☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫 - 燃え上がる炎の魔法使い 0
[442] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 1/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:10:07 ID:sUaQATfd
[443] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 2/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:13:14 ID:sUaQATfd
[444] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 3/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:13:40 ID:sUaQATfd
[445] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 4/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:14:22 ID:sUaQATfd
[446] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 5/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:14:50 ID:sUaQATfd
[447] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 6/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:15:13 ID:sUaQATfd
[448] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 7/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:16:05 ID:sUaQATfd
[449] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 8/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:16:33 ID:sUaQATfd
[450] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 9/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:17:28 ID:sUaQATfd
[451] 燃え上がる炎の魔法使い Prolog 10/10 ◆kd.2f.1cKc sage 2008/01/19(土) 07:18:37 ID:QNBiFK2q

 May.13.2005 0:00────日本国 東京都 海鳴市
 市中心部から僅かに離れた高級住宅街──月村家からも程近い──の1軒。
 壁一面に本棚が並べられ、びっしりと本の並ぶ部屋。書斎の様相を呈していたが、ベッ
ドや、学習机も置かれていた。
 そして、ベッドの上には、この部屋の主である、少女が、眠りにつこうとしているとこ
ろだった。
『Stiefel auf』
 光。
 本棚に置かれていた、古ぼけたハードカバーの本が、突然、人の手を借りる事も無く、
宙に浮き、そして、眩いばかりの光を放ち始めた。
「ん……んぅ……」
 あまりの眩しさに、寝入り端だった少女は、目を覚ます。
「なんや……?」
『Existenz eines Meisters wurde uberpruft』
 本から、女性のそれのような声が響いてくる。
『Alle Systeme werden begonnen』
「へ……?」
 空中に、光の線が、三角形の頂点に円を組み合わせた紋様を浮かび上がらせる。
 少女は、わけがわからず、呆然と、その様子に見入ってしまった。逃げる事はしない。
いや、仮に怯えていたとしても、逃げる事は出来なかったのだが、この時は、それは少女
の本意ではなかった。
『Ein Schutzritter wird entdeckt』
 赤紫、赤、緑、青。同じような光の線の紋様が現われ、回転を始める────

燃え上がる炎の魔法使い〜Lyrical Violence + A's〜
 Prolog

 Dec.11.2005 5:30
 和式刀術の板張りの道場の床に、場違い気味な、アングロサクスンの少女の姿があった。
和装ではなく、ジャージのズボンと、Tシャツと言う姿だったが、瞑想するように軽く目
を閉じ、正座している。本来なら背中の中ほどまで届く、ストレートの鮮やかなブロンド
は、今は高い位置でポニーテールにしている。
 そして、向かい合って、同じように正座している女性。まだ何とか少女と言える年恰好
ではあったが、ブロンドの少女よりはずっと年長だ。体つきはややグラマラスだが、それ
ほど大柄でもなく、掘りは深くないがやや幼く見える顔立ちと共に、ネィティブジャパニ
ーズの主要を構成する大和民族であることははっきりとわかる。
 やがて2人は、合図があるわけでもなく、ゆっくりと立ち上がる。
 ブロンドの少女──アリサ・バニングスは右手に小太刀の木刀を。
 相手の女性──高町美由希は、同じ物を両手に。
 2人は各々木刀を持って構え、相手に、睨むわけではなく、鋭い視線を向ける。
「ヒュウッ」
 …………シャッ
 呼吸が重なった瞬間、ほぼ同時に、どちらも前に飛び出していた。
 カンッ
 木刀のぶつかり合う、乾いた音が響く。
 カン、カカンッ
 美由希の切っ先が積極的にアリサを追うが、アリサは軽いステップでそれをかわして行
く。
 美由希もアリサも、跳ぶでは無く、足を床の上で躍らせるように動く。
 カン、カカンッ
 美由希が二刀による連続した打ち込みを行うが、アリサは退きつつ、木刀で受ける。
 ヒュッ
「え」
 美由希の顔に、狼狽が走った。
「もらった!」
 アリサの興奮したような声、そして、下から上へと振るわれる斬撃。
 カァン!
 …………カランカラン、と、木刀が床に転がった。
「ってて〜」
 果たして、アリサの右手に木刀は無く、それは床を転がっていた。
「勝負あった」
 静かに、しかしはっきりとした口調で、3人目の人物が言う。黒い髪に黒い瞳、やはり
典型的日本人の男性。高町恭也。高町美由希の兄である。
「へっへー、まだ簡単には勝たせないよ〜」
「くぅ〜」
 美由希が悪戯っぽく笑顔を浮かべて、言う。アリサは悔しそうな表情をしながら、転が
った木刀を拾った。
「当たり前だ。アリサはまだ小学生だし、だいたい、基礎の型しか教えてないんだぞ。こ
れで負けるようなら、不破の継承者に関して考え直す必要有りだ」
 険しい表情で、美由希を軽く睨みつつ、恭也は言った。
「ぶぅ〜。恭ちゃんの意地悪」
 美由希は頬を膨らませて、むくれる。
「ところで、アリサ。今日もメシ食ってくのか?」
 恭也は呆れたように軽く溜息をついた後、視線をアリサに向けて、そう問いかけた。
「あ、えっと、迷惑じゃなければで良いんですけど」
 アリサは後頭部を掻く仕種をしながら、苦笑気味にそう言った。
「そうしなって。それに、ユーノ君も、待ってる間にお腹空かせちゃうわよ〜」
 美由希は言って、ニヤッと笑った。
「それじゃ、お言葉に甘えて」

 アリサ・バニングスは、平凡──ではなかったが、まぁ人並みはずれた何かを持ってい
るわけでもない、小学3年生の女の子だった。
 しかし、半年前、とある事件をきっかけに、それはがらりと変わる。
 言葉を話すフェレット、ユーノ・スクライアと、魔法の力を与える“デバイス”、レイ
ジングハートとの出会い。
 海鳴の街に撒き散らされた、剣呑な力を持つ異世界の遺物ジュエルシード。そして、そ
れを求めてやってきた、魔導師フェイト・テスタロッサと、時空管理局巡航武装次元航行
艦「アースラ」の面々。
 某執務官曰く「出力へっぽこ・能力一流」。王道ではないが魔法使いとなったアリサは、
それによって紡がれた絆と共に、それを今でも続けている。
 そして、実は“本来の”人間の姿を持つ少年、ユーノ・スクライアを、「謀って自分と
寝食や入浴を共にした」と半ば因縁吹っかけて手篭め、もとい、婚約者にさせてから、半
年が経過していた。

 ちなみに、前述の台詞をその黒づくめの執務官が口にしたとき、ディバインクラッシャ
ーの零距離射撃で吹っ飛ばしたのは、純然たる事実である。

 海鳴市の、古くからある住宅街。
 バニングス家……ではなく、外観的には古風な日本建築の一戸建て、高町家である。
 改築で現代の洋風になっているLDKの、キッチンの方では、この家の主婦である高町桃
子が、鼻歌交じりに、朝食にその腕をふるっている。
 リビング部に置かれた自作のパソコン──この家の末娘の手によるものだったりするが、
まぁそれは別の話──の前に、アリサが陣取っている。
 その背後、斜め後ろに、本来は、蜂蜜色の髪と緑色の瞳を持つ、アリサと同年の少年で
あるユーノが、少し背中を屈めてパソコンを覗き込んでいる。興味深そうにジロジロと、
本体からディスプレィ、キーボードやマウスに至るまでを、見回す。まるで、1980年代末
期、パソコンが今ほど普及していなかった頃、それを見る少年のような顔だ。
「これは、アリサの持ってる奴と形がだいぶ違うよね」
 ユーノが言うと、光学ドライブに、DVD-Rのディスクを挿入しつつ、アリサはユーノ
に視線を移した。
「あれはノートパソコンだからね。本来はこっちが普通の形なのよ」
「サイズがだいぶ違うけど、機能は同じなの?」
 ミニタワーの筐体を指し、ユーノはアリサに訊ねる。
「大体はね。まぁ、小さくしてある分ノート型のほうが性能低かったり、値段が高かった
りするけど。あと、すずかに言わせると他にもいろいろ違うらしいけど、そのへんは良く
わかんない」
「ふーん」
 アリサの説明に、ユーノは納得の声を出しつつ、画面を覗き込む。
「けど、ユーノがパソコン珍しがるなんて意外よね」
「だって! 凄いじゃないか。魔法を一切使わない、電力だけで動く高速演算装置なん
て!」
 アリサの言葉に、ユーノは興奮したように言う。
「それも一般家庭用のコンセントから取れる電気で動いて、しかもこんなに高性能。それ
にこんな小さな画面に、これだけの情報量を表示できるユーザーインターフェース! そ
れに、世界中を接続するネットワークがあって、それを数分以下の時間で参照しあう事が
出来るんだよ!? しかもユーザーの操作は簡単」
 アリサ達の世代にとっては、既に物心ついたときには、パソコンは自家用車やテレビの
同様に、空気のように存在しているものだったが、それを“外”の視点で見たユーノがそ
こまで絶賛──いくつかの単語はアリサには理解不能だったが──すると、なんだか目の
前の、型落ち部品の寄せ集めがトテモスゴイモノに見えてくる。
「この世界は確かに基礎技術じゃミッドチルダほど万能じゃないけど、それで実現してる
事は、凄い事ばかりだよ。この前乗った電車だって」
「あ、ああ……」
 アリサは、イヤなことを思い出したというように、少し苦い顔になった。
 “良いとこのお嬢様”であるアリサは、登下校時のバスを除けば、たいてい遠出は鮫島
執事長の運転するストレッチリムジンだ。
 なので、現在バニングス家で婚約者“候補”として居候中のユーノが、日本の鉄道に乗
ったのは、ほんのひと月前の事。
 海鳴市で鉄道といえば、市街地を貫く小田急電鉄本線である。停まるのは各停だけだが、
駅にいれば数分単位で、種別の違う列車が上下何本も通過する。それがユーノには信じら
れない光景に見えたと言うのだ。
 乗ってからも、高い曲線高速通過性能を誇る最新型ロマンスカー・VSEとすれ違ったと
きなど、トドメとばかりに卒倒しかけた。
 聞く所によると、ミッドチルダには、日本で言うモノレールに毛の生えたようなレール
ウェイが主流で、速度もロマンスカーの半分ほどしか出さないらしい。
 そして、「うぉー」とか、「ひぇぇっ」とか、興奮と悲鳴の入り混じった奇声を上げ続
けるユーノに、アリサは心底恥ずかしい思いをしつつ、いつか「のぞみ」か「はやて」に
乗せてやろうと悪巧みをしているのであった。
 …………閑話休題。
「たっだいまー」
 玄関の開閉する音を立てて、件の末娘、つまり恭也と美由希の妹であり、そして自他共
に認めるアリサの親友、高町なのはが、やがてLDKに現われた。
「あ、やっと帰ってきた」
 少し苦笑気味に言いつつ、アリサはOAチェアから立ち上がって、なのはを見た。
「どう、なのはの調子は?」
「うん、なんとか上達上達」
 成り行きから、このなのはも、半年前の事件で魔法使いになっていた。
 それも、その素質だけで判断するなら、アリサよりもはるかに優れている。
「マイペースななのはのことだから、どれだけ上達してるのやら」
「あー、アリサちゃん、ひどいんだー」
 アリサが少し意地悪く笑って言うと、なのはは、自分の姉と同じようにむーっ、とむく
れた。
「ほら、これ、持ってきてあげたんだから」
 アリサはそう言って、DVD-Rのディスクケースを手に取り、振るようにしてなのはに
見せた。
「あーっ、そ、それってっ!」
 なのはが興奮して、顔を輝かせる。
 ディスクケースには、手書きで、「Fate & Alicia」と書かれている。そして、アリサの
ブロンドよりもさらに柔らかそうな、長い金髪を持つ、よく似た姉妹が、仲よさげにして
いる写真が貼られていた。
 実は幼く見える方が姉に当たる、とは普通は見えないだろうが。
 大きな“妹”がフェイト・テスタロッサ、幼い“姉”がアリシア・テスタロッサ。歳の
差を覗けば、鏡写しのようにそっくりなこの2人には、複雑な事情はあるものの、まぁ、
間違いなく姉妹である。
「ほれ、朝ごはん来る前にさっさと見ちゃいなって」
「うん!」
 そう言って、アリサはなのはとパソコンの前を入れ代った。
『フェイトちゃん、この先どうなるって?』
 なのはは、念話でアリサに訊ねてきた。
『クロノの話だと、もうすぐ裁判が終わるってことらしいわ。でも、主犯格は行方不明、
フェイトに関しては、特に問題がなければ略式のもので済むそうよ。クロノの言ってた通
りの結果でね』
『クロノ君かぁ』
 ここ数ヶ月会っていなかった人物の名前に、なのはは感慨深そうにする。
『クロノ君にも会いたいなぁ〜』
『おーおー、結構お熱ですなぁ』
 アリサは、ニヤッと笑って、茶化すように言う。
『べ、べつにそう言う意味じゃないよぉ』
 顔をぼっと紅くして、なのはは言った。
『顔真っ赤にして言ってても説得力ないわよ』
 アリサはニヤニヤと、意地悪く笑ったまま、言った。
『ま、ちょっと鈍くて頭固いところ除けば、割合良い男の子よね。ま、真面目さんでなの
はとはお似合いかも?』
 しかし、その言葉に、なのははむっとして、アリサを振り返った。
『むー、それを言ったら、ユーノ君だって結構頑固だし、ニブチンじゃないかぁ』
『な、な、なんですってぇ』
 むきっ、と歯を剥いて、アリサはなのはに向き直る。
『ユーノはちゃんと優しいし気だって利くし、まぁすこし八方美人のところもあるけど、
そう言うところも含めてとにかく良いんだから! あのイヤミ執務官と一緒にするな』
『クロノ君のどこがイヤミなのよーっ!?』
『あいつはなのはにはねー……』
 念話での口喧嘩に夢中になっている2人は、ある事実をすっかり忘れていた。
「はい、朝ごはん出来たわよー。あら?」
 ダイニングから顔を出した桃子は、部屋の隅にいたユーノを見て、少し心配げに顔を覗
き込んだ。
「ユーノ君、顔、赤いわよ? 熱あるの? 大丈夫?」

 同日──12:00
 海鳴市立・海鳴第三中学校地区図書館。
 その玄関口に、全体的に丸みがかった、少し以前のタイプの軽セダンが停まった。色は
赤で、側面に「GX-R」の文字が大きく書かれている。
 助手席のドアが開き、ウェーブのかかった、やや青みのかかった長髪を持つ少女、月村
すずかが降り立った。
「それじゃあ、私は買出ししてきますね」
 運転席から、月村家の小柄なメイド、ファリンが言う。さすがに運転する為、サーヴァ
ント服ではない。
「うん、私も少し時間かかると思うから、ゆっくりどうぞ」
「はいー」
 すずかがドアを閉めると、ファリンはマニュアルトランスミッションのギアをつなぎ、
軽自動車を発進させた。
 すずかは図書館の玄関をくぐろうとする。
 扉に手をかけた瞬間、背後から、急ブレーキをかけたようなタイヤのスキール音や、激
しいクラクションの音が聞こえたような気がしたが、すずかは、それは聞こえなかったこ
とにした。
 借りていた本を返却してから、すずかはまた、別の本を借りようと本棚の方へ進む。本
棚の並んでいる前で、少し逡巡してから、文学書の方へ足を進めた。
 タイトルを見ながら、時に本を手に取り、パラパラとめくる。
「あら?」
 何冊目かを戻したとき、すずかはそれに気付いた。
 車椅子に乗った少女が、上の方の段に、必死に手を伸ばしている。
 誰も助けない、というより、周囲に誰もおらず、閲覧机の方からは見通しが利かないの
だ。
「あっ?」
「えっと、これですか?」
 すずかは、彼女が手を伸ばしていた本を手に取ると、笑顔で、差し出した。
「ありがとう、助かりました」
 関西弁のイントネーションで、少女は言った。
「いいえ。どういたしまして」
 すずかは、満面の笑顔で言ってから、
「あの、良かったら、少しお話してもらえませんか?」
「お話……?」
 一瞬、キョトン、とした、車椅子の少女だったが、すぐに、
「ああ、ええですよ」
 と、にこっ、と笑って、彼女は答えた。
 すずかは車椅子を押して、閲覧机の並ぶ方まで移動する。
「ここ、私達ぐらいの年の子、あまり来ないじゃないですか」
「そうなんよ。まぁ普通は学校の図書館ですますんかな。後は、マンガばっかやろうし」
 すずかの言葉に、少女も苦笑気味に答える。
「だから、前から何度か見かけてて、気になってたんです」
「あ、実を言うと、あたしもや」
「そうなんですか」
 そう言って、2人は、「あはは」と笑いあった。
「私、月村すずかって言います」
「あたしは、八神はやて。ひらがなで“はやて”や。なんか、女の子の名前らしゅうない
やろ?」
 車椅子の少女は、自己紹介しつつ、自嘲気味に苦笑して、そう言った。
「そんなことないですよ、良い名前です」
「そうか? おおきに」
 すずかの言葉に、はやてはにこっ、と満面の笑みを浮かべた。
 それから、数分間、言葉を交し合い、そして携帯電話のアドレスを交換した後、それぞ
れ、目当ての本の貸し出し手続きを終える。すずかは車椅子を押して、出入り口のほうへ
向かった。
 出入り口のところまで行くと、1人の女性が、はやてを待っていた。柔らかそうな金髪
を、ボブよりやや長めのセミロングにしている。穏やかな感じの持った、美女と呼んで差
し支えないだろう女性。
「シャマル、待たせたな」
「いえ、そんな」
 はやてが声をかけると、その女性は、優しげに笑った。
「すずかちゃんもありがとう、重かったやろ?」
「そんなことないよ、大丈夫だよ」
 そう言って、すずかははやての後ろ側から退く。代わりに、シャマルと呼ばれた女性が、
そのハンドルを握った。
 図書館の出入り口を出る。
「はやてちゃん、寒くありませんか?」
「ん、大丈夫や」
 シャマルの言葉に、はやては笑顔のまま、答える。
 その間に、すずかは、ファリンが待っている軽自動車を駐車場に見つけた。
「それじゃあ、はやてちゃん、私はここで失礼するね」
「うん、またあおなー」
「うん、ばいばーい」
 お互い、手を振る。
「お友達ですか?」
 シャマルが訊ねると、はやてはこくん、と頷いた。
「そうや。今日からお友達さんやて」
 と、嬉しそうに、満面の笑顔で答えた。
 赤い軽自動車がギクシャクと駐車場を出て行ったのと入れ代りに、別の女性が、はやて
達に近付いてきた。長髪をポニーテールにしている。長身だが、女性らしいプロポーショ
ンをしている。顔立ちはシャマルと対照的にきつめだが、やはり美女といって過言ではな
いだろう。
 その、ピンクがかった赤紫の髪は、彼女が、この世界の人間ではない事を示していた。
つまり────
「シグナムもお待たせや」
 はやては、長身の女性の名を呼び、労う様な声をかけた。
「いえ、今来たところですから」
 シグナムは微笑み混じりに言い、それから、シャマルと並んで、歩き始めた。
『シャマル、今の女の子は』
『はやてちゃんの友達、だそうよ』
 彼女らは、念話をしていた。
『妙なリンカーコアの持ち主だったな』
『ええ、なんだか、延びきった風船みたいで、本来の容量が出ていない感じ。あんなの、
はじめて見たわ』
 シャマルは、それを顔に出さないようにしつつ、怪訝そうに言う。
『まぁ、現状のあの出力では特に蒐集する必要もあるまい。だが、この国のことわざでは
ないが、力の持ち主の元には力の持ち主が集まるからな』
『ヴィータちゃんの言ってた、あの大きな魔力反応のことね?』
『そう言う事だ。この世界では魔法は近代文明と引き換えに廃れ、神秘の領域に入ってし
まったらしい。だが、もしその神秘を受け継ぐ者がいるなら、それぞれつながりがあるか
も知れん』
 シグナムは言いつつ、直進を続ける。
 彼女の推測は半分外れ、しかし、半分当たっていた。
『しかし、あの子と言い、我々の記憶にない、主そっくりの5騎目と言い、今回は、勝手
がだいぶ違う』
 シグナムはぼやくように言い、視線を空に上げた。
『そうね……でも、もう、今からは引き返せないわ』
 シャマルもやや沈んだ、しかし、どこか決意を秘めたような言葉を発し、そして、同じ
ように空を見る。


 海鳴の空は、まだ、晴れていた。



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著者:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc