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みの☆ゴン2 ◆9VH6xuHQDo

「よしっ…こんなもんかっ」
昨日の期末テストのおさらいをしていた竜児。
背伸びをして、勉強机に鉛筆を置き、隣のマンションの窓を見上げた。
僅かに開いたカーテンから、大河の部屋の明かりが見える。
こんな手の届きそうなくらい近くに、大河の寝室がある。
その大河と今日、竜児はお知り合いになってしまった。

大河は多少、お天気屋さんっぽい所があるみたいだが、
それがまたチャームポイントだと、竜児は思う。
なんといっても、あの完全無欠の美貌…各パーツ全てが奇跡の造形で、
しかもバランス良く配置されている。超、美少女だった。
もちろん竜児は実乃梨が好きだ。それは揺るぎない。大好きだ。
ただ、大河が可愛い過ぎるのだ。だから、ちょっと。ちょっとだけ妄想する。

…例えば…例えばだ。あんな可憐な娘が、気性が激しくて、
腕っ節が強くて…竜児の事を好きだったら、どうなんだろうか?


 …ねえ竜児…
 おうっ、呼び捨てかよっ、…なんだよ、大河…
 …あ、あんたこそっ、呼び捨っ!…まあいいわ…竜児…えと…あの…すっ…好っ…
 大河…好きだ…
 …ふええっ?なな何で先に言うのよっ!このっ!生意気っんっ…んふっ…
竜児は唇で、大河の唇を塞ぐ。大河は何か言おうとモゴモゴしていたが、
キスが進むにつれ、大河は自分の舌を、竜児の舌に絡み付けていく。
竜児が抱きしめている小さな塊は熱を帯び、とても熱く、竜児の胸は汗ばむ。
大河の薔薇色の唇から離れるチュッと音がし、大河は…あふっ…と吐息を漏らす。
 …竜児…ズルい…そんな事されたら…
竜児は、大河の火照った小さな耳たぶを、甘く噛んだ。そして首筋を舐める。
まるでソフトクリームをそうするように。
 …ねぇっ、あふっ…竜児っくすぐったいっ!…っん…
体をくねらせ、竜児の吐息、ヌメりのある舌に、大河は必死に堪えている。
…堪えながら、大河は悦んでいるのかもしれない。

 …りゅっ、竜児っ、変な格好させないで…
竜児は、大河の細いが、柔らかい太ももを掴み、持ち上げる。下着が露わになる。
下着から、立ちのぼる香しい雌の臭いを、クンクン…竜児は、鼻先で確かめた。
 …やだ…本当、犬みたい…ひゃうっ…
困窮した犬のように、竜児は、むしゃぶりつく。大河の下着が湿る。
まだ足りない。器用に口先で、大河の下着を剥いだ。直接、舐める。
 …ふあぁ、竜…児っ…凄っ…ぅぅうううう…あんっ…
竜児の肩に掛かる、大河のニーソックスの肌触りが、竜児の感覚を刺激する。
 大河…挿入れてえ…
竜児は欲望を素直に大河に伝える。大河も一緒だった。
竜児のソレは、痛いほど硬化していた。グチュン…大河の狭穴にねじ込む。
 …んあっ!竜児っ…
小柄な大河の体が浮く。竜児は、その態勢のまま、大河を縦に、小刻みに揺さぶる。
怯えるような、かよわい声で、大河は喘ぎ続ける。
 …ぁっ、ぁっ、竜児っ、ぁっ、ぁっ…
大河は竜児のシャツを脱がし、竜児の黒い乳首に吸い付いた。
 おおうっ大河、そんなに強く…
目を瞑って懸命に吸い付く大河。色づき汗ばむ頬、まるで乳児のようだ。
竜児は仕返しに、大河の乳首をキュウっとつまむ。大河の肉体が一瞬、跳ねる。
 …やんっ、やっ、…や…やんっ…りゅ…竜児…やっ…
 はあ、はあ、大河…俺…はあ、いっ…
竜児は、自分の下半身に、快感が集中していくのを感じる。一点に凝縮され、そして…

ガシャン!!

「おおうっ、危ねえっ!!何だ、何が起こった?!」
竜児が、放出したと同時に、何かが竜児の部屋の窓ガラスをブチ割って、飛び込んできた。
ティッシュでマスターベーションの後処理をしながら、竜児は未確認飛来物に近づく。これは…
「…マグ…カップ…だな」
竜児は、パンツをズリ上げ、マグを回収。割れた窓ガラスを避けながら、ベランダに出た。

「ちょっと、あんたっ!さっきから何度も呼んでるのに、なに無視くれてんのよっ!!
勢い余って、マグ投げちゃったじゃない!どうしてくれるっ!!」
向かいのマンションの窓から小さな影が大騒ぎしている。もちろん大河だ。
「有り得ねえ!なんだよ逢坂!いったい俺に何の恨みがあるんだよ!なんで窓割るんだよっ!」
竜児は投げ込まれたマグを振り回し抗議するが、大河は、窓からパジャマ姿で腕を組み、
全く悪怯れる様子は皆無だった。そしてピシャリと竜児に言い返す。

「無視するあんたが悪いんでしょ?わたしは悪くない。不可抗力よ。遺憾よねっ」
あーあーあーと漏らしながら、ベランダにあったチリ取りで破片を片付ける竜児。
まあ、少し妄想ネタにした罪悪感もあり、大河の悪行を黙認する。
「…分かった、逢坂っ。俺が悪かった…で、用件は何だ?」
大河は、上から目線で、少しアゴを上げ、竜児を蔑むように語り出す。

「いい事?今日の事は、他言無用だからね。誰にも言うんじゃないわよっ、
 特に、そのっ…北…北村くんとか。…分かったわねっ!」
「なんだよ逢坂、そんな事で、人ん家のガラス、破壊すんなよな〜…北村?…なんでだ?」
「うううるさいっ!わたしに質問するな!!わたし優しいから、あんたが余計な事しなければ、
 穏便に済ましてあげるわよ!よかったわね。感謝しなさいっ。…それとも、こいつで…
 あんたの脳天ぶっ叩いて、記憶を丸ごと、ブッ飛ばしてやろうか…」
そう言って大河は、ニョキっと木刀を取り出し、剣先を竜児に向ける。
「意味わかんねぇっ!全然優しくねえじゃねえかっ!分かった分かった、言わねえっ、
 誰にも言わねえよ、つーか、忘れた。これでいいか?」
それを聞いた大河は木刀を収め、少しだけ表情が柔らかくなる。ただし少しだけだ。

「…あんた、みのりんの事好きなんでしょ?」
「なっ!なんだよ、薮から棒に!そっ…そんな事…」
そんな事ある、のだが…真っ赤になった竜児は前髪を指先で引っ張る。バレバレだ。

「ふうん…まあ、いいわ。わたし口が堅いから。ただし、もし何かあったら、
 みのりんにある事ない事言うからねっ!!いいわねっ!竜児っ!わかった?」
バチンッと大河は窓を閉じる。カーテンが閉まる音は、聞こえなかった。
チリ取りを持ったまま、しばらく茫然自失の竜児。どうやら竜児は大河の事を、
いろいろ誤解していたようだ。悪い意味で…

「め、めちゃくちゃだ…… っていうか、今、呼び捨てにされなかったか?」
混乱覚めやらぬ竜児。まだ肌寒い三月。どうせ日照権が奪われてしまっている竜児は、
バシッと雨戸を閉め、いろいろあったホワイトデーを締めくくった。

特に何事もなく、竜児は3学期の終業式を迎え、春休みに突入。1週間が過ぎた。
これから2年生になる生徒は、入学や卒業が関係ないので、春休みというと、
のんびりできるのが普通だが、竜児には家事という仕事があるのだった。

「そうか、今日はエイプリルフールか」
竜児は午前中で、掃除、洗濯を終わらせ、そんな話題を取り上げたテレビ番組を見ていた。
番組が終わり、ニュースが始まる。
「…おうっ、もうすぐ12時か、急がねえと…」
竜児はテレビを消し、出掛ける準備を始めた。
今日は同じ組だった、北村佑作と能登久光の眼鏡コンビと3人で、映画館へ行く約束をしていた。
能登の親がコネで、舞台挨拶付きの試写会のチケットを3枚ゲットしたのだった。

7時前には帰宅する予定なので、母親の泰子の弁当を作ろうと思ったが止めた。
支度を終えた竜児は、居間で飼っているタマゴから飼育した、愛しのペットに挨拶する。
「インコちゃ〜ん、ちょっと出掛けてくるけど、留守番頼むな〜っ、イン…おうっ!」
インコが死んだ…ように見える。寝ているのだ。しかし目とクチバシは半開き。舌は土色、
竜児でさえ、まだ騙される。たまに鞭で打たれたようにビクッとして…生死を確認する。
その安らかなペットの死…ではなく寝顔を拝み、
「さてっ、いくかっ」
竜児は太陽の下に出る。

***

大橋駅の改札口。
新生徒会長の狩野すみれと、新副会長の北村祐作は、並んで立っていた。
北大へ進学する前生徒会長を、改札口まで見送った直後であった。
「行ってしまわれましたね、会長…しかし大きい人でしたね。2mある人間ってなかなか…」
「行ったな。カラダもデカイが、態度もデカかったな」

すみれは前会長が最後に見えた、階段を見つめたままだ。
同じ風に階段を見ていた北村には、すみれの表情が分らなかった。
「北海道って…まだ寒いですよね、遠いなあ…」
「北海道といっても、札幌だからな…おい、北村」
すみれは艶やかな黒髪をかき上げ、北村を見据える。北村は何度でも想うのだ。
清楚な面持ち、極め細かい純白の肌。凛とした表情、美しい…我に返る。
「はい、会長!わかっております。前会長が去られた今、俺が副会長として全力で、
 会長の手となり足となり、お手伝いさせて頂きます!今度とも宜しくお願いします」
「…そうか、そいつは頼もしいが、さっきから、てめえのチャックが全開なんだ。
 シャツの一部もはみ出ている。副会長として、とりあえずそれをどうにかしろ」
「たああっ!何なる失態!申し訳ございません!」
北村は見事に解放されたチャックを慌てて戻す。シャツの裾を挟んでしまった。

「まあいい…今日はご苦労だった。わたしは帰るが、てめえは映画見に行くんだろ?
 高須と能登?だったか…おや、どうやら来たみたいだぞ」
「おうっ!何故、狩野先輩が…こっ、こんにちは狩野先輩。高須です。初めまして」
「おはよう高須。じゃあな、ふたりとも。楽しんでこいよ、また学校でなっ!」
すみれはフッと微笑み、踵を返す。悠然と歩き去りながら手を振る姿が、漢らしい。
「…北村、終業式ぶりだな、元気だったか?どうした顔が…ちょっと赤いぞ?」
「よう高須っ!時間厳守だな!相変わらず三白眼だなっ、人の顔を気にするなっ」
この、このっと、軽くど突き合いながらじゃれる二人であった。

「北村…何かあったか?なんか、すこしキャラが違うような気がするんだが…
 狩野先輩とふたりきりとか普通じゃねえし、それが関係あるんじゃねえか?」
竜児はすみれに対する北村の複雑な心境を知りつつ、ちょっとからかってみた。
「そうか?俺は至って普通だぞ。会長とは、前会長を一緒に見送りに来ただけだ。
 …そう言う高須こそどうなんだ?春休みに何がなかったのか?この、三白眼っ!」
「おおうっ!だから目を引っ張るなっ!そんな事ある訳ねえだろ。今日だって、男と
 ツルんで映画だぞ?…おうっ、そうだ…なあ北村…逢坂って女子、知り合いか?」
北村は大河の名前を聞くと、竜児と距離を取り、顔を覗き込んだ。

「逢坂って…逢坂大河の事か?…知り合いも何も、実は、俺は入学してすぐに
 逢坂に告白して、一秒後に見事に振られたんだ。しかも腹に一撃食らって…
 そうか〜高須っ!お前も女子に興味を持つようになったか!てっきり俺は男が…」
「そういうんじゃねぇよ!またまた知っただけだ。…そうだったのか!
 そんな事が…変な事聞いて…すまねえ…北村」
「いいさ、高須。昔の事だ」
そうか…竜児は、納得した。大河は、北村を振って、しかも殴った罪悪感で、
親友である竜児に気を使ったのだ。それで北村の名前を聞いて態度が変わったのだ。
これ以上、北村に迷惑かけないように…そう竜児は理解する。時計を見る。

「なんだ、もう5分か、能登のヤツ来ねえな」
「能登は午前中、好きなバンドのCDを買いに行くって言ってたぞ。…おっ、そうだ高須!
 ズーで能登を迎えないか?ズー。グルグル回るヤツだ。そこのガラスで練習しようっ!」
「でえっ、マジかよ!北村、やっぱりキャラ違うって!!おうっ!ひとりで演るなよっ!」

仕方ねえな…っと、壁に向かって竜児と北村は、一列になってグルグル回っている。
正確には左回りなので、ズーではなくエグザイルなのだが…周囲に人垣が出来る。

「♪ときめ〜きを運ぶよ、Choo choo TRAIN〜…」
能登は人垣を遠巻きに見ながら、懐かしい曲を口ずさんでいた。

***

『女検死官夕月玲子 ザ☆ムービー』

「おおうっ!これって、川嶋安奈じゃねえか!このドラマ好きなんだっ!!」
「ほうっ…舞台挨拶があるのか…うーむ、もしかしたら…」
能登が竜児と北村にチケットを配る。好感触に満足した能登は饒舌になる。
「関係者のみ、一般人お断りのプレミアム試写会なんだぜ?テレビの取材も来るし、
 芸能人も来るし…、もう〜奇跡に近いんじゃない?」

都心の駅を降り、3人は試写会場所の、7つの映画館、2つのデパートがある、
大きなビルに向って歩き出す。 やはり春休みの影響か、人が多い。
視界の範囲内に、たぶん2〜300人はいる。いつも近所の商店街で用を足らす竜児。
久しぶりの都心の人混みに、動揺を隠せなかった。
「…すげえ人だなっ!祭りみたいだ…」
「なーに田舎者みたいな事言ってんのよ高須っ!これぐらい普通だって」
「おい高須っ、あまりキョロキョロするな?迷子になるぞっ!」

ビルに着いた3人は、エレベータで9Fへ移動する。竜児は、なんとなく、
北村の様子がおかしい気がした。キョロキョロするなと言った北村が一番
辺りを見回していたからだ。チンッと音がなり、エレべータを降りる。

「あッ、あそこじゃん?ほら、オサレな人いっぱいいるしっ!」
能登が指差した先には、綺麗に着飾ったレディースや、フォーマルな出立ちのジェントルメンがいた。
明らかに場違いな感じがする一般の高校生の3人だったが、
3人は入り口でチケットを渡し、館内に入る。

「これはっ…別世界だな…」
竜児は、圧倒される。これが…関係様者やら、芸能人様やら、招待客様たちか…
「高須っ、あの人っほら、あの人のCDもってるだろ?う〜っサインもらいたい〜」
「すごいな。ズバリ名前は分らないが、俺でも見たことある芸能人がいるぞっ」
眼鏡コンビも。煌びやかな人々や、カメラのフラッシュに圧倒され、いつの間にか
3人とも、ロビーの壁際に押しやられていた。
すると、3人の丁度正面。会場の中でも、ひときわ明るい声が聞こえる一団の中央。
ピョコッ!!と、何かが跳ねたような影が見えた。何だろう? 
次の瞬間、その人混みの中から、北村に一直線に近づく美少女の姿があった。

「ねえ、佑作?…やっぱりそうだ!ちょっと!久しぶりじゃない!
 どうしてここに?…あれ?まさか、わたしの事、忘れちゃった?」
「おおっ!亜美じゃないか!やっぱり来ていたのか!いや〜久しぶりだ!
 忘れる訳ないだろっ、仕事頑張っているみたいだな。噂はかねがねだ」
見慣れた友人が、ひとめで一般人ではないと判る、芸能人の超美少女と会話している。
しかも久しぶり〜とか、祐作〜、亜美〜と下の名前で呼ぶとか…驚愕する竜児と能登。

「ママの映画の舞台挨拶があるし、スケジュール空いていたから来たの!…佑作の友達?」
クルッ亜美は、竜児達に振り向く。一緒にキラキラしたものが降りそそいだ気がした。
「おお、紹介する。友達の高須竜児と能登久光だ。高須っ、能登っ、彼女は川嶋亜美。
 こう見えても俺たちとタメで、昔、家が隣だったんだよ。いわゆる幼なじみってやつなんだ」
はぁ〜っと、竜児と能登は放心状態、緊張状態、緊急事態だ。動けない。
「もうっ祐作!こう見えても、ってどういう意味?うふっ、佑作の友達なら、
 わたしにとっても友達よね?初めまして!わたしっ、川嶋亜美ですっ!」
「あの!川嶋亜美さん知っています!雑誌のモデルの!高須っ!ヤバイ、本物だよ!」
「モデル?そうかっ!どうりで…おおうっ!」
亜美は、竜児の手を取り、両手で握手する。至近距離で、なんともいえない甘い匂いがする。
実乃梨や大河の、なんというかナチュラルな芳香とは違う…官能的…な匂いだ。
激流する感情の中で、竜児はなんとか亜美の手の柔らかさだけは自覚出来た。

「高須くん?っていうのね、よろしくね!あっ…ごめんなさい…わたしったら…」
ぱっと手を離す亜美。竜児の手はあやうく溶けてしまう所だった。
頭をコツンっと叩き、舌を出す亜美。その仕草は亜美の美貌と裏腹に、親近感を覚える。
オトナっぽい花柄のシフォンのワンピースから、スラッと伸びる長い手足。
うっすら見える、キャミソールは、完璧なスタイルを描いている。
いくらモデルでも、スタイルが良すぎる。奇跡に近い。竜児はその亜美に手を握られた…

「いや、あやまる事、ね…おうっ、大丈夫か?」
亜美はグラッと、バランスを崩し、今度は竜児の腕を掴む。カラダをピッタリ寄り添う。
理性がグラッと揺らぐ竜児。
「あんっ!またっ…ごめんなさいっ、高須くん、大丈夫?ヒールが慣れなくって…
 あ?わたしの事『天然』って思ったでしょ?もうわかるんだからね?思ったでしょ?」
亜美の潤んだ瞳に竜児の心は掌握されていた。そのままコクッと、頷いてしまう。
「もう、いつもいわれちゃうんだっ、亜美は天然だよね〜って。なんでなんだろう?
 全然そんな事ないのに…どうせ祐作もそう思ってるんでしょ。呆れた顔、してるもん」
「そんな事ないって。おっ、亜美、お母様が呼んでるぞ。よろしく言っておいてくれ」
「じゃあ、またねっ」
手を振る亜美、見送る3人。あまりの怒濤の出来事に竜児は感嘆、能登は座り込む。

「うわあああっ、北村!今の何!ちょっと、スゴいんですけどっ!感動したーっ
 かわいくって、すっごくいい娘で、天然ってところが純粋でイイっ!!」
「うーん能登。…まあ、かわいいわな。それは俺も認めるところだ。ただ人格がな…」
「人格がなんだ?…北村。それは、もしかして…まあいいか。なんでもねえ」

開演時間になり、映画が始まる。終演後、出演者の舞台挨拶もあったのだが、
竜児の記憶には、亜美に触れられた指先の記憶しか残っていなかった。

竜児は駅のロータリーで北村と能登と分れ、買い物を済ませ家路を急ぐ。
「遅くなっちまったな…」
既に7時を回り、泰子の食事もこれから作る。時間がないし、ちゃちゃっと、
炒め物や和え物で、誤魔化そう…竜児は頭の中でシミュレーションしながら、
借家に帰って来た。階段を駆け上がり、鍵…が開いている。いつも注意しているのに、
泰子め…竜児はドアを勢い良く開ける。

「泰子っ!ただいま、玄関の鍵が…おおうっ!!!あっ、あっ、あっ…」
「なによ、あっ、あっ、あって。どこのラッパー、アッパラパーよ。このイカれポンチ」
竜児をディスるその声は、大河、その人であった。
「逢坂!なんだよイキナリ悪口言うなよ!俺が可哀想じゃねぁか!」
「あー、五月蝿い。わたしだって来たくなかったわよ。みのりんに頼まれたのっ」
みのりんという単語を聞いた瞬間に、竜児の身体はいちいち反応する。
「く、櫛枝さん…に?…なにを?」
「今週、始業式の後に、みのりんがまた、わたしの家で、お食事会したいんだってさ。
 もう、みのりんったら、物好きなんだから…最近あんたの話ばっか…ちょっと聞いてるの!!」
「おおうっ!…汚職自戒…まで…聞いてた…」
「…そんな耳、取っちゃった方がいいわよ…携帯出して!竜児っ、赤外線!」
そう言って大河は竜児から携帯を奪い取り、アドレスを転送する。

「だいたいあんた、みのりんにはサン付けで、なんでわたしは呼び捨てなのよっ…
 …出来たっ!…じゃあね!やっちゃんに留守番頼まれたんだけど、帰るわっ」
大河は振り返り、玄関に向う。そして玄関のノブを触ろうとした瞬間、扉が開く。

「ただいま〜☆あれれ?大河ちゃん、帰っちゃうの?ん〜っ、せっかく明治ブルガリア
 ヨーグルトドリンク買って来たのに〜っ。夕食は、竜ちゃん作るから、一緒に食べよ?
「おかえり、泰子。つーかお前達、なんでそんなに馴染んでんだよ…
 で、逢坂、どうする?メシ食ってくか?一人分くらいならなんとか…」
大河は頭を横に振る。大河が泰子の方を向いているってことは、竜児は無視されたって事だ。
「ううん。出前取るからいい。やっちゃん、ごめんね。またね」

ギュルルッルルルッル…

「この時間だと出前無理だろ。15分あれば出来っから待ってろ」
大河は黙って頷いた。

「大丈夫か〜、インコちゃん〜」
「なによこの変態インコ。ペットは飼い主に似るって本当ねっ、うっわ〜、指デロデロ…」
春のせいなのか、発情期になったインコちゃんはさっきまで、大河の指を舐めていた。
鳥類にはあるまじき大量のヨダレで、大河の指をビチョビチョにしたのだ。
目蓋をピクピク痙攣させ、白目をむいて、今にも昇天しそうだった。
「イツ…イン…淫っ…陰ッ…」
「おうっ、インコちゃんっ、変な言葉言うなよ〜、乙女なんだから〜、清純派なんだから〜」
「わわっ、キモッ、口からブクブク泡出してるわっ…末期症状ねっ」
「だいたい逢坂が、発情期のインコちゃんに、指なめさせるからだろ?変な事覚えさせないでくれよ」
竜児は、抱きかかえていた鳥かごに布をかぶせ、そっと定位置に戻す。
「あんたの監督不行届でしょうがっ、人のせいにするんじゃないっ」
「…ったくっ!お前に、川嶋亜美の爪の垢でも煎じてやりてえよ。同じ女子とは思えんっ」
「かわしまあみ?…ねえ、竜児。それってモデルの川嶋亜美の事?好きなの?」
大河はキョトンという顔になる。大河もファッション雑誌読むんだ…と、竜児は思った。

「そうだ。好きかどうかは別として、実は今日、北村と能登と映画を見に行ったんだが、
 川嶋亜美がいてさっ、しかも北村の幼なじみだったんだ。すっげービビった」
「きっ北村くんの、幼なじみ?川嶋亜美が?本当?…あんた…エイプリルフールだからって…」
「マジだマジっ、大マジだっ、つくならもっと、上手い嘘つくって!!…例えば…おうっ、
 そうだなっ、今日の朝、駅で、北村と狩野先輩が…すまねえ、上手くウソつけねえ…」

ブワッ
という表現が適切なのか、竜児は大河から闘気が放たれた気がした。空間が、歪んだように見えた。
「竜児…北村くんと、狩野すみれが…何だって?言ってごらんなさい」
ジリジリと竜児に歩み寄る大河。竜児は小柄な大河の背後に、数倍の大きさの猛獣の幻影を見る。
虎だ。 虎が見える。 圧倒的迫力に竜児は後ずさりするが、壁に当たり、追い込まれる。
「な…なんで急に機嫌悪くなるんだよ、っていうか狩野先輩呼び捨てかよ!」
「質問に答えろ。さむなくば…剥ぐぞ」
生命の危機を感じた竜児。朝見たことを目を瞑って、大河に一気に喋りだす。
「わかった、言うぞっ!今日の朝、駅で北村と狩野先輩がいて、なんか話していて、
 北村の顔が真っ赤になってて、狩野先輩と何かあったのか?って聞いて、それで…」
バタンッ。扉の閉まる音。大河は話の途中で帰ってしまった。
「おおうっ…ったく、逢坂っ、なんなんだよ…」

困惑する竜児には、床に付いた雫の跡に気付く余裕は無かった。

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