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きすして5後 356FLGR 2009/11/18(水) 19:44:41 ID:q0DrsmQC






 竜児は合流場所に指定された二階の空き教室で大河を待っていた。そこは机と椅子を
並べただけの休憩スペースで、教室の中には机を六つ組み合わせたテーブルが四つ作ら
れていて、その周りには椅子が置かれていた。竜児は空いていた窓側のテーブルのそば
に置かれた椅子に座って大河と彼女の母親を待っていた。

『くしえだ〜。どこいくんだよ〜』
「ん? 春田?」
 バタバタと廊下を走る音と春田っぽい声が聞こえた。
「何やってんだ? あいつら」ぼそっと呟いた。

 それから暫くして竜児の電話が震えた。竜児はポケットから携帯を取り出して開いた。

『櫛枝実乃梨』

 ディスプレイに表示された名前を見た竜児は少し驚いていた。彼女から直接電話がか
かってくる事なんて、もう何ヶ月もなかったのだ。彼女からの連絡はメールが基本、そ
れもほとんど大河経由だった。
 竜児は自分でも気付かないまま怪訝な表情を浮かべ、そして着信ボタンを押した。
「櫛枝?」
『あ、きゃきゃすきゅん!』噛みすぎだろ。心の中で激しく突っ込んだ。
「どうした?」
『いまどこ?』
「どこって、二階の空き教室。休憩コーナーになってる教室あるだろ」
『ごめん、良く聞こえない』
 竜児は、そりゃあ、お前が走ってるからだろ、と思いつつも、
「二階の空き教室だ! 休憩コーナー!!」と音量を上げて言った。
『うわ、ミスったあ、あたた』
「なんだなんだ?」
『・・・にケリ入れちゃった』
「ケリ入れたってなんだよ?」
『ああ、いいの。とにかく話しがあるから』
「話しってなんだ?」
『いいから。逃げないでそこにいて!』
「逃げねぇって」
『じゃ、すぐ行くから』
「待ってりゃいいんだな? …って切りやがった」

 仕方なく携帯を畳んでポケットにしまい込んだ。しまい込みながら、なんとなく漠然
と、嫌な予感がした。さらに教室にいた人々が口々に「ケリ入れたって」とか「話しっ
てなんだ?」とか「逃げないってことはここでバトルかよ」なんて事を言いながら次々
と教室を出て行くのを竜児は見た。ものの三十秒程で教室の中にいるのは竜児を含めて
も数人だけとなっていた。
 最初は原因が分からなかった竜児だが、言われていることを繋ぎ合わせてみて、えら
く的外れな誤解をされているらしいことに気がついた。

 誤:ケリを入れた相手に話しがあると言われたヤンキーが逃げずに待ち構えている。
 正:友人に話しがあると言われて竜児はここでまっている。

「まったく…」
 なんともブルーな気分になった竜児は溜息をついた。

 その時だった…

「た、高須クン!」
 竜児は教室の入り口に立っている実乃梨を見た。
「話しを聞かせてもらうよ」
「ったく、何だよ?」
 竜児は椅子から立ち上がった。
「逃がさん!」
「へ?」
 実乃梨はエボシに襲いかかるサンの様に駆け出すと机に飛び乗りその上を駆けた。竜
児に向かって一直線に、最短距離で詰め寄るために。そして思い切り踏み切った。
 しかしだ、机は床に固定されていないのだ。そんな不安定な物を踏み台にして、思い
切り踏み切ったら…

「あれ?」 … コケるにきまっている …

 机はぐらっと傾き、実乃梨の身体は前のめりになりながら竜児に向かって一直線にま
るでミサイルの様に突っ込んでいった。竜児はそれを避ける事が出来なかった。避けた
ら実乃梨の身体は机や床に叩き付けられてしまう。そんなヤバすぎる角度と速度で実乃
梨の身体は宙を舞った。

 机が倒れぶつかり合う激しい金属音 ――
「ぐげぇっ」という声と『ごん』という鈍い音 ――

「いったー」
 実乃梨が目を開けるとそこには竜児が大の字になって倒れていた。実乃梨は竜児の胸
に受け止められ、竜児の身体がクッションになって無傷だった。一方、フライングボディ
プレスをまともに喰らった竜児の方は机や椅子に背中を打ち付け、倒れ込んだ拍子に後
頭部を床に強打して身動き一つ取れなかった。意識はあるものの、ああ、本当に頭を打
つと星がでるんだ〜なんてことを虚ろな意識の中で思うのが精一杯で、ショックで自分
の呼吸が止まっていることも良くわかっていなかった。

「た かす くん」
 実乃梨は竜児の身体に跨がって、胸ぐらを掴んで引き起こした。
「どういう事?」
 竜児は何も答えない。応えられない。目のピントも合っていない。
 それでも実乃梨は問いただすのを止めない。テンションが上がりすぎていて、竜児が
どうなっているのか実乃梨は全く分かっていなかった。

「高須君! どういう事! アメリカに行くってホントなの?」

 実乃梨は叫びながら竜児の胸ぐらを掴んで揺すった。竜児はぼやけた頭をさらに振り
回されて、いよいよ意識が怪しくなっていった。それでも、実乃梨が言っていることが
自分にとって意味不明であることだけは分かった…ような気がした。

「ねぇ、なんとか言ってよ! 大河も連れて行くんだよね?」
 
 意味不明に唸るだけの竜児を床に押し付けて実乃梨はさらに問い詰める。

「そうだよね? ねぇ、答えろよ! 答えてよ! 高須君!」

 竜児のぼけた意識は、今度は一気に押し寄せた危険信号でパンクしそうになっていた。
呼吸が止まったままになっていた。胸の痛みが脳に伝わり横隔膜の再起動が開始される。
でも、なかなか起動しない。只今、竜児の自律神経系は上を下への大騒ぎである。その
お陰で意識が少しづつ鮮明になり始める。

『とにかく、くしえだ、やめてくれ』

 けれど、考えている事が声にならない。呼吸出来ていないのだから声が出る筈が無い。
ぱくぱくと口を動かしても音の一つも出やしない。

「りゅーじっ!!!」

 その声と同時に糸がちぎれる様な音がして、実乃梨は竜児から引き剥がされて一メー
トルほど後ろに向かって吹っ飛んだ。

「あ、あぁぁ、りゅ、りゅ…」
 実乃梨の襟首を掴んで投げ飛ばしたのは大河だった。
 ぐったりと横たわる竜児の姿を見て、大河の顔から一気に血の気が引いて雪のような
白さに変わっていった。それぐらい竜児の見た目はヤバかった。目はいっちゃってるし、
口の端からだらっと血が流れ出ていた。
 大河は竜児に駆け寄ってゆっくりと抱き起こした。
「りゅーじ、りゅーじ」
 ちいさな掌で弱々しく竜児の頬を叩く。
「しっかりして。りゅーじ」
 溢れた涙がこぼれ落ちて竜児の頬を濡らしていく。
「死なないで!」
 死なねぇって! これぐらいで死ぬかよ! だから、泣くな! 竜児は心で叫んだ。
「ぐうぅぅぅ、ふぅ、はぁ」
 そして、やっとの事で竜児の呼吸は再起動した。最初は弱々しく、徐々に元通りの力
強さを取り戻していく。
「た、いが…」
「りゅーじ! 大丈夫?」
「なんとか… いててて」

 投げ飛ばされた実乃梨は、ボロボロと泣きながら竜児を介抱する大河を見て、ようや
く自分がやらかした事を把握し始めていた。

「た、大河…」
 実乃梨は恐る恐る声をかけた。
「馴れ馴れしく呼ぶなぁ!!」
 叫ぶ様にそう言って、大河は実乃梨を睨みつけた。睨みつけて、やっと気がついた。
「み、み、み、みのりん?」
 投げ飛ばした相手が実乃梨だったことにやっと気がついた。
「なんで? どうして、みのりんが? こんな…」

「わ、私は高須君がアメリカに行っちゃうって聞いて、それを確かめたくて…」
「お前…さっきから、何言ってるんだ? さっぱり意味がわかんねぇ」
 大河に支えられてようやく上半身を起こした竜児は弱々しく言った。

「え? だって、狩野先輩に誘われたんだよね」
「はぁ?」「へ?」竜児と大河は間の抜けた声を上げた。
「みのりん…。あのね、竜児が誘われたのはね、かのう屋のバイトよ」
 呆れ顔で大河が言った。
「ああ。卒業したらかのう屋でバイトしないかって、そのまま正社員になってもいいっ
て、言ってくれてな」
「え? えええええ?」
「断ったけどな」
「で、でも、引き受けてたよね」
「引き受けたのは…かのう屋の…お客様モニターだ」
 口の中が血まみれで段々話すのが辛くなってきていた。
「おきゃくさまもにたー?」
「アンケートみたいなもん」

 つまり…

「か、勘違い? 早とちり?」
「しらねぇよ」
「え? あれ? 大河は知ってたの?」
「バイトの事は昨日竜児から聞いてたから。モニターは初耳だけど」
「ったく、あー、くそ」
 竜児の唇の端からどろっとした赤い液体が溢れた。
「わわ、竜児。大丈夫?」
 大河はポケットからハンカチを取り出して溢れた血を拭った。
「ハンカチじゃなくてティッシュを使え」
「ばか! そんなのどうでもいいわよ。ホントに大丈夫なの?」
「口の中が切れてるみてぇだ。大したことないだろ」
 強がってみたものの口の中はどろっとした鉄の味で満たされいて最悪だった。口を開
けば血が溢れて、かといって飲み込むのも気持ち悪い。大河の淡いピンクのハンカチは
血でまだらに染まって見るも無惨な姿になっていった。

 実乃梨は冷たい床にへたり込んだまま、その様子を呆然と眺めていた。
 勘違い… ドジ…
 二人の間に疑う余地など微塵も無かったのに。

「は、はは、よかった」
 実乃梨は安堵の表情を浮かべて、そして大河に向かって微笑んだ。
 ふにゃっと溶ける様な笑顔で大河を見た。
 大河は… 実乃梨の表情を、笑顔を見た。 
「よかった? なんで?」
 大河はゆっくりと立ち上がり、実乃梨を睨みつけた。
「え、あ…た、たいが?」
 血の気を失った雪の様に白い小さな顔があった。
 怒りと哀しさで凍り付いた視線に貫かれ実乃梨の背筋は震えた。
 
「竜児にケガさせておいて、なんでヘラヘラしてんの?」

 そして実乃梨は本当に自分が何をしたのかを自覚した。
 自分が大河の愛している者を傷つけたことを認識した。

「ねぇ、どうして笑ったの? ひどいよ」
「ご、ごめん。大河」
 大河は音もなく実乃梨の間近に歩み寄った。 

「こんなに血が出てるのに…」

 大河は血でまだらに染まったハンカチを実乃梨の胸に叩き付け、左手で実乃梨のブラ
ウスの胸ぐらを掴んで引き上げた。ちぎれかけていたブラウスのボタンが弾けて落ちた。

『だめだ、大河』竜児はそう言おうとしたけれど、口の中に溢れる血糊のせいで声を出
す事が出来なかった。

「なんとか言ってよ…」
「わ、私は…高須君がどこにも行かなくて良かったなって」
「そう…」
「う、うん…」
「…疑ったんだね…竜児のこと」

 … わかってない。この女はなんにもわかっちゃいない。   

『嫁に来い』彼は言ってくれた。
『大河を俺にください』
『大河と結婚する』
 あたしと結婚することを、みんなと約束してくれた。
 どれだけの覚悟で約束をしてくれたのか…
 そんな竜児を櫛枝実乃梨は冒涜した!
 ぐつぐつと心が煮立っていく。心の中のケモノが暴れ出す。
 それは大河に右手を振り上げさせる。固く拳を握らせる。

 実乃梨は大河を見た。全部の感情がごちゃ混ぜになった様な表情で、目に涙を浮かべ
て、自分に拳を振り下ろそうとしている親友の姿を見た。殴られても仕方が無いと思っ
た。それで許してもらえるのなら、思い切り殴り飛ばされたかった。蹴り倒されること
も覚悟した。けれど…

 拳は振り下ろされなかった。

 大河は自分の中のケモノを、衝動と言うバケモノを必死に押さえ込んでいた。一時の
感情の爆発に身を任せて、そして人を傷つける。そんな事はもうしないと約束したから。
誓ったから。固く瞼を閉じて暴発寸前の心が弾けてしまわない様に押さえ込む。唇を小
さく震わせながら肩を揺らして呼吸する。ぶるぶると震える拳をゆっくりと押し開き、
振り上げた腕を理性の力で引きずり下ろした。最後に実乃梨の胸ぐらを掴んでいた左手
がゆっくりと開いて彼女を解放した。

「大河…」
「あやまるなら…竜児に…謝ってよ…」

 大河は叩き付けたハンカチを拾い上げ竜児の傍らに戻り、冷たい床に座って竜児の口
元を拭った。竜児はそんな大河の頭を無言で撫でた。優しく旋毛を撫でられて大河は涙
を浮かべて呻いていた。

 実乃梨は這う様に二人に近づき、
「ごめん。高須君。本当に、ごめん」と床に座ったまま、まるで土下座でもするみたい
に何度も頭を下げた。
「もういい。事故みたいなもんだからな」
 竜児がそう言うと、また唇の端からだらっと血がこぼれた。

「いったい何事?」
「ママ…」
 十人ほどの野次馬の間から現れたのは大河の母親だった。
「えーと」大河は説明に困り竜児を見た。
「櫛枝が机の上でふざけてたらスッ転けて、助けようとして下敷きになった俺が口の中
を切ってこの有様」
 と話すそばから血がとろとろと。ビジュアル的には吸血鬼。
「あらあら」
「んで、血を見た大河がパニクって号泣」
「あらあら」

「そ、そーだよ。櫛枝がふざけが過ぎるからこんなことになるんだよ〜」
 思わぬ援護射撃を放ったのはしっかり櫛枝の後を追いかけてきた春田だった。
「まったく、何考えてんだか」
 竜児は呆れ顔でそう言った。
「ほ〜んと、高っちゃんがいなかったら大怪我だよ〜」
 春田のその言葉に、そこにいた全員が空気を読んだ。

 そうか、そうか、不慮の事故か。
 櫛枝の事だからそんなこともあるだろう。いや、そうに違いない。
 何もメンドーな事にする必要ないじゃないか…
 良くわかんないけど本人達も納得してるっぽいし…
 せっかくの文化祭なのに職員室に連行されて事情聴取なんてノーサンキュー。

 野次馬全員の意思がここにめでたく一致した。見物人は一人二人と去ってゆき教室は
平静を取り戻していった。野次馬の中にいた能登はその場に呆然と立っていた。

「え、え、え?」実乃梨は状況の変化に戸惑うだけだった。

 竜児はゆっくりと立ち上がり、大河の手からハンカチをつまみ取った。ポケットから
自分のハンカチを取り出して大河に渡して、大河のハンカチで唇の端を拭った。

「口の中が気持ち悪ぃ。ちょっと濯いでくる」
「深く切ってるといけないから、保健室で診てもらったら?」
 大河ママは冷静に言った。
「そうだね。竜児…、行こ」
 竜児は口を開くのが面倒で、ただ大河に向かって頷くだけだった。

「大河…」
 実乃梨のかけた声に大河はただ沈黙して背中を向けた。

 竜児は春田の肩をポンと叩いて大河と一緒に教室を出ていった。それを見送った春田
は床の上に座ったままの実乃梨の傍にしゃがみ込んだ。

「櫛枝〜。俺も悪かったよ。なんか俺らのガセネタで大騒ぎになっちゃってさ〜」
「はは、はぁ〜、あたしゃ情けないよ」
「う〜ん、そだね」
「あっちゃ〜、春田君に言われちゃったよ」
「え〜、それってバカにしてる?」
 そう言って春田は立ち上がった。
「いつまでも床に座ってたら痔になっちゃうよ」
 春田は手を差し出した。
「ありがと。春田君」
 実乃梨は春田の手を取らないで立ち上がった。
「櫛枝さぁ、ジャージかなんかに着替えた方がいいんじゃね?」
「え? そうなの?」
 実乃梨はブラウスの襟に触れて、端がちぎれているのを確かめた。それにボタンもい
くつか取れていた。
「ありゃりゃりゃ」
「ほいじゃね、待ち合わせしてるからさ〜」
 春田がひょこひょこと教室から出て行くと、教室に残っているのは実乃梨と能登だけ
になった。ちょっと離れて気まずそうにしていた能登が実乃梨に歩み寄った。

「ごめん。なんか、とんでもない事になっちゃって」

 自分の当て推量でとんでも無いことになったことが申し訳なかったのだが、それ以上
に申し訳なかったのは修羅場をどうにもできなかったことだった。場を収めたのは竜児
と春田の機転でそれを見ていることしかできなかった能登はどうにも情けない気分になっ
ていた。

「はは、ま、まあ悪いのは私なんだし。あーあ、もう、よれよれだよ」
 実乃梨はブレザーを脱ぎ捨ててスカートからはみ出しているブラウスを直し始めた。
「わわっ」と、声を上げて能登はそっぽを向いた。その顔は真っ赤だった。
「く、櫛枝、む、胸」
「え?」と実乃梨は自分の胸元を見た。ボタンが取れてしまったせいでブラウスの胸元
は超大胆に開いていて、胸の谷間と繊細な細工を施された薄桃色の布地がばっちりと見
えてしまっていた。
「わわ、わー、み、見ないでー」
 顔を真っ赤に染めて実乃梨は腕で胸を隠してその場にしゃがみこんだ。

 その時だ…

「突入!」という凛々しい声が響いた。
 それを合図に黒い剣道着を着た男子生徒三名と柔道着を着た男子生徒三名が教室に駆
け込んできた。突然の事に実乃梨も能登も金縛り状態で、ただ成り行きを見守るだけだっ
た。六人の男子生徒に続いて教室に入ってきたのは竹刀を担いだ狩野すみれだった。
「こ、これは…」状況を見てすみれは唸った。もう、唸るしか無かった。

 そこに駆け込んでくる男がもう一人。
「むぅ、遅かったか。状況は? って、か、会長!?」
 駆け込んできたのは北村祐作現生徒会長。
「会長はお前だろう。まあ、話は後だ。見てみろ。この由々しき状況を」

 北村が見たものは…

 床に乱雑に捨てられたブレザー
 ボタンのちぎれたブラウスの胸元を腕で隠して床の上にへたり込む女子生徒
 そしてそれを呆然と眺めている男子生徒が約一名=能登久光

「生徒会室に顔を出したら乱闘騒ぎだと言うのでな。お前も不在だったから平和維持軍
と一緒に出動したのだが…なんたる不祥事」
 すみれは冷たい怒りの表情で能登をにらみつけた。
「能登…。お前、なんて事を」
 祐作は搾り出すように、呻くようにそう言った。

 そこに遅れて駆け込んできた木原麻耶、
「祐作。どうなって…って、い、いやぁぁぁ」
 想定外の状況に顔面蒼白。ふらふらと後ずさり壁にもたれかかった。

「あ?」能登は自分の置かれている状況を改めて冷静に考えた…

 母さん…、
 誰がどう見たって、この状況は性犯罪なわけで。
 母さん…、
 僕の人生、ひょっとしてオワタ??

「あ、あ、こ、ここ、これは、ち、ちち、ちがうんだぁぁ」
 能登はうろたえながらも無実を主張してみた。だが、能登の見立て通り、どうしたっ
て状況が悪かった。
「く、櫛枝。なんとか言ってくれよ」
「そそ、あの、えと、その、うわー、だめだよー」
 何をどう説明したものか、さっぱり分からず実乃梨は動転するばかり。
「の、能登くんは、その悪くないんだけど、実は諸悪の根源っていうか、黒幕っていう
か、そうじゃなくて、そうそう、ちょっとした誤解で投げ飛ばされた拍子にボタンがと
れて、そしたら能登君におっぱい見られちゃって…」

 まったく意味が分からないのにしっかり状況は悪化した。

「可哀想に動揺しているようだな。無理も無い。どうする? 会長」
「とにかく櫛枝を保護しないと。先輩と木原は櫛枝を保健室に」
「わかった。北村、上着を貸せ」
 祐作は上着を脱いですみれに渡した。すみれはそれを実乃梨の肩から掛けて、優しく
手を取り立ち上がらせた。麻耶は床に捨てられた上着を拾い上げ、かるく叩いて埃を落
として抱えた。
「あ、怪我は無いんで。保健室は、その…」
 保健室には竜児も大河もいるはずで、この状況でそこに行くのはいくらなんでも避け
たい実乃梨だった。
「そうか。では相談室でいいな? 歩けるか?」
「あ、ああ、大丈夫です」
 すみれと実乃梨の後を追うように麻耶も教室を出た。出て行く瞬間、麻耶は絶対零度
の視線を能登に浴びせて、ぷいっと振り向き歩いていった。

「悲しいぞ。能登。まさか自分の友人を取り調べる事になろうとはな」
「き、北村。ちがうんだ」
「とにかく、話は生徒会室で聞こう。連行!」
 六人の大男に取り囲まれ、重々しい足取りで生徒会室に連行される能登の心にドナド
ナの悲しい調べが響いていた。

***

 能登と実乃梨の証言から事件のあらましを把握した祐作とすみれはなんとも情けない
気分になっていた。

「まったく、三年がよってたかって何をやってるんだか」
 呆れ顔ですみれは言った。
「まあ、良かったですよ。しょうもない話しで」と、祐作。
「まったくだな。それにしても勘違いが原因とはな…」

「それについては俺が完全に早とちりしちまったもんで…すみません」
 能登はひたすら謝っていた。
「わたしも、なんかもう、うわーってなっちゃって…ホントにすみませんでした」
 実乃梨もひたすら平謝りするばかりだった。

「高須だけが災難だったんだな。あいつは大丈夫だったのか?」
 すみれは心配そうな表情を浮かべて言った。
「高須君、口の中を切っちゃったみたいで。たぶん保健室」
 実乃梨は申し訳なさそうに言った。
「そうか。連絡が無いってことは大した事は無かったんだろう」
 祐作にそう言われて、実乃梨の表情がわずかに緩んだ。

「能登、疑ってすまなかった」
 祐作は頭を下げた。
「まあ、あの状況じゃな。仕方ないよ」 
「うむ、しかし我々も早とちりだった。悪かった。この通りだ」
 すみれも非を詫びて頭を下げた。
「え、いや、そんな」
 新旧会長に頭を下げられ、かえって恐縮してしまう能登だった。
「北村、もういいよな」
「ああ。本当に悪かったな」
「いいって。なんせ俺は諸悪の根源で黒幕だからさ」 
「能登君よ、それはもう言わないでおくれよ」
 恥ずかしそうにそう言った実乃梨の言葉に、能登は、へへっ、と軽く笑って生徒会室
を出て行った。
「本当にお騒がせしました」
 実乃梨は体育会系らしくビシッとお辞儀してから生徒会室を出た。実乃梨は生徒会室
のドアを閉めておもいきり溜息をついた。今日ほど自分のドジっぷりを思い知らされた
ことは無かった。

「散々だったな」
 廊下で実乃梨を待っていた能登が声をかけた。
「ホントだよ」

「あーあ、なーんで、あんた達の言ってる事を真に受けたんだかねー」
「俺もマジだったからなー。妙に説得力が有ったんじゃないの」
「それは言えてる」
 うんうん、と実乃梨は頷いた。
 
「私もう一回大河と高須君に謝ってくる」
「おい、待てよ。櫛枝、諸悪の根源を置いていくなよ」

 二人は早足で保健室に向かって歩いていった。

***

 生徒会室は元の喧噪を取り戻していった。体育館のイベント進行が遅れているだの、
隣のクラスの行列が長過ぎて邪魔だの、ひっきりなしに問題が持ち込まれ役員達と実行
委員達はその対応に忙殺されていた。

「やれやれだな」
 すみれは呟きパイプ椅子に腰掛けた。
「ですね。会…」
 会長と言いかけて祐作は苦笑い。
「狩野先輩。お久しぶりです」
「そうだな。まあ、座ったらどうだ」
 祐作も椅子に腰掛けた。

「本当にどうなることかと思いましたよ」
「同感だな」
 今度は二人揃って苦笑いだった。

「それにしても…」
 祐作はすみれの顔を眺めた。
「なかなか来てくれないから心配しましたよ」
「いろいろと野暮用があってな。高須にとっては災難だったろうが」
 祐作にはバツが悪そうに話すすみれが随分遠い存在に思えていた。
 一年近く会わないでいるうちに彼女は随分と大人に近い雰囲気を身につけていて、大
学生どころか社会人にすら思える程だった。清廉で凛とした雰囲気には磨きがかかり、
祐作から見てもある種の近寄り難さすら感じる程だった。

「先輩のせいじゃないですよ」
「うむ、まあ、そうなんだがな…」
「どうして高須にバイトを?」
「ちょっと親父に頼まれてな。ウチの親父も例の一件で高須の事を知ってたしな。高須
はうちの常連客で店員の間でもちょっとした有名人なんだ。生鮮食品に精通している男
子高校生なんて珍しからな。有望な戦力になってくれるだろうと、まあそんなところだ」
「… なるほど」
「高須君は成績も料理の腕も一流ですからねぇ」
 二人の様子をうかがっていた麻耶が割って入る様にすみれに言った。

「ほう、そうなのか」
「ええ。そりゃもう。ねー、祐作」
「あ、ああ。そ、そうだな」
 なんとなく麻耶に気圧される祐作だった。
 その様子がおかしくて、すみれは小さく笑った。

「ところで、北村」
「え、はい」
「あの悪趣味なシロモノは一体なんだ?」
 と、すみれが指差したのは失恋大明神の社だった。

「あの、それは…」
 祐作は言葉に詰まった。さすがに『あなたにフラれて失恋大明神になっちゃいました』
なんて言えなかった。
 そんな祐作の様子を見て麻耶が話し始めた。
「それはですね、北村君が誰かさんにこっぴどくフラれちゃってですね、それ以来、北
村君は失恋大明神としてみんなの恋の悩みを聞いているんですよ。聞いてるっていうか、
拝まれてるっていうか、拝み倒されてるっていうか、どっちかって言うと悪いものは全
部北村会長に押し付けちゃえ、みたいなそんな感じなんですよ」
「ほう。そいつは驚いたな。さくらは一言も言ってなかったぞ」
 そりゃ言わないだろう。と祐作は思った。

「実は…、あの後、あまりにもドツボだったもので、自分をふっきるためにやってみた
ら予想以上に受けてしまって、引っ込みが付かなくなりまして」
「私はもういいんじゃないかなーと思うんですけどね。いつまでも失恋キャラなんて引っ
張ってちゃだめですよ。そう思いませんか? 先輩」
「そうだな。過ぎた事をいつまでも引きずっていても仕方あるまい」
「ですよねー。さっさと失恋大明神なんて廃業しちゃえばいいんだよ」
「しかしだな…」
 実を言えばちょっとだけキャラに愛着もあったりするのだ。
「しかしも案山子も無いの」
「ふふ、北村。形無しだな」
「先輩…」
「彼女の言う通りだと思うぞ。私のせいで北村が失恋大明神になったなんて言われるの
も不愉快だしな」
「そ、そ、そんなつもりは…」

「あ、時間です。会長、体育館に行かないと」
 麻耶はしれっと言った。
「えっ?」
「では、狩野先輩、失礼します」
「えっ、木原、ちょっと…」
 留まろうとする祐作の言葉を無視し、麻耶は彼の右手首を捕まえて引きずるようにし
て生徒会室を出て行った。
 その様子を眺めてすみれは微笑んだ。
 あれは、あれでお似合いだな… なんて思いながら。

***


 保険室の長椅子に並んで座る竜児と大河、それに大河の母はようやく落ち着きを取り
戻していた。竜児の口の中はやっぱり切れていたのだが、ガーゼで圧迫止血することで
無事収まった。止まらなかったら歯医者で縫ってもらわないとだめね、という養護教諭
の言葉に大河の方が凹んでしまい、それを当の竜児がもごもご言いながら励ますという
微笑ましくも微妙な光景が展開していたのだが、ともかく無事に出血は収まって大河の
表情もすっかり柔らかさを取り戻していた。

「ホントにどうなる事かと思ったわよ」
「すまねぇな」
 竜児は口の中にガーゼを入れたまま、ぼそぼそと言った。
「まったく。無茶してもらっちゃ困るわ」
 大河ママはちょっとだけ厳しい表情で竜児を見た。
「すいません」
「まったくよ」大河もジトッと竜児を睨む。

 やむを得なかったとは言え、軽率と言えば軽卒だったな、と竜児は思った。結果的に
は自分も櫛枝も無事だったけれど、それは単にラッキーだっただけで、打ち所が悪けれ
ばちっとも笑えない状況になっていたかもしれないのだ。それに吹雪の中でピクリとも
動かない大河を見つけた時の自分の動揺っぷりを考えれば、ぶっ倒れている自分を見て
大河がどれだけショックを受けたのか痛い程分かるのだ。そんなワケで…
「すまねぇな。心配させちまって」と、被害者なのに謝らざるを得ない竜児だった。

「でも、しょうがないよね。悪いのはみのりんだもん。竜児は悪くないもの…」
「許してやれよ。悪気はねぇんだから」
「わかってるわよ。そんなの…」
 
 大河がそう言い終わると同時に保健室のドアが開いた。そこにバツが悪そうに立って
いたのは実乃梨と能登だった。ドアが開いたことに気付いて入り口の方を見た大河は、
ふっと目を逸らして俯いた。実乃梨に悪気が無かったのは分かっているけれど、あっけ
らかんと許す気分にもなれなかった。大河にとってはやっぱりショックが大きくて、本
当にわけもわからずボロボロと泣いてしまうぐらいのダメージだったのだ。

「どうしたの?」
 養護教諭は実乃梨に声をかけた。
「あの、高須君の様子が気になって」
「ああ、大丈夫よ。血も止まったみたいだし」
「良かった。少し、話をさせてもらってもいいですか?」
「ええ、いいわよ」

 実乃梨は保健室の奥の長椅子に腰掛けている大河と竜児の前に立った。
「櫛枝…」
「…」大河は何も言わなかった。
「高須君、本当にごめんなさい。それにありがとう。春田君の言ってた通り高須君がい
なかったら本当に大怪我してたかもしれないよね。それに、大河も、ごめんね。早とち
りして、高須君に怪我させちゃって。笑ったのも、ごめん。なんかホッとしちゃって。
もう、完璧に自爆の誤爆で、ホントにこの通り」
 そう言って、冷たい床にすとんと正座して土下座を決める実乃梨だった。

「櫛枝、もう、いいって。土下座なんてすんなよ」
 そう竜児に言われても実乃梨は顔を上げなかった。
 竜児はすっかり困惑。隣の大河の顔を見て、『もういいだろ』と目で合図した。

 でも、大河はそんなに簡単に許せる気分ではなかった。いくら親友の実乃梨でも、い
や、親友だから許せなかった。竜児のことをちゃんと知っているハズなのに、彼のこと
を疑ってかかった実乃梨が許せなかった。
「どうして、竜児のこと疑ったの?」
 実乃梨は顔を上げて大河を見た。
「高須君がアメリカに留学するのって妙にリアルだったから…」
「それだ、それ。なんでかのう屋のバイトがアメリカ留学になっちまうんだよ?」
 まさにそれが知りたかったのだ。なんでこんな事になっちゃったんだよ? と竜児は
実乃梨に聞きたかったのだ。

「それは…」
「すまん、高須。実は全部俺のせいだ」
 実乃梨の背後で気まずそうにしていた能登が声を上げた。そして、能登は昨日の盗み
聞きから始まった事の顛末を包み隠さず全部話した。

「むぅ…」竜児はうなり、
「はぁ…」と、大河ママは眉間を指でつまんで溜息をつき、
「…」大河は無言で呆気にとられていた。

「く、くだらねぇ。そんな勘違いのおかげでこの有様かよ…」
 竜児は怒るというより、もう、ただ、あきれるばかりだった。
「俺はもう本当に高須がMITに行くもんだと」
「うんうん、なんかホントに説得力があってさ」
 正座したまま実乃梨は頷く。
「そりゃ説得力あるだろ。能登が完璧に勘違いしてるんだから」
「けどさ、そんなの言い訳だよね。高須君のこと疑ったのは事実だし、大河を置いてい
くなんて言ったら本当に殴るつもりだったんだから」
「おいおい」
「だから、ホントに…ホントにゴメンね大河。高須君も、ゴメン」

 実乃梨は床に額を擦り付けるようにもう一度土下座した。
 
「みのりん、もういいよ…」
「ごめん、ほんとにごめん」
 顔を伏せたまま呻くように謝り続けた。
「…ホントにもういいよ。今回だけは許してあげる。親友だもん。竜児の怪我も大した
ことなかったし、だから今回だけは特別」
「大河…」
 実乃梨はようやく頭を上げて大河を見た。
「あたしも、みのりんのブラウス、ぼろぼろにしちゃって…」
 実乃梨のブラウスは外れたボタンの代わりに安全ピンで留めてあった。破れかけた襟
も安全ピンで留められていて、あちこち安全ピンだらけだった。
「これはいいんだって。私が悪いんだしさ。とにかく、ごめんね」
 正座したままで実乃梨は言った。

「もういいよ、みのりん。心配してくれたんだよね」
「うん…、大変だーって思って勝手にパニックになって突っ走ってた」
「ったく、自重しろよ。本当に大怪我するぞ」
 少しあきれた口調で竜児が言った。
「ごめん。高須君。今度ばかりはホントに身にしみたから…」
 実乃梨は俯いて溜息をついた。
「なんかもー、何やってんだよって感じ。考えてみたらさ、私、ずっと大河を傷つけて
ばっかだよ。こんなの親友失格だよ…」
 本当に傷つけてばっかりだ、と実乃梨は思った。そのたびに許してもらって、なのに
また傷つけて、そんな事ばかりだった気もするのだ。大河の父親が現れたときもそうだっ
た。その後、気まずくなって距離を置くようになった。それだって多分、大河を傷つけ
たのだ。再び、彼が現れたとき、竜児に自分の経験を、大河の父がどんな人物なのか語
らなかった。それで大河も竜児も傷つけた。宝物のガラスの星を粉砕したのも自分だっ
た。大河が遭難しかけたのも自分と亜美の喧嘩が原因といえば原因だった。

「ホントに、失格だよね…」
「そんなことないよ」
 大河は首をふった。
「みのりんは一番大切な友達だよ。あたしの大事な親友だよ」
「大河…」

「きっとね、みのりんと友達になれたから、みのりんが傍に居てくれたからあたしは竜
児を好きになれて、こうやって一緒に居られるんだよ。もし、みのりんと出会えなかっ
たらね、きっとあたしはもっと酷くなってて、竜児と出会えても、面倒なんか見てもら
えなくて、好きになってもらえなかったと思うんだ…」

 大河は優しい眼差しで実乃梨を見つめた。

「だからね…、ありがと、みのりん。心配ばっかりかけてたけど、でもね、もう大丈夫
だから。竜児がいてくれるから私はもう大丈夫だよ」

 実乃梨は潤んだ瞳で大河を見た。
 ただ、シンプルに、単純に、嬉しかった。
 実乃梨は自分が居なくてもきっと二人はこうなっただろうと思ったけれど…
 でも、大河がそう思ってくれていることが堪らなく嬉しかった。

「大河は強くなったね…」
「そうかな」
「そうだよ。私も見習わなきゃね」
 それは実乃梨の本当の気持ちだった。
 もう大河は世界を拒絶していない。諦めていない。
 世界を受け入れて、恋人と、高須竜児と一緒にここで生きて行こうと思っている。
 二人で幸せになろうと思っている。
 それは強さなんだと実乃梨は思う。

 大河は実乃梨に微笑んで、実乃梨も大河に微笑んだ。

「と、友達っていいよな…」
 能登だった。能登は実乃梨と大河のちょっと青春な会話に目を潤ませていた。
 感動に震える諸悪の根源を大河は冷たい目で見た。
「結局、一番悪いのはアンタよね?」
 大河の冷めた声は能登の背筋を凍らせた。
「そ、そうだな。お、お、俺のせいだよな」
 黒幕はビビッていた。もうビビりまくっていた。
「本当にすまなかった。俺も、これ、この通り」
 すとん、と実乃梨の隣に正座をすると、へこへこと土下座しはじめる能登だった。
「すまん、高須。この通りだ」
「もういいから。立てよ、櫛枝も」竜児は言った。
「い、いいのか?」身体を起こして能登は言った。
「竜児がいいって言ってるんだからいいのよ」

 能登と実乃梨は立ち上がり、なぜか小声で「せーの」と言って同時に「ごめんなさい」
と頭を下げた。

『ぴぴぴ、ぴぴぴ、ぴぴぴ』
 実乃梨のポケットの中から電子音が響いた。
「だぁーっ、ヤバ、クラス展示の当番だった。ごめん、大河、私、行くね」
「はいはい、分かったから」
「あわただしい奴だなぁ」能登は暢気に言った。
「あんたも同じシフトなんだよ! このサボり魔が」
「うぎゃぁ」
 ぎゅっと耳を掴まれて能登は絶叫。そのまま実乃梨に引きずられるように保健室を出
て行った。

「ホントにあわただしい娘ね」
「みのりんだからね」
「そうだな。さてと、血も止まったし、ぼちぼち行くか。で、何処に行くんだよ?」
「地学部!」大河がきっぱりと応えた。
「ち、地学部か。い、いいんじゃねぇか。人気らしいぞ」

 言いつつも、ああ、絶対に女子部員に顔を憶えられちゃってるな、俺。と思い、何回
も違う女の子をつれて観に行く俺ってどう思われてるんだろ。なんてことがちょっとだ
け気になる竜児だった。

***

 グランドの中央でキャンプファイヤーが燃え上がる。藍色の空をバックに茜色の火の
粉が無数に舞い、文化祭の締めくくり、後夜祭が始まった。祐作は表彰式の仕切りを生
徒会の二年生に任せ、その様子を少し離れたところで眺めていた。
 まず、福男の賞品授与が行なわれ、商品である『すみれのノート一式』が福男の手に
渡された。それと同時に二十人程の男子が歓声を上げ、中には泣いている者までいた。
今年の福男は陸上部の二年で、歓声を上げたのは陸上部員達だ。去年の福男レースで
ヤンキー高須と女子ソフト部員に福男の優勝を奪われるという最大級の屈辱を受け、一
年がかりで雪辱を果たしたのだ。部員達が歓喜に沸くのも無理は無い。
 続いてミス大橋コンテストの優勝者への戴冠が行なわれた。優勝者は一年の女子で、
福男はぎこちなく彼女の頭にスワロフスキーが輝くティアラを載せた。すぐに彼はダン
スを申し込んだが、あっさりと断られ、今度は悲しみの涙にくれたのだった。
 最後に総合優勝したクラスの代表者に巨大な目録とショボイ優勝カップが渡され、優
勝したクラスの生徒達は一斉に歓声を上げた。

 終わった。一日半限定のバカ騒ぎが終わった。

 テントの下で軽く放心している実行委員たち。
 炎を囲んでバカ騒ぎのエピローグを思い思いに楽しむ者。
 その様子を疲労感と達成感がごっちゃになった表情で眺める生徒会役員。

 祐作は燃え盛る炎を眺めながら、寂しさと達成感を同時に味わっていた。生徒会長と
して皆に支えられて一大イベントである文化祭を無事に実行できた事が誇らしかった。
同時にそれは生徒会長としての仕事が終わったということでもあり、高校生活の終わり
がすぐ近くに来ているということでもあった。

「さてと…」
 いつまでも感慨にふけっている場合ではなかった。祭りが終われば待っているのは後
始末。仲間達の所に歩き出そうと踏み出した祐作の目に炎をバックに近づく人影が映っ
た。それが誰なのか祐作にはシルエットだけで分かった。

「狩野先輩」
「良い文化祭だな」
 すみれは涼やかな表情で祐作に言った。
「みんなのおかげです。本当に、みんなに支えてもらって」
「そうだな。私もそうだった。いいものだな」
「はい…」
 すみれは祐作の隣に立ち、二人は並んでグランドの様子を眺めた。

「狩野先輩…。手紙、ありがとうございました」
「ふ、礼には及ばんさ。お前の手紙と同じ、あれは半分、自分宛だ」
「でも、勇気を貰えました」
「そうか。私にも必要なものだからな」

 Fortune favors the brave. / 運命の女神は勇者に味方する。
 それが手紙の締めくくりの言葉だった。

「先輩、いつまで日本に?」
「さくらに聞いてないのか?」
「はい」
「そうか。明日の便で向こうに戻る」
「戻るんですね」
「ああ、そうだ」

 グランドに設置されている年季の入ったスピーカーからワルツが流れ始めた。

「さて、そろそろ帰るとするか。親が首を長くして待ってるからな」
「次はいつ日本に?」
「さあな。来年の夏、かもな」
「会えますか?」
「友人として、か?」
「はい」
「いいだろう」

 すみれは一歩前にでて振り返った。
「北村…」
「はい」
「お前は良い会長だ。ちゃんと引き継げよ」
「…はい」
 応えた祐作の声は小さくかすれた。
 すみれは小さく息を吐いて、それから微笑んだ。
「以上。さらばだ、北村祐作」
 そして、すみれは歩き出す。綺麗な黒髪を躍らせて。

「狩野先輩!」
 祐作の声にすみれは振り向く。
「Good luck!」
 祐作は右の拳を突き出して親指を空に向かって突き立てた。
 彼女に祐作が言える事はそれだけだった。彼女の資質を信じているから、祐作にでき
ることは彼女に幸運が訪れることを願うことだけだった。

「Same to you.」
 すみれはそれだけ言って微笑み、再び祐作に背中を向けて歩き出した。
 右拳を空に、宇宙に突き上げて、人差し指で自分の目指す場所を指し示した。
 やがて掌は開かれ、大きく二回だけ振られた。

 祐作はその姿を見送って、眼鏡を外して袖で濡れた頬を拭った。
 力強く、正面を見据えて眼鏡をかける。

 まだ、祭りは終わっていない。
 生徒会長、北村祐作は仲間達の場所に向かって走り出した。
 最後の段取りのため。そして、もう一つ。

 生徒会長ではなく、北村祐作としてやらなければならない事がある。

***

 竜児はグランドの端のフェンスに寄りかかっていた。隣には大河がいる。大河の母は
一足先に息子とベビーシッターが待つ家に帰って行った。

 ―――

 三人でプラネタリウムを観て、いくつかの展示を見て、それから竜児のクラスに行っ
てコスプレ無しで普通に写真を撮った。機材がいいのか、写真部の女子部員の腕がいい
のか分からないが、それはとても良く撮れていて、大河の母は普通のプリントとデータ
の入ったディスクを購入していた。
 大河の母は娘に「竜児君と二人だけで取ってもらったら?」と言い、そして二人は照
れながら一枚の写真に収まった。出来上がったプリントを眺めながら盛り上がる母娘の
姿がとても素敵で、それが竜児には嬉しくて、そして切なかった。

 五週間後、母は去る。けれど二人で彼女から逃げ出したあの冬の日のことを思えば、
三人でこんなふうに過ごせるのは本当に素敵なことなのだと竜児は思った。

 ―――

「口の中、大丈夫なの?」
「んん、まあ、大丈夫だろ。血も止まってるし」
「散々だったわね」
「まったくだよ。治ったら能登のおごりでラーメンだな」
「あたしも奢ってもらおっと」
「おぅ、炒飯と餃子もつけよーぜ」
「あたしチャーシュー追加トッピングね。そうと決まれば早く治しなさいよ」
「んな簡単に治るかよ」
「へへ」大河は軽く笑って、竜児に微笑んだ。
 そんな大河を竜児は穏やかな眼差しで眺めた。

 グランドの中央、炎の周りではスピーカーから流れるワルツに合わせ数組のカップル
がぎこちなく踊っている。それを冷やかしている野郎どももいるが、ここでは冷やかさ
れた方が勝者だ。

「ねぇ、竜児」
「ん?」
「ホントにさ、狩野先輩にアメリカに来ないかって誘われたら、どうする?」
「行かねぇよ」
「あたしがいるから?」
「まあ、そう言っちゃえばそうなんだけど。そりゃ、すげぇ環境で勉強できるのって魅
力かもしんないけどよ…」
 竜児は大河から視線をそらして斜め上を見ながらポリポリと頬を掻いた。
「…けど、俺にとっちゃあ、お前と生きてく事の方が大事なんだよ」
「…ありがと」
 嬉しさに大河の頬はゆるんでしまう。それが照れくさくて、
「けど、そう言う事はさ、ちゃんと顔を見て言ってよね」なんて言ってしまう。

「お、おぅ。次からは気をつける」
「ならいいわよ」
「言い直そうか?」
「恥ずかしいからいい」
「そりゃ、助かる」 
 竜児は大河の姿を視界に入れようと首を少し傾けた。それを待っていたかの様に大河
の頭がふっと動いて紅の光をたたえた瞳が竜児を見た。 

「あのね、竜児…」
「ん?」
「もし、あたしのために竜児が何かを諦めなきゃいけないんだったら、それはちゃんと
言ってね」
「聞いてどうするんだよ?」
「憶えとく…」
 呟く様に大河は言った。
「あたしは竜児を諦めたりできないけど、竜児があたしの為に諦めたものは全部私の荷
物だから。それをどうする事もたぶん出来ないけど、でもね、憶えておく事ぐらいはきっ
とできると思うから」
 竜児は彼女の意思を削り出して作った様な優しい光を宿した瞳を見た。
「わかったよ。お前も、な…」
 大河は無言で頷いた。
 
 二人は炎の生み出す暖かい灯りに照らされたお互いの姿を眺めた。
 その灯りには心を照らす力がある。
 普段は照れくさくて言えない言葉を引っ張り出す力がある。

「あのさ…」
 そう言いながら、大河は竜児の左手をそっと握った。
「恥ずかしくてずっと言えなかったんだけどさ…かっこよかったよ。結婚の事、おじい
ちゃんに話してくれた時も、ママに話してくれた時も」 
「そうか? なんか、もう、俺的には完璧にテンパってたけどな」
 大河はふるふると首を振った.
「そんなことないよ。なんかね、あんたがおじいちゃんを説得してるのを見てて、あん
たと一緒なら絶対大丈夫って思ったのよ」
「… 俺はお前がいてくれればなんとか出来るって思ってるからな」
「うん」
「俺一人じゃじいちゃんは説得しきれなかったかも知れねぇし…」
「そうかな」
「そうしとけよ」
「わかった。そうしとく」

「でもさ、あんたが格好いいのはホントだから。その…」
 大河は目を伏せて、頬を赤く染めた。
「あたしには勿体ないぐらいのかっこいい旦那だから…その…」
 握る手にきゅっと力が入って… 
「…よろしくお願いします」
 髪の毛の隙間から覗く大河の耳は燃える様に赤く染まっていた。
「お、おぅ。こっちこそ」
 いきなりしおらしくお願いされた竜児の耳も赤く染まった。
「なぁ、大河。そういう事は顔を見て言わなきゃいけないんじゃないのか?」
「うっ」大河は唸って俯いた。

「ぅぅぅぅ…」
「どうした? 大河」

「踊るわよ!」
 つないだ手をぐいぐいと引っ張って大河はグラウンドの真ん中に向かって歩き出した。
「おい、踊るって、お前、恥ずかしいだろ」
「大丈夫! 今、あたしは最高に恥ずかしい状態だから、何をやっても大丈夫!」
「お前はいいけど、俺はどうなる」
「あたしと同じだけ、こっ恥ずかしぃ思いをするだけよ!」

 あっという間に竜児はグランドの真ん中に引きずり出されてしまった。

「どうなっても知らねぇぞ。まともに踊った事なんてねぇんだから」
「大丈夫よ。あんたがどんなにへたくそでもちゃんと合わせてあげるから」
 大河は右手を竜児に差し出した。
「ふん、言ってろ」
 竜児は左手で大河の手を取った。手を握り、右手を大河の肩にそえる。

 曲に合わせてステップを踏む。
 ワルツに合わせて流れる様に。
 言葉に偽り無く、大河は竜児のリードでステップを踏む。

「あんた、上手じゃない」
「あ? ああ、泰子の練習の相手をさせられてたからな」

 酔っぱらいをあしらう為のダンスだからまともなシロモノじゃないけれど、それでも
二人のダンスは周りのカップルがうらやむぐらいに様になっていた。

 スローなテンポのワルツに合わせて、
 流れる様に、水面を滑る様に…

***

 いいなぁ…

 麻耶は踊る二人を眺めていた。
 祭りの終わりまで残り五分、実行委員としての役割も全て終え、あとは後片付けだけ
である。キャンプファイヤーの火勢が弱まるのに合わせて祭りの高揚感も静まっていく。
祐作の力になりたくて、彼の気持ちを、見ている景色を知りたくて一緒に一ヶ月間突っ
走った。初めて感じる達成感、満足感、そして高揚。それは大切な思い出になるのだろ
うけれど、今は寂しかった。

 未だに祐作との関係は保留になっていた。
 忙しい日々の合間に二回だけデートをした。その時に聞くこともできたけれど、麻耶
はそこで関係が打ち止めになってしまうことが怖くて聞けなかった。

 やっぱり、狩野先輩のこと、好きなのかな…

 二人の間にそういう雰囲気は感じられなかったけれど、でも祐作は未だに彼女に憧れ
ている、そう思う。

 確かめよう。随分と勢いが弱くなった炎の様子を見つめながら、麻耶は思った。
 逃げていたって仕方ない。あの夏の日の様に、もう一度、勇気を出して。

「木原!」
 背後から呼ばれて麻耶の背中がびくっと跳ねた。
 祐作だった。麻耶に駆け寄り、手を取ると祐作は炎の方に向かって走った。
「ちょっと来い」
「ちょ、ちょっと」
「いいから。時間が無い」

 祐作は炎の近くで立ち止まり振り向いた。
「木原、踊ってくれないか」
「でも、恥ずかしいし。踊ったことなんてないし」
「簡単だよ。ただ、手をつないで回っていればいいんだから」
「へたっぴでも良かったら」
「かまうもんか」
 祐作は手を差し出し、麻耶はその掌に細い綺麗な指をのせた。

 
 一方、グランドの隅には怪しげな一団が集まり始めていた。
「ありゃー。くっついちゃったよ」
 実乃梨はぎこちなく踊る祐作と麻耶を見つけて言った。
「あらあら、生徒会長が踊っていていいのかしらね」と奈々子。
「… まあ、いいんじゃないの」
 達観した様な表情で能登は言った。
「へぇ。冷静だね」と、実乃梨。
「まあね。あそこまで仲良くされたら認めるしかないよ」
「だあね」

「で、あーみん。何をやろうっての? こんなところに集まってさ」
「ふふふ。みんなでね、踊るのよ」奈々子はそう言って妖しく微笑む。
「踊る? みんなで?」能登は怪訝な表情で奈々子を眺める。
「そういうこと。残ってる知り合いみ〜んなとっつかまえて、楽しく強制マイムマイム」
 亜美はそう言ってにんまり。文化祭の最後の最後、後夜祭終了後の十分間を元2―C
メンバーでジャックするつもりなのだ。
「おもしろそうじゃん。でも音楽はどうするよ?」
「歌うの。春田君よろしくね」と亜美は営業スマイル。
「え〜。ちゃ〜らちゃらちゃらちゃん、だっけ?」
「バカ、それはオクラホマミキサーだ」と能登が突っ込む。
「やっぱ春田だ」と誰かが言って笑いが起きる。
「春田君、マイムマイムはね…」

 ちゃんちゃんちゃららん、ちゃんちゃんちゃんちゃん、ちゃんちゃんちゃんちゃら
ちゃんちゃん… だよ。と実乃梨は歌う。妙に上手くて「やっぱり櫛枝だ」とあちこち
から笑いがもれる。

「あ〜そっちか。オッケーオッケー」

 謎の集団が待ち構える中、ワルツがフェードアウトして後夜祭の終了を告げるアナウン
スが流れた。

「みんな、いくよ」
 亜美の合図で「やー」とか「おー」と奇声を上げて十数人ほどの元2−Cメンバーが
グランドに乱入していく。

「タイガー捕獲!」
「うわっ、なんだお前ら」
「たかすくぅん」
「ああっ、竜児になにすんのよ。ばかちー」
「こっちは北村君ゲットだぜ」
「うわ、櫛枝! 何事だ? なんだなんだ」
「ふふ、麻耶、お楽しみのところわるいわね」
「奈々子! なに? なんなの?」

「春田君! うたいなさい!」
 亜美に命じられて春田はマイムマイムを歌い始めた。『ちゃんちゃんちゃかちゃん』
と軽快な、聞けば思わず踊ってしまうあのメロディを歌い始めた。それに、続いてみん
なが歌う。テキトーに大声で歌い出す。いつしか人の輪が出来てぐるぐると回り始める。

「ゆりちゃん発見!」
 輪の一部が切れて、元担任を追いかけ回して捕獲する。無理矢理引き込まれた独神
(31)は「あなたたち、なにやってるのぉ…」と叫びながら輪の中に取り込まれ、狂
乱のマイムマイムの餌食となった。マイムマイム教団はグランドを阿鼻叫喚の渦に巻き
込み、実行委員会も、生徒会役員も次々と取り込んでいく。

 最後のバカ騒ぎは十分間続き、そして春田の声は完全に枯れ果てた。

***

 翌々日

 竜児は祐作と一緒に昼食を取っていた。そこに麻耶がいるのも、この教室では当たり
前になってしまっていて、普段なら誰も何も言わないのだが、今日に限って周りの視線
が自分たちに注がれていることを感じないわけにいかなかった。見ている人は見ている
もので、祐作が麻耶と踊った事がクラスに知れ渡るのに半日とかからなかったのである。
もっとも、当の北村祐作はやっぱりマイペースなのだ。

「狩野先輩の親父さんにまで認められてるなんて高須は凄いよな」
「何の話しだよ?」
「かのう屋のバイトの件だよ」
「ああ、それか。それがよ、実は変な話しだったんだよ。途中からお前と逢坂がいてく
れればウチは安泰だから、とか言い出してよ。で、聞いてみたら妹の彼氏が不運の塊み
たいな奴で、そんなのが婿入りしてきたらかのう屋がピンチだとか言い出してよ。
 それで幸福の手乗りタイガーパワーにあやかりたいから、とかなんとか。宇宙を目指
そうって人がそんなオカルトみてぇな事を言ってくるし、しかも茶化してる様子もねぇ。
もう、いたって大マジなんだよ」

「しあわせの手乗りタイガー伝説ね。そんな話しあったよねー」 
「でよ、大河は今回の諸々はその不幸の塊が悪いのよ、とか言い出してよ、狩野の妹を
締め上げて吐かせるとか言ってたんだけど、ああ、そりゃ勿論冗談だけどよ、その不幸
の塊ってのは誰なんだ?」
 祐作は表情を僅かに曇らせ、
「富家幸太」
 溜息まじりにその名を告げた。
「富家って…あいつか?」
「そうだ。あいつだ」
「そりゃあ、先輩の気持ちも分からんでもないな」
「うむ…」と、腕を組んで俯く祐作だった。

「ああ、そうだった。そんで、先輩に頼まれてたんだけどよ…」
 そう言って竜児は鞄からはがきを一枚取り出して祐作に渡した。
「それを妹に渡してくれって」
「うわ、なんだ。これ」
 はがきの裏を見て祐作は思わず声を上げた。
「何なの、コレ?」
 麻耶も不思議そうに竜児に聞く。
「お守りなんだと。大河に書いてもらうようにって先輩に頼まれたんだけどよ、さっぱ
り意味がわかんねぇ。大河はノリノリで書いてたけどな」
「お守り? とてもそうは見えないんだが…」

 祐作が手にしたはがきには極太の黒マジックでデカデカと、
 たった二文字、『ばか』とだけ書かれていた。

(きすして5 おわり)

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