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「よっしゃ!いっくよ〜っ…いち、にっ、スリー、フォー!…ととっ?」
ズダダンッ!誰も付いて来ない…
「だからね?実乃梨ちゃん?最初のカウントォォォっ!英語か日本語か、どっちかにしろぉい!!」
「いや俺はだな…緊張して、最初のタイミングが掴めなかったんだ…」
「小心者の小市民…くっ、あんたがみのりんの彼氏じゃなかったら…再起出来ないくらい、
 もっと酷く罵倒するのに…みのりんに感謝する事ね、竜児…」
「大丈夫だ高須っ!俺もピックだと思って掴んでいたら、蛾を掴んでいたぞ。ほら」

そう言って北村は、素手で掴んだモスラ級の蛾を振り回す。鱗粉がまう。迷惑だ。
うわああっ、っと逃げ回る即席バンド、マーティのメンバー達。
実乃梨のM、亜美のA、竜児のR、大河のT、祐作のY合わせてMARTYだ。
余計なことすんなっ!!っと、亜美にスタンドマイクで、引っ叩かれるまで、北村の奇行は続いた。
「ひええっ…そういえば大河、ジャンボさんは?来ないの?」
「来る来る。来なくていいって言ったのにさ。馬鹿虎」
「いたたっ…いやあ、しかし暑いな…メガネが曇るぞ。本番はコンタクトするしかないかっ」
文化祭当日、最後の練習。残暑厳しい大橋高校の体育館は、熱気がこもっていた。その時。

「メガネはてめえのトレードマークだろうがっ」
開け放たれた扉の向こうに、誰かが仁王立ちしていた。
聞き覚えのある、ドスの効いた男気溢れるハスキーボイス…狩野すみれがそこにいた。
「会っ…狩野先輩!どうして、あなたがここに?…」
「久しぶりだな北村っ、今夜アメリカに発つんだが、さくらから面白いモノが見れると聞いてな。
 新学期の準備でバタバタしてた所、来てやったぞ。バンド演るんだってな」
すみれは、のしっのしっと北村の直前まで詰め寄ってきた。相変わらず…美しい。
「いいか、北村。生徒会長として、てめえの本気ってやつを、私に曝してみろっ!だいたい
 なんだ?その府抜けたツラはっ!しょっぱいもん見せやがったら、タダじゃおかねえぞ!」
「はい!、わかりました!狩野先輩、今日のライブ!貴女の為に命がけでやりますっ!」
調子に乗るな馬鹿野郎っと、鉄拳を食らう涙目の北村。彼の、すみれ原理主義は、健在だった。
北村は留学の為に、必死に貯金している。パスポートも取った。TOEFLも受験した。
MITの近くのボストン大学で、考古学を専攻したいのだ。…みんな、夢に向って努力している。

「…そうだ、逢坂、いつかは手紙、ありがとうな。ちゃんと…フッ、わたしの机の前に貼ってあるぞ」
大河の姓が変わった事を知らないすみれ。手紙とは大河が停学中に『ばか』と書いた手紙だ。
『私だって…バカに…なりたい…っ!…でも…どうしても、どうしても…っ…!で、きな、いぃ…』
…と泣き叫んだすみれに、あんたが一番真っ直ぐ突っ走るだけの馬鹿じゃん…と送った手紙だ。
「こいつはお返しだ。あとで読んでくれ」
すみれは、大河に手紙を渡す。
「何よ…まっ受け取っとくわ…」

…後で聞く事になるのだが、そこには

Failure is not an option! (失敗という選択肢はないんだ!)

と、NASA主席管制官の有名な言葉が書いてあった…

体育館は、マーティの意外?な好演に、ボルテージは最高潮だった。
既に3曲を演奏し、残りは1曲だった。

「じゃあ…最後の曲ですっ、オリジナルでっ『オレンジ』!…すうっ」
亜美は大きく息を吸う。

「あたしの歌を…聴けぇぇぇぇえぇぇっ!!!」

大河がイントロのアルペジオを奏でる。あーみん…かっこいい…実乃梨は亜美に、
あたしの歌を聴けぇっと、叫ぶように頼んだのだ。ありがと〜。ウルウルしていた。
そして、軽快にドラミングを開始。約2ヶ月間、この自分の曲を演奏する為に、
みんな頑張ってくれた。イントロが終わりブレイク…Aパートへ。

♪眠れない、夜には…ヒトリでタメ息…

亜美は、感情を込め、丁寧に歌い出した。大河が、優しくサンプリング音を再生。
リフレイン。実乃梨のドラムが響く、そしてBパート。

♪広い大地にっ。一粒の種っ、根っこ伸っばっしって…

竜児は、実乃梨のドラムの音にベースを合わせる。ぴったりだ。
北村は、カッティングで全体の音に厚みを付ける。サビに突入する。

♪オーレーンジ色に、早くなりたい果実、きみのヒッカリを浴びて…

亜美が、伸びやかに、メインを唄い、実乃梨、大河は、コーラス。
大河がふと見た盛り上がる観客の中に、大きな影が手を振るのが見えた。
来なくていいのに…と思うのと同時に、去年の独りのミスコンも思い出す。
曲はAパートに戻る。

♪似てても、違うよっ…マンダリン、オレンジっ…

実乃梨は、ピンクのメトロノームの音をイヤホンで聞き、走り過ぎないよう、
拍子をキープ。集中していたが、観客席の春田の変な踊りに吹きそうになる。
隣の瀬奈は笑っていた。

♪奇跡なのにねっ、出逢いも、恋も…

竜児は、何度も弾いたベースラインを、北村は、コードを弾き、サビに入る。

♪オレンジ色は、あの日見た夕焼けを想い出させてくれる…

ドカッと最前列に座っていたすみれが、会場のテンションにつられ、立ち上がる。
それを見た北村は興奮し、危うく間違えそうになる。…が立て直した。
すみれに伝わってしまい、ちょっと驚かせてしまったようだ。

♪…ぜんぶ食べたーっ、すっぱい…

曲が変調し、Cパート。

♪好きだかけど、泣けるよ…
♪好きだから、…泣かなぁーいーっ
実乃梨は気付く。あれ?歌詞が違う…まさか…
亜美は、歌詞をすり替えたのだ。

♪オレンジ色に燃える恋の炎は誰にも消せやしない         
♪高鳴る胸が止められないの自分でもね       
♪オレンジ。やっと大きくなった、ふたりの日差し浴びて
♪甘い果実のわたしの事を全部食べて…好きだよ〜♪
         (実乃梨は真っ赤になっているが、手を止めない)
 好きだよ〜♪
         (竜児はクッソーっと漏らしつつ、口元が緩んでいる)
 エロいよ〜♪
         (あーみんだ…)
 エロいよ〜♪
         (大河まで…)
 恥ずいよ〜♪
         (みんな…)
 いっぱい〜♪
         (会場も盛り上っている)
 好きだよ〜♪
         (竜児と実乃梨は笑顔を交わす)
 みのりん〜♪
         (ありがとう…みんな)


         (最後に大河が…)

 おめでとっ☆

 わたしは今…悩んでいる。相当悩んでいる。

合併後の会社は、業績は黒字に回復、大幅なコスト削減で、経営はまあまあ順調だ。
大幅な役員人事があり、わたしは専務、相手の会社の社長は、会長に就任した。

そして今は、若い新社長のもと、会社は堅実かつ大胆に、成長し続けている。

しかし…悩みの元は、莫大なマーケティング費用を投入した事だ。金額は80億…
簡単にペイ出来る金額ではない。国外にも経費を注ぎ込んだ経費も含めると、
事実上、100億は上回っているだろう…

「ったく、ちゃんと、元取れるのかしらっ」

2016年の今日。この日の為に、オフィシャルパートナー料を注ぎ込んだ。
そう。東京オリンピックのスポンサーだ。特にソフトボールの競技種目復帰には、力を入れた。
もし勝てば…チャンピオンになれれば、企業イメージアップは、計り知れない。
事務処理に追われ、詳しくは分らないが、今、ソフトボール決勝をやっている。
デスクの上の写真立てには娘…大河の結婚式の写真がある。
社長夫人…娘の大河の決断が問われる時だ。

プーッ プーッ 
おっと、内線だ。
「テレビ?…そうなの?おめでとうっ大河!そう…よかったわね。じゃあ、あとでね」

テレビの電源を付けると、スタジアムの映像。いろんなモノが、飛び散っている。
日本代表の選手が抱き合っていた。音声は、大きな歓声で埋め尽くされている。
実況アナウンサーが興奮しながら、涙ながら、栄光の瞬間を讃えている。
そして、画面の中央。日本代表の選手の中から、今日のMVPが、日本のエースが、
画面いっぱいアップになる。画面に太陽の光が反射した…と勘違いするほどの笑顔。

実乃梨だった。

実乃梨は、お祭騒ぎの中、ベンチに押し流され、どうやらインタビューを受けるようだ。
地響きのような歓声で、やはり聞こえにくい…マイクの調整をして、再び質問される。

『…っ、聞こえますか?おめでとうございます!櫛枝投手!やりました!金メダルですっ!
 すごいっ!今の…この気持ちを、一番に誰に伝えたいですか?!』
キラキラ光る笑顔、涙。画面に目を向けるっ。

実乃梨は世界中に叫ぶっ! わたしの幸せは…これだぜっ!

『はい!!恋人ですっ!わたし、その人と結婚するんですっ、竜児くん!愛してるっ!』

数ヶ月後、実乃梨は、父親とともに、大きな教会の扉の前に立っていた。
「オリンピックより緊張…するっ」
「安心しなさい。もうすぐ。彼と逢える。それまでの我慢だ」
「うん…そだね…」
パイプオルガンの音。メンデルスゾーンの曲が、大音響で流れる。
扉が開き、たくさんの拍手と、笑顔達が迎えてくれた。
亜美、北村、春田、瀬奈、木原、香椎、能登…後方の席には、
よく見る顔、懐かしい顔が混ざっている。ゆりちゃんもいる。
ソフトの選手とか…もう数えきれない。
みんな、笑顔で迎えてくれる。拍手で感動を分かち合ってくれる。

実乃梨はヴァージンロードの上を、純白のウエディングドレスを纏い、
ゆっくり歩いていた。チューブトップのドレスは露出部が多く、
豊かなバストが強調されるが、実乃梨のアスリートらしい、
引き締まった、しなやかな首から肩のラインも強調。
フェミニンさと、健康美が両立して、神々しく、美しく、奇跡だった。

竜児の母、泰子、叔母の園子、叔父の清児、高須インコもいた。
惜しみない喝采、心から喜びを分かち合ってくれている。
連呼される、おめでとうっ!の声が、実乃梨の涙腺を緩ませる。

祭壇が近づき、オルガンを弾いてくれている大河も見えた。
傍らにはジャンボさんもいる。ふたりは一瞬、手を振ってくれた。

実乃梨の母親、プロ野球選手の弟みどりと目が合う。涙が止まらない。
今や伝説のキスを目撃した、実乃梨の親戚達も、待ちに待った式に、大興奮。
うわ〜いっ!とウェイブまでしている。

そして…祭壇の前には竜児が待っている。笑顔で実乃梨を、花嫁を迎えてくれる。
実乃梨の指が、父親から竜児に引き継がれ、実乃梨はブーケ越しに愛しい人をみつめる。

竜児と実乃梨は、神様の前で…いままで何度も誓い合った…永遠の愛を確かめ合う。

「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、
  悲しみのときも、富めるときも、貧しきときも…
これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命のある限り、
  真心を尽くす事を…誓いますか?」

「…誓います」
と。
愛の証である指輪を交換。竜児は実乃梨のベールを挙げ、そして誓いのキス。
唇が離れる瞬間、実乃梨のへアドレスに付けた、オレンジのヘアピンがキラリ輝く。
式場にいる人々の割れんばかりの大きな拍手、歓声とともに…誓いの儀式は終わる。

ふたりが教会を出ると、わあああっという大歓声。カメラのフラッシュの嵐。
オリンピックの関係者や、ラジオ局や、テレビ局も取材に来ている。
見渡す限り、人、人、人の海、みんな全員、ふたりを祝福してくれているのだ。
この映像は、衛星を伝わり、ヒューストンのすみれの目にも届いていた。

無限のライスシャワーを浴び、竜児と実乃梨は、同じ方向を見上げている。未来へ…

「なんか…すげーな、実乃梨っ!、幸せだけど…」
「あははっ!すげーね?竜児くんっ、幸せ、見せつけちゃおうよっ!チュッ!!」

世界中の人々に祝福されながら、ふたりは長いキスをした。



おしまい。

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