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タグ検索で平成14年は14件見つかりました。
司馬遼太郎の小説にはパンチの強弱がない
司馬遼太郎のものは、僕らは短編だったら面白いと思って読みますけれど、長いものはとても読めないですよ。もうがまんできない、いやもういいよとなっちゃうんです。ボクシングと同じで、たとえば強いパンチをばっかり打っていると、相手はそれに慣れちゃって倒れないんです。だけど、弱いのを入れながらときどき強いのを出すと、これが効いて倒れるんです。ようするに、司馬遼太郎にはパンチに強弱がなくて、いつでもある一定の強さのパンチばかり打っているんです。それは一見、弱いパンチよりいいだろうと思うかもしれませんが、そうじゃないん
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内容プラス文体
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本気で小説家としてやっていくとしたら、内容プラス文体なんですよ。本気で読むほうだって内容プラス文体で読むわけですよ。文芸書というものは。まずはその人の文体の癖が大事なのに、それを無くすとどうなるかというと、ボクシングでいえばパンチに強弱がなくなるんです。文体の癖を無くしてわかりやすくすると、リズムがつかないんです。それがいいと思っているわけだからしょうがないですけれどね。
(「家族・老人・男女・同性愛をめぐって」2002.10.7談話収録 「吉本隆明が語る戦後55年第10巻」2003.3.10三交社に収
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老いの次に死が来るなどということはない
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ぼくが思うに、死というのは、生まれて、成長して、老いて………というプロセスの最後の段階にあるものではないということです。
生まれた時から死ぬ直前までを見せる、そういう場所にいるのが死であって、老いの次に死が来るなどということはないのだということを、ぼくが好きだったフーコーという哲学者などは言っています。
(「ひきこもれ」第3章 2002.12.10大和書房)
:| このことがなんだか半分くらい実感できるような年に私もなってしまったと思います。死を自分で自在に管理することはできないのです。そしてたしかに
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ぼくは市民運動が嫌いです
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ぼくは市民運動が嫌いです。
群れて集まって、その数を頼みにしていろいろなことを言う。そこには冷静さがなく、根拠といえば漠然とした「感覚」だけです。
市民運動をやっている人たちは、自分たちで不安感や恐怖感を作り出しておいて、雰囲気でものを言っているところがあると思います。開かれているようでいて、閉じた集団なのです。
(「ひきこもれ」第5章 2002.12.10大和書房)
:| 私も市民運動が大嫌いです。虫酸が走るような思いになります。どの市民運動も、「ここままでは地球は滅んでしまう」「このままでは、日
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「はいさようなら」となるようなつき合い方
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むかし、詩人の鮎川信夫さんの家に頻繁にに行っていたことがありました。その時に、君のつき合い方は、何かの行き違いで疎遠になって、「君、明日からもうさようなら」と言われても、平気で「はいさようなら」となるようなつき合い方だな、と言われたことがあるんですよ。
(「幼年期」2002.6.30彩流社『第8章「親しい」とはどういうことか───「彼岸過将門迄」と「行人」)
:| このことは、実に印象深いので、前に読んだときも、よく憶えています。「吉本さんって、そういう人なんだろうな」ということを深く思いました。
:|
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血でわかるということ
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血でわかるということには、一種の二律背反的なところがあると思います。自分と振る舞いも似ていてというふうな感じになった場合、そのことと親しいということとに間にどういう関係があるのかという問題が出てきます。
よくわかるなという感じが親しいということとイコールになる時もあるけれど、逆によく似ているということのほうが何となく近寄りがたいみたいに感じる時もあります。それはどちらもあるような気がするんですね。
またこの親しさは親と子ではなくて、たとえば自分と対応するような異性との関係に似ているなと思える時もある
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上の子と下の子
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僕はだいたい上の子(漫画家・はるの宵子)のほうが、何を考えているか血でわかっちゃうような気がするわけです。逆に実際問題としては、上の子と一緒に歩くということになった時に、何となく照れくさい感じがすることがあるのです。
下の子(作家・よしもとばなな)は血でわかっちゃうという感じではなくて、むしろ他人同士、全然知り合いでも何でもないというところから、次第に距離が縮まっていって親子になったという感じがする。そういうかたちの一種の「牽引力」が働いたと考えたほうが、考えやすいのです。
だから上の子から、「どこ
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衰退する街
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僕は「ここは駄目だよ、衰退する街だよ」と思っています。要するに何かが足りないんですよ。元佃だって、佃煮屋さんなんかけっこうあっておもしろいけれど、それだけなんです。何かが足りないというのは、高度な資本主義社会に対応できていないんです。たとえば、若者たちが集まる今のお台場の町にしても、本当なら佃島や月島の人が出ていけばいいところなんです。しかしそんな頭は働かないから、他所からきた資本に占められてしまい、地元はさっぱり。
どっちつかずなんですよ。つかり「ここは埋立地で、伝統なんかそんなものは全然ないんだっ
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小学校の先生になる気は全然なかった
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小学校の先生になる気は全然なかったということですね。どうしてかというと、簡単なんですよ。小学生で、あんまり貧乏生活の経験がなく、わりあいいい家に育って、親が社会的にいい地位にいるみたいなそういう子どもに、ものすごく生意気な、「この野郎」っていうのがいるんですよ。そういうやつがいると、それだけでぼくは、今でも本気になりそうな気がしちゃう(笑)。本気で怒ったり、ぶん殴ったりしたらみっともないないから我慢するけれど、そういう子どもっているんですよ。だからなんです。
なぜそんなふうに思うかといったら、小学生を
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一〇〇パーセント親のせい
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経済的な不如意さでもって、お袋さんがいらいらしてすぐ怒ったとかはあったと思うんです。しかし、そんなひどく扱われたことはなかった。ただ、お袋さんが非常に悩み多く過ごしながら、赤ん坊を育てていたということです。
すると、この程度でも僕ぐらいの「性質悪いやつだな」という感じの子どもになる。あるいは「いじめっ子」か「いじめられっ子」になる。子どもの暴力問題がどこから始まったんだというと、「それはもう親だよ、決っているよ」って思う。
だから、どんなに悪いことです、人殺しのようなことでも、子どものせいにしたって
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一歳未満までの育ち方がよければ
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自分のことをかえりみても、要するに一歳未満までの育ち方がよければ、一生のうちで、とても朗らかになれないような時でも朗らかにすごすことができる、そういう人間に成長するよというのは、わりに疑ってないですね。一歳未満というのは別に厳密な意味ではなくて、人によって一年半ということもあるでしょう。大切なことはそのころまでの親と子の間柄がよかったら、その後はとんでもなくおかしいことにはならないよということなのです。それは心的な問題などを扱う時の僕の理論的な骨格になっています。
肝心な年齢は、一歳未満の赤ん坊つまり
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人間力の特性
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幼児期の内働きの主役であった母親の授乳と排泄から学童期にいたる間に、とくに「軒遊び」の時期を設定してみせた柳田国男の考え方は、たんに民俗学や人類学の概念の基礎を与えただけではない。存在論の倫理としていえば、母親による保育とやがて学童期の優勝劣敗の世界への入口の中間に弱肉強食に馴染まない世界が可能かもしれないことを暗示しようとしているともいえる。そして誰もが意識するか無意識であるかは別にして、また文明史がそれを認めるか認めない方向に向かうかは別として、この中間をもつことは人間力の特性につながっていると思え
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軒遊び
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わたしにとって「軒遊び」の年齢にふさわしい一番あざやかな情景は、素通しの硝子障子で戸外と区切られた玄関の土間に、どっかり据わり込んで、ぼんやり外の方を眺めたり、兄と姉が小学校へ出かけてしまった留守に、母親と二人だけで静かなあまり、こっくりこっくりそのまま居眠りしていた記憶だった。母親は針仕事で足袋や靴下の破れをかがっている。ときどき台所のほうで家事をする。わたしは軒よりも少々内側で硝子障子の内側から、外にみえる鳩の群れや、堀割を隔てた向こう岸の小学校の建て物や、道路を隔てた鉄材置き場をぼんやり眺めている
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幼年期
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「乳児期」と「幼年期」は、家の中で自分の好きなところへ動いていけるかどうかで分かれます。この分岐点がだいたい一歳未満だと思います。女の子のほうが少し早いでしょうか。いずれであれ、一歳くらいまでのことを「乳児期」とすると、それまでは母親が側にいることが「必須である」。それから小学校へ入るあたりまでが「必要である」時期です。ここが「幼年期」ということになるでしょうか。
その先が「学童期」です。人間の成長に不可避的に教育制度が絡まってきて、学童期に入る。その学童期になる手前から乳児の時代を除いた初期を少年期だ
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