最終更新: nano69_264 2008年05月17日(土) 18:22:49履歴
[530]思いつきAS<sage>2007/07/01(日) 12:57:14 ID:2NC94oUs
[531]名無しさん@ピンキー<>2007/07/01(日) 12:58:02 ID:2NC94oUs
シグナム、と相手は名乗った。
フェイト・テスタロッサは息を吐く。強い。正直に、そう思う。
遠くを見れば、赤毛の少女とユーノ、アルフと青い獣の戦いが続いている。
3対3。
数の上では対等。しかし、ユーノは戦闘に向いているとは思えないし、自分も終始押されている。
だが、希望もある。クロノや管理局の人たちが、今必死でこの防壁を破ろうとしているはずだ。相手が何者かは知らないが、管理局の本隊と一戦を交えるほど馬鹿ではあるまい。
呼吸を整える。
赤毛の騎士を正面に見据える。速さも力も技術も向こうが上だ。
だが、ここで退いたら、彼女はなのはを狙うだろう。
それだけは、させない。
時間稼ぎは承知の上で、フェイトはシグナムに向かっていく。
そんな様子を、彼は静かに眺めていた。
「カートリッジ、ロード」
シグナムが静かに告げた。
鈍い排莢音。正面に構える騎士の魔力が爆発的に高まり、踏み込む姿勢のまま、相手の姿が消えた。
「ッ!」
蓄積された戦いの感が、フェイトを前に押し出させた。同時に、風切り音。剣戟の音だと理解するよりも早く、体は本能に従って身を捻っている。180度反転した視界の中、赤毛の騎士がすぐ目の前にいる。
「バルデッシュ!」
『Yes、sir』
ランサーを発動。サイズはあえて起動しない。近接戦で押し負けることが分かっている以上、下手に攻めるのは危険。
「シュート!」
計三発。シグナムの正面から、悪くない精度の魔力弾が発射される。
「無駄だっ!」
直進してくる魔力弾を、シグナムは避けようとも思わなかった。レヴァンティンを構え、ランサーの一発目と二発目を鎧で弾き飛ばし、正面から飛来する三発目を弾こうとしたその瞬間、目の前が光に覆われた。
閃光。
「っ!」
時間稼ぎの小細工。稼いだ時間は一秒にも満たない。
だが、それで充分。
「撃ち抜け、轟雷っ!」
バルデッシュに魔力が篭る。速度を優先しているため威力はいつもの7割程度。だが、この距離、このタイミングなら――!
「サンダースマッシャーっ!」
刹那のタイミング。自らを撃ち抜かんとする雷光を前にして、シグナムは冷静だった。
告げる。
「レヴァンティンっ!」
『Jawohl』
甲冑が出現する。魔力で覆われたその甲冑を、雷光が穿っていく。
目が正常に戻るまであと五秒は掛かる。その間に、フェイト・テスタロッサは次の手を考え、行動してくるだろう。その場合、この五秒は致命的な時間となる。
だが、それだけだ。
目が見えない程度で、ベルカの騎士を止められると思うのであれば、
「甘い、と言っておこう。テスタロッサ」
「――っ!」
相手の動揺が、空気越しに伝わる。
完全とはいえない。だが、防ぎきった。戦闘に支障はない。
視界が元に戻るまで、あと4秒。
踏み込む。目などに頼らなくとも、感覚が、皮膚が、相手の位置を正確に教えてくれている。
3秒。
近い。振れば切れる位置にいると確信し、躊躇無く、振った。
2秒。
鋼鉄を、デバイスを切り裂く感覚が剣を通して伝わる。もはや、抵抗できまい。
1秒。
逆袈裟に振る。ほんの少しだけ力を緩め、剣の腹で叩こうとしたのはシグナムという人の優しさからだろう。
0秒。
金属音が、鳴り響いた。
「……何?」
ゆっくりと、目を見開く。
まず、道に転がる壊れたデバイスが目に付く。コアを半分ほど引き裂かれ、それでも原型を留めているのはデバイス本来の強さだ。良いデバイスだ、シグナムは一瞬、そう思う。
そして。
正面。テスタロッサを守るようにして、少年が立っている。
それは比喩ではない。少年の足元には薄青く光る道が出来ている。バルデッシュと呼ばれていたデバイスも、腰を抜かしたように動けないテスタロッサも、その道の上にいた。
レヴァンティンは、その少年の持つデバイスに止められている。
静かに、シグナムは聞いた。
「何者だ?」
返す言葉には、ほんの少し、戸惑いがあった。
「……時空管理局、機動六課、ライトニング分隊所属」
そこで、少年はこちらを見据えて、言った。
「エリオ・モンディアル三等陸士、です」
敬語になってしまったのは、いつもの癖だろう、とキャロは思った。
著者:19スレ529
[531]名無しさん@ピンキー<>2007/07/01(日) 12:58:02 ID:2NC94oUs
シグナム、と相手は名乗った。
フェイト・テスタロッサは息を吐く。強い。正直に、そう思う。
遠くを見れば、赤毛の少女とユーノ、アルフと青い獣の戦いが続いている。
3対3。
数の上では対等。しかし、ユーノは戦闘に向いているとは思えないし、自分も終始押されている。
だが、希望もある。クロノや管理局の人たちが、今必死でこの防壁を破ろうとしているはずだ。相手が何者かは知らないが、管理局の本隊と一戦を交えるほど馬鹿ではあるまい。
呼吸を整える。
赤毛の騎士を正面に見据える。速さも力も技術も向こうが上だ。
だが、ここで退いたら、彼女はなのはを狙うだろう。
それだけは、させない。
時間稼ぎは承知の上で、フェイトはシグナムに向かっていく。
そんな様子を、彼は静かに眺めていた。
「カートリッジ、ロード」
シグナムが静かに告げた。
鈍い排莢音。正面に構える騎士の魔力が爆発的に高まり、踏み込む姿勢のまま、相手の姿が消えた。
「ッ!」
蓄積された戦いの感が、フェイトを前に押し出させた。同時に、風切り音。剣戟の音だと理解するよりも早く、体は本能に従って身を捻っている。180度反転した視界の中、赤毛の騎士がすぐ目の前にいる。
「バルデッシュ!」
『Yes、sir』
ランサーを発動。サイズはあえて起動しない。近接戦で押し負けることが分かっている以上、下手に攻めるのは危険。
「シュート!」
計三発。シグナムの正面から、悪くない精度の魔力弾が発射される。
「無駄だっ!」
直進してくる魔力弾を、シグナムは避けようとも思わなかった。レヴァンティンを構え、ランサーの一発目と二発目を鎧で弾き飛ばし、正面から飛来する三発目を弾こうとしたその瞬間、目の前が光に覆われた。
閃光。
「っ!」
時間稼ぎの小細工。稼いだ時間は一秒にも満たない。
だが、それで充分。
「撃ち抜け、轟雷っ!」
バルデッシュに魔力が篭る。速度を優先しているため威力はいつもの7割程度。だが、この距離、このタイミングなら――!
「サンダースマッシャーっ!」
刹那のタイミング。自らを撃ち抜かんとする雷光を前にして、シグナムは冷静だった。
告げる。
「レヴァンティンっ!」
『Jawohl』
甲冑が出現する。魔力で覆われたその甲冑を、雷光が穿っていく。
目が正常に戻るまであと五秒は掛かる。その間に、フェイト・テスタロッサは次の手を考え、行動してくるだろう。その場合、この五秒は致命的な時間となる。
だが、それだけだ。
目が見えない程度で、ベルカの騎士を止められると思うのであれば、
「甘い、と言っておこう。テスタロッサ」
「――っ!」
相手の動揺が、空気越しに伝わる。
完全とはいえない。だが、防ぎきった。戦闘に支障はない。
視界が元に戻るまで、あと4秒。
踏み込む。目などに頼らなくとも、感覚が、皮膚が、相手の位置を正確に教えてくれている。
3秒。
近い。振れば切れる位置にいると確信し、躊躇無く、振った。
2秒。
鋼鉄を、デバイスを切り裂く感覚が剣を通して伝わる。もはや、抵抗できまい。
1秒。
逆袈裟に振る。ほんの少しだけ力を緩め、剣の腹で叩こうとしたのはシグナムという人の優しさからだろう。
0秒。
金属音が、鳴り響いた。
「……何?」
ゆっくりと、目を見開く。
まず、道に転がる壊れたデバイスが目に付く。コアを半分ほど引き裂かれ、それでも原型を留めているのはデバイス本来の強さだ。良いデバイスだ、シグナムは一瞬、そう思う。
そして。
正面。テスタロッサを守るようにして、少年が立っている。
それは比喩ではない。少年の足元には薄青く光る道が出来ている。バルデッシュと呼ばれていたデバイスも、腰を抜かしたように動けないテスタロッサも、その道の上にいた。
レヴァンティンは、その少年の持つデバイスに止められている。
静かに、シグナムは聞いた。
「何者だ?」
返す言葉には、ほんの少し、戸惑いがあった。
「……時空管理局、機動六課、ライトニング分隊所属」
そこで、少年はこちらを見据えて、言った。
「エリオ・モンディアル三等陸士、です」
敬語になってしまったのは、いつもの癖だろう、とキャロは思った。
著者:19スレ529
- カテゴリ:
- 漫画/アニメ
- 魔法少女リリカルなのは
タグ
コメントをかく