最終更新: td_minorin 2010年05月27日(木) 16:27:07履歴
『時には線香花火のように』
◆AC.wkvKQE.
シュボッ……ジュワ――バチバチバチッ
「ひゃっほ――いっ!おーい!大河ーっ!」
「きゃ――っ!!みのりん綺麗〜!!オラばかちー、喰らえい!」
ピュ―――ッ……バァンッ
「うあぶねぇっ!!こんのチビトラ、てぇいっ!」
……シュルシュルシュルルルル――ッ
「何だこれ?うわっ!来るな来るなぁ〜!うどりゃーっ、もいっぱぁつ!」
何本も花火を抱えて走り回るやつもいれば、片やロケット花火やネズミ花火を武器に戦うやつら……ここは戦場か。
「おいおい、ご近所様に迷惑じゃねぇか……おわっ!?大河!こっちに撃つな!……ったく」
「楽しそうで何よりじゃないか。ほら、高須も楽しめよ。いっぱいあるぞ」
「すまねぇ。あいつら、危なっかしくて目が離せん……おっ、北村、これ色の変わり具合いが絶妙なんだぜ」
「お、じゃあ俺もそれやるわ」
夏の夜に、誰にとっても懐かしい響き、煌めき、香りが満ち溢れる。竜児にとっても花火は久しぶりの遊びだ。
「花火って、単純な作りなのに感動するよな」
「それは分かるぞ。高校生の視点で改めて見ると、感慨深さが増した気がするよ」
火薬が燃えて鮮やかな色彩を放つ様は、本当に美しい。
「そろそろ、あれをやるかな……」
取り出したるは――線香花火。
美しさと哀愁を兼ね備えるそれの刹那的な煌めきに、幼い頃の竜児は魅せられた。
ライターで静かに、小さな炎を灯す。
……ジ――――ッ――パチッ――
来る。
……パチッ―パチパチッ――
これだ。
まるで生命が宿ったような瞬間。微かな炎が迸る。何もない空間へ必死に腕を伸ばそうとするかのように。
そして――
――パチパチッ……パチッ……パッ……パパッ……パ……――ヒュッ……ポタッ……
「……儚い。儚さ過ぎる」
「……儚くて、綺麗だよね」
「え?」
隣にしゃがんでいたのは北村ではなく、櫛枝実乃梨であった。
「わたしもやろっと。ライター貸して」
「お、おぅっ……ほい」
「せんきゅっ」
「……俺も、もう一本」
不思議と、緊張はしなかった。
……パチパチパチパチッ――
実乃梨が、いる。こんなにも近くに。肩と肩が触れてしまいそうだ……
……パチパチ……パチパチッ――
表情をチラリと盗み見る。橙色の閃光に照らされた実乃梨の表情は、憂いを帯びているようにも見えた。
……パチパチッ……パチ……パパパッ……パ――ポトン……
「はぁぁ……。高須くん」
「ん、なんだ?」
「ちょっとセンチメンタルになってるせいかもしれない……もう一回だけ、やらない?」
「おぅ、いいけど……」
「ありがとう。少しだけわがままに付き合って」
二本取り出し、お互いに一つずつ引く。
「わがまま?」
「うん……動かないで。火、点けるから」
実乃梨がにじり寄ってきて、花火を吊る竜児の拳に自分の拳をくっ付ける。
何が何だか分からないままに、点火されるのを眺めていると……
――ジジ……ジ―ジジジジジジジッ――
……火の玉と火の玉が、一つに重なった。
――バチッ……バチバチッバチバチバチッ……
「おぅっ……」
「……」
思わず息を呑む。
火力を上げた火の玉は、竜児と実乃梨の狭間で凄まじい火花を散らしていた。
しかし、逆に脆さは増した。重くなった先端がゆらゆらと、今にも命を落とさんとしている。
「……いつまでも繋がっていられればいいのに……」
――何だって?
「櫛枝……?今――」
バァァンッ!!
「うぉっ!?」
「(ビクッ)……あ……」
――ジュッ……
「うわっ、ごめーん!竜児とみのりん怪我しなかったー?」
「あんのヤロ……櫛枝、大丈夫か?」
「……えっ?あっ、うん平気……」
辺りには怪しい煙幕が充満していた。よく見ると、北村の自転車に刺さった花火の行列からナイアガラの如く閃光が吹き出ている。
「おまえら、やり過ぎだぞ!」
大河たちを止めに飛び出した竜児は知る由もなかった。背後で実乃梨が、未だ燻る火の玉を見つめながら、竜児と触れ合っていた拳に口付けるのを――。
「――これが君とわたしの運命、かな……」
◆AC.wkvKQE.
シュボッ……ジュワ――バチバチバチッ
「ひゃっほ――いっ!おーい!大河ーっ!」
「きゃ――っ!!みのりん綺麗〜!!オラばかちー、喰らえい!」
ピュ―――ッ……バァンッ
「うあぶねぇっ!!こんのチビトラ、てぇいっ!」
……シュルシュルシュルルルル――ッ
「何だこれ?うわっ!来るな来るなぁ〜!うどりゃーっ、もいっぱぁつ!」
何本も花火を抱えて走り回るやつもいれば、片やロケット花火やネズミ花火を武器に戦うやつら……ここは戦場か。
「おいおい、ご近所様に迷惑じゃねぇか……おわっ!?大河!こっちに撃つな!……ったく」
「楽しそうで何よりじゃないか。ほら、高須も楽しめよ。いっぱいあるぞ」
「すまねぇ。あいつら、危なっかしくて目が離せん……おっ、北村、これ色の変わり具合いが絶妙なんだぜ」
「お、じゃあ俺もそれやるわ」
夏の夜に、誰にとっても懐かしい響き、煌めき、香りが満ち溢れる。竜児にとっても花火は久しぶりの遊びだ。
「花火って、単純な作りなのに感動するよな」
「それは分かるぞ。高校生の視点で改めて見ると、感慨深さが増した気がするよ」
火薬が燃えて鮮やかな色彩を放つ様は、本当に美しい。
「そろそろ、あれをやるかな……」
取り出したるは――線香花火。
美しさと哀愁を兼ね備えるそれの刹那的な煌めきに、幼い頃の竜児は魅せられた。
ライターで静かに、小さな炎を灯す。
……ジ――――ッ――パチッ――
来る。
……パチッ―パチパチッ――
これだ。
まるで生命が宿ったような瞬間。微かな炎が迸る。何もない空間へ必死に腕を伸ばそうとするかのように。
そして――
――パチパチッ……パチッ……パッ……パパッ……パ……――ヒュッ……ポタッ……
「……儚い。儚さ過ぎる」
「……儚くて、綺麗だよね」
「え?」
隣にしゃがんでいたのは北村ではなく、櫛枝実乃梨であった。
「わたしもやろっと。ライター貸して」
「お、おぅっ……ほい」
「せんきゅっ」
「……俺も、もう一本」
不思議と、緊張はしなかった。
……パチパチパチパチッ――
実乃梨が、いる。こんなにも近くに。肩と肩が触れてしまいそうだ……
……パチパチ……パチパチッ――
表情をチラリと盗み見る。橙色の閃光に照らされた実乃梨の表情は、憂いを帯びているようにも見えた。
……パチパチッ……パチ……パパパッ……パ――ポトン……
「はぁぁ……。高須くん」
「ん、なんだ?」
「ちょっとセンチメンタルになってるせいかもしれない……もう一回だけ、やらない?」
「おぅ、いいけど……」
「ありがとう。少しだけわがままに付き合って」
二本取り出し、お互いに一つずつ引く。
「わがまま?」
「うん……動かないで。火、点けるから」
実乃梨がにじり寄ってきて、花火を吊る竜児の拳に自分の拳をくっ付ける。
何が何だか分からないままに、点火されるのを眺めていると……
――ジジ……ジ―ジジジジジジジッ――
……火の玉と火の玉が、一つに重なった。
――バチッ……バチバチッバチバチバチッ……
「おぅっ……」
「……」
思わず息を呑む。
火力を上げた火の玉は、竜児と実乃梨の狭間で凄まじい火花を散らしていた。
しかし、逆に脆さは増した。重くなった先端がゆらゆらと、今にも命を落とさんとしている。
「……いつまでも繋がっていられればいいのに……」
――何だって?
「櫛枝……?今――」
バァァンッ!!
「うぉっ!?」
「(ビクッ)……あ……」
――ジュッ……
「うわっ、ごめーん!竜児とみのりん怪我しなかったー?」
「あんのヤロ……櫛枝、大丈夫か?」
「……えっ?あっ、うん平気……」
辺りには怪しい煙幕が充満していた。よく見ると、北村の自転車に刺さった花火の行列からナイアガラの如く閃光が吹き出ている。
「おまえら、やり過ぎだぞ!」
大河たちを止めに飛び出した竜児は知る由もなかった。背後で実乃梨が、未だ燻る火の玉を見つめながら、竜児と触れ合っていた拳に口付けるのを――。
「――これが君とわたしの運命、かな……」
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