[657] 泣けないわたし 1 sage 2007/09/26(水) 00:01:10 ID:i6AFH9+x
[659] 泣けないわたし 2 sage 2007/09/26(水) 00:02:13 ID:i6AFH9+x

彼女は泣いていた。

両の手を血に染めて、あられもない姿で震えながら、
ごめんなさいごめんなさいと、わたしの上で泣いていた。

血って、あんなに出るもんなんだぁ…

自分の太腿の間に起こっているであろう惨劇を想像して、少し不安になる。
フェイトちゃんは泣きながら謝りつづけていて、とてもうざったい。
ベッドのまわりには、引き千切られた衣服が散乱している。
押し倒された時に切った、口の中が痛い、軽く首を絞めてあげる、抵抗されない。

10年来の親友に奪われたのは、ついさっきの事だった。

「ねえ…なんでこんな事、したの?」

問いかけてみる、わたしはどんな顔をしているのだろうか。
わたしの身体の上で、びくりと、怯えるように震えてから、やっと謝罪の声が止まった。

ああ、やっぱりフェイトちゃんの瞳は綺麗だなぁ

何か場違いな事を考えながら、なんだろう、さっきまでの裏切られた思いとか、
怒りとか、悲しみとか、何もかもが無くなって、なんかもうポッカリと空洞のような

「きっと、泣きたいのはわたしの方だよ…」

とりあえず、抱き寄せてもう一度、聞いてみる。

「ねえ、なんで?」

彼女は、しゃくりあげながら少しづつ語り出した。

昔から好きだった事、一度は諦めようと思った事、ユーノ君に嫉妬していた事、
機動六課に出向になって一緒に居る時間が増えた事、ヴィヴィオに出会った事、
六課の解散が近づいて、また会えなくなる日々に戻ると思った事。

時系列も何もかもがグチャグチャで、普段の彼女からは考えられないほどに支離滅裂で、
それでも、思いのたけだけは伝わってきて、やりきれなくて、何も考えたくなくて、
うん、だから心の中のユーノ君にわかり易く言ってもらおう、つまり


「…とりあえず、あとでSLBね」
「軽すぎ!?」
「じゃあ連射で」
「火力じゃなくて!」

なんかテンポ良くツッコミが入ったので、つい笑ってしまった。
悲しいのだろうし、痛くて苦しいのも事実なんだろうけど

「仕方無いよ、フェイトちゃんが泣いているのを見ていると、わたしも悲しくなるし」

許すとか償うとか、そんなのじゃなくて、ただ単純にわたしは、
すぐに思いつめて泣き出してしまうこの娘が、大好きなんだなぁと。

だから、そっと瞼の上にキスをする。
わたしの腕の中で震えていたフェイトちゃんは、

「なのは…ごめん」

うん、いつものフェイトちゃんだ。

「まあそれはそれとして、乙女の大事なモノを奪った以上、覚悟はできているよね」
「え…バインド……?」
「ミッドチルダの格言に、仇は256倍にして返すべしとあるし」
「それ言ったの、なのはじゃむぐっ」
「じゃー、今からフェイトちゃんはわたしの物って事で」
「全部!?」
「ちゃんとお嫁に貰ってあげるから心配しなくていいのなのー」
「あ、お嫁って、え?ユーノは!?」
「婿にとるから大丈夫なの」
「ちょっと、なのは、待って反省してます!本当にごめん!だから待ってー!!」
「さあ、飲み込んでわたしのレイジングハート」
「寄らず触らず上にも乗せないでー!」
「そう言いつつも、もうフェイトちゃんの恋はビショ濡れでおじゃるなのー」
「アッー!」

彼女は、泣いていた。   

−終−



著者:30スレ652

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