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188 ◆KARsW3gC4M sage 2010/06/30(水) 22:57:50 ID:6qaYYG3a


[ある二人の日常(3)]


うちのママは一筋縄でいかない人だと常々思っている、妙に感が鋭く飄々としている…自称放任主義だが過保護でちょっとドジ。
昨日、竜児の家から帰って何気無しにメールしてみたんだ…大橋高校で卒業したいと伝えたかったしね、あと竜児とお付き合い始めたって教えてなかったし……。
『カレシデキタ パパニハイウナ』
ちょっと洒落っ気を出して電報チックに送信して明日のデートに何を着て行こうかなーとクローゼットを物色していたら、ものの五分もしない内に携帯に着信。
内容は省くけど用事を言って早々に電話を切ろうとしてもママはめちゃ食い付く、そして私は上手くおだて賺されいい気になってあっさり誘導尋問に引っかかってしまった。
竜児の容姿から性格に趣味やら馴れ初めからファーストキスまで詳細に聞き出され学校生活や仕事についてはあまり聞かれなかった、ちなみに通話時間の半分以上は惚気話だったけどさ……………ママとパパの。
で、ママが私から色々と聞き出して言った言葉は
『アンタって我が娘ながら素直じゃないわ、回りくどいうえにめんどくさいことばかりしてたのね』
だって当たり前じゃんママに似たんだから一筋縄でいかないんだよ。
面白そうに笑ってママは
『いい? 竜児くんだっけ、絶対その子は褒めて伸びるタイプよ? あまりツンツンして天邪鬼なことばかりしてたら拗ねるんだから、そうねツン3に対してデレ7で攻めなさい、
ママが言うんだから間違いない! てか近い内に竜児くんと亜美に会いに行っちゃおうかなぁ〜んーふふぅ♪』
と付け加えてきたのでひとまず誤魔化して退散した、理由は簡単…ママが来るとヒヤヒヤするからだ、変な小芝居の一つや二つしてくるだろうし。
メールしたことを後悔している、ママは絶対に来る明日か明後日か…近い内には必ず来る、思い立ったら即行動で有言実行な人だからね。
まあいいや……前々から遊びに行くって言ってたし、でも何故かソワソワ…嫌な予感がする、あの人は空気を『読まない』時があるから。
…………寝よ。
....
...
..
.
「…これって完璧じゃね?」
翌朝、私は化粧台の前で自分の顔を見ていた、ってより魅とれていた。
薄すぎず濃すぎず100点満点美少女な亜美ちゃんがちょちょいと頑張ればあっさり限界突破の200点超え、竜児が見たら鼻血を噴き出して失神しそうなハンパない可愛さっ…!


『亜美…やべぇよやべぇよキラキラ輝いてるから眩しくて直視できねぇ』
「ふふん♪」
そうでしょそうでしょ?? ま、亜美ちゃんが輝いて可愛いのは当然っていうか?
そんな妄想をしてしまう午前6時、待ち合わせまであと3時間もある。
何で早起きかと言われたら……………楽しみだったからあまり寝れなかったというか、うぅ……とにかく目が覚めたんだから仕方ないじゃん。
ちなみに天気予報曰わく本日の最高気温は20℃、暑くなりそうな1日…そして私達も……熱くなっちゃったりして? いやんお日様が見てるよぅ…な事になっちゃったり?
とか考えて勝負下着で武装しちゃうのは念のため、七部袖のシャツとパンツとミュールでラフっぽく甘爽やかな香水をちょっとアクセントに、はい完了。
バッグに財布と携帯なんかを詰め込んで時計を見ても全然時間が経っていない、ああ……待ち遠しい。
遠足に行く小学生かっての、デートの日は毎回ワクワクドキドキ…そんな気持ちを竜児には言わないけど。
ちなみに昨日、彼に『亜美ちゃんが胸キュンするデートでパーフェクトにエスコート』なんて無茶ぶりな要求をしたけど実は冗談なの、だって……竜児となら何をしたって楽しいもん、嬉しいもん。
でもハードルは高い方が竜児も燃えるよね頑張って私を楽しませてくれようとするだろうし、それを私は素直に受け止めて彼に伝える。
そうしたら竜児だって喜んでくれるし…うん私もちゃんと考えてるんだ、ワガママじゃないもん…そりゃあちょっぴり意地悪してみたい気持ちも混ざっているけど。
それでも期待してないって言ったら嘘も大嘘、何だかんだで楽しみにしていて……考えたら頬が緩んじゃう。
ちなみに私的には最低ラインはらぐ〜じゃだね、ここら辺でデートスポットの人気度はらぐ〜じゃがトップ…てかそれしか無い。
中途半端な大きさの街だからね大橋は、開けているけど規模が小さい、でも田舎ではない。
試しにパソコンの電源を入れインターネットを立ち上げて周辺地図を見てみると…………まあやっぱり中途半端なのだ。
竜児がどこへ連れて行ってくれるのかはお楽しみ、と締めくくって私はネットショップを見て時間を潰すことにした。
服? 化粧品? アクセ? やだなぁそういうのはちゃんとお店で選ぶ主義なの、買ってイメージと違ったらイヤだし偽物やB級品を掴まされたら絞め殺したくなるし。


何がしかの新作の情報集めや新規のお店開拓の為に見ている『だけ』だよ。
カチカチとクリックしたりカタカタとキーボードと格闘してめぼしいキーワードを検索し終わってふと画面の左端に『ジャンル別』というものを見つけた。
何気なしにクリックしてみると車とバイクのパーツやら家電やら………そしてある部分でマウスを動かす手が止まる。
『アダルト』大人って意味じゃない方の、ある意味では正解かもしんないけど、普段の私ならガン無視していただろう。
でもこの時ばかりはやけに気になって気になって仕方なかった、それは多分……私が『エロい』からだ。
昨日久しぶりに竜児とエッチしたしデート当日だしで舞い上がっていたの、瞬時に興奮した竜児に覆い被さられた記憶が蘇る、彼の匂いや大きな背中や……引き締まった胸板とか…。
近頃の竜児は変態みたいな事をするし、させたがる…そして私はそういうのが嫌じゃない……口では蔑んでみても実はちょっぴり興味があって………。
『ああいうこと』や『こういうこと』に使う道具って何があるんだろう、竜児も使ってみたいのかな?
私は辺りをキョロキョロと伺った後に画面を凝視して生唾を飲み込む…誰も見ているわけがないのに…。
そう『好奇心』ちょっとした出来心でダブルクリック。
更に詳細な『ジャンル別』が眼前に表示されていく、DVD、エステ、コスプレ、メンズにレディースetc. 私は逸る気持ちを抑えて深呼吸。
「へ、へぇーふーん」
私は興味なさげに見えない誰かに向かって相槌を打つ、心臓がバクバクドキドキ……ここでもう一回深呼吸してみる。
み、見るだけなら…別に買うわけじゃ……参考までに……。
なんて自分に言い訳してマウスの上に添えた人差し指は………………。

..
.

「ごめん! 準備に時間が掛かっちゃって……ぁ、う……ごめん!」
「あ、いや別に気にしてないから」
二人の会話から状況を読み取って欲しいんだけど、結論から言うと私は………待ち合わせの時間に遅れた。
『アダルト』は予想通り『大人の世界』でまだまだ子供な私は興味津々、あと一分もう一分…とピンク色のページをドキドキと覗いていたら
『今どこ?』
と竜児からメールが届いて時計を見たら待ち合わせを30分も過ぎていたわけ。
サーッと血の気が引いていく感覚と同時に私は慌てて部屋を飛び出した、ストーカー野郎を追い掛けた時ばりの猛ダッシュで大橋駅まで私はひた走った。


化粧が崩れるかもしれない、汗をかいて臭くなるかもしれない、でもそれは些細な問題だどうにでもなる。
そして彼に謝罪して今に至る、安堵した表情をされて申し訳ない反面ホッとしてしまう。
一時間近くも待たせちゃった…けど待っていてくれたうえに愚痴すら言わない彼は優しい、叱ってくれてもいいのに…。
言い出しっぺの私が遅刻、それも朝っぱらからエロいことを考えて時間を忘れていたとはとてもじゃないけど言えない、でも竜児は気にせず…優しくしてくれる。
あまつさえ気を使って
「準備に熱が入るくらい楽しみにしてくれたんだろ、亜美と無事に合流できたわけだし結果オーライだ、よし出発出発」
と言われたら私は頷くことしかできない、ちょっと胸がチクッと痛む……けど世の中は黙っていた方がいい事もある、追求されない限り自分から藪蛇はつつくまい。
調子のいい事を、と言われたらそこまでだけどさ…。
「今日はオマエとまだ行った事のない場所にしようと思ってな、久々のデートで流石にらぐ〜じゃのゲーセンとかは飽きたろ……ちなみに何処だと思う?」
しょぼくれている私を見て彼が話題を作ってくれる、だから私は思考を切り替えて返事をする。
「う〜ん……買い物とか? 新しいショッピングモールが出来たらしいし」
「それもいいけどよぅ、今日は……いやまだ内緒だ」
そう言って彼は私を促して駅の構内へ向かって歩き始めた。
「ねぇ電車に乗るの?」
それは聞かなくてもわかる事けど一応、せめて遠いか近いのかくらいは知りたいし。
「おぅ、行き先は電車に乗ってから教えてやる」
切符売り場までの最短距離を歩みつつ竜児が私の顔を見る、そしてちょっと笑ってこう言った。
「デートだし……手を繋ごう、ほら」
私の右手を取って指を絡ませた恋人繋ぎ、竜児はこういうの馴れたのかな? 亜美ちゃんは……馴れないや、やっぱりドキドキしちゃう。
落ち込んでいた気持ちをふわふわ浮上させてくれる彼のさりげない優しさ、それをちょっと憎々しく思った時もあった…私は面倒なヤツだからさ。
今は…素直に嬉しいと返せる、少しずつ竜児の『一番』になっていっていると実感出来て……小さな事が……幸せ。
「へへ……しょうがないなぁ、アンタってこういうのが好きだしぃ? 亜美ちゃんも…まあ……ふふふ」
憎まれ口を叩くのは照れ隠し、しっかり繋ぎ返してちょっぴり肩を寄せてみる。


竜児から切符を受け取ってちらっと料金表を盗み見ると金額から考えて距離的には近い、あの地域に何かあったかと考えてみてもここら辺りの地理には疎くてわからない。
上りホームで電車を待ちつつベンチに腰掛けて彼が肩掛けカバンを膝の上に置いたのを確認して聞いてみる。
「昨日言っていたけどお弁当作って来たんだよね? おかずって何が入ってんの」
「おぅ軽いモンだけだよ、唐揚げと卵焼きとかウィンナー、あと試しにアスパラを使って…」
待ってましたとばかりに竜児はお弁当の中身について話し始める、唐揚げが時間を置いてもサクサクなままにする方法だのふわふわ卵焼きにするのにマヨネーズを入れてみただの今年はブロッコリーの値段が高いだの……。
彼の横顔を見詰めながら相槌を打つ、言いたい事の半分もわからないけど…いいの、私は嬉しそうに身振り手振りを使って教えてくれる…好きなことを話す時の竜児が大好き。
目をキラキラさせてこればっかりは私にも踏み込めない部分それを垣間見れるだけでいい、私は…竜児に心底惚れてるんだな、ふとそう思った。
前の私なら上の空で聞いてた筈だもん、今は苦じゃない彼の一面を見れるしまだ知りたいことが沢山あるのだから。
「ほんっと主夫だね竜児は」
一区切りついたところでそう零すと彼は…
「おぅ! おまえに美味いと言われたいから張り切ったんだよ」
と満足そうな顔をする、ちょっとドキッとした…理由なんてないよ返事を返した一瞬竜児が凄くカッコよく見えたんだもん。
彼と肩を寄せて私は何も喋れなくなる妙に照れてしまうの、注がれる愛情を拾い心の引き出しに大切にしまって頬を緩ませる。
「…ん? あそこに居るのって能登と木原じゃねぇか?」
「あ、本当だ」
でも『二人だけ』の時間なんてそう長くは続かない、恋人が居れば考えることなんて皆同じだ…デートをするに決まっている。
竜児の視線の先を追うと同じホームの少し離れた場所に麻耶ちゃんと能登くんを発見、相変わらず恥ずかしそうに俯いてモジモジしながら仲良くベンチに腰掛けている。
あの二人は毎回そんな感じだ、手を繋いだだけで顔を真っ赤にして…さ、常に初々しくて甘々…私達が持っていないものを彼女達は持っている。
「あ、ぅ………能登ぉ、ちゃんとギュッてしててよぅ…」
「う、うん…わかってるって約束通り離さないから」
なんというバカップル、羨ましくなんて……………ある、私だってあんな感じに甘えてみたい。


私達にはああいう期間ってあまり無かった気がする、しがらみを吹っ飛ばすのに精一杯で気付いたら………まあ落ち着いた感じになっていた…みたいな?
初々しい麻耶ちゃん達を見ていたら何故か嫉妬してしまう自分がいた、あの娘達はあの娘達…私達は私達とわかっていても無い物ねだりしてしまう。
「ん…」
だから私は竜児にピッタリ寄り添って腕を組んでみる、どんな反応をするかなぁ…そんな風にワクワクしながら。
「お………、みんな見てる、ぞ」
すると彼は照れながら人差し指で頬を掻いてちょっと挙動不審になる。
「いいじゃん…逆に見せつけてやろうよ」
「人の目ってのがあるだろ」
「何よ…亜美ちゃんとイチャつくのが嫌なわけ?」
「そんなんじゃねぇよ、ただ…なぁ?」
と彼が麻耶ちゃん達の方をチラチラと盗み見てポツリと呟く。
「能登達に…見られてるから」
つまり友達に見られるのが恥ずかしいみたい、そう言われて横目で盗み見ると……。
「むぅ……」
と言ったかは知らないが麻耶ちゃんがこちらに気付いて私を羨ましそうに見てくる、そして同じように腕を絡ませ始めた。
「お互いデート中だしぃ気にしたらダメですぅー」
対する私は彼の肩に頬をスリスリ、右手を重ねて撫でてみたりしてラブラブ度を見せつけてみる。
「たまにはいいって、亜美ちゃんはしたいなぁ…こういうことも、竜児は……ヤダ?」
「だから嫌じゃねぇけど……」
「だったらこのまま……今日はずっとこのままで…」
私達はそう紡ぎ合って沈黙し照れてしまう、これ…これだよやっぱいいね、照れて何も喋れなくなってソワソワしちゃうむず痒い感覚…。
って……あ……あぁう、ちょ…ちょっとマジ? マジなわけ?
「亜美…」
り、竜児が…竜児が顔を近付けてきたよぅ…お日様が見てるよぅ的なアレになっちゃう…とか?
う、うわ…キスするの? しちゃうの? こんなに人が居るとこで……あぅあぅ。
いざとなると猛烈に恥ずかしいわ。
能登くんに見せつけたいのかも……いいよ私は……しても、ちょっと恥ずかしいけど竜児がしたいなら……と瞳を閉じてみる。
「……埃がついてる」
エロエロな考えが巡ってドキドキ、彼からの愛情を受け入れようと待ち構えていたら…竜児がそう言って私の前髪を一束指で摘んで優しく毛先の方へ引く。
「………は?」
私が期待していた事態は予想が外れて彼は本当に埃を払っただけ…他に何もしてくれない。


「風で飛んで来たんだろ、もうついてねぇから安心しろ」
呆気に取られる私を見て彼は何を思ったか変な方向にフォロー、まあ………そんなもんですよねーー漫画や小説じゃあるまいしぃーあははは……。
乾いた笑いで返して彼に八つ当たりのでこピン、続いて勘違いした恥ずかしさを紛らわす為に麻耶ちゃん達の方を見てみると……。
「!?」
「おぅ……」
キス………してたそれも結構ラブラブな熱いの、私達の行動を勘違いして対抗した? いや違う……自然となるべくなったんだ、悔しい…負けた。
「アイツら…仲がいいな」
な、何よ…それじゃ私達が冷めきっているみたいじゃん、竜児をおもわず睨み付けてしまう。
そして私の心中で嫉妬と焦りが渦巻く、生き死にするわけじゃあるまいし友達カップルと張り合ってもどっちもどっちと頭で理解していても………もう止まらない。
「ん…」
意地の張り合い…だと思う、バカだと言われてもいいや、私だって大好きな彼と年相応の恋をしたい。
そんな想いを抑えられず私は再び瞳を閉じて竜児の唇を奪う、急なことに怯む彼の口内へ舌をねじ込んで奥へ奥へと潜らせる。
「ちゅ、…ぅんん、は…ぴちゃ」
必死で私の舌を押し返そうとする彼を逆に押し留めて強引に絡みつく、自身が次第に興奮していく様子を客観的に感じていることに気付いておかしくなる。
口内で戯れる水音も周囲の喧騒も高鳴る心音で掻き消されて夢中で竜児を貪る、彼もその気になったのか私の頬を撫でて唾液を含ませてくれた。
「ん…く、ちゅぱ…ふ、ぅ…は」
背筋がゾクッと快感に痺れて閉じた瞳が潤んでしまう、ちょっぴりエッチな気分になってきちゃった…どうしよう…ね?
人前でキスなんてガキのすることだし…なんて彼に言ったことがある、初めて公の場で本格的に愛情を紡いで…私は幸せな気持ちになる、こんな気持ちになれるならガキでいいや。
「……若いっていいなぁ、おじさんは学校に置いてきちゃったよ、ごちそうさま」
少し離れた場所から聞こえた言葉を合図に私達は口付けを止める、猛烈に恥ずかしくなってきた…。
「…ぉう」
「…ぅ」
裏返った声で彼は照れ私は羞恥で口ごもる、目を合わせれない自分の勢い余った行動を思い出してテンパる。
「亜美ちゃんは自分に嘘をつくのはやめたし…素直になるもん」
必死に落ち着き払った風に装っても出てくる言葉は言い訳。


「素直か…亜美はこういうことがしてみたかったのか?」
と問われて私は頷く、すると間髪入れずに頭が大きくて暖かい手で優しく撫でられる。
「ありがとうな、俺も実はしてみたかった」
「…うん」
そこで甘えん坊モードは強制終了、何故ならホームに電車が到着したから。
車内は平日の午前だからかガラガラで私達は座席に腰掛けて貸切状態、ちなみに麻耶ちゃん達は目的地が違うのかこの車両には乗って来なかった。
「で、結局さ…目的地はどこなわけ?」
わざときつめの口調で問うと三白眼を細めてニヤリとほくそ笑む。
『目的地ぃ? バカめ! マットの上で身体を使って稼いで貰うんだよ』
とかは言うわけない。
「ここだ」
肩掛けカバンから取り出した情報誌のページを捲って私に差し出す、どれどれ……。
「水族館?」
見開き1ページを使った記事の写真には小さなサメが水槽の中を泳いでいたりマンボウとかも居たりと涼しげな雰囲気で見出しには
『春のデートに最適! かわいいイルカやラッコに癒やされてみよう』
とかのベタな謳い文句、まあ確かにデートでは行ったことはない。
「ふっふっふ…定番だが評判はいいんだぞココ、俺はこの期間展示のカミツキガメを見たいんだよ」
彼が指差した先には凶暴な顔付きの可愛くないカメが首をもたげた写真、私的にはその横のイルカショーの方が気になる。
「亜美ちゃんカメは見慣れていてるんですけどぉ、ふふっ……てかなに? もしかしてぇさり気な〜く噛まれたいとか言ってんの?」
口元を手で押さえてニヤニヤ笑ってからかってみる、そんな発想が瞬時に出る私も大概だけどね。
「お前なぁ…朝っぱらからへ、変なこと言ってんじゃねぇよ、痛いのは苦手だからな」
「きゃはは!! 何を想像したの、マジでキモいんですけどぉ!」
顔を真っ赤にして反論する彼は可愛い、真意は濁すのがポイント…からかうというより意地悪だけど。
「冗談だよじょーだん、そんな怖い顔したら泣くよ? んふ…」
私は彼の耳元に顔を近付けて囁いてみる。
「それとも亜美ちゃんを噛みたい? こうやって…」
耳たぶを犬歯でカプッと一回甘噛みすると竜児の肩がピクッと震え、雑誌を取り落とす………ちょっとやりすぎたかな。
車内がガラガラとはいえエッチぃ事ばかりするのは恥ずかしい、けど…テンションが上がってるんだから仕方ない。
ま、こんな事ばかりしてたら流石の竜児もそろそろ怒るだろうから私も落ち着こう。


「か、噛みたい……」
だがすぐに竜児がそう呟き私をジーッと見てくる、あれあれ………マジ?
「んく、い、今とか?」
生唾を飲み込んでから必死に解決策を考えてみる、だって状態だもん本気にするなんて思わなかったし。
「今じゃなかったらいつしたくなるんだ」
彼の言葉にどう返そうか…窘める、逆ギレ、流れに身を任せる、誤魔化す、私がこうして焦る間にも竜児は耳元に顔を近付けてくる。
「う…うぅ、ま…待って」
変な汗まで出てきた…亜美ちゃんピンチ、暖かい吐息が吹き掛かり爽やかな体臭まで感じる…。
「待たねぇ」
わ…わわ……どうしよう頭の中が真っ白になっていく。
私は自分の軽率な行動を呪っていた、相手にする分には楽しいけど…いざ自分の番だと猛烈に恥ずかしい。
電車が軌道の継ぎ目を超える毎に発てる音がガタンガタン…それは規則的なリズム、私の心臓もバクバク…激しく脈打つ。
「お前が朝から誘ってくるから治まりがつかないんだよ…」
そんな…亜美ちゃんのせいみたいじゃん……事実そうだけどさ、私は返す言葉もなくうろたえるしか出来ない。
あと10センチ…5センチ…ゆっくりゆっくり竜児の顔が近付いて来て……私は目をギュッと瞑って固まる。
だけど…
「……なんてのはウソだ」
と彼が囁いて耳に優しく一息。
「ひゃんっ!」
予期せぬ伏兵に驚いて身体をビクッと震わせた後、私は何が起きたか一瞬わからなくなる。
呆然と彼を見ていると含み笑いしていて、ようやく自分がからかわれていたことに気付く。
紅潮していた頬や耳が更に熱くなる感覚と共に先程までテンパっていた自分の滑稽な姿への羞恥に情けなくて…悔しくて竜児を睨む。
「純粋な亜美ちゃんの乙女心を弄んで踏みにじって……ぐすん」
私は泣き真似をして彼が謝るまでチラチラと伺うことにした、怒ったフリは私の方がほんのすこ〜しワガママだから。
ただの戯れ合いで変な維持を張って喧嘩なんてバカらしい…かといってガチにメソメソ泣いて気を惹くのも嫌い、だからバレバレの泣き真似で……。
「悪かった悪かった…泣くな」
彼は私が演技しているとわかっていても謝ってくれる、やっぱり竜児は優しい…特に『私だけには』なんて惚気てみたり。
「…なぁ〜んてな、そんな簡単に亜美ちゃんは涙を見せませぇ〜ん」
私の返事はとびっきりの笑みと頬への口付けで返す、純粋にこういうやりとりが楽しくて好きだから…亜美ちゃんはさ。

「おぅ、亜美はそうでなくちゃな」
ポンポンと頭を撫でられた私は有頂天、ぴったり寄り添ってされるがまま。
いつまでもこの幸せな時間が続けばいいのにと想い、ついで目的地でもっと幸せに……昔の私が見たら笑い転げるだろうね、キモいとか言って。
けど…好きな人が出来て信頼しあえたら誰だってこうなる、やっと巡り逢えた大切な人と居ると骨抜きにされる。
臆病な分だけ心を許せる相手には依存してしまうしさせてあげたいって想う、ううん…自然とそうなる。
「でしょ? 亜美ちゃんもそう思うんだよね、てかここまで絶対絶後の美少女だと何をしても絵になるっていうか〜」
軽口を叩くのは幸せを噛みしめたいから仮面を被らない『素』で受けないと興醒めする、彼もそれを望んでいるだろうし隠したらそうさせるに違いない。
「まあよくもそこまで自画自賛出来るな、亜美らしいっちゃ亜美らしいけどよ」
そう口上しながら足下に落とした雑誌を拾い上げて目を落とし、私も釣られて覗き込む。
「ちなみにイルカショーは日限定3組のカップルに記念フォトを写してくれるんだとよ、抽選らしいが」
「抽選って? クジ引きとかアミダとか?」
「さあな、ともかく係員が選ぶらしい」
「ふぅ〜ん写真栄えする亜美ちゃんがいたら愚民共は土下座してお願いしてくるんじゃね? もう決まっているも同然っしょ」
私は誇らしく彼にアピール、どういう風に紡ぎ返してくれるかワクワクするの。
「どうだろうな…でもせっかくだし選ばれるようにしないとな、こういうのをスタンドに入れて飾るのがささやかな夢なんだよ」
彼の『ささやかな夢』が叶うように私が一肌脱ぐか…そう言われたら私も飾りたくなるし、そう決意したところで電車が目的地に着く。
駅名と乗降に注意しろとアナウンスされるのをバックコーラスに私達はホームに降り立つ、ちなみに大橋駅の数倍の規模はある。
はぐれないように手を繋いで人波を避けながら階段を登り改札をくぐって大きく伸びをして、彼に引かれるまま構外へと出る。
「次はバスに乗るぞ」
彼がそう言ったので私は頷きバス乗り場へと向かう、春の日差しは暖かく天気予報通りに薄着でちょうどいい。





続く



198 ◆KARsW3gC4M sage 2010/06/30(水) 23:07:50 ID:6qaYYG3a
今回は以上です。
続きが書けたらまた来させて頂きます。
では
ノシ

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