[397] 冬空 1/3 sage 2007/11/05(月) 01:21:49 ID:ylCZQHj1
[398] 冬空 2/3 sage 2007/11/05(月) 01:23:56 ID:ylCZQHj1
[399] 冬空 3/3 sage 2007/11/05(月) 01:24:47 ID:ylCZQHj1

その日、二人で冬の街を歩いていた。
お揃い…というには無骨な、良く言えばシンプルな官給品のロングコートを着て
吐き出す息も、空も、真っ白に黒を少しだけ混ぜたような色。

隣を歩くその人は、私より少しだけ背が高い。
その人は綺麗な茶色のサイドテールを揺らしながら、私はそれより少し明るい色のツーテールを揺らしながら
二人同じリズムで歩く。

歩きながら、私はその人の横顔を見る。
私の視線に気づいたのか、その人も私の方を見て
そして尋ねかけるように微笑んだ。


その笑顔があんまり楽しそうでいつも通りだったから

私はつい尋ねてしまう。


「なのはさん、私のこと好きですか?」


その人は視線を戻すと、目を少し細めながら言った。


「好きだよ」


そして続ける。
「それに、スバルも好きだし、エリオとキャロも好き、フェイトちゃんも好きだし、ヴィヴィオも好き、それに…」
指を折りながら、数え上げて思い出すように空を見上げる。

「要するに、みんな好きなんですね」
ため息をつきながら、私も視線をその人の横顔から外した。

「そうだね、みんな好き」
そう言って、またあの微笑みを浮かべながら。


それを横目に見ながら思う、その笑顔は反則だと。
可愛くて、同時に憎らしくて
だから今日の私はまだまだ尋ねる。


「じゃあ、その中に特別な人はいないんですか?」

「特別?」

「特別です」


「どうだろうね」
またはぐらかすように笑うから
その笑顔を続ける限り、私はどんどん攻撃する。


「私は?」
「ティアナ?」


「私は特別じゃないんですか?」


「うーん…」
見せつけるように、少し考える仕草。

だから私はまたため息。

「じゃあさ…」
しばらく経って、考えることから離れたらしく、今度は視線を私に向け


「私はどう?私はティアナにとって、特別?」

見つめながら聞いてくる。


私は三度目のため息をつくと、やや不機嫌な顔をわざと作りながら

「特別ですよ」


「いつだって特別です」


少し虚を突かれたようにキョトンとした表情をしていた。
この人にしては珍しい顔だ。


そして、今度こそちゃんと笑って。
「じゃあ、私も特別」

「みんな特別じゃないですよね?」

今度は少し苦笑いに変えて。

「あはは……違うよ、ティアナだけ」


「ティアナだけ、特別だから」


そう言って私の頭を優しく撫でた。

「それなら、いいです」


そして、二人で笑った。



著者:36スレ396

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