対話

1.丘の上に立っていると
 太陽は10年前と同じだった
 空には収穫祭の花火が打ち上がり
 広場では銃殺刑が執り行なわれていた
 (少年はアトリエの窓から裸婦を覗き見ています)
 丘の上に立っていると
 見知らぬ風が吹きつけて
 「覚えていますか?」と尋ねてくるから
 「忘れたみたいです」と答えた

2.なだらかな丘の中腹には
 子供たちのにぎやかな輪があって
 (トリスタン・イズー物語は読みましたか?)
 とりとめもなく午後は流れていた
 食卓は子供たちを呼んでいた、それは懐かしい名前だった
 一度だけ振り返る
 (午後はとりとめもなく流れています)
 もう一度だけ振り返る
 すると、ひととき弾幕のように追憶が背景に溶け入るかと思われた

3.丘の上に立っている
 片足は影を踏んでいる
 (失われたものだけがあなたには美しい・・・)
 うなだれては引きずられていく、 あれは誰の影だろう
 「『死んだ人なんかいないんだ』」
 「立原道造ですね、『どこかへ行けば、きつといいことはある』」
 「こんなの全部嘘だよ」
 「でも『人は誰でもがいつもよい大人になるとは限らないのだ』、これは本当のことでしょう?」
 
 いいえ、大人になれない人もいる。

Part.34
NO.497
作者 んなこたーない

感想

542 名前: アツ.Y ◆AtsuY0LQ/Q [sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 14:06:28 ID:a+X0Hf6d
自分でつくった未評価まとめから、自分で評価するという衝撃。
どうも。暇人がふたたび評価させていただきます。

【中略】

>497「対話」 B
1連「少年」「風」2連「トリスタン・イズー物語」3連「立原道造」など、
小道具の使い方がうまいなー。
この言葉が適切かわかりませんが「青春時代」をうまく象徴しています。
つくり出す世界観、個々の言葉のイメージも的確。
なにかツッコミを入れたかったんですが、まだ僕にはアラが見つからないみたいです。すいません。
2005年11月16日(水) 18:20:52 Modified by teruakiniiduki




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