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352 名無しさん@ピンキー sage New! 2010/02/07(日) 18:39:43 ID:lHPh6q4u





拍手と爆笑に包まれた体育館。
一見すると全てが作られたように見える生徒会長選挙の影で必死に涙を堪える北村に
気づいた人間は何人いるのだろう。
「北村・・・」
能登はかけてやれる言葉が見つからず、肩を組んでやることしか出来なかった。
なにも言わなくていい。泣いたっていいんだぞ。泣くなよ。
・・・今の北村を元気付けられる言葉は見つからない。
傷ついた友人を、ただ見ていることしかできないなんて。
俺はなんて情けない奴なんだろう。
それに
「やっぱり木原は・・・」
能登は見てしまった。北村が会長に告白した直後の木原の顔を。
本人は平静を装ってるつもりなのだろう。だが、内心の驚愕が顔に滲み出ていた。
あれはつまり・・・
北村の事はもちろん気になる。でも木原の事もすごく気になるのだ。
どうすればいい?俺はなにをすればいい?俺に何が出来る?
考え続けていたが結局答えは見つからなかった。

数日後
逢坂大河が停学処分を受け、狩野先輩は留学。
北村は失恋大明神になり多くの生徒から慕われるようになった。
それ以外は全て元通り。みんな新しい一歩を歩みだしているように見える。
だが、違う。
「ん?どうした?俺の顔なんか見て」
「・・・いや、なんでもない。昼の放送頑張れよ」
「おう。ありがとう」
能登は感じ取っていた。北村がなにか悩んでいる事を。
多分、狩野先輩への未練だろう。
北村は・・・いや、北村だけじゃない。
「麻耶、大丈夫?最近顔色悪いよ?」
「・・・うん、大丈夫。ありがと。奈々子」
「気にしないで。相談したい事があったらいつでも言って。
 私に話すだけでも、気が楽になるかもあるかもしれないし」
木原は<笑顔>をしなくなった。いや、まったく笑わないわけではない。
ただ、能登の気に入っているあの屈託の無い、明るい笑顔を彼女はしなくなった。
この2人はまだ歩み出せていないようだった。
「能登っち、どうしたの?早くいかないとパン売り切れちゃうよ?」
「・・・今日はいいや。なんか、気分じゃない」
「どうかした?顔色良くないけど」
「いや大丈夫だ。気にすんな」
友人との会話を終え、能登は普段ほとんど人がいない屋上へと向かった。
立ち止まっている友人をどうすることも出来ない現実から逃げたくなったのだ。
一人でゆったり、持ち込んでいるIPODでも聞いていれば気分転換になるはず。
そう思った。

しかし、逆に現実に引き戻される事になってしまう。
「き、木原?」
「能登?なんでこんなとこにいんの?タイミング悪」
普段は誰もいないはずのここに、よりにもよって一番会いたくない人がいてしまった。
「俺だって悪気が合ってこのタイミングで来たんじゃねえよ。
 ってかそっちもなんでこんなところにいるんだよ」
「・・・なんでもない。あんたには関係ないじゃん。さっさとどっかいってよ」
いきなりのケンカ腰。
でも、どこか悲しそうにも見える。それにこの表情・・・。
「お前の都合なんて知るかよ。俺はここにいたいんだ。
 ・・・なぁ、やっぱり北村のことなのか?」
「ハァ?なに勝手に妄想しちゃってんの?キモ」
言ってることは敵意剥き出しの怒りに満ちたものだったが口調はどこか弱々しかった。
(やっぱりそうか。こんな姿見せられて、なにも言わずに立ち去れるとでも思ってるのかよ)
「俺に切れるのはいいけど、もっと考えるべきことがあるんじゃないか?」
「・・・うるさい」
木原の心に踏み込んでみる。
もしかしたら、嫌われるかもしれない。でも、
「まあいいけどさ。悩み事って誰かに相談すると結構楽になるもんだぞ?」
「なんであんたなんかに話さなきゃいけないわけ?」
今の木原を放っておくなんて出来なかった。
「別に話す相手が俺じゃなくてもいいんだって。ただ、さっき言ったことは事実。試し
に話してみてもいいんじゃないか?」
「・・・・・・・・・・」
沈黙。
(結局俺なんかじゃ何もしてあげられないのか。
余計な口挟んだんだ。嫌われるよな・・・)
そんな思いから逃げ出しそうになってしまう。
だが逃げ出す前に
「なにがなんだが自分でもわからないよ・・・」
彼女は口を開いた。
「いつから好きになったんだろ・・・気づいたら好きになってた。
 それで、まるおのこともっと知りたいって思ったし、知ろうとしてた。
 でも、今回の事で私は何も知らなかったんだって気づいたの」
「別に何も知らないわけじゃないだろ。
 あいつの鈍感なところとかちょっとずれてるところとか知ってるじゃ・・・」
「ううん。全然分かってないよ。まるおがグレた時、理由が全然わからなかった。
 振られたときだって一番辛いのはまるおなのに、自分のことで精一杯で
 タイガーみたいに会長を問い詰めたり出来なかった。
 まるおを慰めてあげることも。
 タイガーだって実質振られたばっかなのにね。私とは大違い・・・。
 私もそんな風にできるよう頑張ってるつもりなんだけど・・・全然駄目」
自分の言葉を遮る形でそういわれて思った。
木原は優しいんだ。
それに人の優しさにも気づける。
だから自分より優しい人と比較して劣等感を抱いてしまう。
それでも努力できる、前に進もうと出来るのはすごいと思う。


そう思うと自分はなんて情けないんだろう。
能登は北村に少し劣等感を抱いていた。
なぜ北村が眼鏡を外すとかっこいい、コンタクトにしたほうがいいと言われ自分は何も
言われないんだ、とか。
自分でも気づいてはいるのだ。北村は自分よりも見た目、性格だけじゃない、様々な面
で優れている事を。
後夜祭の時、理由はわからないけどどこか悲しげなタイガーを、励ますように踊りに誘っ
たのを見て強くそう思った。
それでも劣等感を抱くことしか出来ない。
北村のようになろうと努力できたことは・・・ほとんどない。
「こんなやつ、相手にされるわけ無いよね・・・」
だからこれからは北村に近づけるように・・・傷つき、立ち止まった友人を
助けられるように努力してみようと思う。
北村が振られた時、自分は何もしてやれなかった。そのことを思い出して強く思う。
(もう、目の前で傷ついている友人を救えないなんて御免だ。)
「そんなこと無いって。木原がそうやって人のよさに気づけるところ、
 北村はちゃんと分かってるだろうし魅力あると思ってるって」
最大の勇気で言葉を紡ぎ出す。心は痛くなる一方だけど。
「あの鈍感なまるおがそんなこと気づけるとは思えないよ。
 てかさっさと気づけっつーの!まるおのバカ!!」
木原から、少し暗い感情が抜けたような気がした。
そして、元気を取り戻そうとしているように見えた。だから
「そうだな。鈍感すぎるぞ!大先生!」
俺も加勢してやる。
相手が分かるのを待つのもいいが自分から告白したほうがいいのでは?
など、言いたいこともあったが今はいい。
少しでも木原が元気になるなら、それで。

「ありがとう。な〜んか気が楽になったみたい」
「おう。よかった。じゃ、そろそろ教室戻るか。腹も減ったし」
どうやら、少しは役に立てたようだ。
もしかしたら好感度も上がったかもしれない。
などと、喜んでいた矢先
「やっぱりちゃんと想いを伝えてみるよ」
「・・・・・・・・・えっ!?」
驚くべき発言を聞いてしまう。
(今、小声で告白するって・・・)
聞き間違えなんじゃないかというわずかな希望を胸に、木原の顔を見る。
木原は何事もなかったかのように歩いている。
安堵すると共に、ついつい頬が緩んでしまう。だから
「なにニヤニヤしてんの?キモいんだけど」
にやけた顔を見られてしまった。
「な、なんでもねーよ」
(うわぁ・・・最後の最後でやっちまった)
半ばやけくそ気味に走り出す。
だから能登は見ることが出来なかった。木原の顔に<笑顔>が戻っていたことを。
「能登・・・。ありがとう。」

翌日の放課後、昇降口
帰りにCDショップでも寄っていこうかと思った時、珍しい顔を見た。
「・・・大先生?めずらしいじゃん。今から帰り?」
「ん?お、能登か。今日はちょっと調子悪いんで今から帰宅だ。途中まで一緒に帰るか?」
「お、おう。そうしよう」
なんだろう。今日の昼ごろから北村の様子がおかしい。
端から見ればいつも通りなつもりかもしれないが、1年の頃からのクラスメートだからわかる。
あのこととは別に、また何か悩みがあるような、そんな気がした。だから
「帰りにスドバ寄らね?調子悪いみたいだから無理にとは言わないけど」
「うーん。・・・わかった、行こう」


「そういえばどうだ?昼の放送。なかなか盛り上がってるか?」
「好調な滑り出しだと思うぞ。ただゆりちゃん先生泣かせちゃったのはどうかと思う」
「まあ先生ご自身がいいとおっしゃったんだからいいじゃないか」
(やっぱり何かあるな)
たわいのない会話の中でも能登は違和感を感じ取っていた。
「・・・北村。何かあったのか?・・・・・・今日の昼」
「(!?)ん?どうしてそんな事聞くんだ?特に何もないが。」
一瞬の動揺を能登は見逃さなかった。
間違いない。北村はまた何か悩んでいる。
今度は木原の時みたいに上手くいかないかもしれない。だが、やっぱりなにかしてやりたい。
「嘘つくなって。わかるよ、それぐらい。話してみてくれないか?
 少しは力になれるかも知れない」
「・・・・・・・・・」
沈黙。
昼と同様の状況だがもう能登は逃げようとしない。
決めたのだ。
なにが出来るはわからない。もしかしたら何もしてあげられなくて、辛くなるかもしれない。
でも、一番辛いのは相手なのだ。
そんな相手を放っておくことは、もうしない。
ただ真っ直ぐ北村を見る。
そんな思いが通じたのか北村も口を開いた。
「実は今日の昼、告白されたんだ」
「・・・ゲホッゲホッ」
思わず噴出す。
(まさか、木原が?やっぱり聞き間違いじゃなかったのか?)
「1年生なんだけどな。正直かわいい後輩だとは思っていたが付き合うつもりはなかった」
安堵してしまう自分がいる。
昼は告白するのを勧める様なことを言っていたのに。
「それって大先生・・・北村がそこまで悩むことじゃないと思うんだが」
「振った事に対してどうこう思っている。それもなくはないんだが、そうじゃないんだ・・・」
北村のトーンが下がる。きっとなにかあるんだろう。
北村が話せるようになるまでの能登は言葉を待った。
「そのとき、俺は会長・・・は俺か。すみれ先輩とその子を比べてしまったんだ。
 あの人への想いは、もう断ち切ったつもりだったんだがな」
やっぱり狩野先輩への想いに囚われていたのか。
「こんな姿見られたら、軽蔑されるだろうな・・・」
無理もないと思う
最後の最後でお互いの想いを知ることが出来たとはいえ、あんな形で別れたのだから。
「比べるってことはさ、北村は狩野先輩とその子を同じ[好きになれる人]かどうかを比べたんだよな?」
「?ああ。そうだな」
無理に狩野先輩のことを忘れさせようとすれば傷ついてしまう。
だからといってこのままではずっと囚われたまま、前に進めない。
北村を傷つけず、その上で前に進ませる方法・・・。
能登にはひとつしか考え付かなかった。
「じゃあさ、今度からは好きになれる人かどうかじゃなくて一緒に頑張りたいと思える人
 かどうかを考えれば良いんじゃないか?」
「え?・・・」
「北村にとっての好きな人・・・狩野先輩は一緒に頑張って行きたい人だったんだろ?
 でも北村は狩野先輩には追いつけない、共に進めないって思ったんだよな?
 俺はそう思わないけど。ってことは今は憧れの対象で、目指すべき目標ってことだろ?
 なら、本来の好きな人・・・一緒に頑張りたい人かどうかを考えればもう比べなくても済むんじゃないか?」
「・・・・・・・・・」
自分でも無理なことを言ってるのは分かってる。
北村は今でも狩野先輩を一緒に頑張って生きたい人だと思っているだろう。
だが今の北村を救うためにはこう考えるしかないと思った。


「・・・・・・・・・そうだな。能登の言うとおりだ。
 よし、お礼に明日の放送にゲストとして出演できるようにしておこう」
北村は笑った。
力になってあげられたかどうかはわからない。
それに、まだ迷いがあるようにも見えた。
だが、前に進もうともしているのは確かだ。
ならそれでいいと思う。
「ゲスト出演っていっても俺、失恋話とかないぞ」
傷ついたまま立ち止まっているよりは全然いい。
それから数日、木原は北村に積極的になっていった。
その後、クリスマスパーティにて。
「いやあ〜、アツアツですなお二人さん」
「よかったな北村。おめでとう」
「からかうなよ春田。高須、ありがとう」
「あらあら。随分嬉しそうね。麻耶、おめでとう」
「ありがとう、奈々子」
2人は付き合い始めた。
歩み始めたのだ。2人一緒に。
能登には2人が輝いて見える。
彼らの背中を押してあげられたことに対する、達成感もある。
本当によかった。本当に。本当に・・・。
「・・・え?」
気づくと能登は涙を流していた。
友人に見られたくなかったので、外に出る。
(なんでだ?あいつらはあんなに幸せそうじゃないか)
(自分の想いなんて、どう、でも・・・いい・・・だろ・・・)
「ちくしょう・・・」
いくら言い聞かせても、溢れ出る涙が止まることは無かった。
せっかく頑張れたのに。
北村への劣等感を頑張る気持ちに変えられたのに。
結局俺は、情けないまま。
あの時から一歩も前へ進めてないって事なのか。
そう思っていた時
「能登」
今、一番会いたくない人がやって来てしまった。
「木原か」
せめて木原の前ではこんな情けない姿を見せたくなかったのに。
「外、寒いでしょ。中入ろうよ」
「いや、今はそんな気分じゃない、んだ」
あぁ、泣き顔を見せないために後ろを向いてるのに、上手く喋れてないから意味無いじゃないか。
俺、かっこ悪いな。
「そう・・・。駄目だね、こうやって逃げてちゃ」
「私がまるおと結ばれたのは・・・それだけじゃないね。私が立ち直れたのは、能登のおかげ。
 ありがとう」
突然どうしたのだろう。
木原が北村と結ばれたのは、木原自身が頑張ったからなのに。


「いやいや。俺なんてほとんど役に立ってないよ。単に木原が頑張れたからだって」
(俺なんて告白すら出来ない男だしな)
「ううん、そんなことない。能登のおかげ。だから、私は・・・ちゃんと能登の気持ちと向き合おうと思う」
「・・・・・・」
「私、本当は能登の気持ちに気づいてたんだと思う。でも、まるおの事だけ考えようと思って・・・
 そうじゃないか。怖かったんだ。能登の気持ちに答えて、距離を置かれることが。
 私を立ち直らせてくれた能登とずっと良い友達で居たかったんだ」
(良い友達・・・か)
「でも、まるおに言われて気づいたんだ。
 このままじゃ駄目だって。
 能登は私の事・・・ううん、私だけじゃない。まるおの事にだって真剣に向き合ってくれて助けてくれた。
 なのに、そこまでしてもらった私が能登に正面から向き合わないなんてずるいよね」
自分から想いを伝えられなかった俺のために
こうやって影で泣くことしか出来ない俺のために
わざわざ答えを言いに来てくれたってことか。
(北村、木原・・・やっぱりお前らは凄いよ・・・)
「だから、言うね。私は、能登の事が・・・」
「ちょっと、待ってくれ」
「えっ?」
「このままじゃカッコ悪すぎるだろ。だから・・・こっちから言わせてくれ」
気持ちを伝える準備が出来た俺に彼女はあの<笑顔>で言ってくれた
「うん、わかった」
「俺は、木原のことが・・・好きです。2年の最初からずっと、好きでした」
伝えられた。
ずっと伝えられなかった想いが今、ようやく
「うん。・・・ごめんね。
 でも、嬉しい。
 能登みたいな人に好きになってもらえて、私は嬉しい。
 ありがとう」
あぁ、どうしてだろう。
少し前まで、あんなに自分を情けなく思っていたのに。
自分は何も変われてないと思ってたのに。
ただ、自分の想いが実らない事を突きつけられただけなのに。
(無駄じゃなかった)
木原を、そして北村を、元気付けようとしたこと。
北村みたいな良いやつになろうって頑張れたこと。
それら全てが無駄じゃなかった。
そう思える。
「ううう、寒くなってきた。そろそろ戻ろう?」
「あぁ、そうだな」
溢れ出る涙が止まるまで。
木原への未練が無くなるまで。
まだ時間はかかるだろう
でも、その日は決して遠くない。

立ち止まりかけていた彼は、再び歩き出す。
この冬を、大切な思い出にして。

END




358 名無しさん@ピンキー sage New! 2010/02/07(日) 18:52:24 ID:lHPh6q4u
最初に投下する量を伝えておくべきでしたね。申し訳ない
あのラストは投下した自分でもあんまりだと思ったのでラストを変更してみました。
ラストだけ変えて投下するのも申し訳ないので少しでも読みやすいように台詞回しを変えたり、
能登の内心の台詞をカッコで括ってみたりしてみましたが、あんまり読みやすくなってないという・・・

お目汚しすまない

351 名無しさん@ピンキー sage New! 2010/02/07(日) 18:38:42 ID:lHPh6q4u
このタイミングなら他の書き手の迷惑にならないよね

今更ながら10皿目の能登主役ものをリメイクしたので投下します
稚拙な文章&微妙なシナリオなので、アドバイスがあれば是非お願いします

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