アニメ台詞
※注意! 以下の内容はネタバレを多分に含みます。
音なしでやってる人とかそういう人用にアニメシーンの台詞を書き出してみました。
大分適当だけどなんとなくわかると思う。
ベッドフォード「そうですね…遠い昔のことでございます」
ベッドフォード「その昔、死神戦争と呼ばれる戦争がございました。魔王率いる死神たちが多くの魔物を率いて人間界に侵略してきたのでございます。それはそれは壮絶な戦いでございました。長い長い戦いの末、我々は邪悪な力を封じるために5つの腕輪を作りました。5人の勇者は腕輪の力を用いて見事魔王と死神を封じ込めたのです」
ベッドフォード「時は流れました。我がイギリスはフランスと百年の長きにわたり戦っております。この乱世にヘンリー様が勝利するためには圧倒的な魔王の力を利用するしかないのです」
ベッドフォード「〜〜〜(呪文)…ハァ〜ッ!太古の昔に封印されし偉大なる大魔王様。今宵今こそ、そのお力を!おっ!?これはこれは…どなたかと思えば」
老騎士「ベッドフォード、お前の思うとおりにはさせん!」
ベッドフォード「老いたの…これがかつての勇者か…余りにも弱い!そろそろ隠居なされてはいかがですかな?」
老騎士「くっ…させるかぁ!」
ベッドフォード「もう、われわれの時代ではないのですよ」
老騎士「かつて勇者だったお前がどうして魔王に自分の魂を売るようなことをする!?」
ベッドフォード「かつての友だ…殺しはせぬ」
老騎士「っ、魔王か…? 王子!」
ヘンリー6世「なぁに?どうしたのベッドフォード?な、何これ?うわぁーーーーーーーー!」
老騎士「王子!ヘンリー王子!大丈夫ですか!?ぬっ!?」
ベッドフォード「そこまでだ。王子に触れることはゆるさん!消えてもらおう!」
老騎士「ベッドフォード、やめるんだ!」
ベッドフォード「すべてはヘンリー様のためです」
老騎士「ぬわぁーーーーーーーー!」
ベッドフォード「これでヘンリー様は未来永劫この世の王となり得るのです」
ジャンヌの父ジャック「おーい、ジャンヌ!」
ジャンヌ「ん?」
始まりの夜 おわり
ジャンヌ「ン、ッ〜〜…ッ!」
<兵士の腰の袋が光り始める>
ジャンヌ「…! なんだ、これ?」
リアン「どうしたの、ジャンヌ?」
<袋にそろそろと手を伸ばすジャンヌ>
ジャンヌ「…」
リアン「…」
<袋から光が飛び出し、ジャンヌの腕に巻きつく>
ジャンヌ「…えッ!?」
<馬が驚いていななく>
リアン「ジャ、ジャンヌ!?」
ジャンヌ「(苦しげに)くはァ! …ッうぅ…く!」
<リアンがジャンヌに駆け寄る>
リアン「ひ、光が!」
ジャンヌ「(さえぎるように)来るな! 下がってろ!」
リアン「大丈夫なの? その腕……あっ」
<光が収束し、腕輪の形をとる>
ジャンヌ「……腕輪?」
ジャンヌ「……なんで…なんで、腕輪なんか…」
リアン「腕輪?」
<馬がリアンに寄り添う>
リアン「え、どうしたの?」
<恐る恐るリアンがバスケットを開く>
カエル?「…げこ」
リアン「ガマ?」
<何かにリアンが驚いて、はっと森のほうを見る>
ジャンヌ「今の鳴き声は!?」
<息を凝らして様子を伺うジャンヌとリアン>
ジャンヌ「気をつけろ…」
<暗い夜の森を見回す>
ジャンヌ「…普通じゃないぞ!」
<怪しい鳴き声とともに、視界の端で草むらがガサリと揺れる>
リアン「あっ!」
ジャンヌ「上だ!」
リアン「!」
<森から魔物が飛び出し、ジャンヌたちの前に降り立つ>
オーク「……ゥゥゥゥウゥッ!」
オーク「ゥゥゥ、ウゥッ!」
<リアンをかばうように、魔物と対峙するジャンヌ>
ジャンヌ「……なんだ、こいつ!?」
腕輪と魔物 おわり
『はぁっ、はぁっ、はぁっ…』
ジャンヌ「ああっ……!」
<家が、村が……焼かれている!>
炎のドンレミ村 おわり
<ジャンヌは鎧を身につけ、剣をはいて、旅立ちの準備をした>
<村は完全に焼け落ち、もはや何も残っていない>
リアン「ジャンヌ…?」
<その光景に涙を流すジャンヌ>
ジャンヌ「……くっ!」
リアン「ジャ、ジャンヌ! 一体何を!」
<キッと顔を上げたジャンヌは、剣でその長い髪を無造作に断ち切った>
ジャンヌ「……ッ!」
<断ち切られた髪が地面にバサリと広がる>
リアン「(悲鳴に近い声で)ジャンヌ!」
ジャンヌ「…行こう」
ジャンヌ「私たちの誇りを、取り戻すんだ!」
ロジェ「……!」
<ロジェは何かを見まいとしてか、朝日を振り仰いだ>
リアン「そうだよね……そうなんだよね」
<旅立つ三人の姿を、朝日が照らしている>
旅立ちの朝 おわり
<集まった人々は息を凝らしてジャンヌを見つめている>
<時折、嘲笑めいた話し声がもれ聞こえる>
リアン「……あ、ジャンヌ、あの人…。」
<赤い服を着た貴族の男が、含み笑いをしてこちらを見ている>
リアン「(声をひそめて)赤い服…ほら、ジルが言ってたでしょ? ほら、貴族の血の色って。アカ。『赤』ね。きっとあの人…」
<ジャンヌは鋭い目で男を観察した。しかし、違和感を感じて眉根を寄せる>
ジャンヌ「違う……気がする」
リアン「えっ。でも、だって!」
<ジャンヌはホールを見回す>
<時間が経つにつれ、徐々に人々の嘲笑が大きくなる>
<もはや隠そうともしない嘲笑がホールを占めた>
<ジャンヌがその人々を見つめる中、一人だけ笑わずにこちらを見つめてくる人物がいる>
<ジャンヌがそれに向き直った瞬間、人々は水を張ったように静かになった>
シャルル7世「(うろたえて)……あ……ぁ、ああ……」
<ジャンヌは他の人に目もくれず歩み寄り、王太子シャルル7世の前で膝をついた>
ジャンヌ「王太子様。私とともに、フランスの民をお救い下さい」
シャルル7世「……ほ……本物だ…!」
王太子謁見 おわり
ロジェ「……はぁッ!」
<拘束を解こうとしてもがき、うめき声をもらすロジェ>
ロジェ「…く…そぅっ! ンン…!」
<ロジェが何かに目を見張はり、その視線を謎の赤い瞳が受け止めた>
ロジェの夢2 おわり
*「わあぁー!」
*「こっち見てくれーっ!」
*「あはははは、わーい!」
*「おーい!」
*「ジャンヌ様ぁー!」
*「ジャンヌー!」
*「救世主様ー!」
*「うおぉー!」
ラ・イール「すげぇ歓迎ぶりだな。こりゃあ今夜はうめぇ酒が飲めるぜぃ」
ジル「戦いはこれからだというのに。のんきな事だ」
リアン「でも、みんなうれしそう」
ロジェ「ジャンヌは、みんなの希望なんだ」
ジャンヌ(この人たち…フランスの人たちみんなのために、私は戦う!)
ジャンヌ(この戦争を終わらせる!)
<ジャンヌたちの後ろを、人々がついてくる>
オルレアン入場 おわり
ジャンヌ「ひるむなぁーっ!」
兵士たち「おおぉーーっ!」
<一人の兵士の胸を、一本の矢が貫いた>
兵士「ぐはぁっ…!」
<ジャンヌは旗を持って、兵士たちを鼓舞する>
ジャンヌ「もう少しで突破できる! ひるむなっ!」
<ジャンヌは旗を振り上げた>
ジャンヌ「自分の力を、信じるんだ!」
ジャンヌ「……」
<ジャンヌの脳裏を、昨夜の作戦会議の出来事がよぎる>
*「君の言うこともわかるが、ここは我々に任せてもらおう」
<黙って立ち去ろうとするジャンヌを、ロジェが呼び止めた>
ロジェ「ジャンヌ」
ロジェ「急ぎすぎは良くない。少し、休んでおいてくれ」
<ジャンヌは何も言わず、テントを出た>
リアン「あ、ジャンヌ!」
リアン「ロジェは、あなたを追い出したいのではなくて…」
リアン「本当に心配して言ってるのよ」
ジャンヌ「……さあ。どうかな」
<頭からその光景を振り払おうと、ジャンヌはかぶりを振る>
ジャンヌ「くっ…! ……ッ!」
<ジルが、ロジェが、ジャンヌを驚きの目でみつめる>
ジャンヌ「(旗を振り上げつつ)みんな!」
ジャンヌ「砦は必ず落ちる!」
ジャンヌ「皆の力を結集するんだ! 神は必ず、勝利をもたらしてくれる!」
兵士たち「おおぉーーっ!」
ジル「ジャンヌ! 出すぎだぞ!」
ジル「早くそこを降りるんだ!」
ジャンヌ「何を言う! フランスを取り戻さなくて良いというのか!」
<タルボット将軍に指示を受けた兵士が矢をつがえ、ジャンヌを狙っている>
ジャンヌ「下がるなぁーっ!」
<弓がギリギリと引き絞られる>
ジャンヌ「(声も枯れよと)イギリス軍を倒せぇーーっ!」
ロジェ「ジャンヌ!」
<ついに矢が放たれ、ジャンヌの体にズブリと突き刺る>
ジャンヌ「……ぁ! うッ!」
<ジャンヌがドサリと崩れ落ち、戦場は静寂に満ちた>
<ポツリポツリと、兵士たちの戸惑いの声が上がる>
ロジェ「(悲鳴をあげて駆け寄りつつ)ジャ、ジャンヌ!」
<ジャンヌは目を閉じて、ぐったりと倒れ伏している>
逸るジャンヌ 終わり
ジル「こいつらはもう正気を失っている」
<ジルは槍を構えなおした>
ジル「気をつけるんだ」
<ジャンヌがその肩を軽く押しのけ、前に出る>
ジャンヌ「あなたたちとは戦いたくない。もう、無駄な血を流したくないんだ!」
リシャール「ジャンヌ!」
<ジャンヌとジルはリシャールを見た>
<仲間たちがシャロン住民を各自の得物でけん制しつつ、じりじりと坂道を後退していく>
リシャール「こっちだ。ここから降りられるぞ」
ロジェ「行こう。ここは逃げたほうがよさそうだ」
<ロジェがジャンヌの肩を押し、撤退を促す>
<それをシャロン住民が見咎め、めいめい武器を構えて突進してくる>
*「うわぁー!」
ジル「…!」
ロジェ「…!」
<ジルとロジェが、それを迎え撃つ>
*「うわぁー!」
<剣がと剣が火花を散らす。ラ・イールの戦斧がうなりをあげる>
ジャンヌ「やめろ! 同じフランス人同士が、血を流す必要なんてないんだ!」
リアン「ジャンヌ! まだわかんないの!?」
リアン「この人たちは敵なんだよ!」
リアン「戦わなきゃ、こっちがやられちゃうじゃない!」
リアン「甘いのよ、あなたは!」
<その気迫に思わず気抜けするジャンヌ。背後でロジェが住民を一人切り伏せる>
<何かに気づいて、はっとするジャンヌ>
ジャンヌ「!」
<住民の一人が、クロスボウを構えてリアンを狙っている!>
ジャンヌ「リアーン!」
<剣を抜き払い、ジャンヌがそれに詰め寄る! 住民に向かい跳躍する!>
シャロン住民「(うろたえて)あ、ぁぁあ!」
シャロン住民「(後ろに転げ落ちつつ)ぅわぁ!」
<弾みで発射された矢が、ジャンヌの左胸を貫く>
ジャンヌ「ッ!」
リアン「(悲鳴を上げて)ジャンヌ!」
<ジルが、ロジェが、コレが驚きに目を見張る>
<ジャンヌは着地できず岩に叩きつけられ、崖に向かって転がり落ちる>
ジャンヌ「ッ! …ッ!」
<ジャンヌの体が、ぶらりと垂れ下がる。パラパラと小石が落ちる>
<左手が、崖の上の石を何とかつかんでいる>
リアン「ぁあ! ジャンヌ!!」
ロジェ「ジャンヌ!」
<ジャンヌの体を支えていた石が、ゴロリと地面から離れる>
<ジャンヌが、落ちる!>
ジャンヌ「!」
<と、ジャンヌの落下が止まった>
<リアンが右手を差し伸べて、ジャンヌを支えている。とても苦しそうだ>
ロジェ「リアン! 離すなよ!」
<ロジェがリアンを支える>
<今ジャンヌの体を支えているのは、リアンの右手ただ一つだ>
ジャンヌ「リアン…離せ…お前まで!」
リアン「…離さないもん! …大丈夫……今引き上げる、から…!」
<突如、ジャンヌの腕輪が光りだす>
ジャンヌ「!」
<光がリアンの手に伝播し、ふたたび腕輪の形をとった>
<驚愕に、思わず手が緩む>
リアン「あぁ…!」
<ついに耐え切れず、手が離れた>
ジャンヌ「ッ…!」
リアン「いやぁーー!」
<リアンとロジェ、そしてジルが、視界から遠ざかっていく>
<ジャンヌが落ちていく!>
リアン「ジャァァーーンヌ!」
<ジャンヌの姿が、崖の下に見えなくなった…>
ジル「まさか……なんてことだ」
運命 おわり
<何者かの声に目を開けると、そこには魔術師…ベッドフォードの姿が>
<上のほうから光が差し込み、逆光でその顔は良く見えない>
ベッドフォード「…ホリオルム…サントマルク…ノルマベンタス…」
<ベッドフォードは指を鳴らす>
<魔法の詠唱のようだ、ベッドフォードの声は続く>
ベッドフォード「…ラムヘルガ…ソンゴア……」
<ベッドフォードの声に呼応して、怪しげな機械に電光が走る>
<ロジェの横たわる寝台を中心に広がった魔方陣が、強く光を放つ>
ロジェ「…ッ! くッ…!」
ベッドフォード「…モルガスタ…」
<ベッドフォードの口の端が、いやらしげにつり上がった>
ロジェの夢3 おわり
<何人もの司祭たちに続いて、王太子シャルル7世が現れる>
<シャルル7世は大司祭の前まで歩み寄り、膝をついて手を組んだ>
大司祭「全能の神の手によって祝福されたこの聖油をもって、汝、シャルル・ド・バロアを、偉大なるフランスの統治者、国王として承認する」
<大司祭は聖油を傍らの司祭に預け、続いて王冠を手に取った>
大司祭「これより先、聖なる教会とその信者、フランスの民の擁護に尽くし」
大司祭「天命を全うすべし」
<大司祭より、シャルル7世は頭に王冠を戴いた>
<聖堂の鐘が鳴らされ、人々は歓声をあげる>
*「わあぁぁーー!」
<リアンも涙を浮かべつつ、拍手を送る>
リアン(ジャンヌ、見てる? あなたの夢が、一つ現実になったわ)
<シャルル7世は、両腕を広げて人々の歓声を一身に受ける>
リアン(あなたの遺志を、私は受け継ぐ)
<ランスの街中に、聖堂の鐘の音が響き渡る>
リアン(かならず、フランスを救ってみせるから)
戴冠式 おわり
<リアンは心ここにあらずといった様子で、その様子をただ見つめていた>
リアン「ぁ…ぁ……」
<敵兵の弓に、次々と兵士たちが倒れる>
*「うぁっ……」
<リアンは剣を振り上げ、なおもフランス兵を鼓舞する>
リアン「…ゆ……ゆけぇー! 勝利は約束されているぅー!」
*「うおぉーっ!」
*「うわぁーっ!」
<フランス兵が一人、城門にたてかけられた梯子から叩き落される>
*「ぅわぁぁっ!」
リアン「……ぁ…」
<またある兵士が、上から鉄球を投げ落とされて梯子から落ちる>
*「ぅおぁ…!」
リアン「……!」
<城門の上についに達した兵士が、敵兵の槍に突き落とされる>
*「ぅあぁ…!」
リアン「……ぁ…」
<城門の窓から至近距離で矢を射られた兵士が、絶命し落ちる>
*「うわぁぁっ!」
<なおも戦いつづけるフランス兵たち>
リアン「(消え入りそうな声で)ジャンヌ……」
<リアンの瞳が動揺にわなないている>
リアン「ジャンヌ……」
<もはや動く事のない、フランス兵たちの死体、死体、死体>
リアン「ジャンヌ……!」
リアン「(もはやこらえきれず)ジャァァーーンヌ!」
堕ち行く聖女 おわり
<怪しい機械類、骸骨のうめき声>
<ロジェの右手が握り締められる>
ロジェ「……ッ…!」
<大きな管の中の液体に浮かぶあぶく、謎の赤い瞳…>
<足かせを解こうとして、ロジェがもがく>
ロジェ「ン…! ッ!」
ロジェ「…く…そぅっ! ンン…!」
<骸骨の顔をした怪物が、大口を開けて笑っている>
ロジェ「…!」
<ベッドフォードの詠唱>
<ロジェの頭上で、機械が電光を放つ。さらにもがくロジェ>
ロジェ「…ッ! くッ…!」
<魔方陣。ベッドフォードの悪意に満ちた微笑み>
<ロジェの頭上にひらめく電光の中から、何か黒いものが現れる>
<ヘンリー6世を襲った黒い影に似た何かが、ロジェに襲い掛かる!>
<恐ろしさのあまり、ロジェは跳ね起きた>
ロジェ「…うわぁッ! はぁっ、はぁっ、はぁ……はぁ……」
<ここは宿屋の一室。何事かと顔を上げた相部屋の傭兵が、興味を失って再び目を閉じた>
<まだ、夜は明けていない>
ロジェの夢4 おわり
<人の顔が浮かぶ木々の向こう、泉の中にそびえたった樹木の元、おぼろな光に包まれたジャンヌの姿がある>
謎の老人の声「ジャンヌ……ジャンヌ。…ジャンヌ」
<ジャンヌが身じろぎをする>
謎の老人の声「ジャンヌ…!」
ジャンヌ「……あっ」
<ジャンヌが目を見開いた。ここは何処だろうかと頭をめぐらす>
謎の老人の声「ここだ…」
<謎の声の主を探し、上方を見る>
謎の老人の声「ようやく会えたな…」
<木で出来た老人の首が、樹木から生えている>
声の主 おわり
<虚空に電光が走り、そこからジャンヌが現れる>
<周りを見回すジャンヌが、ローブをまとった人影をみつける>
ジャンヌ「あっ……!」
ローブの男「おまえは腕輪に選ばれたのだ」
ローブの男「己の力を信じ…」
ローブの男「全ての感覚を研ぎ澄まし…」
<人影がフードを脱ぐ。右手に腕輪をつけた老人、ルーサーの顔があらわになる>
ルーサー「解き放つのだ…!」
<虚空にローブの人影たちが現れる。それらが剣を構えた>
ジャンヌ「えっ……!?」
ルーサー「さすれば自ずと道は、開かれる!」
<ルーサーが剣を抜き払い、頭上に掲げる。剣から光が放たれ、ローブの人影をなぎ払う>
<ルーサーが剣を正眼に構える>
ルーサー「今から目の前に現れる敵を」
<虚空からさらに何人もの人影が現れ、剣を抜く>
ルーサー「全て討つのだ!」
<ジャンヌはうなずいて、同じく剣を正眼に構えた>
修行 おわり
<リアンが磔にされている。恐怖のあまり、吐息が漏れる>
*「髪の毛を切り、男の服を着続けただけではなく」
*「戦いの先頭に立ち、世を混乱させた」
<司祭だろうか、男が罪状を並べた書物を繰る>
*「しかも汝は」
<リアンの背後に、たくさんの人々が見える>
*「地上の教会には従わず、自分の信じる神にのみ従うと述べた!」
リアン「あたしそんなこと言ってない!」
*「この数々の冒涜行為は背教者の証であり、異端者と言えるものである」
<男が書物を閉じ、『ジャンヌ』を指し示す>
*「皆の者よく見よ!」
*「フランスが救世主と謳った、悪しき魔女の最期を!」
<リアンの背後で人々が賛同の声を上げる>
リアン「…お願い助けて! あたし、本当はジャンヌじゃないの!」
<男は冷たく目を背け、共にいる男たちにさとした>
*「魔女の世迷いごとには惑わされるな」
<いよいよ進退窮まり、リアンの顔が恐怖にゆがむ>
*「火を放てぇ! 聖なる炎をもって」
*「この魔女を焼き殺すのだぁぁーーっ!」
<肩に黒カラスを乗せたジョルジュが、その様子を面白そうに見つめる>
<満足そうにフッと鼻で笑うと、きびすを返して立ち去って行った>
火刑 おわり
ジャンヌ「はっ、はっ、はっ……」
<坂の向こう側で、煙を上げて何かが燃え盛っている>
<坂の上に達したジャンヌ。傭兵たちの亡骸の向こうにあるものを見て、驚く>
ジャンヌ「あっ……!」
ジャンヌ「ぁ……まさか…!」
<磔台に火がかけられている。炎の中に、うっすらと人影が見える>
ジャンヌ「リアァーーン!」
<絶望のあまり、ジャンヌは崩れ落ちた>
ジャンヌ「……! …ッ!」
<誰かのうめき声に顔を上げたジャンヌは、地面に顔をうずめたロジェの姿を見つける>
ロジェ「…! くっ…! …ッ!」
ジャンヌ「ロジェ!」
ロジェ「ジャンヌ、か……」
<ロジェが身を起こす>
ロジェ「今更何をしにきた! リアンは…! リアンは…!」
ロジェ「お前の身代わりに死んだんだぞ! ……くッ!」
ジャンヌ「ロジェ!」
ジル「どうした!」
ロジェ「かぁぁ……ぁぁぁ…ぁ……!」
<ロジェの体が、黒い触手に取り込まれる>
ジャンヌ「ロジェ!」
ジル「ロジェ!」
<触手の塊から、手が飛び出す。しかし、それはもう人のものではない>
<手の甲に目玉の付いた腕で触手を振り払い、『死神』が現れた。ロジェの夢に現れた骨の怪物とそっくりだ!>
死神「ウォァァァーーッ!」
<骨の怪物がジャンヌに詰め寄る。ジルが穂先でけん制する>
ジル「…! なんてことだ…!」
<怪物の腹部にロジェの顔が!>
ジャンヌ「ロジェェーー!」
ジャンヌ「……!」
ロジェの怒り 終わり
<街は外壁に囲まれ、門は閉じられている>
<空にポツポツと点が現れる……火矢だ!>
<火矢が次々と外壁に突き刺さる。見張りの兵士が驚きの声を上げる>
*「ああっ!」
<地平線の向こうからギャーギャーと耳障りな声と共に、イギリス軍と魔物たちが現れる>
<まるで感情がないかのように無表情なイギリス兵の面々、オークやダークエルフなど魔物たちの行進>
<一歩一歩ごとに甲冑がガシャガシャと音を立て、ザッザッと地面を踏みしめる音がする…>
<パリの中心に、見るからに禍々しい城がそびえ立っている>
<その城の玉座に座るヘンリー6世…いや、魔王ギルヴァロス。傍らにはベッドフォードが控える>
<魔王の右手から電光がほとばしる>
ギルヴァロス「(禍々しく息を吐いて)ハァッ…!」
<ベッドフォードが王の間に集まったイギリス兵と魔物たち…『ヘンリー軍』に、片手を振った>
ヘンリー軍「ぅおおぉぉーー!」
<街では戦いが始まっていた。イギリス兵が住民を一人切り倒す>
*「うぉぁっ!」
<街の遠景。街のあちこちで火の手が上がり、黒煙が立ち上る。ちらほらと、空を飛ぶ魔物の影も見える。その戦いの音は遠くまで響く>
<魔王ギルヴァロスが肩を揺らして不敵に笑った>
ギルヴァロス「(口の中で笑う)ハハハ……!」
ヘンリー軍の脅威 おわり
<怪しい鎧を身に着けた男たちに攻撃され、苦しげなロジェ>
<その様子を呆然と見つめていたジャンヌは、キッとその男たちに向き直った>
ジャンヌ「貴様ら! 何者だ!」
ジャンヌ「宝珠を返せ!」
<鎧の男たちはジャンヌの言葉に答えることなく、どこかに向かって跳躍する>
ジャンヌ「…!」
謎の声「ハハハハハ……」
ジャンヌ「…ッ!」
<鎧の男たちが岩場を跳び向かう先に、大仰な衣装をまとった魔術師…ベッドフォードの姿がある>
ベッドフォード「ハハハハ……!」
ベッドフォード「貴様がジャンヌ・ダルクか。 …フン」
<ベッドフォードの後ろに控えた何人もの鎧軍団。微動だにしないそのたたずまいは、あまりにも非人間的だ>
ベッドフォード「我がイギリス軍新兵器の鎧の動きには、歯が立たぬようだな…!」
ジャンヌ「誰が貴様らに負けるものか! 宝珠を返せ!」
ベッドフォード「フン!」
<鎧の男たちがジャンヌのそばに跳び下りる>
<周りを取り囲まれて、ジャンヌは舌打ちをもらした>
ジャンヌ「……クッ!」
ベッドフォード軍 おわり
<パリ城が土をまとわりつかせながら浮上する。地盤が崩れ、隣家が倒れる>
<空に浮かぶパリ城のテラスに、魔王ギルヴァロスとベッドフォードの姿がある>
ギルヴァロス「ねえ、ベッドフォード。最近どうも力が有り余っちゃって」
ギルヴァロス「じっとしていられないんだ。ボク、ちょっと暴れちゃってもいいかなぁ?」
<血脈のような赤い線がまとわりついた円柱に、ギルヴァロスが手を置いている>
<ギルヴァロスが邪悪な笑みを浮かべる>
ギルヴァロス「フフフ……」
<塔のようになっている城の一部から、赤い魔弾が発射された>
<それはパリの一角に着弾すると、大爆発を起こした。爆炎がドームのように広がる>
ギルヴァロス「クフフフフフ……」
<またも城の一部から、赤い光線が発せられた>
<光線がパリの民家を薙ぐ。光線の触れた部分が爆発、炎上する>
<悲鳴を上げて逃げ惑うパリ市民たち>
ギルヴァロス「フフフフフ、楽しいねぇ。巣を失った、アリみたいだよ」
ギルヴァロス「ボクも自分で戦いたくなっちゃったなぁ」
ギルヴァロス「いいかなぁ、ベッドフォード?」
<ベッドフォードが微笑む>
ベッドフォード「ヘンリー様のいらっしゃるところ」
ベッドフォード「このベッドフォード、地獄の果てまでもお供いたします」
<今や地獄と化したパリ全体に、ギルヴァロスの笑い声が響き渡る>
ギルヴァロス「(無邪気に)ウフフフフフ、ウフフフフフ、ウフフフ……」
パリ城浮上 おわり
<大扉に耳をつけ、向こう側にいるはずのギルヴァロスの様子を探る>
ジャンヌ「(声をひそめて)よし、行くぞ!」
ロジェ「ジャンヌ」
ジャンヌ「ん?」
ロジェ「……ついにここまで来たな。この奥に、ヘンリー6世の玉座がある」
ロジェ「これが最後の戦いだ」
<こくりとうなずくジャンヌ>
ジャンヌ「よし、行こう」
ロジェ「あ、あのさ、ジャンヌ」
ジャンヌ「?」
ロジェ「……生きて帰ろう。一緒にドンレミ村に帰るんだ」
ジャンヌ「……ああ。わかってる」
<ジャンヌは剣を掲げた>
ジャンヌ「よし、みんな行くぞ!」
『おおぉーーっ!』
<ジャンヌたちは大扉を開け、玉座の間へとなだれ込んだ>
突入 おわり
<魔王を封じ込めた宝玉から飛び出した、ねじくれた形の宝石が、ジャンヌたちを掠めて飛び去る>
<それが勢いよく壁に衝突したかと思うと、魔界への穴が開いた。吸い込まれる!>
『あぁっ!』
ラ・イール「……ッ!」
<ジャンヌの体が、吸引に耐え切れず吸い込まれる>
ロジェ「ぉおッ!」
ジャンヌ「……あぁっ!」
ロジェ「ジャンヌ!」
<ジャンヌに続き、ロジェまでもが魔界に吸い込まれる>
ロジェ「ぉあっ!」
ジル「……我々も行くぞっ!」
ラ・イール「おぉーっ!」
<三人が後に続く>
ジル「…!」
ラ・イール「ぉぉ!」
リシャール「ぉぅ!」
<禍々しい骸骨の柱が設置された大舞台に、ジャンヌたちは転送された>
ロジェ「なんだ、ここは?」
ジル「気をつけろ……魔王の領域だ」
『…!』
<ジャンヌたちが見上げる先に、魔王ギルヴァロスが立ちはだかっている>
ギルヴァロス「フハハハハハハ……。フハハハハハハハハ……! フッハッハッハハハハハハハ……! フフハハハハ…」
ギルヴァロス「残念だったな。既に私は貴様らの腕輪の力など、」
ギルヴァロス「とっくに超えている! 人間の分際で我々に楯突く己の愚かさを…」
<ジャンヌが静かに剣を構えた>
ギルヴァロス「思い知るがよい!」
魔界へ おわり
<まるで生き物の肉のような壁を切り裂いて、ジャンヌたちは城の外へと出た>
<ジャンヌの腕の中には、気を失ったヘンリー6世の姿がある>
<分厚くパリを覆っていた暗雲が、徐々に徐々に晴れていく。太陽の光を浴びて、邪神像が崩れ落ちる>
<パリの人々の顔に、安堵の色が浮かぶ>
*「おお……!」
*「あはははは……!」
*「あっはっはっは……!」
<パリ城がゆっくりと降下する。城を覆っていた肉壁が消滅し、元あった場所に不時着した。>
凱旋 おわり
ヘンリー6世「あなたたちのおかげで」
ヘンリー6世「やっとイギリスに帰ることができます。本当にありがとう!」
ジャンヌ「どうか、イギリスを良い国にしてください」
ラ・イール「頑張れよ」
ラ・イール「お・う・さ・ま!」
<ヘンリー6世が笑顔を浮かべる>
ヘンリー6世「はい! もう行きます」
ヘンリー6世「……!」
<共に戦った仲間が名残惜しいのか、ヘンリー6世は涙を浮かべてジャンヌに飛びつく>
ヘンリー6世「(飛びついて)…ッ!」
ジャンヌ「あっ」
<そんなヘンリー6世を笑顔で慰め、ジャンヌはヘンリー6世を送り出す>
ヘンリー6世「…さようならぁ!」
<兵士に連れられてイギリスに帰るヘンリー6世を、ジャンヌたちは笑顔で見送った>
<夕暮れ時。ドンレミ村に帰るジャンヌとロジェを、仲間たちが見送る>
ジル「お前たちとはここで別れるのか…」
ジャンヌ「ああ。やっぱり村に帰らないと」
ロジェ「ドンレミ村を蘇らせるんだ」
ロジェ「この戦いで犠牲になった人たちのためにも」
<その言葉に、ジャンヌはうつむいて目を潤ませる>
ラ・イール「あ〜、またムサクルシくなるぜぃ。大将がいなくなっちまったらよぉ」
ジル「お前が一番むさくるしいよ」
『あっははははは……!』
<ジャンヌが真顔になって、ジルに声をかける>
ジャンヌ「ジル」
ジル「どうした?」
ジャンヌ「まだ、あなたの中には…」
ジル「俺なら大丈夫だ。こいつは墓の中まで持っていくよ」
ラ・イール「な〜に、コイツがおかしな事したら、オレ様がガブッってやって、目ぇ覚まさせてやるからよぉ!」
ジル「(『ガブッ』のふりに苦笑して)あっはっはっは…」
リシャール「…私も見守るとしよう」
ジル「だそうだ。だから安心してくれ」
ジャンヌ「それは心強いな」
<ジャンヌが涙をぬぐう>
ジャンヌ「じゃあ、みんな元気でな!」
ジル「ああ」
ラ・イール「ジャンヌたちもな!」
リシャール「神のご加護がありますように」
ジャンヌ「…うん。よし、ロジェ行こう」
ロジェ「ああ」
<旅立つジャンヌとロジェの背中を見送りつつ、ジルがポツリとつぶやく>
ジル「…ジャンヌについて来て良かったな」
ラ・イール「…ああ」
リシャール「彼女こそ」
リシャール「まさに、神につかわされた者だ」
<ドンレミ村の近辺までたどり着いたジャンヌとロジェ>
<しかし、かつて村を襲った悲劇を思ってか、ジャンヌの顔は固い>
ジャック「ジャンヌ!」
<不意に名前を呼ばれ、ジャンヌは馬を引いた>
ジャック「そこにいるのはジャンヌなのか…!」
ジャンヌ「あ…!」
ジャック「やっぱりジャンヌじゃないか! よかった、無事に帰ってきたんだな! ロジェも一緒に」
ジャンヌ「あ! お父さんも無事だったの!?」
ジャック「あぁ。お前の活躍は、人づてに聞いていたよ」
ジャック「頑張ったな。フランスを救ってくれてありがとう」
ジャック「ジャンヌ」
ジャンヌ「…ぅ……お父さん! うぅ……! ……!」
<父に泣きつくジャンヌを、ロジェが暖かく見守っている>
<ドンレミ村は再建の真っ最中。村人の一人がジャンヌたちに気づき、声を上げる>
*「あ…! おーい! ジャンヌたちが帰ってきたぞぉ!」
<村人たちが集まって、帰ってきたジャンヌたちを出迎える>
ジャンヌ「村が襲われた時、みんなどうしてたの?」
ジャック「旅芸人の人たちに助けてもらったんだ。魔物が来る前に、村人を馬車で運んでもらった」
ジャンヌ「…そう! よかった!」
<ジャンヌにまなざしを向けられたロジェが、振り返りジャンヌを見つめる>
ロジェ「ジャンヌ」
ロジェ「ドンレミ村を、平和で、幸せな村にしていこうな」
<魔王が去った今、太陽はさんさんと照り輝いている>
<スタッフロール(歌とか無いのでご安心を)>
<ドンレミ村はずれの教会で、ジャンヌとロジェが祈りをささげている>
<ジャンヌの手には、いつかロジェが拾った、リアンのペンダントが握られている>
ジャンヌ「リアン…」
< FIN >
祈り おわり
音なしでやってる人とかそういう人用にアニメシーンの台詞を書き出してみました。
大分適当だけどなんとなくわかると思う。
アニメ鑑賞
始まりの夜
ヘンリー6世「ねぇ、ベッドフォード。何かお話聞かせてよ。もう死んじゃったお父さんたちのことはいいからさ。もっと別の話がいいなぁ」ベッドフォード「そうですね…遠い昔のことでございます」
ベッドフォード「その昔、死神戦争と呼ばれる戦争がございました。魔王率いる死神たちが多くの魔物を率いて人間界に侵略してきたのでございます。それはそれは壮絶な戦いでございました。長い長い戦いの末、我々は邪悪な力を封じるために5つの腕輪を作りました。5人の勇者は腕輪の力を用いて見事魔王と死神を封じ込めたのです」
ベッドフォード「時は流れました。我がイギリスはフランスと百年の長きにわたり戦っております。この乱世にヘンリー様が勝利するためには圧倒的な魔王の力を利用するしかないのです」
ベッドフォード「〜〜〜(呪文)…ハァ〜ッ!太古の昔に封印されし偉大なる大魔王様。今宵今こそ、そのお力を!おっ!?これはこれは…どなたかと思えば」
老騎士「ベッドフォード、お前の思うとおりにはさせん!」
ベッドフォード「老いたの…これがかつての勇者か…余りにも弱い!そろそろ隠居なされてはいかがですかな?」
老騎士「くっ…させるかぁ!」
ベッドフォード「もう、われわれの時代ではないのですよ」
老騎士「かつて勇者だったお前がどうして魔王に自分の魂を売るようなことをする!?」
ベッドフォード「かつての友だ…殺しはせぬ」
老騎士「っ、魔王か…? 王子!」
ヘンリー6世「なぁに?どうしたのベッドフォード?な、何これ?うわぁーーーーーーーー!」
老騎士「王子!ヘンリー王子!大丈夫ですか!?ぬっ!?」
ベッドフォード「そこまでだ。王子に触れることはゆるさん!消えてもらおう!」
老騎士「ベッドフォード、やめるんだ!」
ベッドフォード「すべてはヘンリー様のためです」
老騎士「ぬわぁーーーーーーーー!」
ベッドフォード「これでヘンリー様は未来永劫この世の王となり得るのです」
ジャンヌの父ジャック「おーい、ジャンヌ!」
ジャンヌ「ん?」
始まりの夜 おわり
腕輪と魔物
<ジャンヌが兵士の体を起こす>ジャンヌ「ン、ッ〜〜…ッ!」
<兵士の腰の袋が光り始める>
ジャンヌ「…! なんだ、これ?」
リアン「どうしたの、ジャンヌ?」
<袋にそろそろと手を伸ばすジャンヌ>
ジャンヌ「…」
リアン「…」
<袋から光が飛び出し、ジャンヌの腕に巻きつく>
ジャンヌ「…えッ!?」
<馬が驚いていななく>
リアン「ジャ、ジャンヌ!?」
ジャンヌ「(苦しげに)くはァ! …ッうぅ…く!」
<リアンがジャンヌに駆け寄る>
リアン「ひ、光が!」
ジャンヌ「(さえぎるように)来るな! 下がってろ!」
リアン「大丈夫なの? その腕……あっ」
<光が収束し、腕輪の形をとる>
ジャンヌ「……腕輪?」
ジャンヌ「……なんで…なんで、腕輪なんか…」
リアン「腕輪?」
<馬がリアンに寄り添う>
リアン「え、どうしたの?」
<恐る恐るリアンがバスケットを開く>
カエル?「…げこ」
リアン「ガマ?」
<何かにリアンが驚いて、はっと森のほうを見る>
ジャンヌ「今の鳴き声は!?」
<息を凝らして様子を伺うジャンヌとリアン>
ジャンヌ「気をつけろ…」
<暗い夜の森を見回す>
ジャンヌ「…普通じゃないぞ!」
<怪しい鳴き声とともに、視界の端で草むらがガサリと揺れる>
リアン「あっ!」
ジャンヌ「上だ!」
リアン「!」
<森から魔物が飛び出し、ジャンヌたちの前に降り立つ>
オーク「……ゥゥゥゥウゥッ!」
オーク「ゥゥゥ、ウゥッ!」
<リアンをかばうように、魔物と対峙するジャンヌ>
ジャンヌ「……なんだ、こいつ!?」
腕輪と魔物 おわり
炎のドンレミ村
<ジャンヌ、リアン、ロジェが山を駆け下りてくる>『はぁっ、はぁっ、はぁっ…』
ジャンヌ「ああっ……!」
<家が、村が……焼かれている!>
炎のドンレミ村 おわり
ジャンヌ変身
<ボイス無し、効果音のみ>旅立ちの朝
<朝日が昇る><ジャンヌは鎧を身につけ、剣をはいて、旅立ちの準備をした>
<村は完全に焼け落ち、もはや何も残っていない>
リアン「ジャンヌ…?」
<その光景に涙を流すジャンヌ>
ジャンヌ「……くっ!」
リアン「ジャ、ジャンヌ! 一体何を!」
<キッと顔を上げたジャンヌは、剣でその長い髪を無造作に断ち切った>
ジャンヌ「……ッ!」
<断ち切られた髪が地面にバサリと広がる>
リアン「(悲鳴に近い声で)ジャンヌ!」
ジャンヌ「…行こう」
ジャンヌ「私たちの誇りを、取り戻すんだ!」
ロジェ「……!」
<ロジェは何かを見まいとしてか、朝日を振り仰いだ>
リアン「そうだよね……そうなんだよね」
<旅立つ三人の姿を、朝日が照らしている>
旅立ちの朝 おわり
ロジェの夢
<ロジェが拘束を解こうとして、うめき声を上げている>ジルドレ変身
<ボイス無し、効果音のみ>王太子謁見
<扉を開け放って、ジャンヌはホールの中に入った><集まった人々は息を凝らしてジャンヌを見つめている>
<時折、嘲笑めいた話し声がもれ聞こえる>
リアン「……あ、ジャンヌ、あの人…。」
<赤い服を着た貴族の男が、含み笑いをしてこちらを見ている>
リアン「(声をひそめて)赤い服…ほら、ジルが言ってたでしょ? ほら、貴族の血の色って。アカ。『赤』ね。きっとあの人…」
<ジャンヌは鋭い目で男を観察した。しかし、違和感を感じて眉根を寄せる>
ジャンヌ「違う……気がする」
リアン「えっ。でも、だって!」
<ジャンヌはホールを見回す>
<時間が経つにつれ、徐々に人々の嘲笑が大きくなる>
<もはや隠そうともしない嘲笑がホールを占めた>
<ジャンヌがその人々を見つめる中、一人だけ笑わずにこちらを見つめてくる人物がいる>
<ジャンヌがそれに向き直った瞬間、人々は水を張ったように静かになった>
シャルル7世「(うろたえて)……あ……ぁ、ああ……」
<ジャンヌは他の人に目もくれず歩み寄り、王太子シャルル7世の前で膝をついた>
ジャンヌ「王太子様。私とともに、フランスの民をお救い下さい」
シャルル7世「……ほ……本物だ…!」
王太子謁見 おわり
ロジェの夢2
<骨の怪物であろう何かが、息を漏らした>ロジェ「……はぁッ!」
<拘束を解こうとしてもがき、うめき声をもらすロジェ>
ロジェ「…く…そぅっ! ンン…!」
<ロジェが何かに目を見張はり、その視線を謎の赤い瞳が受け止めた>
ロジェの夢2 おわり
オルレアン入場
<馬に乗って門をくぐるジャンヌたちを、ファンファーレと人々の歓声が迎える>*「わあぁー!」
*「こっち見てくれーっ!」
*「あはははは、わーい!」
*「おーい!」
*「ジャンヌ様ぁー!」
*「ジャンヌー!」
*「救世主様ー!」
*「うおぉー!」
ラ・イール「すげぇ歓迎ぶりだな。こりゃあ今夜はうめぇ酒が飲めるぜぃ」
ジル「戦いはこれからだというのに。のんきな事だ」
リアン「でも、みんなうれしそう」
ロジェ「ジャンヌは、みんなの希望なんだ」
ジャンヌ(この人たち…フランスの人たちみんなのために、私は戦う!)
ジャンヌ(この戦争を終わらせる!)
<ジャンヌたちの後ろを、人々がついてくる>
オルレアン入場 おわり
逸るジャンヌ
<フランス軍が砦を攻め落とさんと攻撃を仕掛けている>ジャンヌ「ひるむなぁーっ!」
兵士たち「おおぉーーっ!」
<一人の兵士の胸を、一本の矢が貫いた>
兵士「ぐはぁっ…!」
<ジャンヌは旗を持って、兵士たちを鼓舞する>
ジャンヌ「もう少しで突破できる! ひるむなっ!」
<ジャンヌは旗を振り上げた>
ジャンヌ「自分の力を、信じるんだ!」
ジャンヌ「……」
<ジャンヌの脳裏を、昨夜の作戦会議の出来事がよぎる>
*「君の言うこともわかるが、ここは我々に任せてもらおう」
<黙って立ち去ろうとするジャンヌを、ロジェが呼び止めた>
ロジェ「ジャンヌ」
ロジェ「急ぎすぎは良くない。少し、休んでおいてくれ」
<ジャンヌは何も言わず、テントを出た>
リアン「あ、ジャンヌ!」
リアン「ロジェは、あなたを追い出したいのではなくて…」
リアン「本当に心配して言ってるのよ」
ジャンヌ「……さあ。どうかな」
<頭からその光景を振り払おうと、ジャンヌはかぶりを振る>
ジャンヌ「くっ…! ……ッ!」
<ジルが、ロジェが、ジャンヌを驚きの目でみつめる>
ジャンヌ「(旗を振り上げつつ)みんな!」
ジャンヌ「砦は必ず落ちる!」
ジャンヌ「皆の力を結集するんだ! 神は必ず、勝利をもたらしてくれる!」
兵士たち「おおぉーーっ!」
ジル「ジャンヌ! 出すぎだぞ!」
ジル「早くそこを降りるんだ!」
ジャンヌ「何を言う! フランスを取り戻さなくて良いというのか!」
<タルボット将軍に指示を受けた兵士が矢をつがえ、ジャンヌを狙っている>
ジャンヌ「下がるなぁーっ!」
<弓がギリギリと引き絞られる>
ジャンヌ「(声も枯れよと)イギリス軍を倒せぇーーっ!」
ロジェ「ジャンヌ!」
<ついに矢が放たれ、ジャンヌの体にズブリと突き刺る>
ジャンヌ「……ぁ! うッ!」
<ジャンヌがドサリと崩れ落ち、戦場は静寂に満ちた>
<ポツリポツリと、兵士たちの戸惑いの声が上がる>
ロジェ「(悲鳴をあげて駆け寄りつつ)ジャ、ジャンヌ!」
<ジャンヌは目を閉じて、ぐったりと倒れ伏している>
逸るジャンヌ 終わり
リシャール変身
<ボイス無し、効果音のみ>運命
<シャロンから何とか抜け出したジャンヌたちだが、既にそこにはシャロンの人々が剣を構えて待ち構えていた>ジル「こいつらはもう正気を失っている」
<ジルは槍を構えなおした>
ジル「気をつけるんだ」
<ジャンヌがその肩を軽く押しのけ、前に出る>
ジャンヌ「あなたたちとは戦いたくない。もう、無駄な血を流したくないんだ!」
リシャール「ジャンヌ!」
<ジャンヌとジルはリシャールを見た>
<仲間たちがシャロン住民を各自の得物でけん制しつつ、じりじりと坂道を後退していく>
リシャール「こっちだ。ここから降りられるぞ」
ロジェ「行こう。ここは逃げたほうがよさそうだ」
<ロジェがジャンヌの肩を押し、撤退を促す>
<それをシャロン住民が見咎め、めいめい武器を構えて突進してくる>
*「うわぁー!」
ジル「…!」
ロジェ「…!」
<ジルとロジェが、それを迎え撃つ>
*「うわぁー!」
<剣がと剣が火花を散らす。ラ・イールの戦斧がうなりをあげる>
ジャンヌ「やめろ! 同じフランス人同士が、血を流す必要なんてないんだ!」
リアン「ジャンヌ! まだわかんないの!?」
リアン「この人たちは敵なんだよ!」
リアン「戦わなきゃ、こっちがやられちゃうじゃない!」
リアン「甘いのよ、あなたは!」
<その気迫に思わず気抜けするジャンヌ。背後でロジェが住民を一人切り伏せる>
<何かに気づいて、はっとするジャンヌ>
ジャンヌ「!」
<住民の一人が、クロスボウを構えてリアンを狙っている!>
ジャンヌ「リアーン!」
<剣を抜き払い、ジャンヌがそれに詰め寄る! 住民に向かい跳躍する!>
シャロン住民「(うろたえて)あ、ぁぁあ!」
シャロン住民「(後ろに転げ落ちつつ)ぅわぁ!」
<弾みで発射された矢が、ジャンヌの左胸を貫く>
ジャンヌ「ッ!」
リアン「(悲鳴を上げて)ジャンヌ!」
<ジルが、ロジェが、コレが驚きに目を見張る>
<ジャンヌは着地できず岩に叩きつけられ、崖に向かって転がり落ちる>
ジャンヌ「ッ! …ッ!」
<ジャンヌの体が、ぶらりと垂れ下がる。パラパラと小石が落ちる>
<左手が、崖の上の石を何とかつかんでいる>
リアン「ぁあ! ジャンヌ!!」
ロジェ「ジャンヌ!」
<ジャンヌの体を支えていた石が、ゴロリと地面から離れる>
<ジャンヌが、落ちる!>
ジャンヌ「!」
<と、ジャンヌの落下が止まった>
<リアンが右手を差し伸べて、ジャンヌを支えている。とても苦しそうだ>
ロジェ「リアン! 離すなよ!」
<ロジェがリアンを支える>
<今ジャンヌの体を支えているのは、リアンの右手ただ一つだ>
ジャンヌ「リアン…離せ…お前まで!」
リアン「…離さないもん! …大丈夫……今引き上げる、から…!」
<突如、ジャンヌの腕輪が光りだす>
ジャンヌ「!」
<光がリアンの手に伝播し、ふたたび腕輪の形をとった>
<驚愕に、思わず手が緩む>
リアン「あぁ…!」
<ついに耐え切れず、手が離れた>
ジャンヌ「ッ…!」
リアン「いやぁーー!」
<リアンとロジェ、そしてジルが、視界から遠ざかっていく>
<ジャンヌが落ちていく!>
リアン「ジャァァーーンヌ!」
<ジャンヌの姿が、崖の下に見えなくなった…>
ジル「まさか……なんてことだ」
運命 おわり
ロジェの夢3
<いつもの悪夢><何者かの声に目を開けると、そこには魔術師…ベッドフォードの姿が>
<上のほうから光が差し込み、逆光でその顔は良く見えない>
ベッドフォード「…ホリオルム…サントマルク…ノルマベンタス…」
<ベッドフォードは指を鳴らす>
<魔法の詠唱のようだ、ベッドフォードの声は続く>
ベッドフォード「…ラムヘルガ…ソンゴア……」
<ベッドフォードの声に呼応して、怪しげな機械に電光が走る>
<ロジェの横たわる寝台を中心に広がった魔方陣が、強く光を放つ>
ロジェ「…ッ! くッ…!」
ベッドフォード「…モルガスタ…」
<ベッドフォードの口の端が、いやらしげにつり上がった>
ロジェの夢3 おわり
戴冠式
<ランスの大聖堂で、戴冠の儀が執り行われる><何人もの司祭たちに続いて、王太子シャルル7世が現れる>
<シャルル7世は大司祭の前まで歩み寄り、膝をついて手を組んだ>
大司祭「全能の神の手によって祝福されたこの聖油をもって、汝、シャルル・ド・バロアを、偉大なるフランスの統治者、国王として承認する」
<大司祭は聖油を傍らの司祭に預け、続いて王冠を手に取った>
大司祭「これより先、聖なる教会とその信者、フランスの民の擁護に尽くし」
大司祭「天命を全うすべし」
<大司祭より、シャルル7世は頭に王冠を戴いた>
<聖堂の鐘が鳴らされ、人々は歓声をあげる>
*「わあぁぁーー!」
<リアンも涙を浮かべつつ、拍手を送る>
リアン(ジャンヌ、見てる? あなたの夢が、一つ現実になったわ)
<シャルル7世は、両腕を広げて人々の歓声を一身に受ける>
リアン(あなたの遺志を、私は受け継ぐ)
<ランスの街中に、聖堂の鐘の音が響き渡る>
リアン(かならず、フランスを救ってみせるから)
戴冠式 おわり
堕ち行く聖女
<パリ城門に、フランス軍が攻撃を仕掛けている><リアンは心ここにあらずといった様子で、その様子をただ見つめていた>
リアン「ぁ…ぁ……」
<敵兵の弓に、次々と兵士たちが倒れる>
*「うぁっ……」
<リアンは剣を振り上げ、なおもフランス兵を鼓舞する>
リアン「…ゆ……ゆけぇー! 勝利は約束されているぅー!」
*「うおぉーっ!」
*「うわぁーっ!」
<フランス兵が一人、城門にたてかけられた梯子から叩き落される>
*「ぅわぁぁっ!」
リアン「……ぁ…」
<またある兵士が、上から鉄球を投げ落とされて梯子から落ちる>
*「ぅおぁ…!」
リアン「……!」
<城門の上についに達した兵士が、敵兵の槍に突き落とされる>
*「ぅあぁ…!」
リアン「……ぁ…」
<城門の窓から至近距離で矢を射られた兵士が、絶命し落ちる>
*「うわぁぁっ!」
<なおも戦いつづけるフランス兵たち>
リアン「(消え入りそうな声で)ジャンヌ……」
<リアンの瞳が動揺にわなないている>
リアン「ジャンヌ……」
<もはや動く事のない、フランス兵たちの死体、死体、死体>
リアン「ジャンヌ……!」
リアン「(もはやこらえきれず)ジャァァーーンヌ!」
堕ち行く聖女 おわり
ロジェの夢4
<ボワリ、と気泡があがる><怪しい機械類、骸骨のうめき声>
<ロジェの右手が握り締められる>
ロジェ「……ッ…!」
<大きな管の中の液体に浮かぶあぶく、謎の赤い瞳…>
<足かせを解こうとして、ロジェがもがく>
ロジェ「ン…! ッ!」
ロジェ「…く…そぅっ! ンン…!」
<骸骨の顔をした怪物が、大口を開けて笑っている>
ロジェ「…!」
<ベッドフォードの詠唱>
<ロジェの頭上で、機械が電光を放つ。さらにもがくロジェ>
ロジェ「…ッ! くッ…!」
<魔方陣。ベッドフォードの悪意に満ちた微笑み>
<ロジェの頭上にひらめく電光の中から、何か黒いものが現れる>
<ヘンリー6世を襲った黒い影に似た何かが、ロジェに襲い掛かる!>
<恐ろしさのあまり、ロジェは跳ね起きた>
ロジェ「…うわぁッ! はぁっ、はぁっ、はぁ……はぁ……」
<ここは宿屋の一室。何事かと顔を上げた相部屋の傭兵が、興味を失って再び目を閉じた>
<まだ、夜は明けていない>
ロジェの夢4 おわり
声の主
<どこかの森の中。小鳥のさえずる声><人の顔が浮かぶ木々の向こう、泉の中にそびえたった樹木の元、おぼろな光に包まれたジャンヌの姿がある>
謎の老人の声「ジャンヌ……ジャンヌ。…ジャンヌ」
<ジャンヌが身じろぎをする>
謎の老人の声「ジャンヌ…!」
ジャンヌ「……あっ」
<ジャンヌが目を見開いた。ここは何処だろうかと頭をめぐらす>
謎の老人の声「ここだ…」
<謎の声の主を探し、上方を見る>
謎の老人の声「ようやく会えたな…」
<木で出来た老人の首が、樹木から生えている>
声の主 おわり
修行
<幾千万の星々が浮かぶ空間の中、小石の列が遺伝子のように寄り合わさっている><虚空に電光が走り、そこからジャンヌが現れる>
<周りを見回すジャンヌが、ローブをまとった人影をみつける>
ジャンヌ「あっ……!」
ローブの男「おまえは腕輪に選ばれたのだ」
ローブの男「己の力を信じ…」
ローブの男「全ての感覚を研ぎ澄まし…」
<人影がフードを脱ぐ。右手に腕輪をつけた老人、ルーサーの顔があらわになる>
ルーサー「解き放つのだ…!」
<虚空にローブの人影たちが現れる。それらが剣を構えた>
ジャンヌ「えっ……!?」
ルーサー「さすれば自ずと道は、開かれる!」
<ルーサーが剣を抜き払い、頭上に掲げる。剣から光が放たれ、ローブの人影をなぎ払う>
<ルーサーが剣を正眼に構える>
ルーサー「今から目の前に現れる敵を」
<虚空からさらに何人もの人影が現れ、剣を抜く>
ルーサー「全て討つのだ!」
<ジャンヌはうなずいて、同じく剣を正眼に構えた>
修行 おわり
火刑
*「……にもかかわらず」<リアンが磔にされている。恐怖のあまり、吐息が漏れる>
*「髪の毛を切り、男の服を着続けただけではなく」
*「戦いの先頭に立ち、世を混乱させた」
<司祭だろうか、男が罪状を並べた書物を繰る>
*「しかも汝は」
<リアンの背後に、たくさんの人々が見える>
*「地上の教会には従わず、自分の信じる神にのみ従うと述べた!」
リアン「あたしそんなこと言ってない!」
*「この数々の冒涜行為は背教者の証であり、異端者と言えるものである」
<男が書物を閉じ、『ジャンヌ』を指し示す>
*「皆の者よく見よ!」
*「フランスが救世主と謳った、悪しき魔女の最期を!」
<リアンの背後で人々が賛同の声を上げる>
リアン「…お願い助けて! あたし、本当はジャンヌじゃないの!」
<男は冷たく目を背け、共にいる男たちにさとした>
*「魔女の世迷いごとには惑わされるな」
<いよいよ進退窮まり、リアンの顔が恐怖にゆがむ>
*「火を放てぇ! 聖なる炎をもって」
*「この魔女を焼き殺すのだぁぁーーっ!」
<肩に黒カラスを乗せたジョルジュが、その様子を面白そうに見つめる>
<満足そうにフッと鼻で笑うと、きびすを返して立ち去って行った>
火刑 おわり
ロジェの怒り
<時は既に夕刻。傾いた陽を浴びて、ジャンヌたちは坂道を登る>ジャンヌ「はっ、はっ、はっ……」
<坂の向こう側で、煙を上げて何かが燃え盛っている>
<坂の上に達したジャンヌ。傭兵たちの亡骸の向こうにあるものを見て、驚く>
ジャンヌ「あっ……!」
ジャンヌ「ぁ……まさか…!」
<磔台に火がかけられている。炎の中に、うっすらと人影が見える>
ジャンヌ「リアァーーン!」
<絶望のあまり、ジャンヌは崩れ落ちた>
ジャンヌ「……! …ッ!」
<誰かのうめき声に顔を上げたジャンヌは、地面に顔をうずめたロジェの姿を見つける>
ロジェ「…! くっ…! …ッ!」
ジャンヌ「ロジェ!」
ロジェ「ジャンヌ、か……」
<ロジェが身を起こす>
ロジェ「今更何をしにきた! リアンは…! リアンは…!」
ロジェ「お前の身代わりに死んだんだぞ! ……くッ!」
ジャンヌ「ロジェ!」
ジル「どうした!」
ロジェ「かぁぁ……ぁぁぁ…ぁ……!」
<ロジェの体が、黒い触手に取り込まれる>
ジャンヌ「ロジェ!」
ジル「ロジェ!」
<触手の塊から、手が飛び出す。しかし、それはもう人のものではない>
<手の甲に目玉の付いた腕で触手を振り払い、『死神』が現れた。ロジェの夢に現れた骨の怪物とそっくりだ!>
死神「ウォァァァーーッ!」
<骨の怪物がジャンヌに詰め寄る。ジルが穂先でけん制する>
ジル「…! なんてことだ…!」
<怪物の腹部にロジェの顔が!>
ジャンヌ「ロジェェーー!」
ジャンヌ「……!」
ロジェの怒り 終わり
ヘンリー軍の脅威
<フランスの西部に属する、ブルターニュ地方><街は外壁に囲まれ、門は閉じられている>
<空にポツポツと点が現れる……火矢だ!>
<火矢が次々と外壁に突き刺さる。見張りの兵士が驚きの声を上げる>
*「ああっ!」
<地平線の向こうからギャーギャーと耳障りな声と共に、イギリス軍と魔物たちが現れる>
<まるで感情がないかのように無表情なイギリス兵の面々、オークやダークエルフなど魔物たちの行進>
<一歩一歩ごとに甲冑がガシャガシャと音を立て、ザッザッと地面を踏みしめる音がする…>
<パリの中心に、見るからに禍々しい城がそびえ立っている>
<その城の玉座に座るヘンリー6世…いや、魔王ギルヴァロス。傍らにはベッドフォードが控える>
<魔王の右手から電光がほとばしる>
ギルヴァロス「(禍々しく息を吐いて)ハァッ…!」
<ベッドフォードが王の間に集まったイギリス兵と魔物たち…『ヘンリー軍』に、片手を振った>
ヘンリー軍「ぅおおぉぉーー!」
<街では戦いが始まっていた。イギリス兵が住民を一人切り倒す>
*「うぉぁっ!」
<街の遠景。街のあちこちで火の手が上がり、黒煙が立ち上る。ちらほらと、空を飛ぶ魔物の影も見える。その戦いの音は遠くまで響く>
<魔王ギルヴァロスが肩を揺らして不敵に笑った>
ギルヴァロス「(口の中で笑う)ハハハ……!」
ヘンリー軍の脅威 おわり
ベッドフォード軍
ロジェ「はぁ…はぁ…はぁ……」<怪しい鎧を身に着けた男たちに攻撃され、苦しげなロジェ>
<その様子を呆然と見つめていたジャンヌは、キッとその男たちに向き直った>
ジャンヌ「貴様ら! 何者だ!」
ジャンヌ「宝珠を返せ!」
<鎧の男たちはジャンヌの言葉に答えることなく、どこかに向かって跳躍する>
ジャンヌ「…!」
謎の声「ハハハハハ……」
ジャンヌ「…ッ!」
<鎧の男たちが岩場を跳び向かう先に、大仰な衣装をまとった魔術師…ベッドフォードの姿がある>
ベッドフォード「ハハハハ……!」
ベッドフォード「貴様がジャンヌ・ダルクか。 …フン」
<ベッドフォードの後ろに控えた何人もの鎧軍団。微動だにしないそのたたずまいは、あまりにも非人間的だ>
ベッドフォード「我がイギリス軍新兵器の鎧の動きには、歯が立たぬようだな…!」
ジャンヌ「誰が貴様らに負けるものか! 宝珠を返せ!」
ベッドフォード「フン!」
<鎧の男たちがジャンヌのそばに跳び下りる>
<周りを取り囲まれて、ジャンヌは舌打ちをもらした>
ジャンヌ「……クッ!」
ベッドフォード軍 おわり
パリ城浮上
<突如訪れた地響きに、パリが揺れる><パリ城が土をまとわりつかせながら浮上する。地盤が崩れ、隣家が倒れる>
<空に浮かぶパリ城のテラスに、魔王ギルヴァロスとベッドフォードの姿がある>
ギルヴァロス「ねえ、ベッドフォード。最近どうも力が有り余っちゃって」
ギルヴァロス「じっとしていられないんだ。ボク、ちょっと暴れちゃってもいいかなぁ?」
<血脈のような赤い線がまとわりついた円柱に、ギルヴァロスが手を置いている>
<ギルヴァロスが邪悪な笑みを浮かべる>
ギルヴァロス「フフフ……」
<塔のようになっている城の一部から、赤い魔弾が発射された>
<それはパリの一角に着弾すると、大爆発を起こした。爆炎がドームのように広がる>
ギルヴァロス「クフフフフフ……」
<またも城の一部から、赤い光線が発せられた>
<光線がパリの民家を薙ぐ。光線の触れた部分が爆発、炎上する>
<悲鳴を上げて逃げ惑うパリ市民たち>
ギルヴァロス「フフフフフ、楽しいねぇ。巣を失った、アリみたいだよ」
ギルヴァロス「ボクも自分で戦いたくなっちゃったなぁ」
ギルヴァロス「いいかなぁ、ベッドフォード?」
<ベッドフォードが微笑む>
ベッドフォード「ヘンリー様のいらっしゃるところ」
ベッドフォード「このベッドフォード、地獄の果てまでもお供いたします」
<今や地獄と化したパリ全体に、ギルヴァロスの笑い声が響き渡る>
ギルヴァロス「(無邪気に)ウフフフフフ、ウフフフフフ、ウフフフ……」
パリ城浮上 おわり
ベッドフォード変身
<ボイス無し、効果音のみ>突入
<ジャンヌたち一行は、ついに玉座の間の前まで到達した><大扉に耳をつけ、向こう側にいるはずのギルヴァロスの様子を探る>
ジャンヌ「(声をひそめて)よし、行くぞ!」
ロジェ「ジャンヌ」
ジャンヌ「ん?」
ロジェ「……ついにここまで来たな。この奥に、ヘンリー6世の玉座がある」
ロジェ「これが最後の戦いだ」
<こくりとうなずくジャンヌ>
ジャンヌ「よし、行こう」
ロジェ「あ、あのさ、ジャンヌ」
ジャンヌ「?」
ロジェ「……生きて帰ろう。一緒にドンレミ村に帰るんだ」
ジャンヌ「……ああ。わかってる」
<ジャンヌは剣を掲げた>
ジャンヌ「よし、みんな行くぞ!」
『おおぉーーっ!』
<ジャンヌたちは大扉を開け、玉座の間へとなだれ込んだ>
突入 おわり
魔界へ
ジャンヌ「あ、まさか!」<魔王を封じ込めた宝玉から飛び出した、ねじくれた形の宝石が、ジャンヌたちを掠めて飛び去る>
<それが勢いよく壁に衝突したかと思うと、魔界への穴が開いた。吸い込まれる!>
『あぁっ!』
ラ・イール「……ッ!」
<ジャンヌの体が、吸引に耐え切れず吸い込まれる>
ロジェ「ぉおッ!」
ジャンヌ「……あぁっ!」
ロジェ「ジャンヌ!」
<ジャンヌに続き、ロジェまでもが魔界に吸い込まれる>
ロジェ「ぉあっ!」
ジル「……我々も行くぞっ!」
ラ・イール「おぉーっ!」
<三人が後に続く>
ジル「…!」
ラ・イール「ぉぉ!」
リシャール「ぉぅ!」
<禍々しい骸骨の柱が設置された大舞台に、ジャンヌたちは転送された>
ロジェ「なんだ、ここは?」
ジル「気をつけろ……魔王の領域だ」
『…!』
<ジャンヌたちが見上げる先に、魔王ギルヴァロスが立ちはだかっている>
ギルヴァロス「フハハハハハハ……。フハハハハハハハハ……! フッハッハッハハハハハハハ……! フフハハハハ…」
ギルヴァロス「残念だったな。既に私は貴様らの腕輪の力など、」
ギルヴァロス「とっくに超えている! 人間の分際で我々に楯突く己の愚かさを…」
<ジャンヌが静かに剣を構えた>
ギルヴァロス「思い知るがよい!」
魔界へ おわり
凱旋
<中空に浮かぶパリ城><まるで生き物の肉のような壁を切り裂いて、ジャンヌたちは城の外へと出た>
<ジャンヌの腕の中には、気を失ったヘンリー6世の姿がある>
<分厚くパリを覆っていた暗雲が、徐々に徐々に晴れていく。太陽の光を浴びて、邪神像が崩れ落ちる>
<パリの人々の顔に、安堵の色が浮かぶ>
*「おお……!」
*「あはははは……!」
*「あっはっはっは……!」
<パリ城がゆっくりと降下する。城を覆っていた肉壁が消滅し、元あった場所に不時着した。>
凱旋 おわり
祈り
<別れの時。ジャンヌたちがイギリス軍を、ヘンリー6世を見送る>ヘンリー6世「あなたたちのおかげで」
ヘンリー6世「やっとイギリスに帰ることができます。本当にありがとう!」
ジャンヌ「どうか、イギリスを良い国にしてください」
ラ・イール「頑張れよ」
ラ・イール「お・う・さ・ま!」
<ヘンリー6世が笑顔を浮かべる>
ヘンリー6世「はい! もう行きます」
ヘンリー6世「……!」
<共に戦った仲間が名残惜しいのか、ヘンリー6世は涙を浮かべてジャンヌに飛びつく>
ヘンリー6世「(飛びついて)…ッ!」
ジャンヌ「あっ」
<そんなヘンリー6世を笑顔で慰め、ジャンヌはヘンリー6世を送り出す>
ヘンリー6世「…さようならぁ!」
<兵士に連れられてイギリスに帰るヘンリー6世を、ジャンヌたちは笑顔で見送った>
<夕暮れ時。ドンレミ村に帰るジャンヌとロジェを、仲間たちが見送る>
ジル「お前たちとはここで別れるのか…」
ジャンヌ「ああ。やっぱり村に帰らないと」
ロジェ「ドンレミ村を蘇らせるんだ」
ロジェ「この戦いで犠牲になった人たちのためにも」
<その言葉に、ジャンヌはうつむいて目を潤ませる>
ラ・イール「あ〜、またムサクルシくなるぜぃ。大将がいなくなっちまったらよぉ」
ジル「お前が一番むさくるしいよ」
『あっははははは……!』
<ジャンヌが真顔になって、ジルに声をかける>
ジャンヌ「ジル」
ジル「どうした?」
ジャンヌ「まだ、あなたの中には…」
ジル「俺なら大丈夫だ。こいつは墓の中まで持っていくよ」
ラ・イール「な〜に、コイツがおかしな事したら、オレ様がガブッってやって、目ぇ覚まさせてやるからよぉ!」
ジル「(『ガブッ』のふりに苦笑して)あっはっはっは…」
リシャール「…私も見守るとしよう」
ジル「だそうだ。だから安心してくれ」
ジャンヌ「それは心強いな」
<ジャンヌが涙をぬぐう>
ジャンヌ「じゃあ、みんな元気でな!」
ジル「ああ」
ラ・イール「ジャンヌたちもな!」
リシャール「神のご加護がありますように」
ジャンヌ「…うん。よし、ロジェ行こう」
ロジェ「ああ」
<旅立つジャンヌとロジェの背中を見送りつつ、ジルがポツリとつぶやく>
ジル「…ジャンヌについて来て良かったな」
ラ・イール「…ああ」
リシャール「彼女こそ」
リシャール「まさに、神につかわされた者だ」
<ドンレミ村の近辺までたどり着いたジャンヌとロジェ>
<しかし、かつて村を襲った悲劇を思ってか、ジャンヌの顔は固い>
ジャック「ジャンヌ!」
<不意に名前を呼ばれ、ジャンヌは馬を引いた>
ジャック「そこにいるのはジャンヌなのか…!」
ジャンヌ「あ…!」
ジャック「やっぱりジャンヌじゃないか! よかった、無事に帰ってきたんだな! ロジェも一緒に」
ジャンヌ「あ! お父さんも無事だったの!?」
ジャック「あぁ。お前の活躍は、人づてに聞いていたよ」
ジャック「頑張ったな。フランスを救ってくれてありがとう」
ジャック「ジャンヌ」
ジャンヌ「…ぅ……お父さん! うぅ……! ……!」
<父に泣きつくジャンヌを、ロジェが暖かく見守っている>
<ドンレミ村は再建の真っ最中。村人の一人がジャンヌたちに気づき、声を上げる>
*「あ…! おーい! ジャンヌたちが帰ってきたぞぉ!」
<村人たちが集まって、帰ってきたジャンヌたちを出迎える>
ジャンヌ「村が襲われた時、みんなどうしてたの?」
ジャック「旅芸人の人たちに助けてもらったんだ。魔物が来る前に、村人を馬車で運んでもらった」
ジャンヌ「…そう! よかった!」
<ジャンヌにまなざしを向けられたロジェが、振り返りジャンヌを見つめる>
ロジェ「ジャンヌ」
ロジェ「ドンレミ村を、平和で、幸せな村にしていこうな」
<魔王が去った今、太陽はさんさんと照り輝いている>
<スタッフロール(歌とか無いのでご安心を)>
<ドンレミ村はずれの教会で、ジャンヌとロジェが祈りをささげている>
<ジャンヌの手には、いつかロジェが拾った、リアンのペンダントが握られている>
ジャンヌ「リアン…」
< FIN >
祈り おわり
2006年12月01日(金) 07:02:51 Modified by ID:g0zhuE385w