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きすして2(下) 356FLGR

 五月下旬の土曜日の朝、木造アパートの二階部分にある高須家の玄関と地上を結ぶ外階段を
カーマインのブレザーとブルーグレーのスカート、黒いニーソックスに身を包んだ少女が
軽やかに駆け降りていた。最後の三段ほどを一気に飛び降りて地上にタンッと着地を決めると
「竜児、早く! おいてくわよ!」と、玄関に向かってちょっとばかり近所迷惑な大声で
言い放った。

 当の竜児はまだ玄関でちょっとくたびれてきたローファーに片足を突っ込んだところで、
そんな竜児の後ろ姿を泰子は笑顔で眺めていた。
「大河ちゃん、今日も元気だね〜」
「あぁ、どっから、あんな元気が出てくるんだか」
 竜児はヤレヤレって顔をしながらもう片方の靴を履いて泰子の方に振り向いた。
「じゃ、行ってくるわ」
「いってらっしゃ〜い…」と、泰子は竜児を送り出したつもりだったのだが、
竜児の視線は小蠅でも追いかけているみたいにフラフラ〜っと彷徨っていた。
「…どうしたの?竜ちゃん」
 竜児は不思議そうに尋ねる泰子の顔をチラッとみてから、またそっぽを向いて、
人差し指でポリポリと頬をかきつつ口を尖らせバツが悪そうに
「あ、あのさ、今日、大河が泊まってくから」と言った。
「…うん、わかったよ」
 泰子は優しく応えた。竜児は肩で大きく息をして振り返り玄関から出て行った。
 竜児が階段を駆け下りていく音を聞きながら、泰子は自分の表情が寂しさに染まっていくのを
感じていた。

「おっそい!なにやってんの!遅刻しちゃうじゃない」
「お前がいつまでも食ってるからだろ。ほら、いくぞ」
「あ、こら、ちょ、待ってよ…」

 遠ざかっていく二人の声を聞きながら泰子は玄関のドアを閉めて鍵をかけた。

***

 二人はいつもの通学路をいつもの様に袖が触れ合う様な近さで並んで歩いていた。ちょっと
湿り気を感じさせる空気は春がとっくに終わってしまっていて、梅雨という厄介な宿敵が
すぐそこまで来ていることを竜児に感じさせた。

「ねえ、ちょっと暑くない?」
「ああ、もう五月も終わりだからな」
「そっか、もう夏服か」
 それっきり、二人は言葉もなく並んで歩いた。竜児の視界の隅で大河のステップに合わせて
粟栗色の髪の毛がふわんふわんと踊っている。髪が踊る度に優しい香りがして、それが
竜児の心をくすぐって、視線はどうしたって大河の旋毛の方に引っ張られる。
 その気配に気付いたのか、不意に大河の顔が竜児の方を向いて目と目が合った。

「何見てんのよ?」
「いいじゃねぇか。減るもんじゃ無し」
「減るのよ」
「へぇ、そりゃ初耳だ?」
「教えてあげるわ。あんたの眼から放射される怪しいビームのせいであたしの質量は毎日
一グラムづつ減っているのよ」
「そいつは大変だな。あと百年もしたらお前の体重はほとんど無くなっちまうんだな」
「そうなのよ。失われる質量を補う為に肉が必要だわ」
「朝飯、食ったばっかりなのに肉の話しかよ」
「フン」
「つまり、肉が食いたいんだな?」
「違うわ。食べなければならないのよ」
「要するに肉なんだな」
「そういうことよ」

 そしてまた沈黙。なんとなく途切れ途切れな会話。

「ねぇ」
「なんだよ」
「あんた、ビビってる?」
「お前は?」
「あんたはどうなのよ?」
「俺はビビってないぞ。どっちかといえばテンパってる」事実、竜児は寝不足だった。
「大差ないわよ」大河はあっさりと言った。
「お、お前はどうなんだよ?」
「あたしは…ビビってるかも…」
「怖いのか? だったら…」
「いいのよ。怖いだけじゃないから」竜児の言葉を遮る様に言った。
「…わかったよ。ちゃんと泊まるって言って来たんだよな?」
「当然よ」
「なんか言ってたか? お前の母さん」
「それが…がんばってね、と…」
「がんばる?」
「何を頑張るのかが分んないのよね。やってみれば分るわよってママは言ってたけど…」
「そ、そうか」
「と、とにかく、頑張る為には肉よ!肉」
「お、おぅ、そうだな。肉だな」

 あまり考えず、いつも通りにするのがいいのだろう。考えたら、何も手につかない。
まあ、今日の授業は何も頭に入らないだろう。教師には申し訳ないがそれどころではない
のだ。二人ともそうだった。

***

 いつもは大河と一緒に下校する竜児だったが、今日は別行動だった。スーパーで買い物を
済ませ、帰宅した竜児はそれはもう目一杯気合いをいれて掃除した。特に風呂場と自室は
念入りに、隅々まで、執拗なまでに、埃一つも見逃さない魔眼を光らせてゴミの方が逃げ
出す程の勢いで掃除をした。もともと、十分キレイなのだが、掃除せずにはいられなかった。

 少しの休憩を挟んで竜児は夕食の仕込みを始めた。メインはハンバーグ。付け合わせに
野菜のソテー、レタスとプチトマトのサラダ。みそ汁にするかスープにするかは大河に
選ばせるつもり。すでに炊飯器は元気に稼働中である。

 竜児が捏ねたハンバーグを小判形に整えていると、アパートの外階段を小さな足音が
上がってきた。バァーン、とドアが吹き飛びそうな勢いで開き、「たのもーっ!」という
大河の声が台所の窓をビリビリと振るわせた。

「お前は道場破りか!」と、軽く突っ込んだ竜児が見たのは、さながら家出少女みたいな
格好をした大河だった。大河は今日も見事なぐらいにフワフワなのだが、どうして一泊二日
なのにそんな大量の荷物になるのだ?というぐらいの荷物を抱えている。しかも、どこで
何を買ったのか、ぶら下げたエコバッグはパンパンに膨らんでいた。

 竜児は大急ぎで手を洗い、大河からエコバッグを受け取って部屋に招き入れた。
「なんつー量だよ」
「しょーがないのよ。女の子の外泊は大変なのよ」
「ったく、こんなに買うんだったら呼べよ。運んでやったのに。で、何を買ったんだ?」
「シャンプーとか、リンスとか、ボディーソープとか、いろいろ」
 大河はエコバッグからボトルを一つずつ取り出して卓袱台に並べていく。
「シャンプーとかリンスは泰子のでいいじゃねぇか」
「あんた、なんにも分かってないわ。こだわりよ、こだわり」
「はいはい」
 言いながら竜児は狭い浴室がさらに狭くなるのかとちょっと憂鬱になる。
「こっちはいいから竜児は晩ご飯の支度をしてよ。ハンバーグでしょ」
「お、おぅ。そうだ、大河、スープとみそ汁とどっちが良い?」
「今日のソースは洋風? 和風?」
「今日は洋風のつもりだが……和風もできるが…」
 大河は腕を組んで眼をつぶり眉間にちょっと皺を寄せている。首がゆ〜らゆらと左右に
動いたかと思うとカッと眼を開いて言った。
「ミネストローネだわっ。できるわよねっ!」
 竜児は、お前のインスピレーションはどこの宇宙から来るんだよ? と思いながら、
「おぅ、まかせとけ」と応えた。
 竜児は台所に戻りハンバーグの下ごしらえを再開し、大河は調子っぱずれの鼻歌まじりに
荷解きを始めた。

***

 夕食の後片付けを終えた竜児が、いかにもカラスの行水でございます、といった感じの
入浴を終えて居間に戻ると、大河はまだ髪の毛を乾かしている最中だった。大河の身体を
包んでいる白いコットンのネグリジェはレースと刺繍で上品に装飾されていて、いかにも
大河が好きそうな感じだった。あまりに似合っていて可愛いものだから、竜児はボケッと
大河を眺めていた。髪の毛を乾かす不器用な仕草まで愛らしく思えてくる。

「はやっ。ちゃんと洗ったんでしょうね」
「ったりめぇだろ。男の風呂なんてこんなモンじゃねぇの」
 大河はしげしげと竜児を眺めていた。竜児が着ているのはオフホワイトのリネン生地の
パジャマで、大河が持って来たものだった。
「まあまあじゃない。似合ってるわよ」
「そうか?」
「馬子にも衣装とは良く言った物だわ」
 認めたくはないが竜児も自分でそう思った。なんとなくセレブでリッチな感じだ。
「ふん、好きなだけ言ってろ。でも、これホントに着心地いいな」
「気に入った?」
「おう。ありがとよ」

 竜児は、畳の上にペタンと座って髪を乾かしている大河の後ろに胡座をかいた。ふわっと
した大河の香りが竜児を包み込み、それは竜児の胸の内側をくすぐった。
「やってやる。タオルとドライヤー貸せよ」
「へっへー」
 竜児は大河の粟栗色の髪の毛をタオルで丁寧に拭いて水気を取ってから、熱を入れすぎない
ようにドライヤーを振りながら髪の毛を乾かしていった。大河はひなたぼっこをする
ネコみたいな表情で、竜児に毛繕いを任せてまったりとしていた。乾いて元の軽さを取り戻した
髪の毛がドライヤーの風に踊っていた。
「おっし、いいんじゃねぇか」
「じゃあ、これでまとめて」
 大河は竜児にシュシュを渡した。シンプルなレースのリボンが可愛らしい。
「こんなの持ってたっけ?」
 竜児は乾いた髪の毛を一つにまとめて、少し左側によせてシュシュで留めた。
「ママに借りたのよ」
「へぇ、なかなか良いな。似合ってる」
「でしょ」

 大河は上半身だけひねって竜児に横顔を見せた。
「ありがと。あんた、ホントにこういうのは上手よね」
「お前はいっつも一言多いんだよ」
 竜児は口を尖らせて言った。
「あら? どこが」
「もう、いい」そして、軽く溜息。

「ねえ、ここに座っていい?」
 大河はあぐらをかいている竜児の左膝に右手を添えた。
「…お、おぅ」
「ん、しょっと」
 大河はずるずる〜っと動いて竜児の左太腿に腰を下ろした。
 竜児のすぐ目の前に大河の横顔がきて、髪をまとめてあらわになっている白いうなじに
微かに赤味が差していく様子が見えた。小さな身体はやっぱり軽くて、まるでネコが膝の
上で遊んでいるようだった。
「鼻息荒い」
「うっ」竜児は慌てて顔を横に向けた。
「思ってたほど座り心地よくない。でも…」
 大河は竜児の胸にもたれかかり寝間着の薄い生地越しに体温が伝わる。
「…居心地はいいけどね」
 その言葉でそっぽを向いたままの竜児の口元が緩んだ。

「ねえ、やっちゃんは?」
「毘沙門天国のヘルプだってよ」
「大変じゃないの?」
「ん、でも二時ぐらいで上がるって言ってたから大丈夫だろ」
「そう……無理させちゃダメだからね」
「わかってるよ…もう、無茶はさせねぇから」

「ねぇ、重くない?」
「ちっともな。もう、太るなよ」
「うっさい」トンと軽く肘鉄。
「あんなのは遺憾な事態はこりごりだわ」
「ふん、俺だってごめんだ」

「ちょっと暑い」
「しょーがねぇだろ、風呂上がりだし……」
「だね……ん、しょっと」
 大河は竜児から背中を離して、身体を捻って竜児の方に顔を向けた。
 竜児はそっぽを向いていた顔を大河の方に向けて彼女の顔を見た。小さな白い顔は薄らと
桃色に染まっていて、生命力を感じさせる瞳はちょっとだけ潤んでいるみたいだった。
まるで縛り付けられるみたいに竜児が見つめていると、大河の顔がすっと上を向いて二人の
視線がぶつかった。それに気付いた大河の唇が微かに動いて白い歯が微かに覗いた。

「なによ」
「見てるだけだろ。いいじゃねぇか」  
「眼が血走ってる」
「ほっとけ、遺伝だ。見たくねぇなら見なきゃいい」
「そっか、そうだね」と言って、大河は瞳を閉じた。
 瞼が閉じられると大河の顔立ちの美しさが鮮明になった。きれいに頬から顎に繋がる
ライン、小振りできれいな形の鼻、閉じた瞼の境界をくっきりと示す長い睫毛。そして
わずかに開いた桜色の唇。見慣れていても見入ってしまう程の美しさ。そして、見慣れて
いなければすくむ様な美しさがすぐそこにある。

「ね、きすして」
 その小さな囁きに応えて竜児の顔が大河に近づき唇を軽く触れ合わせた。
竜児は、大河は、互いの鼓動が加速していくのを感じた。竜児は唇を離して右手で大河の
左の頬に触れ、もう一度、長いキスをした。
 頬を包む竜児の右手にそっと添えた大河の左手の薬指で、泰子から貰った古い指輪が
光っていた。

「ずっと、傍にいてくれるよね?」
「おぅ、お前の傍が俺の居場所だからな」
「どんな時でも?」
「どんな時でも。楽しい時も、辛い時も、ずっと」
「うん、約束だよ」大河は竜児の肩に額を押し当てた。
「ああ、約束だ」竜児は言った。

***

 竜児が電灯の消し忘れや火元の確認をしてから自分の部屋に入ると、大河はもう竜児の
ベッドにしっかり収まっていた。大河は顔まで毛布にもぐって、壁の方を向いたまま身じろぎ
一つしないで黙りこくっていた。
 竜児の机に置かれているデスクライトが壁の方に向けられていて、それが間接照明になって
いた。天井からつるされた蛍光灯は消されていて、常夜灯の電球だけがオレンジ色に光っていた。
仄暗い部屋の中、弱い白い灯りに毛布の上に脱ぎ捨てられたネグリジェが照らされていた。
「脱いじまったのか」と、問えば
「脱いじまったわよ」と、小さな声が答えた。
 竜児はパジャマを脱いで大河がそうしたように毛布の上に不本意ながら畳まずに置いた。
毛布の端をめくると大河の白い肩が覗いてそれが微かに震えた。竜児がベッドに入ると
そこはすでに大河の体温で暖められていて、それが大河の存在を竜児に強く感じさせた。
「怖いのか?」竜児は大河の白いうなじに聞いた。
「ううん」大河は毛布のなかで竜児の方に向き直った。
「裸……見られたくなかったのよ」
 そう言った大河の瞳はちょっと潤んでいた。
「抱き締めて……くれるよね」
「……おぅ」
 竜児は怖々と大河に手を伸ばし、そして触れた。多分、抱き寄せれば、抱き締めたら
もう止まれない。でも、かまわない。止まる必要なんて無いから、かまわない。
 竜児はぎこちなく大河を抱き寄せた。裸の肌がふれあって何にも邪魔されない直の温もりが
伝わっていく。その熱に、肌触りの生々しさに、鼓動はどこまでも加速していくようだった。
 抱き竦めた大河の身体はあまりにも華奢だった。
 抱き締めた竜児の胸は厚くて熱かった。
 二人は互いの愛おしさを言葉にすることができなかった。竜児はただ深いため息をもらし、
大河は熱い吐息を漏らしただけだった。

 竜児は大河を片腕で抱きしめたまま、大河の身体が仰向けになるように身体を動かした。
大河に重さを感じさせないよう、片腕で身体を支えながら大河の小さな身体に覆いかぶさった。
 閉じていた大河の瞳がゆっくりと開いて竜児を見た。
「すごいね」
「ああ、すげぇな」
「ねえ、りゅーじ」
「おぅ」
「…して」
 大河は瞼を閉じた。唇が重なって少し濡れた音がした。唇が離れると大河は苦しげな
甘い吐息を漏らした。竜児は大河の右側に寝そべって大河の髪を優しく撫でた。
「大河、すきだ」
「うん……しってる。私も…」
 大河の頬を竜児の手が包み、指先が耳に触れた。くすぐったそうに大河は微かに身を
よじった。微かに開いている大河の唇に吸い寄せられるみたいに竜児はキスをした。
ふっくらとした大河の唇の柔らかさを確かめるみたいにキスをした。

 頬を包んでいた竜児の手がすっと離れていった。竜児の右手は大河の肩にスッと微かに
触れてから、ゆっくりと大河の左胸のふくらみに触れた。大河の乳房は竜児の手で完全に
包めてしまう慎ましい大きさだけれど、そのふわふわとした手触りは何の経験も持ち
合わせていない竜児の理性をいとも簡単に蕩かしていった。竜児は指先で柔らかさを
確かめる様な、戸惑った指使いで小振りな胸をほぐしていった。
 大河は切ない声を漏らして苦しげにも見える表情を浮かべた。竜児の指が動く度に僅かに
身体がよじれてシーツを握りしめている手に力がこもる。その様子に急き立てられて、
竜児はピンク色の小さな乳首に触れ、人差し指でそれをこねるように弄った。

「んっ、ちょっと、いたい…やさしく、して」
「あ、わるい。すまねぇ」
 大河の声で竜児は自分を取り戻した。自分が走りすぎて、痛みや恐怖を感じさせたことに
胸が痛んだ。そんな竜児の頬に大河の左手が触れた。不意に触れた暖かさに竜児は大河の顔を
見た。
「大丈夫。気持ちいいから、つづけて」
「おぅ」と、応えて、そしてキス。やさしく。触れ合わせるように。

 竜児の指が軽く撫でる様に触れていく。竜児の指が乳房をさわさわと撫でる度に
大河の口から甘い声が漏れた。竜児は敏感な部分には強く触れないようにしながら、柔らかい
肉の質感を探るように揉みほぐしていった。大河の息づかいは荒くなり、息が吐き出される
たびに喘ぎ声が混じった。

 竜児は右手を大河の胸からどけて、指先で彼女の滑らかで無駄のない腹部のラインを
確かめながらなぞっていった。臍のすぐ傍を中指が通り過ぎ、そのすぐ後に竜児の指に
伝わって来たのは微かな段差。レースの感触、そして優しい布地の肌触り。その先のクロッチを
竜児は中指で触れる様に優しく擦った。
 竜児の指の動きに操られるように、大河は歌うように喘いだ。竜児はそれに導かれるように
彼女が強く反応するポイントと触り方をじわじわと探り当てていく。徐々に自分の弱い部分を
探り当てられて大河の内側から熱い物が染み出していった。

「あっ、うくっ」
 言葉にならない声を上げて大河は必死に竜児にしがみついた。
「だ、大丈夫か? 大河」
「…うん、ちょっと気持ち良くてビックリした」
「…触っていいか?」
「うん、やさしくして」

 ああ、と言いながら竜児は大河の唇を自分の唇で塞いだ。竜児は薄い布地の内側に手を
滑り込ませた。さわさわとした細い毛の感触を通り抜け、明らかに肉質の違う部分に竜児の
指は滑り込んでいった。中指をあてがうと濡れた暖かい感触が伝わり、それを竜児が感じる
のと同時に大河は大きく喘いだ。
 人差し指と薬指で柔らかい肉を押し開くと、くちっ、と濡れた音がした。そのまま中指で
濡れた部分を擦るように探ると指先が大河の内側にぬるりと吸い込まれ、大河は一層苦しげに
大きく喘いだ。
「痛かったら言えよ」
「……う…ん…だいじょうぶ」
 竜児の中指は大河の入り口をゆっくりとほぐすように弄った。指が動く度に、ぬちぬちと
濡れた音が漏れて来た。竜児は指を出入りするように動かして大河の中を探った。ねっとりと
濡れて絡み付く様な感触に、彼女の身体が受け入れられる状態になっていることがなんとなく
分かった。

 竜児は身体を起こして、大河の身体を隠していた毛布を捲って彼女の身体を露にした。
竜児は軽くうめき声を上げ、大河は堅く眼を閉じて横を向いた。劣等感にまみれた大河の
言葉や仕草とは裏腹に、竜児が目にした大河の裸身は恐ろしい程に美しかった。確かに胸は
小振りだったけれど、首から肩にかけての線、胸からくびれたウエスト、そこから腰骨に
むかってわずかにひろがり、そして細い足に向かって収斂していく全てのラインが繊細で
素晴らしい。
 唯一つ身に付けている青い小さな刺繍とレースで装飾された白いショーツは清純な感じで
大河のミルク色の肌によく似合っていて、それも大河の美しさを引き立たせていた。
「…お前、ありえねぇぐらいきれいだぞ」
「…うそ。あんまり見ないでよ」
 薄暗くて良く分からないけれど、上気して赤くなっている筈の顔にうっすらと涙が
浮かんでいた。
「いや、見る。ホントにきれいなんだよ」
「……ありがと。りゅーじ」
 照れくさそうに、嬉しそうに、小さな声で大河は言った。

「あ〜、でも、俺を見るなよ。装着途中はかなり無防備でみっともないから」
「はいはい、さっさとして」
 竜児は下着を脱いで用意しておいたコンドームをくるくる〜っと装着。
MOTTAINAIとは思いながらも二個ほど浪費して練習しておいた成果もあって装着は
スムーズに完了。

 竜児は大河に覆いかぶさりキスをした。
「いいんだよな」
「うん、……いい」
 大河は小さく頷いた。

 竜児は大河の背中側からショーツに指をかけた。大河が腰を浮かせてそれをサポートする。
竜児は薄い皮を剥くように大河の腰からショーツを脱がせて脚から抜き取った。露になった
濡れている部分に竜児はもう一度優しく触れて、大河の入り口を湿らせていった。竜児の指が
動く度に、ちゅくちゅくと湿った音がして、その音を隠すように大河は喘いだ。
 竜児は充血してわずかにふくらんだ唇を指でめくる様に開いた。濡れて光るその部分は
体内を想像させるピンク色で、竜児は微かに開いている彼女の内側への入り口に人差し指の
先を埋めた。
「あくっ…ん」大河の肩がびくっと動く。
「大河、膝、あげて」
 大河はもそもそと膝を持ち上げるように足を曲げた。
「こう? なんか、すごく恥ずかしいカッコなんだけど」
「この方が痛くないと思う」
「そう…」
 竜児は堅くなった自分の先の部分を大河の入り口にあてがった。
「いれるぞ」
 大河は小さく頷いた。竜児はゆっくりと押し込んだ。ぬるっとした感触がつたわり先の部分が
大河の中に入っていった。竜児は小さく呻き、大河は一層大きく喘ぎ苦しげな声を上げた。
「痛かったか?」
「まだ…大丈夫…」
 竜児は大河の脇の側に手をついた。さらに深く入っていくために。
「一気にいってくれたほうがラクかも」
「…わかった」

 竜児はじわっと腰を沈めていった。大河の右手が竜児の左の二の腕をがっちりと掴み必死の
力がこもる。竜児は微かな抵抗を感じ、すこしだけ強く押し込んでそれを抜けた。
「っん、くふぅっ」大河の苦しげな声に竜児の動きが止まる。
 大丈夫か、と言いかけて言葉を飲み込む。小さな入り口を押し広げるようにして、すでに
竜児の半分ほどは埋まっている。大河の眼がうっすらと開いて下から竜児を見つめる。
「だいじょうぶだから……きて」
「おぅ、もうちょっとだ」
 竜児はさらに腰を沈め押し込んでいく。ぬるぬると滑り込んでいくのにキツく締め付ける
様な感触に竜児の背筋が粟立った。脳を焦がす快感にうなされながら、竜児は腰が当たる
ところまで押し込み、溜息をついた。
「大河…」
「うん……だいて、りゅーじ」
 荒い呼吸を繰り返す大河の目はたっぷりと涙をたたえていて、それが目尻からこぼれ落ちた。
竜児は肘で身体を支える様にして大河の背中に腕をまわし、大河を抱き締めた。胸と胸が
触れ合い微かに汗で湿った肌と肌が解け合うように貼り付いていくようだった。竜児は身体を
丸めるようにして大河にやさしくふれるようなキスを何度もした。

 竜児は身体を起こして内側に溜め込んだ熱を吐き出すように深く息を吐いた。自分を必死に
受け入れてくれた大河の表情が、痛々しさが愛おしくてたまらなかった。
「大河……」
「りゅーじ……すき、だいすき」
「ああ、俺だって」
 大河は頷く。わかってるよ、そう言うみたいに。
「痛いんだろ?」
「うん、でも……大丈夫。少しなら動いても大丈夫……かも」
「じゃあ、ちょっとだけな。痛かったら言えよ」
「うん」
 
 竜児は深く繋がっている部分をゆっくりと引き抜いていった。大河が苦しげな声を
上げたところで引き抜くのを止める。そこからまたゆっくりと押し込む。それを繰り返す。
熱い部分を馴染ませるようにゆっくりとやさしく大河の中をかき混ぜていく。

 大河はうなされているように熱い息と喘ぎ声を交互に吐き出し、時折激しく首をふった。
ゆっくりと優しく何度も繰り返される抽挿に徐々に痛みが薄れていき、一番奥に竜児が触れる
度に痺れるような刺激が大河の中を駆け上がっていった。自分の内側から何度も何度も
押し寄せてくる脳を灼く様な刺激に、大河の呼吸は乱れ、開いたままの口からは竜児の心を
くすぐる様な声が漏れた。

 ベッドが軋む音、大河の中から漏れてくる微かな匂い、苦しげな吐息と仄かな喜悦を
感じさせる喘ぎ声、竜児の絞り出す様な呻きと溜息が仄暗い狭い部屋を満たしていく。
今の二人にとってそこが世界だった。全てと完璧にアイソレートされて二人だけが存在する
世界で、お互いの存在を感じて歓び合うためだけの時間が流れていく。

 竜児が動くたび、ぬちぬちと湿った音が漏れた。薄いラテックスの皮膜で隔てられている
筈なのに大河の肉の熱、やわらかさ、ぬめりが生々しく感じられ、繋がっている部分が
溶けて混ざり合っていく様だった。ぬるぬると柔らかく締め付けてくる内蔵を押し広げて、
奥へ奥へと沈めていく。竜児はその感覚に微かに呻きながら、誘い込まれるように押し込み、
そしてそれを繰り返すためにゆっくりと抜き取っていく。繰り返し、何度も。

 熱く切なくなっていく大河の声に誘われるように竜児はほんの少しずつ動きを早めていった。
奥の部分が擦られるたびに、大河は大きく喘いで竜児の腕を握りしめた。痺れる様な感覚が
竜児に限界を知らせていた。

「大河……でちまう」
「……うん……いいよ……」
 大河の一番奥に届いたそのとき竜児は呻く様な声を上げた。必死にせき止めていたモノが
吐き出されていき、大河は自分の中で竜児が脈打っているのを感じた。竜児は崩れ落ちるように
大河に覆いかぶさり、大河はそんな竜児の背中を優しく抱いた。竜児はずっとそうされて
いたかったけれど、その気持ちを振り払って身体を起こし、精一杯の慈しみの眼差しで
大河を見つめた。それに微笑みで応えた大河の瞳に涙があふれて一粒こぼれた。

「大丈夫か? 大河」
「うん。ちょっとだけ痛いけど。本当に、ちょっとだから。大丈夫」
 そう言って大河は竜児の頬をなでた。
「そうか……」

「なんか……すげぇな」
「うん。なんかね、うれしいよ。ホントに、うれしい」
「俺もさ」
 潤んだ大河の瞳に橙色の灯りがゆれていた。
 大河の眼からこぼれた涙を竜児は指で拭った。

「じゃあ、離れるわ」
「うん、やさしく、ね。おねがい」
「ああ」
 竜児は大河に深々と突き刺さっている部分をゆっくりと引き抜いていった。抜き取られるのを
惜しむような濡れた音がして、竜児が離れる瞬間に大河は小さく喘いでかすかに震えた。
竜児は大河に触れる様なキスをしてから大河の身体を毛布でつつんだ。

「見るなよ」
「わかってるわよ。さっさと外しちゃいなさい」
 そう言って、大河は微笑んだ。

***

 二人は裸のまま、毛布にくるまって緩く抱き合っていた。
「血、出てた?」
「ああ、ちょっとだけ出てた。もう、止まってる」
「汚しちゃった?」
「いや、大丈夫。そんなこと気にすんなよ」
「うん」
「まだ、痛む?」
「ちょっとだけ。それに、まだ、何か挟まってるみたいな、そんな変な感じ」
「大丈夫なのか?」
「普通、そういうもんらしいわよ」
「そうか。ま、無理すんなよ」
「うん…。ねえ、このまま寝る?」
「……むぅ、なんか落ち着かねぇな」
 肌と肌が直に触れ合って、寝るにはちょっと刺激的すぎる。
「だよね」
「けど、こうやってくっついてるのも、なんか気持ち良いな」
「うん。あったかいよ……」
「けど、やっぱり落ちつかねぇし」
「なんか、スースーするし」
「刺激が強すぎて眠れねぇし、落ち着かねぇし」
「や、やっぱりさ、パジャマ着て寝ない?」
「そ、そうだな」
 二人は毛布から這い出して狭いベッドの上で背中合わせで下着をつけた。大河はベッドの上に
立ち上がって真っ白いネグリジェを纏ってボタンを留めていった。竜児はベッドの下に降りて
パジャマを着た。それから二人は並んで狭いベッドに横になって毛布にくるまった。

「ねえ、りゅーじ。腕枕して」
「ん? あれって寝心地いいのか?」
「知らないわよ」
「そりゃそうだな」
 竜児は左腕を大河の方に伸ばした。
 大河は身体を起こして、無防備に自分を眺めている竜児に触れるようにキスをした。
「おやすみ、りゅーじ」
 大河は竜児の二の腕に、ぽふっと頭をのせて眼を閉じた。
「おやすみ……たいが」

 その言葉は呪文のように二人を微睡ませた。
 初めての経験の疲労は二人をとろとろとした眠りに落としていった。
 二人は寝息で囁き合いながら……
 深く、深く、シーツに沈んでいくみたいに……
 蕩けるように眠りに落ちていった。

***

 大河が目を覚ますと、そこに竜児の姿は無かった。一瞬、全てが夢だったのかと疑い、
でも次の瞬間、そこが間違いなく竜児のベッド、竜児の部屋であることを認識した。
なにより股間に残るジンとした違和感は昨夜のことが事実だったことを証明していて、
大河はその鈍い痛みの様な感覚がまだ残っていることが嬉しかった。それはすぐに治って
しまうだろうから、大河はその痛みが愛おしかった。

 居間から漏れてくる美味しそうな匂いや、気持ちいいリズムでまな板を叩く包丁の音は、
竜児がいつも通りそこに居て、いつも通り食事の支度をしていることを大河に教えた。

 大河はバッグから服を出して着替えた。シンプルな七部丈のコットンのパンツに、かわいい
プリントのロングTシャツ。カーテンを開けて、窓も開ける。すぐ目の前に、自分が暮らして
いた部屋の窓が見える。向こうのカーテンや窓が開く事はどうせ無いから気にしない。

 竜児は毎朝、きっとこんな風にあたしの部屋を見てたんだな、と思った。そして、今朝は
こんな風にあたしがその部屋を見てる。本当にこっち側にこれたんだ、そう思うと目が潤んだ。
 いけない、いけない。泣いてる場合なんかじゃない。ちょっとぐらいは手伝おうと意気
込んで動きやすい服に着替えたんだから。嫁が寝坊じゃ立つ瀬が無いわ。
 大河は襖を開けて部屋を出た。

「竜児、なんで起こしてくれないのよ」
「起こしたさ」と、ちょっとふてた感じで言った竜児の顎はちょっと赤くなっていた。
「どうしたのよ? その顎」
「やっぱり…」
「なによ?」
「憶えてないんだな。お前に殴られたんだよ。寝ぼけたお前さんに」 
「げ!?」
「もっのすごぉく痛かったんだからな」
「い、遺憾だわ」
「もう、いい。俺が避けられる様に鍛錬すればいいだけだ」
「ほんと、ゴメン」申し訳なさと情けなさで大河の顔はすっかり赤くなっていた。
「もういいよ、大河。すぐ出来るから座って待ってろよ」
「…うん」でも、座らない。
「どうした?」
「あのさ、邪魔かもしんないけどさ、その、手伝いたいのよ」
 大河は両手の指を組んで親指をくるくる回しながら照れくさそうに言った。
 竜児は頬を微かに緩ませた。
「じゃあ、その布巾で卓袱台を拭いて、食器棚から茶碗と箸を出しておいてくれよ」
「うん」
「慌てるなよ。ゆっくりで良いから」
 布巾を手にもって大河はこくりと頷いた。
「ねぇ、りゅーじ…」
「ん?」
「朝チューは?」大河は顔を上げて目を閉じた。
「今更だな」お玉を片手に持ったまま、竜児は屈んで軽く触れ合わせる様にキスをした。

(おわり)

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