◆第19話 「この世界への未練」

『私はどうすればいいのだろう…』
『富竹を殺したのが鷹野なのかどうか』
『昨日からずっと考えているけど全くわからない…』
『今日は昭和58年6月21日火曜日』
『今回も…ダメなの――?』
『さすが雛見沢 噂が駆け巡るのが早い』
『けど祟りなんかじゃないのよ』
『いまだ誰かもわからない敵が事件を起こし 次に私を殺そうとしている』
『そして これまで世界を繰り返した経験から』
『私は最短で明日の夜には殺される―――…』
「ない訳ないでしょ…」
『――私は世界を繰り返すたびに必ず殺される』
『だから怯えることは無意味だし』
『別に死ぬ間際の記憶もないから死に恐怖はない』
『でも 悔しいの』
『楽しかった』
『本当に楽しかった』
『沙都子の顔は絆創膏だらけだったけど』
『みんなが揃って心の底から騒ぎ合って』
『それに仲間同士がみんな仲良し』
『この世界では圭一が変な疎外感を持つこともないし』
『レナの家庭は順風満帆』
『双子の仲は良好で 詩音と沙都子もとても仲良しになった』
『そして鉄平の問題も解決し 沙都子を冷遇する村の気質すらも打ち破った』
『これ以上ない 最高の世界……!』
「次の…世界?」
「この世界はもう終わりなの?」
「こんな楽しい世界なのに…」
「本当に終わりなの?」
「!」
「羽入 前にも言ったでしょう?」
「私はもう世界を繰り返さないんだって」
『…羽入…』
「ごめん もう少しだけその返事を待たせて」
「せめて 最後まで足掻きたいの」
「圭一…」
「そんな風に見えましたですか?」
「圭一 聞いてもらいたい詩がありますです」
「誰が作ったのかは聞かないで 感想を聞かせてほしいのです」
「誰にだって幸せにすごす権利がある 難しいのはその教授」
「誰にだって幸せにすごす権利がある 難しいのはその履行」
「私にだって幸せにすごす権利がある 難しいのはその妥協」
「悲しい?」
「未練…ですか?」
「なら圭一 この詩の「私」はどうすればいいのでしょうか」
「…打ち明けたいことはあります」
「でもそれはムリなのですよ」
「打ち明ければ奴らがみんなを殺す」
「まだ誰が敵かもわからないのです」
「でも一つわかっているのは」
「私が必ず殺されるということ」
「ごめんなさいなのです」
「これ以上話せばみんなはもう雛見沢でのんびり暮らせなくなる」
「だから打ち明けられません」
「それがきっと 幸せに対し妥協しないということだと思いますです」
「沙都子に…?」
「巻き込まれれば圭一たちはきっと殺されますです」
「…………え」
「ありがとうなのですよ」
「おはようなのです」
『ああ…』
『もしかした…今日……』
「!」
「…そう」
「やっぱり終わるのね」
「………」
「ボクは今日風邪をひいてしまったので学校を休みますです」
「熱があれば診療所に行くので大丈夫なのですよ」
『あ…』
「ありがとうなのですよ」
『でも 今日になって相談だとか すべてが無意味だ』
『そう思ってるのに まだ足掻きたい心も同時にある』
『…私は この世界に来てから今日までの間』
『運命と闘うと意気込んでみたり』
『そんなことは無駄なのかと諦めてみたり』
『秋の空のように目まぐるしく考えが変わった』
『圭一たちにあれだけ奇跡を…信じる力の強さを見せられたのに』
『私は結局 運命に抗う鉄の意志が持てなかった』
『自分の力を信じられなかった……!』
『沙都子?』
『ボクのいない世界…?』
『―――あ!』
『これまで真剣に考えたことはなかった…』
『自分が死ねば世界は終わる』
『だけど 世界に残された人の人生は続いていく』
『そしてその世界は私の死んだ数だけあったというのに』
『なんて』
『なんて私は自分勝手に生きてきたんだろう…!』
『残された人にはこの世界一つしかないから』
『この世界が終わることはすべての終焉』
『だから死に物狂いで戦うし 奇跡も起こせる』
『けど人生を簡単にリセットしてきた私は その死に物狂いというのが常に中途半端だった』
『だからまた運命に屈服して 昭和58年を失ってしまう……!』
『沙都子…』
『私が死ねば みんなは泣いてくれるだろうか…?』
『きっと泣いてくれるだろう』
『そして』
『……そして?』
『悲しむ でもそれは私の死にじゃない』
『どうすれば梨花ちゃんの心が開けたのか どうすれば力になって救えたのかって…』
『そして私が死んだ後 みんなは一生後悔しながら…生きていくだろう』
『ああ』
『やっぱり打ち明ければよかった』
『未練なんて残したくなかった』
『この世界で6月を越えて ずっと続いていくのが望みだったのに』
『なのに』
『私はもうすぐ この世界を去る…』
「う…」
「うっく…」
「…」
「うっく」
「…」
「はい」
「小此木?」
『緊急?』
「何があったのですか?」
『え?』
『入江が 黒幕!?』
『そんな…信じられない』
『彼は違うと思っていたのに』
『いや それよりも』
『小此木から電話が来て こんな連絡が来たことは数多の世界でも初めてだ』
『まさか』
『今回の世界で起きた出来事の 何かが作用している?』
『もし そうだとしたら』
『私の運命が変えられるかもしれない…!!!』

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