴァイスのやつ、受けたぞ」
「いや、受けたっていうか……脅迫に屈したというか……」
キッ、とヴァイスが睨むと黙ってしまう同僚たち。そして、
「さーて仕事仕事」
なんて白々しく口にして、持ち場に戻っていってしまう。
別に脅迫されたから告白を受けたんじゃねえよ、と心の中で毒づくヴァイス。
好きだった。確かにヴァイスはシグナムのことが好きだった。好きでもない女性を姐さんと呼んで慕うわけがないではないか。
まさかこんな形で告白されるとは思ってもみなかっただけである(しかも仕事中に)。
† † †
仕事が終わり、宿舎に帰ったヴァイス。
結局あれ以降、シグナムからの接触はなかった。
こちらの仕事終わりを待っているのかと思っていたヴァイスは少し拍子抜けした。
だが考えてみれば、仕事終わりを待ってデートなんてそれどこの恋愛ゲームだよである。
ヴァイスとシグナムは大人同士だ。それなりの距離感を保ちつつ愛を育む……というのも、まあ悪くはない。
明日の昼にでも姐さんとその辺の話をすっかー、と考えつつ、風呂上がりのトランクス一丁で歯を磨くヴァイス。
まずは映画だろうか。いきなりホテルはまずかろう。ショッピング……はてあの烈火の将は買い物で楽しめるのだろうか。
あの剣の騎士が確実に好きなことといえば……
……………………決闘?
海沿いの公園にいるシグナムを遠くのビルの屋上からストームレイダーで狙い撃ちする自分の幻影が頭をよぎった。
トリガーを引けば、訓練弾ではない、本気のスナイプショットが放たれる。
シグナムは当たり前のように一瞬にして騎士甲冑に身を包み、炎をまとったレヴァンティンを振るってスナイプショットを爆散。
そしてスコープ内の彼女が肉眼では見えないはずのこちらをまっすぐに見つめ、爆風に長いポニーテールをなびかせながらにこっと花のように笑うのだ。
念話がヴァイスの脳に届く、「なかなかよい弾筋だが、私を仕留めるにはまだまだ力不足だな、ヴァイス」。
それは果たしてデートといえるのか。
まあとにかく、全ては明日、シグナムと話し合って決めればいい。決闘の案は冗談めかしていってみよう。一歩間違えれば確実にシグナムを傷つけてしまうから。満面の笑顔で賛成されてもそれはそれで困るし。
鏡の中の自分の顔は、嫌なデートシュミレーションにもかかわらず嬉しそうである。なんだかんだいって、好きな女性とのデートプランを練るのは楽しいものだ。
と、その時。
ピンポーン、と来客を告げるチャイムが鳴った。
「はーい」
誰だろう、さてはシグナム姐さんと付き合うことになった俺をからかいに来た同僚だな――なんて思ったヴァイスはそのままの格好でドアを開けた。トランクス一丁の歯磨きスタイルで。
「夜分遅くすまん、ヴァイス」
そこには烈火の将、シグナムがいた。しかも騎士甲冑姿。対するヴァイスは青と白のしましまトランクス一丁、得物は歯ブラシ……。
「ちょっと待ってて下さいっ!」
歯磨きの泡を飛ばしつつ扉を乱暴に閉めたヴァイスは、大あわてで隊服を着込むともう一度扉を開けた。慌てていたので歯ブラシまで再着している。
「お待たせしました、姐さんっ」
「いや、別に待っていないが」
「何かご用で……いや、ここではなんですから中に入ってください!」
「そうさせてもらう」
素直に招きに応じるシグナムのうなじを見送りつつ、ヴァイスは歯ブラシを噛みしめていた。
これから何が起こるというのだろう。
まさか……決闘……?
† † †
茶を淹れて持っていくと、シグナムはローテーブルについて部屋のあちこちを見回しているところだった。男の一人暮らしが新鮮なのだろう。
「お前の好みか。……ということは、私に似ているのだな」
「へ?」
シグナムの視線を辿れば、そこには童顔で胸のあまりないグラビアアイドルのビキニ姿……のポスターが。
ヴァイスはお茶をローテーブルにスマートに供してから、ポスターに手を掛けた。
「そっすねもうそっくりっすよ! もう俺の趣味ど真ん中に打ち抜いてますから姐さんは!」
「ではなぜそれを剥がしている?」
「もう俺の彼女はシグナム姐さんしかいないですから! もういらないんすよ他の娘なんて!」
「そうか……」
ぽっ、と頬を赤らめるシグナム。ポスターを丸めながらヴァイスは思う、こういうところは手放しに可愛いんだよなあ、と。
ローテーブルに向かい合って座ったヴァイスは、おずおずと切り出した。
「ところで姐さん、何かご用で……?」
「ああ。早速で悪いが、セックスするぞ」
「……へ?」
目を白黒してしまうヴァイスに、ごく真面目な顔でシグナムは頷く。
「シャマルに相談したのだ。そうしたら、ヴァイスは人気があるから一刻も早く既成事実を作ってしまうのが得策だ、といわれた」
「そんな焦らんでも……」
そりゃあ早いところ手を出したい、とは思う。が、それだけの男と思われるのは嫌だ。
……というか多分、いや絶対、相談する相手を間違っている。かといって誰に恋の相談などしたものか。意外なところでザフィーラがまともなアドバイスをしそうか。
「不安なんだ」
シグナムの目は真剣そのものだ。
「ティアナに盗られそうで」
「それだけは絶対にありません」
即答してしまう。気があるわけではない、彼女には妹を重ねていただけである。声が似ているし……。
「その即答が逆に妖しいな」
す、と目を細くしてヴァイスを睨むピンク髪の騎士。今にも傍らに置いたレヴァンティンに手が伸びそうだ。
「妖しくないですよ! 俺別に姐さんのこと疑ってませんから。姐さんはせいぜいが殴り飛ばすくらいで、ティアナの頭冷やすことまではしないって俺信じてますから」
「何を言っているのだ?」
「だから、俺は姐さんを信じているんです」
見つめ合う二人。
ヴァイスはティアナが紫電一閃を喰らうところを想像した。ティアナは自分のことを凡人などというが、そんなことはない、十分才能溢れる若者である。それでも六課の他の連中と比べたら圧倒的にただの少女である、シグナムの剣など喰らおうものなら……マジで死ぬ。9歳でシグナムたちヴォルケンリッターと対等に渡り合ったというフェイト・T・ハラオウンや高町なのはとは、やっぱり次元が違うのだ。
「俺は……」
ヴァイスは生唾を呑み込み、言った。嫌な想像で声が掠れていた。
「俺はシグナム姐さんが大好きです」
だからどうかティアナは助けてあげて下さい、と、これは言葉にはしないが。
「うむ、まあ、そう見つめるな……疑った私が悪かった」
ぽそっと呟くシグナムの頬が赤い。
とりあえずの危機は去った(ティアナの)。
ほ、と息をつくヴァイスに、彼女は言った。
「ではヴァイス……。早速、お前のレヴァンティンを私の旅の鏡にぶち込んでもらおうか」
お茶を飲んでいなくてよかったと思う。飲んでいたら吹き出していた。絶対。
「ね、姐さん? 何を言ってらっしゃるんで?」
「うん? こういえば男はその気になるとシャマルから聞いたのだが……」
(シャマル先生……!)
ヴァイスは膝の上で握った拳をふるふると振るわせた。
やっぱり相談する人を間違えてます、シグナム姐さん。
「何かおかしかったか?」
何もかもおかしいですと答えそうになるのをぐっとこらえ、ヴァイスは微笑んだ。
「いえぇ、あまりにもインパクトがアルカンシェル級だったのでびっくりしただけです」
「そうか。私もなにかおかしいと思ったのだ。お前が持っているデバイスはストームレイダーであってレヴァンティンではないからな。私だってクラールヴィントなど持っていない。まったく、シャマルはいい加減だな」
そういうことじゃあないんすけどね、とヴァイスは思うが口には出さなかった。
「えと……姐さん? じゃあシャワーでも浴びてきますか? 俺、さっき風呂あがったとこですので……」
セックス自体は嫌ではない。彼女が求めてきたら答えるのが男の役割だ。ティアナに盗られそうで不安だなんて危険な心配、ヴァイスがそっくりぬぐい取ってやればいいのだ。ヴァイスにしかできないやり方で。
「いや、私もここに来る前に身を清めてきたところだ。準備はばっちりだ、来い」
と籠手をはめた手で胸を叩く烈火の将。
「……あの、姐さん? さっきから何となく気にはなってたんですが……、なんで騎士甲冑着てるんすか?」
「うむ。セックスとは男女の戦いだと聞いた。戦いに挑むとなれば正装するのが相手への礼儀……なあレヴァンティン、お前の主はそれくらいの礼儀は弁えているよな?」
『Ja!』
「……しかしなんですね、相変わらずテンション高いっすねレヴァンティンは」
「まあな。烈火の将の片腕らしいだろ?」
ニヤリと笑う剣の騎士シグナム。
「それはいいとして、姐さん?」
「なんだ」
「とりあえず、騎士甲冑は解除してくださいね」
「どうしてもか」
「当たり前です」
「だが、これからお前と戦うというのにそれでは……」
「か・い・じょ、お願いします」
「そ、そうか……」
しゅん、とシグナムの顔から覇気が引っ込んだかと思うと、一瞬にして騎士甲冑が焦げ茶色の制服へと変わった。
「考えてみたらお前はバリアジャケットがないし……私だけ騎士甲冑というのも不公平だよな……」
不公平も何も、ヘリパイロット兼狙撃手にバリアジャケットなど必要ない。そんなものを編む魔力があるのならターゲットを正確に射抜くことに廻す。
とまあ、そんなことはいいとして。
いつもの、職場の格好。奇しくも今、ヴァイスも職場の服を着ている。
それにもかかわらず、今から使用としているのは、男女の営み。
今さらながら、ヴァイスの心臓がドックンドックンと大きく鼓動を打ち鳴らしてきた。
「ね、姐さん」
先ほどとは違う理由で声が掠れている。
「うん? なんだ」
「ベッド……、行きましょうか」
「ああ」
それを目的に押しかけてきているからだろうか、彼女に迷いはない。この辺りの剛胆さはさすが烈火の将である。
† † †
ヴァイスとシグナムはベッドの縁に並んで腰掛けた。
それなりに女性経験はあるヴァイスだが、それでも手に汗握った。
憧れだった女性との性交に際し、嬉しさよりも緊張のほうが勝っているのだ。
烈火の将、剣の騎士、夜天の書の守護騎士……等々いくつもの二つ名を持つ女性である。しかも美しい。はっきり言ってしまえば、ヴァイスとは格が違う女だ。
「いいんですか、シグナム姐さん。俺なんかと……」
答えは意外なものだった。
「ダメだ」
「へ?」
ここまで来ていきなり駄目出しされても……と戸惑うヴァイスの顔を、ものすごく真剣な眼差しで見つめるシグナム。
「雰囲気がなってない。こういうことは雰囲気が大事だと聞いたぞ。シグナム姐さんではなく、シグナムと呼び捨てにしろ」
目が本気だ。マジだ。
逆らったらレヴァンティンの錆にされてしまいそうな気がする。
ええい、ままよ。ヴァイスは腹を決める。
「シグナム……」
姐さん、と付けたくなるのをぐっとこらえるヴァイス。
「それでいい。それから……」
「なんすか?」
まだ何か注文があるのかと身構えるヴァイスに、シグナムは恥ずかしそうに言った。
「明かりを消してくれ、ヴァイス」
「かしこまりました」
そんなことならおやすいご用だった。
窓の外から街灯の光が漏れ入ってくる。
その薄暗い中、二人の男女は至近距離で見つめ合う。
先に動いたのはヴァイスだった。
そっと、唇で彼女の柔らかい唇を覆う。
「ん……」
閉じた唇の合間をなぞるヴァイスの舌先に、ヴァイスの意志を読みとったのだろう。
彼女は唇に入れていた力を抜いた。
ぬっ、と口内の粘液を保ったまま、ヴァイスの舌がシグナムの唇を割入っていく。
「……ぁ」
自分が舌を入れている場所から甘い声が漏れてくるのが信じられなかった。
しばらく舌を舌で味わっていると、シグナムのほうからも舌を絡めてきた。ヴァイスは夢中になって舌に唾液を渡らせて、彼女の口に注ぎ込む。
二人の顎には、いつの間にか唾液がぬるぬると滴っていた。
「ん、ヴァイス……」
口を離すと、至近距離からシグナムがうっとりと濡れた瞳でヴァイスを見つめている。
「上手いんだな、キス」
「……シグナムだからっすよ」
応えながら、そっとシグナムの肩を押してベッドに押し倒していく。
それから、彼女のボタンに手を掛けて外していく。シグナムは微動だにせずされるがまま、ベッドに仰向けになっていた。
ブラウスのボタンを全部外して左右へはだけさせると、大きな胸を押し包む白いレースのブラジャーが出てきた。
「いつも思ってたんすけど……」
ヴァイスはそっと、レースのブラジャーのカップを押し上げていく。
「姐さんの胸って……凄く、綺麗ですよね。デカいのに張りがあって」
いろいろとテンパってきたヴァイスの感想は、すでに表現に余裕がない。
「……? お前、私の裸を前にも見たことがあるのか?」
「……………………」
やぶ蛇だった。
まさか隊員の変身シーンがロングアーチにより映像に撮られていて、スタッフの不良メガネ(男)が女性隊員の変身シーンだけコレクションしていて、それをたまたま見せてもらったことがあるんだ……なんて正直にいえない。しかも男性隊員の変身シーンはスタッフの不良メガネ(女)によってコレクションされているんだ、なんてこともいえない。なんでエリオきゅん裸にならないのー!? と嘆いていたこともいえない。
ヴァイスはなにも言わず、行為に没頭することにした。
紫ブラジャーを上に上げると、ぷるん、と乳がまろび出る。
ぁ、と小さな声がシグナムの口から漏れ、手が巨乳を隠そうとする。だがヴァイスの手の方が早かった。
むにむに、と柔らかい乳を揉む手の上に、シグナムのたおやかな手が置かれた。
「ヴァ、ヴァイス……」
戸惑った女の声。
ヴァイスの耳には、それは届かなかった。聴覚が遮断され、すべては視覚と触覚にまわされていた。あまりにもシグナムの胸が大きくて、柔らかかったからだ。
手に余る大きさの脂肪のカタマリが、ヴァイスの手に合わせて形を変える。そっと周囲から撫でるように触ればぷるんと震え、ぐにゅっと掴むように握れば、手荒い扱いから逃げようとするかのように細長くなる。
そして、先端にある桜色の突起は……まるでめしべのように愛らしく揺れている。
めしべに誘われるまま、ヴァイスはそれを口に含んだ。
「ヴァイス、そんな……んっ!」
半身を起こしてあらがおうとするシグナムを男の力で押さえつけ、ヴァイスは突起を舌でつつく。
「あん、だ、ダメ……っ! そんなこと、したら……っ!」
オクターブ上の可愛らしい声で抵抗するシグナムに、ヴァイスは突起から口を放さず答えた。
「可愛いっすよ、シグナム。乳首こんな堅くして……」
「ち、ちがっ……」
「こっちは……?」
そっと、手を下に持っていくヴァイス。
気付いたシグナムが足をきつく閉じるが、ヴァイスはスカートの中に手を入れてその力んだ股を撫で、ストッキング特有のざらついた布の感覚を楽しみながらゆっくりと上へと手を滑らせる。
シグナムの腹を引っ掻かないように気を付けながら、ぴったり肌に張り付いたショーツの中へと手を潜り込ませ――
ぬるっ
「んっ」
「シグナム……」
ヴァイスは中指の腹に力を入れ、すでにべちょべちょといってもいいくらい濡れているそこをまさぐった。
「下着の替え……持ってきてますか?」
「持ってきてない……っ」
「じゃ、すぐに脱いだ方がいいっすね、これ」
ヴァイスはパンツの中に入れいていた手を出し、端っこに指をかけてストッキングごと引き下ろそうとする。
「待て! いまビリっていったぞ」
「え、そうっすか?」
「自分で脱ぐ。そんな乱暴にするな」
「すんません……」
ヴァイスは素直に手を引いた。どうも、興奮しすぎて力の入れ具合を調節できなくなっているようだ。
シグナムが脱いでいる間に、ヴァイスも服を脱ぐ。
全裸になって振り返ると……ベッドの上にはパンツどころか何も身につけていないシグナムがいた。
薄暗がりの中、彼女の裸はまるで花にひっそりと咲いていた。白く、ふっくらとした美しい花。しかも降ろしたピンク髪が肩にかかって、まるで別人のような……柔らかさだった。
ヴァイスはガツンと殴られたような気になる。
「シ、シグナム……」
「ああ。ついでに全部脱いだ。このほうが手間がなくていいだろう?」
照れはない。あくまでも大真面目な顔をしている。
ふらふらとベッドに上がったヴァイスは、そのままの勢いでシグナムに抱きついた。
「ヴァイス……?」
「可愛い……可愛いっすよ、シグナム姐さん。なんでこんな可愛いんすか」
ぎゅっ、と抱きしめれば適度な弾力が帰ってくる柔らかい腕。ヴァイスの堅い胸板が押しつぶす、柔らかくて大きな乳房。
「可愛いといわれたのは初めてだな。綺麗とか美人とかはいわれたことはあるが……一番多いのは『格好いい』だが」
「姐さん……可愛いっす……誰がなんといおうと……姐さんは可愛いっす」
すでにシグナムを呼びつけにすることを忘れている。シグナムにしてももう注意しない。
シグナムの『女』の匂いがヴァイスの身体を溶かしていく。
うなじからほんわりと汗の匂いがする。香水の香りがしないのは質実剛健な烈火の将である彼女らしい。髪から立つフローラルな優しい香りは、きっとシャンプーだ。身を清めてきた、とかいっていたし。
ヴァイスは抱きついたまま、手を彼女の閉じられた足の間へと滑り込ませる。
「んっ」
びくんっ、と帰ってくる反応を、ヴァイスは抱きしめて吸収してしまう。
奥へ奥へ、今度は先ほどよりももっと奥へ……。
入り口に指を少しだけ入れると、ぷちゅ……と密やかな粘液の音がする。
「あ……んん……」
シグナムの甘い声を聞きながら、ヴァイスはさらに指を沈めていく。ぬるぬるの柔肉が、ヴァイスの指にきゅぅっと喰いついてくる。
「姐さんのココ……すげえうまそうに俺の指しゃぶってますよ」
「そ、そうなのか……?」
「はい。だからもっと……気持ちよくしてあげますね」
言いながら、ヴァイスは指を動かしはじめた。はじめはゆっくり、シグナムの様子を見ながら。徐々に、じゅぷっ、じゅぷっ、と粘液の音が濃くなっていく。
潤いはすでにヴァイスの手を滴り落ち、シーツに染みを作っていた。
「そろそろ……いいすか、姐さん……」
「ああ……。……その、私……経験ないから、お前が気持ちよくなれるかどうか……保証はしないが……」
「俺の心配なんかしないでください。ああもう、思いっきり優しくしますから。シグナム姐さんこそ、無理っぽかったら言ってくださいよ?」
「ああ……」
一端身体を放し、シグナムを寝かせる。そしてシグナムのそこに己の先端をあてがったヴァイスは、ゆっくりと腰を前に進めていく。
ぬるぬるの愛液に助けられ、とても入りそうにないそこにヴァイスは入っていく。
「……んっ、ぅ……!」
「痛いすか、姐さん?」
「ううん、平気……あ、ん……」
本当に、シグナムの嬌声には痛みが入っていないように聞こえる。
ひょっとしたら……とヴァイスは思う。幼い頃から激しいスポーツをしていた女性は、自然と処女膜が破れていることも多いという。足を大きく開く競技なんかに多いと聞く。スポーツではないが激しすぎる動きをしてきた烈火の将なら、自然と破れていたとしても不思議はない。
ちょっと残念だったかな、シグナム姐さんの処女膜破りたかったかも……などと身勝手なことをちらっと思うヴァイスだった。
ぎちぎちの膣に、全てが収まった。
「あ、ふっ……」
処女膜が破れる痛みはなかったにせよ、初めての感覚は相当ショックなようである。シグナムの瞳にはいつしか涙が溜まっていた。
「姐さん……やっぱ痛いんすか?」
「いや……? 気持ちいいぞ……。ヴァイスはどうだ? 私のは、その、具合はどうだ?」
「最高ですよ。熱くてきつくて……ああ、なんかもう、溶けそう。動かしていいすか?」
「ああ……」
シグナムのお許しをもらったところで、ヴァイスは晴れて腰を動かしはじめた。
最初はゆっくり、慣らすように。
にゅう、と入らないようなところに無理矢理に入り、にゅうっ、と押し出される。凄まじい膣圧だ。そのくせ妙に優しくヴァイスを包み込む。
それをだんだん、リズミカルに。
「ん、あ、ヴァイス……!」
ヴァイスが奥をえぐるたびにシグナムの口から喘ぎ声が漏れる。
「姐さん……!」
ヴァイスは誘われるように、その口に自分の唇を重ねた。
遠慮なく舌を入れ、ちゅく、ちゅく、と彼女の唾液を吸う。
「ん、はあっ!」
シグナムが大きな喘ぎ声をあげた拍子に唇が離れた。
ぷるん、とヴァイスの胸板に伝わってくる重量感たっぷりな柔らかい乳房。
ヴァイスは自然と、その揺れる乳房を荒く掴んだ。ほぼ無意識につんと尖った乳首を口に含み、舌先でつつく。
「んんっ!!」
きゅうぅぅっ、と今までにないほど締め付けがきつくなる。それだけでイってしまいそうに
なるが、男のプライドで耐える。
「……姐さん、ひょっとして……。胸、弱いんすか?」
「分からない……だが、なんというか……鍛えられてはいると思う……」
噂に聞く八神はやてのセクハラで、だろうか。
まあ、胸が弱いのは好都合だから細かいところまでは考えないようにしよう。
ヴァイスはそう決めると、また腰を動かしはじめた。
「んっ、やっ、あっ……」
甘くとろける声。
そして、
ヴァイスは手で大きくて柔らかい胸を掴み、
「やっ、ヴァイスぅ!!」
ベロベロと、猫が毛繕いをするように丁寧に、卑猥に乳首をなめ回す。こりっと充血した乳首は舌で押すと、「もっとして」といわんばかりの反発をヴァイスの舌に伝えてくる。ご希望にお答えしようと、ヴァイスは舌で普通になめたり横で押したり、裏側を使ってこりんっと転がしてみたり。
「あっ、やっ、だめっ、そん、なっ!」
口では反発しているがシグナムのなかは嬉しそうにとろけきり、ぎゅうううっとヴァイスを締め上げている。
ヴァイスは一端舌を引っ込め、
ぷっくりと勃った可愛らしい先端を、
軽く歯で噛んだ。
「〜〜〜〜〜っっっっっっ!!」
シグナムの身体がびくんっとしなった。
じゅわ、とヴァイスに絡みつく粘液の量が一気に増える。
締め付けがきつい。これだけ溢れているのに動かすのが辛いくらいだ。
もちろん、ヴァイスにしても限界である。
「姐さん、俺もうイク……! イっていいすか、俺、イっていいすか?」
「んっ、イって……、イって、ヴァイスぅ!」
熱に浮かされたうわごとのように、シグナムは言う。
OKをもらい、ヴァイスはいよいよ腰を早めていく。我慢していた快感を一気に爆発させるために。
「くっ、あっ、ん、やっ、また……ん、イっ、イっちゃうぅ、イっちゃうの、またっ、だめヴァイス、ヴァイス、や、ふぁあああああああああああっ!!」
「っく……!」
シグナムの肩を堅く抱きしめ、一際強く腰を打ち付けたヴァイスは、最後の一滴までシグナムの最奥へと注ぎ込んだ……。
† † †
「ヴァイス陸曹、シグナム副隊長とつきあってるんでしょ?」
そんなことをティアナに言われたのは、シグナムとの熱い一戦が繰り広げられた翌日の昼、食堂でのことだった。
昨夜は熱かった。ある意味決闘だった。
なかに出してしまったことを土下座して謝るヴァイスに、気にするな、だがもし妊娠したら責任は取れよ? と好漢っぽくシグナムは笑いかけてくれた。
もう、ヴァイスとしては全力で責任をとる所存になった。というか、是非責任をとらせていただきたかった。
あまりにも気負いすぎたのだろう。その夜の夢は、シグナムと結婚して子どもを3人もうけ、管理局を引退してから静かな世界に引っ込んで静かに老後を過ごすかと思ったら何故かピンクのポニーテールをした巨大ロボにシグナムと一緒に乗り込んで二人で息を合わせて紫電一閃をかますというワケの分からないダイナミックなものであった。
とにかく、ティアナにいきなりシグナムとの仲についてぶつけられたヴァイスは(昨夜のことを思い出し)、思わず飲んでいた水を吐き出しそうになった。
「ティ、ティアナっ、な、なななななんでそれを……!?」
「だってその噂でもちきりですよ機動六課は。すっごく男らしい告白だったって、シグナム副隊長」
スバルやエリオに比べると小食な彼女は、トレーに載せたパンを丁寧にちぎって食べて、微笑んでいる。
筒抜けだった。
「ったく、ここはハイスクールかよ……!」
「でも残念だなー。あたし、少しヴァイス先輩のこといいなーって思ってたんですよ?」
実のところ、好み的にはヴァイスもティアナ派だった。だが好み以前にもうヴァイスはシグナムなしでは生きていけない身体になってしまった。
自分の生命はシグナムのために。そしていずれ生まれくる命のために。それがとても誇らしい。なんだか大人として一皮剥けた気分だ。
それでもヴァイスは軽口を叩かずにはいられない。そういう自分に『成長』してしまった照れもある。
「はは……そいつは光栄だな。浮気でもするか?」
「あ、シグナム副隊長」
ティアナの視線はヴァイスの肩越し注がれていた。
古典的な引っかけだ。真面目で堅物として通っているティアナだが、やはりまだまだ十代の子供。しかも、イタズラし慣れていないためかレベルが低い。
「またまた〜……っ!?」
笑って応じるヴァイスの首元にレヴァンティンの鋭利な刃が。普通刃は冷たいものだが、なんだかこの刀身からは熱が伝わってくる。
そしてヴァイスでも分かるような殺気が、背後から。これは騎士甲冑着込んでるな、と他人事のようにヴァイスは思った。というか本当にいた。
「いい度胸だな、ヴァイス」
深く落ち着いた剣の騎士シグナムの声。
今朝起きると、ヴァイスの部屋にシグナムはいなかった。
かわりに書き置きがローテーブルの上にあった。『先に出勤します。昨日はよかったよ(はぁと) もう、ヴァイス君のえっち(はぁと)』――たぶんシャマルにアドバイスされたのだろうことがまるわかりな、ぜんぜんキャラに似合わない書き置きだった。
そのシグナムが、いま、背後にいる……。
「英雄色を好む、か……。そうだ、お前が真に英雄かどうかこの私が確かめてやろう」
「た、確かめるって?」
前を向いたまま、顔を蒼くして聞くヴァイス。
「私に勝てば、お前を英雄の器として認める。英雄ならば浮気の一つもするものだ。だが私に勝てぬとなれば話は別、お前は英雄などではない、つまり私のことを裏切る器ではない。これほどはっきりしたこともないだろう?」
「え……、ま、待ってくださいよ。今のはただの冗談ですって……おいティアナ、黙ってないでフォローしろよ……っていねええええ!?」
がっ! と襟首を捕まれて、椅子から立ち上がらせられるヴァイス。
「いい決闘日よりだな……そう思わんか、ヴァイス」
襟首を捕まれて引きずられるヴァイスが見たのは、シグナムが見た空と同じ。
それは、哀しいくらいの蒼穹で。まるで、ヴァイスが心から愛することを誓った、美しく凛とした女の瞳のように美しく澄んでいて。
「ってちょっと待った待ってくれ姐さん! けっ、決闘って……?」
ターゲットから見えない場所から狙ってこその狙撃である。気付かれずに撃ってこその狙撃である。
その狙撃手の自分と、剣の騎士シグナムがどうやって決闘などするというのか。昨夜妄想したデートでも、ヴァイスは圧倒的に不利だった。
それともヘリパイロットとしての腕での決闘か。
「ストームレイダー……」
「ストームレイダーで、ヘリ遠隔操作すりゃあいいんすか!?」
「とレヴァンティンで殴り合う」
「決闘になるレベルじゃねえよそれ!」
=英雄の器じゃないこと決定。
「なにを謙遜する、元エース」
「分野が違うっっっっっっっっ!!!」
抗議も虚しく、昼食をとる人々の間を引きずられていくヴァイス。
長いピンクのポニーテールがふわりとヴァイスの鼻先を掠め、昨日の残り香のような甘い匂いがした。
ふと、ピンク髪を下ろしたシグナムの白い裸身が瞼に浮かぶ。デカかったなあ……としみじみ思う。しかも感度抜群だ。
そんな彼女が相手なら、一回くらい死んでみるのも悪くないかもしれない。
だが、それでも青い空を見上げながら爽やかに白い歯をこぼさずにはいられなかった。
(俺を見捨てた借りはいつか返すぜ、ティアナ……)
青い空に描き出された笑顔のティアナの幻想を横切って、きらり、と流れ星が落ちていった。
終わり
著者:ストラディ
82 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 2/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:53:48 ID:yIiRtzQI
83 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 3/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:54:41 ID:yIiRtzQI
84 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 4/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:55:30 ID:yIiRtzQI
85 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 5/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:56:12 ID:yIiRtzQI
86 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 6/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:57:28 ID:yIiRtzQI
87 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 7/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:58:00 ID:yIiRtzQI
88 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 8/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:58:46 ID:yIiRtzQI
89 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 9/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 19:59:29 ID:yIiRtzQI
90 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 10/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 20:00:32 ID:yIiRtzQI
91 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 11/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 20:01:09 ID:yIiRtzQI
92 名前:ヴァイスとシグナムin夜の決闘 12/12 [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 20:01:42 ID:yIiRtzQI
ヘリの整備をしていたヴァイスのもとへやって来たシグナムはいきなり、ヴァイスに言った。
「ヴァイス・グランセニック陸曹。好きだから付き合え」
……。
ちょっと、冷静になろう。いわゆるセルフ少し頭冷やそうか。
なにが起きたのか、脳内巻き戻しボタンできゅるきゅるっと巻き戻し。
いきなり整備所にやって来たライトニング02が、慌てて敬礼で出迎えたヴァイスに、直球勝負の言葉をぶつけてきた。
「好きだから付き合え」
もう一度だけ繰り返しちゃおうかな、とあまりのことに軽く酩酊状態に陥るヴァイスに、シグナムはずずいと顔を近づける。
「なっ、なんすか!?」
思わず仰け反るヴァイスに、冷静に一言。
「顔が赤いな。風邪でも引いたか」
誰のせいだよ馬鹿! と思わんでもないが、数歩シグナムから後ずさりしつつ取り繕いの笑顔で答える。
「そ、そんなことないっすよ。あ、そっか。姐さん、冗談言って俺のことからかったんすか。危うく引っかかるところでしたよ。あはは、考えてみたら姐さんが俺のこと好きになるなんてそんなワケないっよねー」
「女が男を好きになるのにワケなどいるか! そして私は女だ!」
格納庫内に響きわたる逆ギレ? の声。わんわんと残響する中、なんだなんだと同僚たちがこちらを向く。
「始めて見たときから、お前には何か心引かれるものを感じていたんだ。好敵手としてではない、いうなれば生涯の友としての何かをだ」
「そ、それって普通に友なんじゃ……」
「いや、シャマルに相談したら、『それは恋よ、シグナム。シグナムも女の子だったのね〜』といわれた」
(シャマル先生……!)
嬉しいんだか迷惑なんだか、判断しづらい感情がヴァイスの拳をふるふると震わせる。
いや、迷惑なはずがない。
こんな美人に熱烈に告白されるなど、男冥利に尽きるではないか。
ただちょっと、ヴァイスの趣味とは違っていたけれど。
「お前はどうなのだ。私のこと、どう思う」
「そ、そうっすね」
正直……、ヴァイスの趣味からは外れていた。だからこそ今まで、彼女のことは「美人で強い、頼もしい上司」としてしか見ていなかったのだが……。
「ティアナか」
「へ!?」
「ティアナなのか。お前の想い人はティアナなのか」
「違いますよ! ティアナはただの妹分で……」
「……そうか」
背を向けたシグナムの姿が、一瞬にして騎士甲冑に包まれた。
どこからか流れ来る華麗なピアノの調べ――そして決意を秘めた歌姫の歌声。BGM:Pray 唄・水樹奈々
「ちょい待ちーーーーっ!」
慌ててヴァイスはシグナムの肩をぐいっと掴んだ。
「どこ行くつもりですか、姐さん!?」
肩を持って振り向かされたシグナムの、その蒼い瞳は涼しく細められている。
「ちょっとティアナと お 話 し て く る」
(殺る気だ……この女殺る気だ……!)
内心ガクブルなヴァイスだが、割と男前であると自覚している面をキリリと引き締めて、己より少し低い位置にある烈火の将の蒼い瞳を見つめる。
「勘違いしないでください、姐さん。俺は確かに妹萌えです。けどそれはティアナだけじゃない……姐さんだって立派に妹じゃないですか!」
「そうか?」
「そうです!」
言い切ってしまった。冷や汗を背筋に感じつつ、ヴァイスは必死に頭を働かせ言葉を続ける。
「ヴォルケンリッターの方々は八神家っていわれてますよね? ええっと八神部隊長がお母さんとして……ザフィーラの旦那がお父さんとして……シグナム姐さんは……シグナム姐さんは……」
シグナム姐さんは? ……ええと、シグナム姐さんは……なんだろう。ここまで出かかっているのだが……。
はっ!(ひらめきのSE)
「次女です! 次女です! シャマル先生とヴィータ副隊長との間に挟まれた次女です! 次女は姉であると同時に妹でもありますよ!」
「そ、そうか。なんだか照れるな」
ぽっと頬を赤らめて視線を落とすシグナム。
誰かに自慢したい。ヴァイス・グランセニックは、ただ今人知れずティアナの命を守りました。
まあそれはいいとして――。
上気した頬で視線を落とすシグナムは、普段の凛々しさが薄まって年相応の、というか推定年齢相応の乙女みたいである。
(こんな美人が俺のこと……)
単純だが、それだけでヴァイスの心は決定的にシグナムに傾いた。もはや妹系に未練はない。これからはポニーテール萌えで生きていこう、そう決意する。となるとリンディ総務統括官まで……? いや、今は後ろで一つに束ねているんだっけか?
雑念は捨てよう。目の前のピンク髪の騎士に萌えの全てを捧げるのだ。
「……あ」
ヴァイスは今さら、シグナムの肩に手を掛けていたこと(それもかなりがっしり掴んでいたこと)を思い出し、慌てて放した。
「す、すいません。俺……」
「うむ。まあその、なんだ。お前の好みも理解した……その好みに私が合点しているということも理解した。それはつまり、私と付き合ってくれる、ということだな?」
「はっ、はい。よろしくお願いしますっ!」
思わず踵を合わせて敬礼してしまうヴァイスに、シグナムはふっと優しく微笑んだ。
「そう堅くなるな。他人行儀に見えてなんだか悲しいぞ?」
「すみません! ……あ」
癖で敬礼してしまうヴァイスにふふふと笑いかけ、シグナムはきびすを返した。
「それじゃあな。話はそれだけだ」
烈火の将はまさに炎の舌が嘗めるがごとくぶわっとヴァイスに襲いかかって、そして去っていってしまった。
呆然と、彼女が去っていったまばゆい外界を見ているヴァイスの耳に聞こえてくる、同僚たちの囁き声。
「おい、今の。勤務中に告白だと?」
「しかもヴァイスのやつ、受けたぞ」
「いや、受けたっていうか……脅迫に屈したというか……」
キッ、とヴァイスが睨むと黙ってしまう同僚たち。そして、
「さーて仕事仕事」
なんて白々しく口にして、持ち場に戻っていってしまう。
別に脅迫されたから告白を受けたんじゃねえよ、と心の中で毒づくヴァイス。
好きだった。確かにヴァイスはシグナムのことが好きだった。好きでもない女性を姐さんと呼んで慕うわけがないではないか。
まさかこんな形で告白されるとは思ってもみなかっただけである(しかも仕事中に)。
† † †
仕事が終わり、宿舎に帰ったヴァイス。
結局あれ以降、シグナムからの接触はなかった。
こちらの仕事終わりを待っているのかと思っていたヴァイスは少し拍子抜けした。
だが考えてみれば、仕事終わりを待ってデートなんてそれどこの恋愛ゲームだよである。
ヴァイスとシグナムは大人同士だ。それなりの距離感を保ちつつ愛を育む……というのも、まあ悪くはない。
明日の昼にでも姐さんとその辺の話をすっかー、と考えつつ、風呂上がりのトランクス一丁で歯を磨くヴァイス。
まずは映画だろうか。いきなりホテルはまずかろう。ショッピング……はてあの烈火の将は買い物で楽しめるのだろうか。
あの剣の騎士が確実に好きなことといえば……
……………………決闘?
海沿いの公園にいるシグナムを遠くのビルの屋上からストームレイダーで狙い撃ちする自分の幻影が頭をよぎった。
トリガーを引けば、訓練弾ではない、本気のスナイプショットが放たれる。
シグナムは当たり前のように一瞬にして騎士甲冑に身を包み、炎をまとったレヴァンティンを振るってスナイプショットを爆散。
そしてスコープ内の彼女が肉眼では見えないはずのこちらをまっすぐに見つめ、爆風に長いポニーテールをなびかせながらにこっと花のように笑うのだ。
念話がヴァイスの脳に届く、「なかなかよい弾筋だが、私を仕留めるにはまだまだ力不足だな、ヴァイス」。
それは果たしてデートといえるのか。
まあとにかく、全ては明日、シグナムと話し合って決めればいい。決闘の案は冗談めかしていってみよう。一歩間違えれば確実にシグナムを傷つけてしまうから。満面の笑顔で賛成されてもそれはそれで困るし。
鏡の中の自分の顔は、嫌なデートシュミレーションにもかかわらず嬉しそうである。なんだかんだいって、好きな女性とのデートプランを練るのは楽しいものだ。
と、その時。
ピンポーン、と来客を告げるチャイムが鳴った。
「はーい」
誰だろう、さてはシグナム姐さんと付き合うことになった俺をからかいに来た同僚だな――なんて思ったヴァイスはそのままの格好でドアを開けた。トランクス一丁の歯磨きスタイルで。
「夜分遅くすまん、ヴァイス」
そこには烈火の将、シグナムがいた。しかも騎士甲冑姿。対するヴァイスは青と白のしましまトランクス一丁、得物は歯ブラシ……。
「ちょっと待ってて下さいっ!」
歯磨きの泡を飛ばしつつ扉を乱暴に閉めたヴァイスは、大あわてで隊服を着込むともう一度扉を開けた。慌てていたので歯ブラシまで再着している。
「お待たせしました、姐さんっ」
「いや、別に待っていないが」
「何かご用で……いや、ここではなんですから中に入ってください!」
「そうさせてもらう」
素直に招きに応じるシグナムのうなじを見送りつつ、ヴァイスは歯ブラシを噛みしめていた。
これから何が起こるというのだろう。
まさか……決闘……?
† † †
茶を淹れて持っていくと、シグナムはローテーブルについて部屋のあちこちを見回しているところだった。男の一人暮らしが新鮮なのだろう。
「お前の好みか。……ということは、私に似ているのだな」
「へ?」
シグナムの視線を辿れば、そこには童顔で胸のあまりないグラビアアイドルのビキニ姿……のポスターが。
ヴァイスはお茶をローテーブルにスマートに供してから、ポスターに手を掛けた。
「そっすねもうそっくりっすよ! もう俺の趣味ど真ん中に打ち抜いてますから姐さんは!」
「ではなぜそれを剥がしている?」
「もう俺の彼女はシグナム姐さんしかいないですから! もういらないんすよ他の娘なんて!」
「そうか……」
ぽっ、と頬を赤らめるシグナム。ポスターを丸めながらヴァイスは思う、こういうところは手放しに可愛いんだよなあ、と。
ローテーブルに向かい合って座ったヴァイスは、おずおずと切り出した。
「ところで姐さん、何かご用で……?」
「ああ。早速で悪いが、セックスするぞ」
「……へ?」
目を白黒してしまうヴァイスに、ごく真面目な顔でシグナムは頷く。
「シャマルに相談したのだ。そうしたら、ヴァイスは人気があるから一刻も早く既成事実を作ってしまうのが得策だ、といわれた」
「そんな焦らんでも……」
そりゃあ早いところ手を出したい、とは思う。が、それだけの男と思われるのは嫌だ。
……というか多分、いや絶対、相談する相手を間違っている。かといって誰に恋の相談などしたものか。意外なところでザフィーラがまともなアドバイスをしそうか。
「不安なんだ」
シグナムの目は真剣そのものだ。
「ティアナに盗られそうで」
「それだけは絶対にありません」
即答してしまう。気があるわけではない、彼女には妹を重ねていただけである。声が似ているし……。
「その即答が逆に妖しいな」
す、と目を細くしてヴァイスを睨むピンク髪の騎士。今にも傍らに置いたレヴァンティンに手が伸びそうだ。
「妖しくないですよ! 俺別に姐さんのこと疑ってませんから。姐さんはせいぜいが殴り飛ばすくらいで、ティアナの頭冷やすことまではしないって俺信じてますから」
「何を言っているのだ?」
「だから、俺は姐さんを信じているんです」
見つめ合う二人。
ヴァイスはティアナが紫電一閃を喰らうところを想像した。ティアナは自分のことを凡人などというが、そんなことはない、十分才能溢れる若者である。それでも六課の他の連中と比べたら圧倒的にただの少女である、シグナムの剣など喰らおうものなら……マジで死ぬ。9歳でシグナムたちヴォルケンリッターと対等に渡り合ったというフェイト・T・ハラオウンや高町なのはとは、やっぱり次元が違うのだ。
「俺は……」
ヴァイスは生唾を呑み込み、言った。嫌な想像で声が掠れていた。
「俺はシグナム姐さんが大好きです」
だからどうかティアナは助けてあげて下さい、と、これは言葉にはしないが。
「うむ、まあ、そう見つめるな……疑った私が悪かった」
ぽそっと呟くシグナムの頬が赤い。
とりあえずの危機は去った(ティアナの)。
ほ、と息をつくヴァイスに、彼女は言った。
「ではヴァイス……。早速、お前のレヴァンティンを私の旅の鏡にぶち込んでもらおうか」
お茶を飲んでいなくてよかったと思う。飲んでいたら吹き出していた。絶対。
「ね、姐さん? 何を言ってらっしゃるんで?」
「うん? こういえば男はその気になるとシャマルから聞いたのだが……」
(シャマル先生……!)
ヴァイスは膝の上で握った拳をふるふると振るわせた。
やっぱり相談する人を間違えてます、シグナム姐さん。
「何かおかしかったか?」
何もかもおかしいですと答えそうになるのをぐっとこらえ、ヴァイスは微笑んだ。
「いえぇ、あまりにもインパクトがアルカンシェル級だったのでびっくりしただけです」
「そうか。私もなにかおかしいと思ったのだ。お前が持っているデバイスはストームレイダーであってレヴァンティンではないからな。私だってクラールヴィントなど持っていない。まったく、シャマルはいい加減だな」
そういうことじゃあないんすけどね、とヴァイスは思うが口には出さなかった。
「えと……姐さん? じゃあシャワーでも浴びてきますか? 俺、さっき風呂あがったとこですので……」
セックス自体は嫌ではない。彼女が求めてきたら答えるのが男の役割だ。ティアナに盗られそうで不安だなんて危険な心配、ヴァイスがそっくりぬぐい取ってやればいいのだ。ヴァイスにしかできないやり方で。
「いや、私もここに来る前に身を清めてきたところだ。準備はばっちりだ、来い」
と籠手をはめた手で胸を叩く烈火の将。
「……あの、姐さん? さっきから何となく気にはなってたんですが……、なんで騎士甲冑着てるんすか?」
「うむ。セックスとは男女の戦いだと聞いた。戦いに挑むとなれば正装するのが相手への礼儀……なあレヴァンティン、お前の主はそれくらいの礼儀は弁えているよな?」
『Ja!』
「……しかしなんですね、相変わらずテンション高いっすねレヴァンティンは」
「まあな。烈火の将の片腕らしいだろ?」
ニヤリと笑う剣の騎士シグナム。
「それはいいとして、姐さん?」
「なんだ」
「とりあえず、騎士甲冑は解除してくださいね」
「どうしてもか」
「当たり前です」
「だが、これからお前と戦うというのにそれでは……」
「か・い・じょ、お願いします」
「そ、そうか……」
しゅん、とシグナムの顔から覇気が引っ込んだかと思うと、一瞬にして騎士甲冑が焦げ茶色の制服へと変わった。
「考えてみたらお前はバリアジャケットがないし……私だけ騎士甲冑というのも不公平だよな……」
不公平も何も、ヘリパイロット兼狙撃手にバリアジャケットなど必要ない。そんなものを編む魔力があるのならターゲットを正確に射抜くことに廻す。
とまあ、そんなことはいいとして。
いつもの、職場の格好。奇しくも今、ヴァイスも職場の服を着ている。
それにもかかわらず、今から使用としているのは、男女の営み。
今さらながら、ヴァイスの心臓がドックンドックンと大きく鼓動を打ち鳴らしてきた。
「ね、姐さん」
先ほどとは違う理由で声が掠れている。
「うん? なんだ」
「ベッド……、行きましょうか」
「ああ」
それを目的に押しかけてきているからだろうか、彼女に迷いはない。この辺りの剛胆さはさすが烈火の将である。
† † †
ヴァイスとシグナムはベッドの縁に並んで腰掛けた。
それなりに女性経験はあるヴァイスだが、それでも手に汗握った。
憧れだった女性との性交に際し、嬉しさよりも緊張のほうが勝っているのだ。
烈火の将、剣の騎士、夜天の書の守護騎士……等々いくつもの二つ名を持つ女性である。しかも美しい。はっきり言ってしまえば、ヴァイスとは格が違う女だ。
「いいんですか、シグナム姐さん。俺なんかと……」
答えは意外なものだった。
「ダメだ」
「へ?」
ここまで来ていきなり駄目出しされても……と戸惑うヴァイスの顔を、ものすごく真剣な眼差しで見つめるシグナム。
「雰囲気がなってない。こういうことは雰囲気が大事だと聞いたぞ。シグナム姐さんではなく、シグナムと呼び捨てにしろ」
目が本気だ。マジだ。
逆らったらレヴァンティンの錆にされてしまいそうな気がする。
ええい、ままよ。ヴァイスは腹を決める。
「シグナム……」
姐さん、と付けたくなるのをぐっとこらえるヴァイス。
「それでいい。それから……」
「なんすか?」
まだ何か注文があるのかと身構えるヴァイスに、シグナムは恥ずかしそうに言った。
「明かりを消してくれ、ヴァイス」
「かしこまりました」
そんなことならおやすいご用だった。
窓の外から街灯の光が漏れ入ってくる。
その薄暗い中、二人の男女は至近距離で見つめ合う。
先に動いたのはヴァイスだった。
そっと、唇で彼女の柔らかい唇を覆う。
「ん……」
閉じた唇の合間をなぞるヴァイスの舌先に、ヴァイスの意志を読みとったのだろう。
彼女は唇に入れていた力を抜いた。
ぬっ、と口内の粘液を保ったまま、ヴァイスの舌がシグナムの唇を割入っていく。
「……ぁ」
自分が舌を入れている場所から甘い声が漏れてくるのが信じられなかった。
しばらく舌を舌で味わっていると、シグナムのほうからも舌を絡めてきた。ヴァイスは夢中になって舌に唾液を渡らせて、彼女の口に注ぎ込む。
二人の顎には、いつの間にか唾液がぬるぬると滴っていた。
「ん、ヴァイス……」
口を離すと、至近距離からシグナムがうっとりと濡れた瞳でヴァイスを見つめている。
「上手いんだな、キス」
「……シグナムだからっすよ」
応えながら、そっとシグナムの肩を押してベッドに押し倒していく。
それから、彼女のボタンに手を掛けて外していく。シグナムは微動だにせずされるがまま、ベッドに仰向けになっていた。
ブラウスのボタンを全部外して左右へはだけさせると、大きな胸を押し包む白いレースのブラジャーが出てきた。
「いつも思ってたんすけど……」
ヴァイスはそっと、レースのブラジャーのカップを押し上げていく。
「姐さんの胸って……凄く、綺麗ですよね。デカいのに張りがあって」
いろいろとテンパってきたヴァイスの感想は、すでに表現に余裕がない。
「……? お前、私の裸を前にも見たことがあるのか?」
「……………………」
やぶ蛇だった。
まさか隊員の変身シーンがロングアーチにより映像に撮られていて、スタッフの不良メガネ(男)が女性隊員の変身シーンだけコレクションしていて、それをたまたま見せてもらったことがあるんだ……なんて正直にいえない。しかも男性隊員の変身シーンはスタッフの不良メガネ(女)によってコレクションされているんだ、なんてこともいえない。なんでエリオきゅん裸にならないのー!? と嘆いていたこともいえない。
ヴァイスはなにも言わず、行為に没頭することにした。
紫ブラジャーを上に上げると、ぷるん、と乳がまろび出る。
ぁ、と小さな声がシグナムの口から漏れ、手が巨乳を隠そうとする。だがヴァイスの手の方が早かった。
むにむに、と柔らかい乳を揉む手の上に、シグナムのたおやかな手が置かれた。
「ヴァ、ヴァイス……」
戸惑った女の声。
ヴァイスの耳には、それは届かなかった。聴覚が遮断され、すべては視覚と触覚にまわされていた。あまりにもシグナムの胸が大きくて、柔らかかったからだ。
手に余る大きさの脂肪のカタマリが、ヴァイスの手に合わせて形を変える。そっと周囲から撫でるように触ればぷるんと震え、ぐにゅっと掴むように握れば、手荒い扱いから逃げようとするかのように細長くなる。
そして、先端にある桜色の突起は……まるでめしべのように愛らしく揺れている。
めしべに誘われるまま、ヴァイスはそれを口に含んだ。
「ヴァイス、そんな……んっ!」
半身を起こしてあらがおうとするシグナムを男の力で押さえつけ、ヴァイスは突起を舌でつつく。
「あん、だ、ダメ……っ! そんなこと、したら……っ!」
オクターブ上の可愛らしい声で抵抗するシグナムに、ヴァイスは突起から口を放さず答えた。
「可愛いっすよ、シグナム。乳首こんな堅くして……」
「ち、ちがっ……」
「こっちは……?」
そっと、手を下に持っていくヴァイス。
気付いたシグナムが足をきつく閉じるが、ヴァイスはスカートの中に手を入れてその力んだ股を撫で、ストッキング特有のざらついた布の感覚を楽しみながらゆっくりと上へと手を滑らせる。
シグナムの腹を引っ掻かないように気を付けながら、ぴったり肌に張り付いたショーツの中へと手を潜り込ませ――
ぬるっ
「んっ」
「シグナム……」
ヴァイスは中指の腹に力を入れ、すでにべちょべちょといってもいいくらい濡れているそこをまさぐった。
「下着の替え……持ってきてますか?」
「持ってきてない……っ」
「じゃ、すぐに脱いだ方がいいっすね、これ」
ヴァイスはパンツの中に入れいていた手を出し、端っこに指をかけてストッキングごと引き下ろそうとする。
「待て! いまビリっていったぞ」
「え、そうっすか?」
「自分で脱ぐ。そんな乱暴にするな」
「すんません……」
ヴァイスは素直に手を引いた。どうも、興奮しすぎて力の入れ具合を調節できなくなっているようだ。
シグナムが脱いでいる間に、ヴァイスも服を脱ぐ。
全裸になって振り返ると……ベッドの上にはパンツどころか何も身につけていないシグナムがいた。
薄暗がりの中、彼女の裸はまるで花にひっそりと咲いていた。白く、ふっくらとした美しい花。しかも降ろしたピンク髪が肩にかかって、まるで別人のような……柔らかさだった。
ヴァイスはガツンと殴られたような気になる。
「シ、シグナム……」
「ああ。ついでに全部脱いだ。このほうが手間がなくていいだろう?」
照れはない。あくまでも大真面目な顔をしている。
ふらふらとベッドに上がったヴァイスは、そのままの勢いでシグナムに抱きついた。
「ヴァイス……?」
「可愛い……可愛いっすよ、シグナム姐さん。なんでこんな可愛いんすか」
ぎゅっ、と抱きしめれば適度な弾力が帰ってくる柔らかい腕。ヴァイスの堅い胸板が押しつぶす、柔らかくて大きな乳房。
「可愛いといわれたのは初めてだな。綺麗とか美人とかはいわれたことはあるが……一番多いのは『格好いい』だが」
「姐さん……可愛いっす……誰がなんといおうと……姐さんは可愛いっす」
すでにシグナムを呼びつけにすることを忘れている。シグナムにしてももう注意しない。
シグナムの『女』の匂いがヴァイスの身体を溶かしていく。
うなじからほんわりと汗の匂いがする。香水の香りがしないのは質実剛健な烈火の将である彼女らしい。髪から立つフローラルな優しい香りは、きっとシャンプーだ。身を清めてきた、とかいっていたし。
ヴァイスは抱きついたまま、手を彼女の閉じられた足の間へと滑り込ませる。
「んっ」
びくんっ、と帰ってくる反応を、ヴァイスは抱きしめて吸収してしまう。
奥へ奥へ、今度は先ほどよりももっと奥へ……。
入り口に指を少しだけ入れると、ぷちゅ……と密やかな粘液の音がする。
「あ……んん……」
シグナムの甘い声を聞きながら、ヴァイスはさらに指を沈めていく。ぬるぬるの柔肉が、ヴァイスの指にきゅぅっと喰いついてくる。
「姐さんのココ……すげえうまそうに俺の指しゃぶってますよ」
「そ、そうなのか……?」
「はい。だからもっと……気持ちよくしてあげますね」
言いながら、ヴァイスは指を動かしはじめた。はじめはゆっくり、シグナムの様子を見ながら。徐々に、じゅぷっ、じゅぷっ、と粘液の音が濃くなっていく。
潤いはすでにヴァイスの手を滴り落ち、シーツに染みを作っていた。
「そろそろ……いいすか、姐さん……」
「ああ……。……その、私……経験ないから、お前が気持ちよくなれるかどうか……保証はしないが……」
「俺の心配なんかしないでください。ああもう、思いっきり優しくしますから。シグナム姐さんこそ、無理っぽかったら言ってくださいよ?」
「ああ……」
一端身体を放し、シグナムを寝かせる。そしてシグナムのそこに己の先端をあてがったヴァイスは、ゆっくりと腰を前に進めていく。
ぬるぬるの愛液に助けられ、とても入りそうにないそこにヴァイスは入っていく。
「……んっ、ぅ……!」
「痛いすか、姐さん?」
「ううん、平気……あ、ん……」
本当に、シグナムの嬌声には痛みが入っていないように聞こえる。
ひょっとしたら……とヴァイスは思う。幼い頃から激しいスポーツをしていた女性は、自然と処女膜が破れていることも多いという。足を大きく開く競技なんかに多いと聞く。スポーツではないが激しすぎる動きをしてきた烈火の将なら、自然と破れていたとしても不思議はない。
ちょっと残念だったかな、シグナム姐さんの処女膜破りたかったかも……などと身勝手なことをちらっと思うヴァイスだった。
ぎちぎちの膣に、全てが収まった。
「あ、ふっ……」
処女膜が破れる痛みはなかったにせよ、初めての感覚は相当ショックなようである。シグナムの瞳にはいつしか涙が溜まっていた。
「姐さん……やっぱ痛いんすか?」
「いや……? 気持ちいいぞ……。ヴァイスはどうだ? 私のは、その、具合はどうだ?」
「最高ですよ。熱くてきつくて……ああ、なんかもう、溶けそう。動かしていいすか?」
「ああ……」
シグナムのお許しをもらったところで、ヴァイスは晴れて腰を動かしはじめた。
最初はゆっくり、慣らすように。
にゅう、と入らないようなところに無理矢理に入り、にゅうっ、と押し出される。凄まじい膣圧だ。そのくせ妙に優しくヴァイスを包み込む。
それをだんだん、リズミカルに。
「ん、あ、ヴァイス……!」
ヴァイスが奥をえぐるたびにシグナムの口から喘ぎ声が漏れる。
「姐さん……!」
ヴァイスは誘われるように、その口に自分の唇を重ねた。
遠慮なく舌を入れ、ちゅく、ちゅく、と彼女の唾液を吸う。
「ん、はあっ!」
シグナムが大きな喘ぎ声をあげた拍子に唇が離れた。
ぷるん、とヴァイスの胸板に伝わってくる重量感たっぷりな柔らかい乳房。
ヴァイスは自然と、その揺れる乳房を荒く掴んだ。ほぼ無意識につんと尖った乳首を口に含み、舌先でつつく。
「んんっ!!」
きゅうぅぅっ、と今までにないほど締め付けがきつくなる。それだけでイってしまいそうに
なるが、男のプライドで耐える。
「……姐さん、ひょっとして……。胸、弱いんすか?」
「分からない……だが、なんというか……鍛えられてはいると思う……」
噂に聞く八神はやてのセクハラで、だろうか。
まあ、胸が弱いのは好都合だから細かいところまでは考えないようにしよう。
ヴァイスはそう決めると、また腰を動かしはじめた。
「んっ、やっ、あっ……」
甘くとろける声。
そして、
ヴァイスは手で大きくて柔らかい胸を掴み、
「やっ、ヴァイスぅ!!」
ベロベロと、猫が毛繕いをするように丁寧に、卑猥に乳首をなめ回す。こりっと充血した乳首は舌で押すと、「もっとして」といわんばかりの反発をヴァイスの舌に伝えてくる。ご希望にお答えしようと、ヴァイスは舌で普通になめたり横で押したり、裏側を使ってこりんっと転がしてみたり。
「あっ、やっ、だめっ、そん、なっ!」
口では反発しているがシグナムのなかは嬉しそうにとろけきり、ぎゅうううっとヴァイスを締め上げている。
ヴァイスは一端舌を引っ込め、
ぷっくりと勃った可愛らしい先端を、
軽く歯で噛んだ。
「〜〜〜〜〜っっっっっっ!!」
シグナムの身体がびくんっとしなった。
じゅわ、とヴァイスに絡みつく粘液の量が一気に増える。
締め付けがきつい。これだけ溢れているのに動かすのが辛いくらいだ。
もちろん、ヴァイスにしても限界である。
「姐さん、俺もうイク……! イっていいすか、俺、イっていいすか?」
「んっ、イって……、イって、ヴァイスぅ!」
熱に浮かされたうわごとのように、シグナムは言う。
OKをもらい、ヴァイスはいよいよ腰を早めていく。我慢していた快感を一気に爆発させるために。
「くっ、あっ、ん、やっ、また……ん、イっ、イっちゃうぅ、イっちゃうの、またっ、だめヴァイス、ヴァイス、や、ふぁあああああああああああっ!!」
「っく……!」
シグナムの肩を堅く抱きしめ、一際強く腰を打ち付けたヴァイスは、最後の一滴までシグナムの最奥へと注ぎ込んだ……。
† † †
「ヴァイス陸曹、シグナム副隊長とつきあってるんでしょ?」
そんなことをティアナに言われたのは、シグナムとの熱い一戦が繰り広げられた翌日の昼、食堂でのことだった。
昨夜は熱かった。ある意味決闘だった。
なかに出してしまったことを土下座して謝るヴァイスに、気にするな、だがもし妊娠したら責任は取れよ? と好漢っぽくシグナムは笑いかけてくれた。
もう、ヴァイスとしては全力で責任をとる所存になった。というか、是非責任をとらせていただきたかった。
あまりにも気負いすぎたのだろう。その夜の夢は、シグナムと結婚して子どもを3人もうけ、管理局を引退してから静かな世界に引っ込んで静かに老後を過ごすかと思ったら何故かピンクのポニーテールをした巨大ロボにシグナムと一緒に乗り込んで二人で息を合わせて紫電一閃をかますというワケの分からないダイナミックなものであった。
とにかく、ティアナにいきなりシグナムとの仲についてぶつけられたヴァイスは(昨夜のことを思い出し)、思わず飲んでいた水を吐き出しそうになった。
「ティ、ティアナっ、な、なななななんでそれを……!?」
「だってその噂でもちきりですよ機動六課は。すっごく男らしい告白だったって、シグナム副隊長」
スバルやエリオに比べると小食な彼女は、トレーに載せたパンを丁寧にちぎって食べて、微笑んでいる。
筒抜けだった。
「ったく、ここはハイスクールかよ……!」
「でも残念だなー。あたし、少しヴァイス先輩のこといいなーって思ってたんですよ?」
実のところ、好み的にはヴァイスもティアナ派だった。だが好み以前にもうヴァイスはシグナムなしでは生きていけない身体になってしまった。
自分の生命はシグナムのために。そしていずれ生まれくる命のために。それがとても誇らしい。なんだか大人として一皮剥けた気分だ。
それでもヴァイスは軽口を叩かずにはいられない。そういう自分に『成長』してしまった照れもある。
「はは……そいつは光栄だな。浮気でもするか?」
「あ、シグナム副隊長」
ティアナの視線はヴァイスの肩越し注がれていた。
古典的な引っかけだ。真面目で堅物として通っているティアナだが、やはりまだまだ十代の子供。しかも、イタズラし慣れていないためかレベルが低い。
「またまた〜……っ!?」
笑って応じるヴァイスの首元にレヴァンティンの鋭利な刃が。普通刃は冷たいものだが、なんだかこの刀身からは熱が伝わってくる。
そしてヴァイスでも分かるような殺気が、背後から。これは騎士甲冑着込んでるな、と他人事のようにヴァイスは思った。というか本当にいた。
「いい度胸だな、ヴァイス」
深く落ち着いた剣の騎士シグナムの声。
今朝起きると、ヴァイスの部屋にシグナムはいなかった。
かわりに書き置きがローテーブルの上にあった。『先に出勤します。昨日はよかったよ(はぁと) もう、ヴァイス君のえっち(はぁと)』――たぶんシャマルにアドバイスされたのだろうことがまるわかりな、ぜんぜんキャラに似合わない書き置きだった。
そのシグナムが、いま、背後にいる……。
「英雄色を好む、か……。そうだ、お前が真に英雄かどうかこの私が確かめてやろう」
「た、確かめるって?」
前を向いたまま、顔を蒼くして聞くヴァイス。
「私に勝てば、お前を英雄の器として認める。英雄ならば浮気の一つもするものだ。だが私に勝てぬとなれば話は別、お前は英雄などではない、つまり私のことを裏切る器ではない。これほどはっきりしたこともないだろう?」
「え……、ま、待ってくださいよ。今のはただの冗談ですって……おいティアナ、黙ってないでフォローしろよ……っていねええええ!?」
がっ! と襟首を捕まれて、椅子から立ち上がらせられるヴァイス。
「いい決闘日よりだな……そう思わんか、ヴァイス」
襟首を捕まれて引きずられるヴァイスが見たのは、シグナムが見た空と同じ。
それは、哀しいくらいの蒼穹で。まるで、ヴァイスが心から愛することを誓った、美しく凛とした女の瞳のように美しく澄んでいて。
「ってちょっと待った待ってくれ姐さん! けっ、決闘って……?」
ターゲットから見えない場所から狙ってこその狙撃である。気付かれずに撃ってこその狙撃である。
その狙撃手の自分と、剣の騎士シグナムがどうやって決闘などするというのか。昨夜妄想したデートでも、ヴァイスは圧倒的に不利だった。
それともヘリパイロットとしての腕での決闘か。
「ストームレイダー……」
「ストームレイダーで、ヘリ遠隔操作すりゃあいいんすか!?」
「とレヴァンティンで殴り合う」
「決闘になるレベルじゃねえよそれ!」
=英雄の器じゃないこと決定。
「なにを謙遜する、元エース」
「分野が違うっっっっっっっっ!!!」
抗議も虚しく、昼食をとる人々の間を引きずられていくヴァイス。
長いピンクのポニーテールがふわりとヴァイスの鼻先を掠め、昨日の残り香のような甘い匂いがした。
ふと、ピンク髪を下ろしたシグナムの白い裸身が瞼に浮かぶ。デカかったなあ……としみじみ思う。しかも感度抜群だ。
そんな彼女が相手なら、一回くらい死んでみるのも悪くないかもしれない。
だが、それでも青い空を見上げながら爽やかに白い歯をこぼさずにはいられなかった。
(俺を見捨てた借りはいつか返すぜ、ティアナ……)
青い空に描き出された笑顔のティアナの幻想を横切って、きらり、と流れ星が落ちていった。
終わり
著者:ストラディ
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