最終更新: nano69_264 2008年06月12日(木) 21:22:37履歴
78 名前:恋愛キョウキ 1[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:29:57 ID:JhnnBf6X
79 名前:恋愛キョウキ 2[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:30:49 ID:JhnnBf6X
80 名前:恋愛キョウキ 3[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:31:30 ID:JhnnBf6X
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88 名前:恋愛キョウキ 11[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:38:04 ID:JhnnBf6X
89 名前:恋愛キョウキ 12[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:38:56 ID:JhnnBf6X
90 名前:恋愛キョウキ 13[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:39:37 ID:JhnnBf6X
91 名前:恋愛キョウキ 14[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:40:24 ID:JhnnBf6X
92 名前:恋愛キョウキ 15[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:41:00 ID:JhnnBf6X
93 名前:恋愛キョウキ 16[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:41:36 ID:JhnnBf6X
94 名前:恋愛キョウキ 17[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:42:05 ID:JhnnBf6X
95 名前:恋愛キョウキ 18[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:43:11 ID:JhnnBf6X
96 名前:恋愛キョウキ 19[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:43:54 ID:JhnnBf6X
97 名前:恋愛キョウキ 20[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:44:49 ID:JhnnBf6X
98 名前:恋愛キョウキ おまけ1[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:46:36 ID:JhnnBf6X
99 名前:恋愛キョウキ おまけ2[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:47:06 ID:JhnnBf6X
100 名前:恋愛キョウキ おまけ3[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:47:35 ID:JhnnBf6X
「そうだな。僕の経験上、不本意ではあるが最も抱き心地が良いのはユーノだと断言しよう」
それは、本局内の通路を歩きながらクロノが友人であるヴェロッサに語った言葉であった。
この不注意な一言が、彼にマイノリティな男性局員達と、メジャーな女性局員達のネットリとした視線を向ける
原因であり、後に起きたささやかな事件の切っ掛けであった。
□
「はぁ・・・」
金曜日の二〇〇六時、なのはは深く深く溜息を付く。
J・S事件の終結から二ヶ月、かの血戦で一皮むけた生徒達との訓練は、ブラスターモードの後遺症を差し引いても尚、なのはの体力を刮ぎとる。
しかしそれは、平和を取り戻し、日々復興を遂げる街並みを眺めるのと同じように、心の底からの達成感と充実感を彼女に与える物だ。
にも関わらずなのはが溜息を付いたのは、大切な幼馴染みに関する好ましくない噂が胸を占めているからだ。
即ち、無限書庫の司書長(男)は、クラウディアの提督(やっぱりこれも男)と爛れた関係にあるという噂だ。
話題の二人とは十年来の友達で、あまつさえ提督の方は妻帯者である。だから、最初この話を聞いた時は一笑に伏した。
出所がどこぞの医務官だったこともその理由ではある。だが、眼鏡のデバイスマスターが真相を尋ねに来た。
親友であるフェイトの所にはヘリパイロットの女の子が、目を輝かせながら、彼女の兄について尋ねたという。
どちらも、それぞれの古巣が情報源であり、部隊長やその私兵とは全く別のルートであった。
と、なると流石に不安になる。
ユーノとクロノは互いに憎まれ口を叩いているが、端から見る限り、何のかんのと言いつつ息が合っている。
不仲に見えるのは実は偽装なのではないか?
否、それは流石に考えすぎだ。
しかし次元航行部隊の局員は職務の都合から、同姓が懇ろになる事も少なくないとか言うではないか。
それは部隊の指揮に関わる事だから、そういう趣味の人間は外すのが不文律だと聞いている。
そう、所詮不文律なのだ。才能さえあれば猫でも杓子でも星の付いた肩章を渡すのが時空管理局のやり方だ。
クロノ程の人間ならば、多少性癖が特殊であろうと管理局が手放すはずがない。
加えてユーノも、控えめに表現して中性的な容貌の持ち主で、実際、そういう情景を想定してみても絵になってしまう。
そんな不安と猜疑心を持ってしまった自分に、なのはは再び溜息を付いてしまう。
暗い感情から、数歩先の床を眺めて歩いていたなのはの視線が正面を向いたのは、彼女の背がバシンと小気味良い音と共に叩かれたからだ。
「なのは、噂なんか気にしちゃ駄目だよ」
背を叩いたのは、一方の当事者の妹であるフェイトだった。
「フェイトちゃん・・・」
万事控えめなフェイトらしくない励まし方は、相当自分が参っている様に見えるのだろう。
「なのはは私たちの中で一番ユーノと付き合いが長いんだよ? ユーノがヘテロだって事はなのはが一番よく解っているでしょ」
ああ、そうだ。
と、なのはは思い至る。
フェイトは自分よりも深刻な立場にいるのだ。
友達なのだと自分を偽るなのはにとってユーノは他人たり得るが、フェイトにとってクロノは大切な家族の一人で、そんな欺瞞は適用し得ない。
フェイトの方が辛い筈だ。
フェイトだけではない、噂の渦中にいるユーノやクロノの方がずっと事態に頭を悩めているに決まっている。
「有難うフェイトちゃん。なんだか元気が出て来たよ」
笑顔を浮かべてみせる。
空元気だって元気なのだ。
「うん、なのは。やっぱり笑顔が一番だよ。」
二人並んで玄関へと向かう。そこに、悪夢の宣告をなす天使が待っているとも知らずに。
「あれ? ヴィヴィオ!」
それは玄関を出てすぐの事だった。街灯の光から少し外れた芝生の上で、海に浮かぶ星空を眺める少女を発見した。
ピンク色のコートに白いミトン、首にはボンボンの付いた黄色いマフラーを巻いて、頭は毛糸の帽子にすっぽりと覆われている。
それでもやはり十一月ともなれば夜は寒く、ヴィヴィオは愛犬ザフィーラにしっかりとしがみついていた。
「なのはママッ、フェイトママ!」
ザフィーラの首に回していた腕をほどき、ヴィヴィオはトテテテテ、と二人の母親を目指して走り出す。
「もー、ヴィヴィオ。おねむの時間でしょ〜」
その笑顔に相貌を崩しつつ、しかし幼子にしては過ぎた夜更かしをする愛娘にちょっと怒ってみせる。
「うぅ・・・ごめんなさい・・・」
本人も悪い事だと思っているのだろう、ヴィヴィオは少しだけ小さくなって謝る。
「まぁ、なのは、偶には良いじゃない。但し、帰ったら一緒にお風呂に入っておねむだよ? ヴィヴィオ」
甘やかし担当のフェイトが、もう怒っていないというゼスチャの為になのはを宥める。
「うん!」
望外の提案に笑顔で頷くヴィヴィオをフェイトが抱き上げる。
それが悪夢の宣告を少女に語らせる切っ掛けとなった。
「そうだ、フェイトママ。ユーノ君が気持ちいい、て本当?」
述語の抜けたヴィヴィオの問いに、フェイトは戦闘魔導師の常として思考を分割し、バックグランドでヴィヴィオの言葉の意味を考察する。
考察一.ユーノは何らかの事情で気持ちよくなっているが、傍目にはそうは取れない。
ex.徹夜仕事でハイになっている。
考察二.ユーノをどうにかすると気持ちよくなるが、傍目にはそうとは取れない。
ex.最近局内で話題になっている夜のプロレスごっこ。
結論.より詳細な情報の入手が必要である。
「・・・ユーノが気持ちいいって、誰から聞いたのかな?」
取り敢えずシャーリーやアルトからなら自分が叱り、スバルからならティアナに、カリムだったらシグナム経由で
シャッハに釘を刺してもらおうと、考察二に偏りながらも対応を決めておく。
「えっとねぇ、クロノおじさんが言ってたの」
「お兄ちゃん・・・クロノおじさんが、そう言ったの?」
フェイトは空間識失調を起こし掛け、必死に足を踏ん張る。
「うん。おやつの後にね、お祖母ちゃんのお家から次元通信があって、クロノおじさんが、ユーノ君は抱き心地が良い、て言ってたの」
母親達の葛藤など知らず、ヴィヴィオは無自覚に罪の告発をする。
「ザフィーラ・・・本当にお兄ちゃんがそんな事を言っていたの・・・?」
兄の無実を信じ、何かの聞き間違いであると願ってフェイトは寡黙な守護中へと言葉を投げ掛ける。
「ウソ・・・」
囁く様な声と鈍い音がフェイトの耳に届いたのは、ザフィーラが渋面を作って頷いたのと同時であり、振り返った先には意識を手放したなのはが倒れていた。
□
ユーノの官舎のチャイムが鳴ったのは、考古学会誌に書かれたV・ワゲン遺跡群から発掘されたバケツに関する特集記事を読んでいる時だった。
時計に目をやると、既に深夜一時を回っていた。
(無視しようかな)
ユーノの脳裏をそんな考えがよぎる。
今の時刻だけでも、不意の来訪者に応じない十分な理由になる。
だが、急ぎの用事なり、人目を忍ばなければならない理由なりがあるのかも知れない。だから、二度目のチャイムが鳴るのを待つ事にした。
程なくして再びチャイムが鳴り、ユーノは通信ウィンドゥを開きながら、玄関へと向かった。
いつかの如く酔っぱらったキール元帥達が相手でない事を祈りながら開いたウィンドゥには、サイドポニーの見知った女性・なのはが映っていた。
「今開けるよ、ちょっと待ってて!」
せいぜい数秒しか縮まらないというのに、ユーノは駆け出した。
「こんな遅くに、突然ゴメンね。ユーノ君」
マグカップで暖をとりながら、なのはは小さな声で家長に謝る。
「大丈夫、なのはならいつでも歓迎するよ」
なのはとは小さなテーブルを挟んだ反対側。
三人がけのソファに座り、自分のマグカップに注いだホットミルクへ息を吹きかけながら、ユーノは相貌を緩めて突然の来訪者の不安を否定する。
「でも大変だね、なのはも。何か急な会議でもあったの?」
時空管理局という組織は、文字通り猫の手すら借りる程人手が不足しており、会議開催の八時間前になって七時間の距離を渡航しろと命令する事すらある。
しかしそれも、ロストロギアという存在が、時として一つの世界をそこに住む全ての生命と共に消失させかねない事を思えば、決して無茶とは言い切れない。
ユーノ本人に限って言えばそう言う強行軍を強いられた事は一度もないが、月一平均で開催される緊急会議は大抵、
短納期で大量の資料請求という形で無限書庫にも襲いかかり、司書達の休日を吸い上げる。
間接的とは言えそんな経験を何度も繰り返し、加えて過去にクロノやフェイトなど七人の知古に対して、延べ十五回自宅を宿として提供している。
そんな実体験があるならば、深夜に茶色い陸式の制服に身を包んだなのはが来訪した理由を、唐突すぎる会議招集が原因でホテルをとる間もなかったと考えても仕方ない。
しかし、なのはの理由は違っていた。なのははマグカップに視線を落とし、もう一度謝る。
「ゴメンね、お仕事とは全然関係ないの」
愛の告白に来ました。とはまだ言えない。
「え、そうなの? 制服着てたからてっきり勘違いしちゃったよ」
ユーノは笑い、ホットミルクを少しだけ口に含んで、まだ自分には熱すぎる事を確認する。
「うん、そうだね。こんな格好だったら勘違いしちゃって当然だよね」
夏の海辺で白のワンピースを着て。とまでは言わないが、伝えたい想いを考えれば、せめてもう少し可愛い服を着てきた方が良かったと、間抜けな自分に苦笑する。
否、それこそ無理だ。今だって逃げ出したくなる程怖いのに、外見なんかに気を配る余裕なんてあるはずがない。
「実はね・・・ユーノ君とお話がしたくなったの」
「直接会って?」
片道二時間半の小旅行。
そんな手間を掛けなくとも念話のチャンネルを合わせれば、幾らだって話す事が出来るのに、わざわざ会いに来てくれた。それがユーノには少し嬉しかった。
「うん、大切な事だから」
テーブルにマグカップを置いて、なのはは居住まいを正す。
ユーノもそれに応じる様に、マグカップを置いた。
「・・・あのね、その、ユーノ君はクロノ君の事をどう思っているのかな?」
予想外のその問いに、ユーノはパチパチと目を瞬かせる。
「無限書庫の敵?」
恐らく管理局で最も、もしかしたら司書長である自分よりも、無限書庫の価値を評価しているその提督の名を聞いて、
ユーノが真っ先に思い描いたのは、資料請求の際に突き合わせる渋面ではなく、フェレット呼ばわりする皮肉った笑顔だった。
だから、司書達が囁く冗談を口にした。
「大切な事なの。ユーノ君は本当にそう思っているの?」
はぐらかされた。
不安がなのはの心を揺さぶる。
「・・・・親友かな。ちょっと自分で納得いかないけれども、多分一番の」
ユーノの交友関係に置いて極めて珍しい事であるが、クロノは互いに憎まれ口を叩く事の出来る間柄だ。そして、公私を問わず頼る事の出来る相手であると信頼していた。
只、不条理な事ではあるが、ユーノのプライドがそれを認めたがらないのだ。
「そっか、一番の親友なんだ」
いっそ泣いてしまいたい、となのはは思う。
『そのお話が本当なら、きっと友情から始まったんだと思うわ。素敵よねぇ』
六課の医務室で目を覚ました後で受けた問診の折、シャマルは確かそう教えてくれた。
それでも、まだ可能性に縋り付きたい。願いを込めて、ヴィヴィオから聞いた話を言葉に紡いだ。
「もう一つだけ、聞かせて。ユーノ君、クロノ君に抱かれたって、本当なの?」
笑っても良い、怒っても良い。だからどうか否定して欲しい。
「なッ、クロノから聞いたの!」
しかしその願いは叶えられなかった。羞恥に顔を赤く染め、ユーノは叫ぶ。
ああ、そうか、噂は本当なのだ。と、なのはは理解してしまう。
「ううん、ヴィヴィオがクロノ君から聞いたんだって。ユーノ君を抱いた事があるって」
ユーノの問いになのはは首を左右に振って、ほんの小さな相違に過ぎないけれども、伝聞であると答えた。
頭を抱え、呪詛の言葉を垂れ流すユーノを眺めるなのはは、涙を流していなかった。唯、十年間培ってきた想いを伝える事だけが、なのはの心を占拠する。
「・・・ねぇユーノ君、海鳴の海で、私とフェイトちゃんがケンカしたときのこと覚えてる?」
クロノを呪う言葉を止めて、ユーノは顔を上げる。
「うん、覚えているよ」
忘れてなどいない、忘れられる訳がない。
あれはフェイトと友達になる通過儀礼だ。
そして魔導師として既に自分よりもずっと先を歩く様になっていた、なのはの背中を押す事の出来た、ユーノの小さな誇りだ。
「ジュエルシードの封印をするなら、フェイトちゃんの自滅を待つ方がずっと確実だって、私も頭では解ってたんだ。
でも私、あのときフェイトちゃんとお話をして、友達になりたいって気持ちの方がずっと強かった。もしかしたら、
世界が滅びるかも知れないのに、ユーノ君、私を行かせてくれたよね。私の我が儘なのに、ユーノ君『行って』て
言ってくれた。凄く嬉しかった。心がポカポカして、絶対フェイトちゃんと友達になってみせるんだって、
世界なんて簡単に救ってみせるって思えたんだ。
それでね・・・きっとあの時だったと思うんだ、私。
ユーノ君の事を好きになったのは」
ユーノの身体を数多の魔法が拘束する。桜色の文字で書かれた魔術式。
補助魔法に限れば管理局でも有数の使い手であるユーノが、為す術無く拘束されたのは、目の前の幼馴染みの告白に心奪われたからだ。
「なのは!」
一体何が起きたのか。
何故、彼女の魔力光と同じ桜色のバインドに拘束されているのか。
なのはの告白に応えるだけの価値が自分にあるのか。
ユーノの心は千々に乱れ、目の前の少女の名を叫ぶ。
「ゴメンね、ユーノ君。言葉だけじゃ、この想いは伝わらない。伝えきれないと思うの」
今宵何度目の謝罪であろうか。
謝りながら上着を脱ぎ、タイトスカートのホックを外す。純白のドレスシャツの裾から、ベージュ色の下着が見え隠れする。
赤いリボンタイを右手で引き抜いて、上から順にプラスチックのボタンを外していく。
「な、なのは!」
顔を真っ赤に染めて目を瞑り、どうか服を着てくれと、当惑の声を上げる。
「嬉しいな、ユーノ君。ユーノ君の男の子、私にちゃんと反応してくれてる」
目を閉ざして出来た闇の中、ユーノの耳に届くのはなのはの淫蕩な言葉。
衣擦れの音。十一に思考を分割し、その内十を並列処理でフル回転させて、なのはの肢体に反応した自身を諫めようと、欲望をさらけ出しそうになる
自分を押さえ込もうと、理性の構築を試みる。
ギシリ
今の官舎に入居した時からあったテーブルが、人の重みで小さくしなる。
そのすぐ後に、ユーノの両頬に冷たい何かが触れて、ユーノは反射的に身震いする。
それがなのはの指であると知ったのは、唇に柔らかい物が宛われ、思わず目を見開いたからに他ならない。
焦点が合うかどうかと言う極至近距離で、なのはとユーノの瞳が互いを見詰める。
半ば不可抗力とはいえ一度開いてしまった瞳は、十の理性を二十に増やしても閉じる事が出来ず、衣を纏わぬなのはの裸体へと視線を滑らせていく。
恋人の作法を知らない二人のキスは、触れ合うだけの口付けだが、愛しい人と触れ合う事の喜びは心を高ぶらせる。
「・・・え・・・・」
唇が空気の冷たさに触れ、そしてなのはの瞳が遠退いていく事に気付いて、ユーノは言葉を漏らす。
伸ばすことなく手が届くはずの距離であるテーブルの上になのはは膝立ちし、ふふふと笑う。
フィールドワーカーであるにも関わらず白いなのはの肌と、白いニーソックスがユーノの網膜を刺激し、思わずゴクリと唾を飲み込む。
「ユーノ君、見ていてね」
妖艶な笑みを浮かべ、首から提げた赤い宝玉をその手に取る。
「レイジングハート、セットアップ」
言われるまでもなくユーノはなのはの裸体から目を離せない。
《Boring Mood》
注ぎ込まれた魔力によって光りながら、宝玉は一本の魔杖へと姿を変える。
それは、ユーノも見知ったアクセルモードやバスターモードは勿論、片手杖と呼ばれるステッキ様のものよりも短かった。
長さだけで言うならば、寧ろオーケストラで使われるタクトに近い。
だが、それからタクトを思い浮かべる事はまず無いだろう。
エクシードモードより僅かに細い短杖は、その上半分に三〇発のカートリッジを収めたマガジンを巻き付けている。
先端で紅く輝くコアクリスタルは、なのはの華奢な手首よりも尚小さい。
加えて、なのはの故郷・日本の刀の様に、グリップとマガジンの付け根で大きく反り返っている。恐らく、九七管理外世界の人に見せたらば、タクトなどよりメイスを思い浮かべる事であろう。
(カートリッジの再装填はどうやるんだろう)
二一個に切り分けた思考の一つが、少しばかり場違いな考察を行った。
本能と理性と好奇心がせめぎ合うユーノの前で、なのはの右手がマガジンを、左手がコアクリスタルの頂点を掴む。
注ぎ込まれた魔力によって、レイジングハートがぼんやりとした桜色に輝く。
魔杖の石突きを宛った先は、柔らかな髪と同じ胡桃色の茂みに覆われたなのはの秘所。
躊躇いで手が止まる。
指さえ差し込んだ事のない己の躯に、未だ濡れていないこの躯に、魔杖を挿す事はいかななのはとて勇気を必要とした。
そして、彼女にはその勇気があった。
「んッ・・・」
愛する人からもらった品で、なのはは自身の純潔の証を貫く。
想像以上の痛み。
しかしなのはは唯一度声を上げただけでそれに耐える。教導官という仕事柄、痛みを抑圧する術を心得ているのだ。
「ユーノ君の事、気持ち、よくしてあげる・・・レイジングハートで」
胎内の異物に呼吸を乱されながら、なのはは笑顔を造る。
そして、ユーノは絶句した。
なのはの左手が軽く横に振られ、バインドがそれに追随してユーノの身体を反転させる。
ユーノ自身の意図に関係なく、彼の上半身はソファに触れる程倒されて、臀部をなのはに向けさせられる。
ユーノは心を占めていた欲情の全て捨て去り、自身を拘束しているバインドと同数、九個に思考を統合し、解体コードの解析を開始する。
なのはによって腰からずり降ろされそうになった寝間着が、突然の心境変化に追随しきれない股間のものに引っかかる。
だが、それも一秒足らず。無理矢理に外気に曝される。
「ユーノ君って本当に肌が白いね」
無自覚的に展開するUV対策フィールド魔法とその体質から白い肌を維持しているなのはも、夕闇の様な無限書庫に一年の大半を籠もるユーノに勝る事は出来ない。
なのはが僅かばかりの羨望を込めて、雪の様に白いユーノの尻を撫でる。
そして菊座を広げた。
「止めて、なのは!」
ヒヤリとした透明な感触が菊門に宛われ、ユーノが叫ぶ。
必死に逃れようと身体を捻るが、大腿部を拘束するバインドの所為でなのはの矛先から逃れる事が出来ない。
寧ろなのはには、姉の書架にあった薄っぺらなマンガ本に描かれている如く、挿し貫く剛直を求めているかの様にすら見える。
《You will be Assimilated.Resistance is Futile.》
レイジングハートが厳かに宣告し、ユーノの腸を貫いた。
「!!!」
声すら出ない絶叫と共に、完成間近の解体コードが霧散する。
生物学的な反射を起こし、ユーノの視界が涙で歪む。
「凄いでしょ? ユーノ君」
苦痛が、疑問が、絶望がユーノの心を支配して、なのはの問いに答えられない。
唯、溺れかけた様に空気を求めて喘ぐ。
腹の中に埋め込まれた異物が、ずるずると引き抜かれ、そして再びゆっくりと押し込まれ、腸壁越しに前立腺を撫でられて、萎えかけたユーノのものが起立する。
「ねぇ、凄いでしょ? クロノ君よりも、ずっと、ずっと凄いでしょ?」
クロノの一物の大きさをエイミィが語った事は一度もない。故になのはがクロノのそれを知るはずがない。
それでもクロノと比べようとするのは、ユーノを彼から略奪する為だ。
だから執拗に、なのははユーノを犯す。
「・・・わは・・・んないよ!」
荒い息を継ぎながらもユーノは必死になのはに応える。
「・・・そっか・・・」
だが、それでは駄目なのだ。
ユーノの略奪とは即ち、男にも劣らない程の快楽を与えるに他ならないからだ。
だから、彼が感じている事を自覚させよう。
「ヒゥ!」
なのはのたおやかな指が、ユーノの亀頭を撫でる。
案の定、濡れていた。
「あ・・・」
ぬめる掌の触感に、なのはは微笑み、十分にカウパー腺液を絡めると、惜しげもなくユーノから手放し、その検分を開始する。
指と指との間で糸引くそれを眺め、嗅ぎ、舐める。未知の匂い、未知の味。とても心地良いとは言えないそれも、ユーノのものだと思えば心が躍る。
「でも、これおしっこじゃないよね?」
なのはは自身の唾液をほんの少しだけ混ぜたユーノの体液を、彼の眼前に曝す。
《And also,here is too wet. 》
加えて腸液に濡れたレイジングハートが、知りたくもない事実を突きつける。
襲われて、それでも躯が快楽を覚えてしまう淫蕩さ。その証拠を眼前に突きつけられて、ユーノは顔を逸らした。
「相変わらず強情だよね、ユーノ君は。・・・素直に感じて良いんだよ」
「イア!!」
唐突に舐める様な緩やかな動きから、叩き付ける様な腰使いへと一気に動きを変える。
腰を打ち付ける度に、ユーノの肉茎が揺れ動く。
何度も、何度もレイジングハートを捩り込む。
そのたびにユーノが艶やかな苦悶の声を上げ、なのはの理性を刮ぎとる。
もっとユーノを感じさせたい、感じて欲しい、感じたい。
誰よりも、何よりも、世界中の全てを超えて、今自分だけで満たしたい。
だのに触れ合っているのは互いの腰のみ。そんな不合理に満足できる訳がない。
だからなのはは、左手をユーノの太ももに内側から差し込み、右手を彼の胸に添える。そして、両手に力を込めて、押し倒した彼の上半身を引き起こした。
「イウゥ!」
剛直なレイジングハートがその向きを変えない為に前立腺が押し潰され、ユーノは絶頂を迎える。
ユーノにとって幸運だったのは、彼が絶頂を迎えた直後、なのはの腰の動きも止まっていたという事だ。
しかしそれは只の幸運。性知識が豊富とはいえないなのはは、未だユーノが達した事に気付いていない。只、愛しい人を抱きしめている幸福に浸った故の空白だ。
だからなのはの右手はユーノの薄っぺらな胸板を撫で回しているし、彼女の顔は亜麻色をした彼の髪に埋めている。
満たされない想いを満たそうと胸一杯にリンスの香りを吸い込んで、充ち満ちた不安を削ぎ落とそうと彼の背に頬摺り。
「なのはぁ・・・」
欲情に霞んだ頭でユーノは自身の後ろに立つ少女へと言葉を投げる。だが、名前の先に続ける想いはまだ纏まっていない。
もうこんな酷い事止めて欲しかったし、新たな境地に旅立ちそうな恐怖も訴えたかった。
なのはの告白に対する答えなんて十年前から決まっていたが、前を触ってくれない非道ぶりは罵ってしまいたい
程に身を焦がしていた。
「・・・ゴメンね、ユーノ君」
だが、彼の思いはなのはに伝わらない。
言葉にしなければ、想いは伝わらないのだ。
「動くの、忘れていちゃった」
ふやけたユーノの声色を、快楽への催促と理解して、自身の努力が認められたとなのはの心を歓喜が満たす。
「そうじゃ・・・」
《Master,sloth is deadly sin.》
快楽に溺れる事を怖れるユーノの言葉を、レイジングハートが遮る。
「そうだね、レイジングハート。
・・・ユーノ君、私頑張るから、イッパイ感じてね」
そして、なのはの腰が動き出す。
絶頂を迎え理性のたがが弛んだユーノの腋を、なのはは右手の中指と薬指でくすぐる。
脚を持ち上げる事はバインドに任せ、なのはの左手はユーノの臍をまさぐる。
腰を動かす度、歪に膨らみ、凹むユーノの腹を掌に感じ、なのははユーノと一体になった事を実感する。
「ひうッ・・・やン・・・ンン・・・・にゃのはぁ」
突き上げる痛みにも似た快楽と、柔らかい愛撫。
両手を空中に固定されたユーノは、喘ぐ口を塞ぐ事すら出来ず、甘い鳴き声を漏らす。
石鹸とリンスの香りを包む様にユーノの体臭がだんだんと濃くなっていく。
ユーノの匂いになのはは酩酊し、レイジングハートを挿入する動きが加速していく。
「ヤメ・・・にゃのは・・・ひっちゃう、ひっちゃうよぉ!」
快楽の遙かな地平の彼方が見えて、ユーノは涙を流して懇願する。
「いイよ、ユーの君、イッてッ。ワタしでイッて!」
もはやなのはの中に、クロノの姿はなく、唯喘ぐユーノだけがいる。
クロノからユーノを奪い取ろうという意識は彼方に置き去りにして、ひたすらにユーノを求め、ユーノを包み、ユーノに包まれようとしている。
「おヘガひ、オ願ヒ!」
止めて欲しいのか、もっと強く攻め抜いて欲しいのか、もはやユーノ自身にすら解らない。
「いF、ひッチャう!」
《Explotion》
手の届きそうな近くまで寄ってきた未知の世界にユーノが叫ぶ。
そして、カートリッジにファイアリングピンを叩き付けたと、レイジングハートが宣告した。
「嗚あ呼ぁアーッ」
ユーノは腑を桜色の魔力光によって蹂躙され、言葉にならない咆吼を発した。
触られることなく果てたユーノの情欲は、白濁した液体となって、ソファを濡らす。
海上更生施設に置かれた恋愛に関する副読本には、確か男達がそれを好んで口に含んでいた。
だからどんな味がするのか、少しばかり興味があるが、今はソファの上の精液を舐める気にはなれなかった。
「ねぇ、ユーノ君」
ユーノの背を抱きしめながら、なのはが囁く。
「まだカートリッジは沢山残っているよ?」
そしてユーノは黙って頷いた。
「そうだな。僕の経験上、不本意ではあるが最も抱き心地が良いのはユーノだと断言しよう」
それは、本局内の通路を歩きながらクロノが友人であるヴェロッサに語った言葉であった。
対してヴェロッサは、かつて緑茶をストレートで飲むと告白されたときのように驚いて問い返す。
「ユーノ先生が僕の猟犬たちより優れているのは信じよう。でも、あのベルカの蒼きモフモフよりも優れているだなんて、到底納得いかないな」
「ザフィーラか、確かに彼の毛並みのモフモフぶりは流石古代ベルカ式だと思うさ。
けど、十年も前の事だが、彼は僕のスティンガーレイを生身で受け止めた鋼鉄の筋肉の持ち主だ。
解るかい? この意味が」
文字通り鋼の肉体は、深く柔らかい毛皮の肌触りを、その全てではないにしろ大きく減じている。
クロノはそれを指摘しているのだ。
「しかしユーノ先生はちっちゃい。蒼きモフモフのボリューム感には勝てないはずだ!」
ベルカの誇りに掛けて、ヴェロッサはザフィーラの優位性を親友に説く。
「ム、大きさ云々というのなら、僕は匂いについて指摘したいね。風呂嫌いのザフィーラと違ってユーノは石鹸の香りがするから、抱いていても不快にならないぞ」
「ハッ」
クロノの反論にヴェロッサは鼻で笑う。
「野生の匂いがしない動物がそんなに良いだなんて、ミッド式はお上品だね」
実は、ヴィヴィオに心おきなくモフモフを堪能させる為に、近頃はザフィーラもこまめに入浴しているという事実を二人は知らない。
「野蛮さが美徳とは、聖遺物の管理もままならないのに納得いったよ」
売り言葉に買い言葉。クロノも口汚く言い返す。
「二度とカリムに近づかないでくれないか、ハラオウン提督。僕は君を義兄さんだなんて呼ぶ予定がないんだ」
「冗談はよしてくれ。本気で、エイミィとリエラ以上の女性が存在すると考えているのかい?」
結局廊下の分岐点に差し掛かるまで二人はレベルの低い言い争いを続けたが、最後は互いの安全を願って分かれた。
「「月の無い夜には気を付けろ!」」
○V・ワゲン遺跡群
ナウな考古学者にバカ受けの古代遺跡群。
名前の雰囲気からベルカ文明と関係があるかも知れないが詳細は不明。
バケツが大量に出土する。
○ボーリングフォーム
なのはの想いに応える為にレイジングハートが自らを再構成した、対人夜戦形態。
三十連発のヘリカルマガジンという辺り、出力重視の放線魔導師好みの仕様でもある。
薬莢そのものが魔力還元される燃焼カートリッジを採用する事により、従来形式に比べ機関部の大幅な小型化を実現した。
ヘリカルマガジン形式なのは、通常のバナナマガジンだと、合体した時、体が触れあえないから。
因みにバルディッシュは、レボルバ形式の為に多弾倉化は困難だが、先端部が動いたり、付け根部分が回転したり
するので、技巧派好みの夜のデバイスになってくれるだろう。
○ピンク色に光るレイジングハート
本編十六話のエレベータワイヤ降下の応用で、レイジングハートを防御魔法で覆う事により、対象体内の摺動に置いて、
対象の直腸を傷付けず、且つ、滑りをよくした。
まさかコラード三佐も、あの純真な少女がこんな応用方法を思い付くとは思わなかった筈。
著者:超硬合金
79 名前:恋愛キョウキ 2[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:30:49 ID:JhnnBf6X
80 名前:恋愛キョウキ 3[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:31:30 ID:JhnnBf6X
81 名前:恋愛キョウキ 4[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:32:36 ID:JhnnBf6X
82 名前:恋愛キョウキ 5[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:33:13 ID:JhnnBf6X
83 名前:恋愛キョウキ 6[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:34:19 ID:JhnnBf6X
84 名前:恋愛キョウキ 7[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:34:59 ID:JhnnBf6X
85 名前:恋愛キョウキ 8[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:35:24 ID:JhnnBf6X
86 名前:恋愛キョウキ 9[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:36:14 ID:JhnnBf6X
87 名前:恋愛キョウキ 10[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:37:22 ID:JhnnBf6X
88 名前:恋愛キョウキ 11[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:38:04 ID:JhnnBf6X
89 名前:恋愛キョウキ 12[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:38:56 ID:JhnnBf6X
90 名前:恋愛キョウキ 13[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:39:37 ID:JhnnBf6X
91 名前:恋愛キョウキ 14[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:40:24 ID:JhnnBf6X
92 名前:恋愛キョウキ 15[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:41:00 ID:JhnnBf6X
93 名前:恋愛キョウキ 16[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:41:36 ID:JhnnBf6X
94 名前:恋愛キョウキ 17[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:42:05 ID:JhnnBf6X
95 名前:恋愛キョウキ 18[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:43:11 ID:JhnnBf6X
96 名前:恋愛キョウキ 19[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:43:54 ID:JhnnBf6X
97 名前:恋愛キョウキ 20[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:44:49 ID:JhnnBf6X
98 名前:恋愛キョウキ おまけ1[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:46:36 ID:JhnnBf6X
99 名前:恋愛キョウキ おまけ2[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:47:06 ID:JhnnBf6X
100 名前:恋愛キョウキ おまけ3[sage] 投稿日:2008/05/11(日) 22:47:35 ID:JhnnBf6X
「そうだな。僕の経験上、不本意ではあるが最も抱き心地が良いのはユーノだと断言しよう」
それは、本局内の通路を歩きながらクロノが友人であるヴェロッサに語った言葉であった。
この不注意な一言が、彼にマイノリティな男性局員達と、メジャーな女性局員達のネットリとした視線を向ける
原因であり、後に起きたささやかな事件の切っ掛けであった。
□
「はぁ・・・」
金曜日の二〇〇六時、なのはは深く深く溜息を付く。
J・S事件の終結から二ヶ月、かの血戦で一皮むけた生徒達との訓練は、ブラスターモードの後遺症を差し引いても尚、なのはの体力を刮ぎとる。
しかしそれは、平和を取り戻し、日々復興を遂げる街並みを眺めるのと同じように、心の底からの達成感と充実感を彼女に与える物だ。
にも関わらずなのはが溜息を付いたのは、大切な幼馴染みに関する好ましくない噂が胸を占めているからだ。
即ち、無限書庫の司書長(男)は、クラウディアの提督(やっぱりこれも男)と爛れた関係にあるという噂だ。
話題の二人とは十年来の友達で、あまつさえ提督の方は妻帯者である。だから、最初この話を聞いた時は一笑に伏した。
出所がどこぞの医務官だったこともその理由ではある。だが、眼鏡のデバイスマスターが真相を尋ねに来た。
親友であるフェイトの所にはヘリパイロットの女の子が、目を輝かせながら、彼女の兄について尋ねたという。
どちらも、それぞれの古巣が情報源であり、部隊長やその私兵とは全く別のルートであった。
と、なると流石に不安になる。
ユーノとクロノは互いに憎まれ口を叩いているが、端から見る限り、何のかんのと言いつつ息が合っている。
不仲に見えるのは実は偽装なのではないか?
否、それは流石に考えすぎだ。
しかし次元航行部隊の局員は職務の都合から、同姓が懇ろになる事も少なくないとか言うではないか。
それは部隊の指揮に関わる事だから、そういう趣味の人間は外すのが不文律だと聞いている。
そう、所詮不文律なのだ。才能さえあれば猫でも杓子でも星の付いた肩章を渡すのが時空管理局のやり方だ。
クロノ程の人間ならば、多少性癖が特殊であろうと管理局が手放すはずがない。
加えてユーノも、控えめに表現して中性的な容貌の持ち主で、実際、そういう情景を想定してみても絵になってしまう。
そんな不安と猜疑心を持ってしまった自分に、なのはは再び溜息を付いてしまう。
暗い感情から、数歩先の床を眺めて歩いていたなのはの視線が正面を向いたのは、彼女の背がバシンと小気味良い音と共に叩かれたからだ。
「なのは、噂なんか気にしちゃ駄目だよ」
背を叩いたのは、一方の当事者の妹であるフェイトだった。
「フェイトちゃん・・・」
万事控えめなフェイトらしくない励まし方は、相当自分が参っている様に見えるのだろう。
「なのはは私たちの中で一番ユーノと付き合いが長いんだよ? ユーノがヘテロだって事はなのはが一番よく解っているでしょ」
ああ、そうだ。
と、なのはは思い至る。
フェイトは自分よりも深刻な立場にいるのだ。
友達なのだと自分を偽るなのはにとってユーノは他人たり得るが、フェイトにとってクロノは大切な家族の一人で、そんな欺瞞は適用し得ない。
フェイトの方が辛い筈だ。
フェイトだけではない、噂の渦中にいるユーノやクロノの方がずっと事態に頭を悩めているに決まっている。
「有難うフェイトちゃん。なんだか元気が出て来たよ」
笑顔を浮かべてみせる。
空元気だって元気なのだ。
「うん、なのは。やっぱり笑顔が一番だよ。」
二人並んで玄関へと向かう。そこに、悪夢の宣告をなす天使が待っているとも知らずに。
「あれ? ヴィヴィオ!」
それは玄関を出てすぐの事だった。街灯の光から少し外れた芝生の上で、海に浮かぶ星空を眺める少女を発見した。
ピンク色のコートに白いミトン、首にはボンボンの付いた黄色いマフラーを巻いて、頭は毛糸の帽子にすっぽりと覆われている。
それでもやはり十一月ともなれば夜は寒く、ヴィヴィオは愛犬ザフィーラにしっかりとしがみついていた。
「なのはママッ、フェイトママ!」
ザフィーラの首に回していた腕をほどき、ヴィヴィオはトテテテテ、と二人の母親を目指して走り出す。
「もー、ヴィヴィオ。おねむの時間でしょ〜」
その笑顔に相貌を崩しつつ、しかし幼子にしては過ぎた夜更かしをする愛娘にちょっと怒ってみせる。
「うぅ・・・ごめんなさい・・・」
本人も悪い事だと思っているのだろう、ヴィヴィオは少しだけ小さくなって謝る。
「まぁ、なのは、偶には良いじゃない。但し、帰ったら一緒にお風呂に入っておねむだよ? ヴィヴィオ」
甘やかし担当のフェイトが、もう怒っていないというゼスチャの為になのはを宥める。
「うん!」
望外の提案に笑顔で頷くヴィヴィオをフェイトが抱き上げる。
それが悪夢の宣告を少女に語らせる切っ掛けとなった。
「そうだ、フェイトママ。ユーノ君が気持ちいい、て本当?」
述語の抜けたヴィヴィオの問いに、フェイトは戦闘魔導師の常として思考を分割し、バックグランドでヴィヴィオの言葉の意味を考察する。
考察一.ユーノは何らかの事情で気持ちよくなっているが、傍目にはそうは取れない。
ex.徹夜仕事でハイになっている。
考察二.ユーノをどうにかすると気持ちよくなるが、傍目にはそうとは取れない。
ex.最近局内で話題になっている夜のプロレスごっこ。
結論.より詳細な情報の入手が必要である。
「・・・ユーノが気持ちいいって、誰から聞いたのかな?」
取り敢えずシャーリーやアルトからなら自分が叱り、スバルからならティアナに、カリムだったらシグナム経由で
シャッハに釘を刺してもらおうと、考察二に偏りながらも対応を決めておく。
「えっとねぇ、クロノおじさんが言ってたの」
「お兄ちゃん・・・クロノおじさんが、そう言ったの?」
フェイトは空間識失調を起こし掛け、必死に足を踏ん張る。
「うん。おやつの後にね、お祖母ちゃんのお家から次元通信があって、クロノおじさんが、ユーノ君は抱き心地が良い、て言ってたの」
母親達の葛藤など知らず、ヴィヴィオは無自覚に罪の告発をする。
「ザフィーラ・・・本当にお兄ちゃんがそんな事を言っていたの・・・?」
兄の無実を信じ、何かの聞き間違いであると願ってフェイトは寡黙な守護中へと言葉を投げ掛ける。
「ウソ・・・」
囁く様な声と鈍い音がフェイトの耳に届いたのは、ザフィーラが渋面を作って頷いたのと同時であり、振り返った先には意識を手放したなのはが倒れていた。
□
ユーノの官舎のチャイムが鳴ったのは、考古学会誌に書かれたV・ワゲン遺跡群から発掘されたバケツに関する特集記事を読んでいる時だった。
時計に目をやると、既に深夜一時を回っていた。
(無視しようかな)
ユーノの脳裏をそんな考えがよぎる。
今の時刻だけでも、不意の来訪者に応じない十分な理由になる。
だが、急ぎの用事なり、人目を忍ばなければならない理由なりがあるのかも知れない。だから、二度目のチャイムが鳴るのを待つ事にした。
程なくして再びチャイムが鳴り、ユーノは通信ウィンドゥを開きながら、玄関へと向かった。
いつかの如く酔っぱらったキール元帥達が相手でない事を祈りながら開いたウィンドゥには、サイドポニーの見知った女性・なのはが映っていた。
「今開けるよ、ちょっと待ってて!」
せいぜい数秒しか縮まらないというのに、ユーノは駆け出した。
「こんな遅くに、突然ゴメンね。ユーノ君」
マグカップで暖をとりながら、なのはは小さな声で家長に謝る。
「大丈夫、なのはならいつでも歓迎するよ」
なのはとは小さなテーブルを挟んだ反対側。
三人がけのソファに座り、自分のマグカップに注いだホットミルクへ息を吹きかけながら、ユーノは相貌を緩めて突然の来訪者の不安を否定する。
「でも大変だね、なのはも。何か急な会議でもあったの?」
時空管理局という組織は、文字通り猫の手すら借りる程人手が不足しており、会議開催の八時間前になって七時間の距離を渡航しろと命令する事すらある。
しかしそれも、ロストロギアという存在が、時として一つの世界をそこに住む全ての生命と共に消失させかねない事を思えば、決して無茶とは言い切れない。
ユーノ本人に限って言えばそう言う強行軍を強いられた事は一度もないが、月一平均で開催される緊急会議は大抵、
短納期で大量の資料請求という形で無限書庫にも襲いかかり、司書達の休日を吸い上げる。
間接的とは言えそんな経験を何度も繰り返し、加えて過去にクロノやフェイトなど七人の知古に対して、延べ十五回自宅を宿として提供している。
そんな実体験があるならば、深夜に茶色い陸式の制服に身を包んだなのはが来訪した理由を、唐突すぎる会議招集が原因でホテルをとる間もなかったと考えても仕方ない。
しかし、なのはの理由は違っていた。なのははマグカップに視線を落とし、もう一度謝る。
「ゴメンね、お仕事とは全然関係ないの」
愛の告白に来ました。とはまだ言えない。
「え、そうなの? 制服着てたからてっきり勘違いしちゃったよ」
ユーノは笑い、ホットミルクを少しだけ口に含んで、まだ自分には熱すぎる事を確認する。
「うん、そうだね。こんな格好だったら勘違いしちゃって当然だよね」
夏の海辺で白のワンピースを着て。とまでは言わないが、伝えたい想いを考えれば、せめてもう少し可愛い服を着てきた方が良かったと、間抜けな自分に苦笑する。
否、それこそ無理だ。今だって逃げ出したくなる程怖いのに、外見なんかに気を配る余裕なんてあるはずがない。
「実はね・・・ユーノ君とお話がしたくなったの」
「直接会って?」
片道二時間半の小旅行。
そんな手間を掛けなくとも念話のチャンネルを合わせれば、幾らだって話す事が出来るのに、わざわざ会いに来てくれた。それがユーノには少し嬉しかった。
「うん、大切な事だから」
テーブルにマグカップを置いて、なのはは居住まいを正す。
ユーノもそれに応じる様に、マグカップを置いた。
「・・・あのね、その、ユーノ君はクロノ君の事をどう思っているのかな?」
予想外のその問いに、ユーノはパチパチと目を瞬かせる。
「無限書庫の敵?」
恐らく管理局で最も、もしかしたら司書長である自分よりも、無限書庫の価値を評価しているその提督の名を聞いて、
ユーノが真っ先に思い描いたのは、資料請求の際に突き合わせる渋面ではなく、フェレット呼ばわりする皮肉った笑顔だった。
だから、司書達が囁く冗談を口にした。
「大切な事なの。ユーノ君は本当にそう思っているの?」
はぐらかされた。
不安がなのはの心を揺さぶる。
「・・・・親友かな。ちょっと自分で納得いかないけれども、多分一番の」
ユーノの交友関係に置いて極めて珍しい事であるが、クロノは互いに憎まれ口を叩く事の出来る間柄だ。そして、公私を問わず頼る事の出来る相手であると信頼していた。
只、不条理な事ではあるが、ユーノのプライドがそれを認めたがらないのだ。
「そっか、一番の親友なんだ」
いっそ泣いてしまいたい、となのはは思う。
『そのお話が本当なら、きっと友情から始まったんだと思うわ。素敵よねぇ』
六課の医務室で目を覚ました後で受けた問診の折、シャマルは確かそう教えてくれた。
それでも、まだ可能性に縋り付きたい。願いを込めて、ヴィヴィオから聞いた話を言葉に紡いだ。
「もう一つだけ、聞かせて。ユーノ君、クロノ君に抱かれたって、本当なの?」
笑っても良い、怒っても良い。だからどうか否定して欲しい。
「なッ、クロノから聞いたの!」
しかしその願いは叶えられなかった。羞恥に顔を赤く染め、ユーノは叫ぶ。
ああ、そうか、噂は本当なのだ。と、なのはは理解してしまう。
「ううん、ヴィヴィオがクロノ君から聞いたんだって。ユーノ君を抱いた事があるって」
ユーノの問いになのはは首を左右に振って、ほんの小さな相違に過ぎないけれども、伝聞であると答えた。
頭を抱え、呪詛の言葉を垂れ流すユーノを眺めるなのはは、涙を流していなかった。唯、十年間培ってきた想いを伝える事だけが、なのはの心を占拠する。
「・・・ねぇユーノ君、海鳴の海で、私とフェイトちゃんがケンカしたときのこと覚えてる?」
クロノを呪う言葉を止めて、ユーノは顔を上げる。
「うん、覚えているよ」
忘れてなどいない、忘れられる訳がない。
あれはフェイトと友達になる通過儀礼だ。
そして魔導師として既に自分よりもずっと先を歩く様になっていた、なのはの背中を押す事の出来た、ユーノの小さな誇りだ。
「ジュエルシードの封印をするなら、フェイトちゃんの自滅を待つ方がずっと確実だって、私も頭では解ってたんだ。
でも私、あのときフェイトちゃんとお話をして、友達になりたいって気持ちの方がずっと強かった。もしかしたら、
世界が滅びるかも知れないのに、ユーノ君、私を行かせてくれたよね。私の我が儘なのに、ユーノ君『行って』て
言ってくれた。凄く嬉しかった。心がポカポカして、絶対フェイトちゃんと友達になってみせるんだって、
世界なんて簡単に救ってみせるって思えたんだ。
それでね・・・きっとあの時だったと思うんだ、私。
ユーノ君の事を好きになったのは」
ユーノの身体を数多の魔法が拘束する。桜色の文字で書かれた魔術式。
補助魔法に限れば管理局でも有数の使い手であるユーノが、為す術無く拘束されたのは、目の前の幼馴染みの告白に心奪われたからだ。
「なのは!」
一体何が起きたのか。
何故、彼女の魔力光と同じ桜色のバインドに拘束されているのか。
なのはの告白に応えるだけの価値が自分にあるのか。
ユーノの心は千々に乱れ、目の前の少女の名を叫ぶ。
「ゴメンね、ユーノ君。言葉だけじゃ、この想いは伝わらない。伝えきれないと思うの」
今宵何度目の謝罪であろうか。
謝りながら上着を脱ぎ、タイトスカートのホックを外す。純白のドレスシャツの裾から、ベージュ色の下着が見え隠れする。
赤いリボンタイを右手で引き抜いて、上から順にプラスチックのボタンを外していく。
「な、なのは!」
顔を真っ赤に染めて目を瞑り、どうか服を着てくれと、当惑の声を上げる。
「嬉しいな、ユーノ君。ユーノ君の男の子、私にちゃんと反応してくれてる」
目を閉ざして出来た闇の中、ユーノの耳に届くのはなのはの淫蕩な言葉。
衣擦れの音。十一に思考を分割し、その内十を並列処理でフル回転させて、なのはの肢体に反応した自身を諫めようと、欲望をさらけ出しそうになる
自分を押さえ込もうと、理性の構築を試みる。
ギシリ
今の官舎に入居した時からあったテーブルが、人の重みで小さくしなる。
そのすぐ後に、ユーノの両頬に冷たい何かが触れて、ユーノは反射的に身震いする。
それがなのはの指であると知ったのは、唇に柔らかい物が宛われ、思わず目を見開いたからに他ならない。
焦点が合うかどうかと言う極至近距離で、なのはとユーノの瞳が互いを見詰める。
半ば不可抗力とはいえ一度開いてしまった瞳は、十の理性を二十に増やしても閉じる事が出来ず、衣を纏わぬなのはの裸体へと視線を滑らせていく。
恋人の作法を知らない二人のキスは、触れ合うだけの口付けだが、愛しい人と触れ合う事の喜びは心を高ぶらせる。
「・・・え・・・・」
唇が空気の冷たさに触れ、そしてなのはの瞳が遠退いていく事に気付いて、ユーノは言葉を漏らす。
伸ばすことなく手が届くはずの距離であるテーブルの上になのはは膝立ちし、ふふふと笑う。
フィールドワーカーであるにも関わらず白いなのはの肌と、白いニーソックスがユーノの網膜を刺激し、思わずゴクリと唾を飲み込む。
「ユーノ君、見ていてね」
妖艶な笑みを浮かべ、首から提げた赤い宝玉をその手に取る。
「レイジングハート、セットアップ」
言われるまでもなくユーノはなのはの裸体から目を離せない。
《Boring Mood》
注ぎ込まれた魔力によって光りながら、宝玉は一本の魔杖へと姿を変える。
それは、ユーノも見知ったアクセルモードやバスターモードは勿論、片手杖と呼ばれるステッキ様のものよりも短かった。
長さだけで言うならば、寧ろオーケストラで使われるタクトに近い。
だが、それからタクトを思い浮かべる事はまず無いだろう。
エクシードモードより僅かに細い短杖は、その上半分に三〇発のカートリッジを収めたマガジンを巻き付けている。
先端で紅く輝くコアクリスタルは、なのはの華奢な手首よりも尚小さい。
加えて、なのはの故郷・日本の刀の様に、グリップとマガジンの付け根で大きく反り返っている。恐らく、九七管理外世界の人に見せたらば、タクトなどよりメイスを思い浮かべる事であろう。
(カートリッジの再装填はどうやるんだろう)
二一個に切り分けた思考の一つが、少しばかり場違いな考察を行った。
本能と理性と好奇心がせめぎ合うユーノの前で、なのはの右手がマガジンを、左手がコアクリスタルの頂点を掴む。
注ぎ込まれた魔力によって、レイジングハートがぼんやりとした桜色に輝く。
魔杖の石突きを宛った先は、柔らかな髪と同じ胡桃色の茂みに覆われたなのはの秘所。
躊躇いで手が止まる。
指さえ差し込んだ事のない己の躯に、未だ濡れていないこの躯に、魔杖を挿す事はいかななのはとて勇気を必要とした。
そして、彼女にはその勇気があった。
「んッ・・・」
愛する人からもらった品で、なのはは自身の純潔の証を貫く。
想像以上の痛み。
しかしなのはは唯一度声を上げただけでそれに耐える。教導官という仕事柄、痛みを抑圧する術を心得ているのだ。
「ユーノ君の事、気持ち、よくしてあげる・・・レイジングハートで」
胎内の異物に呼吸を乱されながら、なのはは笑顔を造る。
そして、ユーノは絶句した。
なのはの左手が軽く横に振られ、バインドがそれに追随してユーノの身体を反転させる。
ユーノ自身の意図に関係なく、彼の上半身はソファに触れる程倒されて、臀部をなのはに向けさせられる。
ユーノは心を占めていた欲情の全て捨て去り、自身を拘束しているバインドと同数、九個に思考を統合し、解体コードの解析を開始する。
なのはによって腰からずり降ろされそうになった寝間着が、突然の心境変化に追随しきれない股間のものに引っかかる。
だが、それも一秒足らず。無理矢理に外気に曝される。
「ユーノ君って本当に肌が白いね」
無自覚的に展開するUV対策フィールド魔法とその体質から白い肌を維持しているなのはも、夕闇の様な無限書庫に一年の大半を籠もるユーノに勝る事は出来ない。
なのはが僅かばかりの羨望を込めて、雪の様に白いユーノの尻を撫でる。
そして菊座を広げた。
「止めて、なのは!」
ヒヤリとした透明な感触が菊門に宛われ、ユーノが叫ぶ。
必死に逃れようと身体を捻るが、大腿部を拘束するバインドの所為でなのはの矛先から逃れる事が出来ない。
寧ろなのはには、姉の書架にあった薄っぺらなマンガ本に描かれている如く、挿し貫く剛直を求めているかの様にすら見える。
《You will be Assimilated.Resistance is Futile.》
レイジングハートが厳かに宣告し、ユーノの腸を貫いた。
「!!!」
声すら出ない絶叫と共に、完成間近の解体コードが霧散する。
生物学的な反射を起こし、ユーノの視界が涙で歪む。
「凄いでしょ? ユーノ君」
苦痛が、疑問が、絶望がユーノの心を支配して、なのはの問いに答えられない。
唯、溺れかけた様に空気を求めて喘ぐ。
腹の中に埋め込まれた異物が、ずるずると引き抜かれ、そして再びゆっくりと押し込まれ、腸壁越しに前立腺を撫でられて、萎えかけたユーノのものが起立する。
「ねぇ、凄いでしょ? クロノ君よりも、ずっと、ずっと凄いでしょ?」
クロノの一物の大きさをエイミィが語った事は一度もない。故になのはがクロノのそれを知るはずがない。
それでもクロノと比べようとするのは、ユーノを彼から略奪する為だ。
だから執拗に、なのははユーノを犯す。
「・・・わは・・・んないよ!」
荒い息を継ぎながらもユーノは必死になのはに応える。
「・・・そっか・・・」
だが、それでは駄目なのだ。
ユーノの略奪とは即ち、男にも劣らない程の快楽を与えるに他ならないからだ。
だから、彼が感じている事を自覚させよう。
「ヒゥ!」
なのはのたおやかな指が、ユーノの亀頭を撫でる。
案の定、濡れていた。
「あ・・・」
ぬめる掌の触感に、なのはは微笑み、十分にカウパー腺液を絡めると、惜しげもなくユーノから手放し、その検分を開始する。
指と指との間で糸引くそれを眺め、嗅ぎ、舐める。未知の匂い、未知の味。とても心地良いとは言えないそれも、ユーノのものだと思えば心が躍る。
「でも、これおしっこじゃないよね?」
なのはは自身の唾液をほんの少しだけ混ぜたユーノの体液を、彼の眼前に曝す。
《And also,here is too wet. 》
加えて腸液に濡れたレイジングハートが、知りたくもない事実を突きつける。
襲われて、それでも躯が快楽を覚えてしまう淫蕩さ。その証拠を眼前に突きつけられて、ユーノは顔を逸らした。
「相変わらず強情だよね、ユーノ君は。・・・素直に感じて良いんだよ」
「イア!!」
唐突に舐める様な緩やかな動きから、叩き付ける様な腰使いへと一気に動きを変える。
腰を打ち付ける度に、ユーノの肉茎が揺れ動く。
何度も、何度もレイジングハートを捩り込む。
そのたびにユーノが艶やかな苦悶の声を上げ、なのはの理性を刮ぎとる。
もっとユーノを感じさせたい、感じて欲しい、感じたい。
誰よりも、何よりも、世界中の全てを超えて、今自分だけで満たしたい。
だのに触れ合っているのは互いの腰のみ。そんな不合理に満足できる訳がない。
だからなのはは、左手をユーノの太ももに内側から差し込み、右手を彼の胸に添える。そして、両手に力を込めて、押し倒した彼の上半身を引き起こした。
「イウゥ!」
剛直なレイジングハートがその向きを変えない為に前立腺が押し潰され、ユーノは絶頂を迎える。
ユーノにとって幸運だったのは、彼が絶頂を迎えた直後、なのはの腰の動きも止まっていたという事だ。
しかしそれは只の幸運。性知識が豊富とはいえないなのはは、未だユーノが達した事に気付いていない。只、愛しい人を抱きしめている幸福に浸った故の空白だ。
だからなのはの右手はユーノの薄っぺらな胸板を撫で回しているし、彼女の顔は亜麻色をした彼の髪に埋めている。
満たされない想いを満たそうと胸一杯にリンスの香りを吸い込んで、充ち満ちた不安を削ぎ落とそうと彼の背に頬摺り。
「なのはぁ・・・」
欲情に霞んだ頭でユーノは自身の後ろに立つ少女へと言葉を投げる。だが、名前の先に続ける想いはまだ纏まっていない。
もうこんな酷い事止めて欲しかったし、新たな境地に旅立ちそうな恐怖も訴えたかった。
なのはの告白に対する答えなんて十年前から決まっていたが、前を触ってくれない非道ぶりは罵ってしまいたい
程に身を焦がしていた。
「・・・ゴメンね、ユーノ君」
だが、彼の思いはなのはに伝わらない。
言葉にしなければ、想いは伝わらないのだ。
「動くの、忘れていちゃった」
ふやけたユーノの声色を、快楽への催促と理解して、自身の努力が認められたとなのはの心を歓喜が満たす。
「そうじゃ・・・」
《Master,sloth is deadly sin.》
快楽に溺れる事を怖れるユーノの言葉を、レイジングハートが遮る。
「そうだね、レイジングハート。
・・・ユーノ君、私頑張るから、イッパイ感じてね」
そして、なのはの腰が動き出す。
絶頂を迎え理性のたがが弛んだユーノの腋を、なのはは右手の中指と薬指でくすぐる。
脚を持ち上げる事はバインドに任せ、なのはの左手はユーノの臍をまさぐる。
腰を動かす度、歪に膨らみ、凹むユーノの腹を掌に感じ、なのははユーノと一体になった事を実感する。
「ひうッ・・・やン・・・ンン・・・・にゃのはぁ」
突き上げる痛みにも似た快楽と、柔らかい愛撫。
両手を空中に固定されたユーノは、喘ぐ口を塞ぐ事すら出来ず、甘い鳴き声を漏らす。
石鹸とリンスの香りを包む様にユーノの体臭がだんだんと濃くなっていく。
ユーノの匂いになのはは酩酊し、レイジングハートを挿入する動きが加速していく。
「ヤメ・・・にゃのは・・・ひっちゃう、ひっちゃうよぉ!」
快楽の遙かな地平の彼方が見えて、ユーノは涙を流して懇願する。
「いイよ、ユーの君、イッてッ。ワタしでイッて!」
もはやなのはの中に、クロノの姿はなく、唯喘ぐユーノだけがいる。
クロノからユーノを奪い取ろうという意識は彼方に置き去りにして、ひたすらにユーノを求め、ユーノを包み、ユーノに包まれようとしている。
「おヘガひ、オ願ヒ!」
止めて欲しいのか、もっと強く攻め抜いて欲しいのか、もはやユーノ自身にすら解らない。
「いF、ひッチャう!」
《Explotion》
手の届きそうな近くまで寄ってきた未知の世界にユーノが叫ぶ。
そして、カートリッジにファイアリングピンを叩き付けたと、レイジングハートが宣告した。
「嗚あ呼ぁアーッ」
ユーノは腑を桜色の魔力光によって蹂躙され、言葉にならない咆吼を発した。
触られることなく果てたユーノの情欲は、白濁した液体となって、ソファを濡らす。
海上更生施設に置かれた恋愛に関する副読本には、確か男達がそれを好んで口に含んでいた。
だからどんな味がするのか、少しばかり興味があるが、今はソファの上の精液を舐める気にはなれなかった。
「ねぇ、ユーノ君」
ユーノの背を抱きしめながら、なのはが囁く。
「まだカートリッジは沢山残っているよ?」
そしてユーノは黙って頷いた。
「そうだな。僕の経験上、不本意ではあるが最も抱き心地が良いのはユーノだと断言しよう」
それは、本局内の通路を歩きながらクロノが友人であるヴェロッサに語った言葉であった。
対してヴェロッサは、かつて緑茶をストレートで飲むと告白されたときのように驚いて問い返す。
「ユーノ先生が僕の猟犬たちより優れているのは信じよう。でも、あのベルカの蒼きモフモフよりも優れているだなんて、到底納得いかないな」
「ザフィーラか、確かに彼の毛並みのモフモフぶりは流石古代ベルカ式だと思うさ。
けど、十年も前の事だが、彼は僕のスティンガーレイを生身で受け止めた鋼鉄の筋肉の持ち主だ。
解るかい? この意味が」
文字通り鋼の肉体は、深く柔らかい毛皮の肌触りを、その全てではないにしろ大きく減じている。
クロノはそれを指摘しているのだ。
「しかしユーノ先生はちっちゃい。蒼きモフモフのボリューム感には勝てないはずだ!」
ベルカの誇りに掛けて、ヴェロッサはザフィーラの優位性を親友に説く。
「ム、大きさ云々というのなら、僕は匂いについて指摘したいね。風呂嫌いのザフィーラと違ってユーノは石鹸の香りがするから、抱いていても不快にならないぞ」
「ハッ」
クロノの反論にヴェロッサは鼻で笑う。
「野生の匂いがしない動物がそんなに良いだなんて、ミッド式はお上品だね」
実は、ヴィヴィオに心おきなくモフモフを堪能させる為に、近頃はザフィーラもこまめに入浴しているという事実を二人は知らない。
「野蛮さが美徳とは、聖遺物の管理もままならないのに納得いったよ」
売り言葉に買い言葉。クロノも口汚く言い返す。
「二度とカリムに近づかないでくれないか、ハラオウン提督。僕は君を義兄さんだなんて呼ぶ予定がないんだ」
「冗談はよしてくれ。本気で、エイミィとリエラ以上の女性が存在すると考えているのかい?」
結局廊下の分岐点に差し掛かるまで二人はレベルの低い言い争いを続けたが、最後は互いの安全を願って分かれた。
「「月の無い夜には気を付けろ!」」
○V・ワゲン遺跡群
ナウな考古学者にバカ受けの古代遺跡群。
名前の雰囲気からベルカ文明と関係があるかも知れないが詳細は不明。
バケツが大量に出土する。
○ボーリングフォーム
なのはの想いに応える為にレイジングハートが自らを再構成した、対人夜戦形態。
三十連発のヘリカルマガジンという辺り、出力重視の放線魔導師好みの仕様でもある。
薬莢そのものが魔力還元される燃焼カートリッジを採用する事により、従来形式に比べ機関部の大幅な小型化を実現した。
ヘリカルマガジン形式なのは、通常のバナナマガジンだと、合体した時、体が触れあえないから。
因みにバルディッシュは、レボルバ形式の為に多弾倉化は困難だが、先端部が動いたり、付け根部分が回転したり
するので、技巧派好みの夜のデバイスになってくれるだろう。
○ピンク色に光るレイジングハート
本編十六話のエレベータワイヤ降下の応用で、レイジングハートを防御魔法で覆う事により、対象体内の摺動に置いて、
対象の直腸を傷付けず、且つ、滑りをよくした。
まさかコラード三佐も、あの純真な少女がこんな応用方法を思い付くとは思わなかった筈。
著者:超硬合金
- カテゴリ:
- 漫画/アニメ
- 魔法少女リリカルなのは
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