中国では、いのししと言えば”豚”のこと。亥年の初めにミニブタの著者・菊池恵美さんを訪ねた。
そして健康嗜好で見直されている「行者ニンニク（アイヌネギ）」が入ったポークソーセージを発見。やわらかくプリンとしてジューシーでとても食べやすい。製造者が知的障害者更正施設とあって、商業ベースまで発展させた経緯に興味がわいた。「きとびる」「ひとぴろ」「エゾネギ」とも呼ばれる（アイヌ語プクサ）。
　　　
天気雪？　　　　　　　　　　　　　　　結晶の固まりが雪

所は北海道十勝管内音更町。畜産の町でもある十勝は豚丼でも有名。十勝開拓の祖・依田勉三の映画「若き日の依田勉三」は「開拓のはじめは豚とひとつ鍋」と詠った。
とかち帯広空港を降りると、陽が出ているのに雪が降っているという冬ならではの景色がお出迎え。透き通る空気が一層冷たい。帯広市内を通過すると地元の「氷まつり」が開催されていた。北海道独特のばんば競争廃止騒動もあってか、馬の作品が多い。
　 　
馬ソリと馬 　　　　　　 雪が似合うグレート・ピレニーズ　　収録中のコンサート

音更町東士狩、社会福祉法人音更晩成園の看板。職員宅、工場、体育館などが並ぶ。早速、職員に工場を見学させてもらう。人なつこい園生たちの歓迎を受け、工場責任者の五十川泰弘さんに施設ならではの福祉と商売という側面の苦労や喜びを聞いた。同じ作業なら持続力は本当に素晴らしいとのこと。初めの頃は学園の知り合いを通じて販売するという、施設製品ではよくある販売方法しかなかったが、精肉店やレストラン十勝屋などでも使用されるようになり、「ばんせい学園ソーセージ」として広まったという。施設での製造といっても、そこは商売、納品期日を守るために遅くまで残業することもあるとか。加工工場を支えるのは16名の園生たち。
施設長・茂古沼悦郎さんに来客の合間にようやくお会いすることができた。前施設長・茂古沼勲さんが創設者で2年前に亡くなり、兄から代替わりしたという。勲さんは子息が知的障害者であるため、私財である農地を全て提供して、学園の基礎を作られた。昭和40年頃のこと。
子供を施設に預けに札幌まで行ったときのこと。人並みの子を納得して置いて帰るときでさえつらいのに、「父ちゃん、タバコを買ってくるから」と子供にうそを言って逃げるように去ってきた。そんな嫌な思いはもうしたくない、そう心に決めたという。それも18歳を過ぎた成人を入れてくれる施設が北海道にはない。そこから「親の会」の設立、「晩成園」の誕生となった。

施設長の自宅に居るという外猫を見せてもらうことに。先代の実家の横に、同じように施設内に住居を構えている。「餌やっとるのに触らしてくれんもんだな」と言いながら、家の外に設けた「猫小屋」を拝見。屋根には「ひよこ保温電球」が一日中点いて、居心地のいい猫の住まいになっている。この小屋も学園の木工工場の園生が作ったものだという。
　 　
　手作りの猫小屋　　　　　　　　　　　　ひよこ保温電球付き

そこに鈴木宗男さん（「新党大地」代表）の恩師にあたる藤原正義さんがいた。茂古沼さんとは遠縁にあたり、音更出身とか。週刊誌で「アホの坂田似」と紹介されたこともある鈴木宗男さんの中学時代を聞かせてくれた。

「足寄町大誉地中学で教師になって、初赴任校だったのではりきってましたから、よく覚えています。宗男君のお父さんも学校教育に熱心に応援してくれる人でした。宗男君は国語の作文『将来何になるか』というテーマで”政治家になりたい”と書いていました。生徒の夢は砕いてはいけないと思い、真剣に話したと思います。”成りたいのと成れるのは違うから、大学には行きなさい。そして人に頭を下げ、人の信用を得ること”と話したと思います。今年もクラス会で会ったばかりなんですよ。

　
雪かき中の藤原正義さん

帰りは穴場中の穴場・秘湯を紹介してくれた。小高い山を登るとすぐ、看板も見落としそうな丸美ヶ丘温泉。お客さんが置いていったという牛乳缶を素材にしたアヒルが入口で迎えてくれる。


温泉は植物が溶け込んだハーブ湯のような茶褐色をしている。肌に触れるとツルツルする湯がぜいたくにあふれている。建物も古く、脱衣所にはかぎのかからないロッカーがあって、シャンプーなどのサービスもない。大衆浴場なみの低料金。コーヒーをすすりながらオーナーの話にしばし時の過ぎるのを忘れさせてくれる。人生相談あり、さながら”音更の母”といった優しさが湯上りを一層温かくしてくれる。そこにあるのは豊富な温泉だけというシンプルな商売の原点があった。

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