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みの☆ゴン60〜72 ◆9VH6xuHQDo 2009/10/11(日) 21:26:37 ID:/YpdOFXK



そう、それはまさに悪夢。こんな夢━━


……先生と、高須くんは、干支が一緒ですよね?……
 いや、俺は、今年17才ですから、先生は、今年30ですよね? 13年違いますけど。
……そう……ですよね……高須くんは、どうなんでしょうか、その……
……もし恋人にするとして、何才までなら、平気なのですか?……
 そうっすね……って、何ですか、その質問は? 俺は同い年がいいです。
……そうですか……逢坂くん(仮)でさえ、5年の差。もう死んじゃおうかしら……
 お葬式には参列します。でも先生。考え直して下さい。男運がないだけだと思います。
 先生は魅力的です。春田だって先生に告白されたら付き合うって言ってましたし。
……春田くんですか……考えておきますね……でも高須くん達は平成生まれだものね……
……いくら何でも離れ過ぎですよね……先生の生まれた昭和ってね。激動の時代……
……生々しくって、混沌としていて……今みたいに洗練されてないの……
……知りたくありませんか? 高須くん……私がどんなセックスするか興味ないですか?……
ありません。おうっ、先生! ありませんって! なんで脱ぐんですか! おおうっ!

ゆりは、その熟した肢体を雰囲気を出してゆっくり晒していく。気分は……踊り子。
踊り子のように慣れた手つきでゆっくりと。ハラリ……シャツがゆりの手を離れる。
くるりとターン。背中を向け、次はタイトスカートのファスナーをおろした。
ゆりは、その実が詰まっているような、丸い尻をつきだし、足元にスカートを落とす。
 先生……何度も言いますけど、俺は、その……無理っすから。
……ええ、高須くん。観てるだけでいいんです。課外授業ですから……
突然、下着姿のゆりに、後ろから抱きつき、乱暴に乳房を揉む男が現れる。
……はあっ……逢坂くん(仮)……
妖しい表情で逢坂くん(仮)に微笑み掛け、白魚のような指で、彼の顔の輪郭をなぞる。
……早く、しましょう。したいんです……
そうゆりが口走ると、逢坂くん(仮)は、ゆりのショーツとブラを手荒く剥ぎ取り、
そのまま押し倒し、ギュっと、体を重ね、裸身を抱き止めた。
ゆりは片足を立て、太ももを逢坂くん(仮)の股間にグイグイ食い込ます。
すると逢坂くん(仮)はその仕返しとばかりに、ゆりの尻を強く揉み始める。
互いに互いの身躯の感触を悦しむ。むさぼるように、あらゆる箇所に吸い付く。
ゆりは、逢坂くん(仮)の体を撥ね除け、入れ替わり、股間に顔を埋め、彼の亀頭を吸いだす。
 ……チュウウ……チュウウウウウ、チュパ……
四つん這いで、尻を高く突き出しているので、竜児の目の前には、ゆりの秘部が全開に広がる。
尻を小刻みにプリプリ揺っていて、どうやら、ワザと竜児に秘部を見せつけているようだ。
そこは、ゆりの粘液が、プクンプクン溢れ出ていた。ゴクリ、息を飲む。
逢坂くん(仮)は、亀頭に絡まるゆりの舌の動きに、我慢ができなくなり、
ゆりに挿入を懇願。体位を反転、ゆりに覆いかぶさり、両足をかつぎ、大股開きにさせる。
そして、汗臭いゆりの尻を持ち上げるようにして、グチョグチョのゆりの中に入り込んだ。

……あはぁん!……
まるでポルノ映画のような喘ぎ声を上げて、ゆりは、弓のように、のけぞる。
ムチのようにゆりの髪が弧を描く。口に入り込んだ髪先が妖艶さをかもしだす。
ゆりはオーバーに激しく腰を振り、その潤んだ瞳で、竜児に目線を移した。
ちゃんと観てる?大人のセックス……過激な課外授業。そう竜児に訴えるように。

逢坂くん(仮)の腰使いは、荒々しく、自分勝手に快楽を貪り食っていた。
ゆりの尻を掴む指が、深く食い込み、激しく突き続ける。
……はぁっ、あはぁんっ、いいっ! ああんっ……
ゆりは、逢坂くん(仮)の顔を両手で挟み、キスをせがみ、逢坂くん(仮)は、
さらに深く挿入し、ゆりの口に吸い付いきながら、乳房をグニュリと揉みだした。
乳肉が、指の間から盛り上がるほど、餅のように柔らかい乳房を責める。
本能のまま、欲望のまま、絡み、求め合っている間、ゆりは何度か、ビクっ! と、
カラダを痙攣させてた。激しく奥まで突かれている間その度に、ゆりは何度もイっていたのだ。

汗だくでスベる肌。ゆりは逢坂くん(仮)に強く抱きつき、腰を静止させた。
すると突き刺さったまま、ゆりは上体を起こし、逢坂くん(仮)に馬乗りになる。
長く、イヤラしいキスをして、ゆりの腰は、グリグリと八の字を描き始める。
さっきの逢坂くん(仮)より過激なストローク。容赦なく抜き刺しするゆり。
上下に揺れる乳首を逢坂くん(仮)はキュウウウっと摘む。
 ……はあん、はあん、いやあっ、あはあっ!……
怒濤のエクスタシー。ゆりの溢す声は悲鳴に近かった。
ゆりが竜児に背中を向けているので、でかいゆりの尻に、逢坂くん(仮)自身が、
抜き差しされる光景が三白眼に映り込む。そこは、ぐしょぐしょに、濡れ、
ブシュンブシュンという艶音を絶え間なく出し続けていた。
思わず竜児は、粘液がしたたっている秘部に手が伸び、ゆりの愛液を指ですくいとる。
ぎゅっ、と菊門が締まる。今度はその菊門にタッチ。
……はぁあああん、イクっ、イっちゃうううっ……
一気にのぼり詰めるゆり。腰はさらに狂ったような動きだす。……臨界。
……いやああああああっっっ……


━━その場面で竜児は起きた。絶句。言葉も出ない。まさに悪夢。
『人生、おもいどおりにはなんねーぞ!!!』という、謎の言葉が竜児の脳裏によぎる。
今夜は、そんな悪夢を見てはいけなかったのだ。それどころではなかったのだ。
まあ、だからこそ、悪夢なんだろうが━━

実はリアルに事件が2つ起きた。 悪い事件と、良い事件。
その発端は、実乃梨がデコ電を作っていた12時間前まで、さかのぼる。

***

「……そ、そんな鋭い目でわたしを見ないで。小皺、気にしてるんだから……」
「いや、そんなモン見てません……例の件は墓場まで持っていきますから、俺も忘れたいんで」
そ、う……です、ね……活動限界に達しそうなゆりは、静かに退場……教室が明るくなった気がした。

「……あ、櫛枝っ、こんな感じ。ど〜かな?」
ゆりの奇行に唖然としていた麻耶だったが、書き上げたデコ電のデザインを、実乃梨に手渡す。
「へいへい分りやんしたっ! 今日はちょっと時間無いから、今度でいーかな?」
「ぜ〜んぜんオッケーだってぇ! 空いたら声掛けてよねっ」
「そうだ、みのりん。今日、竜児とお食事会じゃない? 時間どうしよっか」
「ん? え? 何? 櫛枝っ、高須くんと、お食事会するの?」
「そーだよ。そーだよそーだよソースだよ。今回で三回目なんだ。なっ、竜児くん」
名前を呼ばれた竜児はコクリと肯定する。ただそんな事バラしたら、また噂されてしまう。
あの、『櫛枝ー!!事件』がやっと沈静化したというのに。案の定、麻耶が食い付いた。
「え! マジマジ? やっぱりそーなの、そーゆーことなの? ねねっ奈々子気になるよねえ?」
「……詳しく!」
ふたりの美少女はニヤリと笑みを浮かべるが、亜美は、亜美(黒)の存在を知っている竜児に助け舟を出す。
「麻耶ちゃん、奈々子ちゃんっ、なんかアヤしーから、聞くのやめてあげよーよ?
 それよりさっ、わたしたちも、帰りにどっか寄っていかない? いい所知ってる?」
「なら亜美ちゃん、スドバってお店教えてあげる。いい雰囲気のお店なんだよ」
っと、キャイキャイ盛り上がりながら3人はランチを食べに屋上に向うのだが、
それと入れ替わるように、今度は能登と春田が近づいてきた、

「ねえ、高須、今日帰りにカラオケ行かない?超いい話あるんだけど!」
「いい話? 誘ってくれてすまねえが、約束があるんだ。今度な」
「ま〜じ〜で〜っ! 高っちゃ〜んっ! 陸上部の一年の女子三人とゴーコンなんだよ!
 ゴーコン☆ コーフン☆ トーコン☆ これ以上優先する用事なんてありえなくな〜い?」
「それこそ、俺が行ったらマズいだろ。無意味に怖がらせるだけだ。やっぱパスだ」
「そっか〜、しょうがないか〜。残念。他当たるよっ」
合コンを蹴るような用事が気になる能登と春田だったが、諦めて引き下がる。
竜児は、ふいに振り向いて、なんとなく目があった実乃梨の瞳に、安堵の色が見えた気がした。

「あっ、みのりん時間時間。待ち合わせしないと。みのりんは5時まで部活でしょ?
 わたしも放課後、用事出来ちゃったの。生徒会室にいくんだ。生徒会の庶務になったの」
「ウソ!大河、そのウソホントの真実なの? 賛成の反対の賛成なのだ。これでいいのだ!」
「話が脱線してるぞ……マジだ大マジ。実乃梨も部活だし、俺ひとりで買い出しにいくよ」
「ヤックデカルチャー!! そうなんだ! ねーえっ! 北村くん、知ってた?」
「もちろんだ。ズバリ今朝、会長から聞いているぞ。逢坂が庶務になってくれたからには、
 我らが生徒会も、鬼……もとい、虎に木刀だな! いやあ、頼もしいぞ! ははははは」
北村は、腰に手をやり、永遠に高らかに笑い続ける。

「……大河っ。ガンバッ」
実乃梨は、小さく呟く。返事のかわりに大河は拳を、ぎゅっと握る。
その意味は、庶務をガンバるのではない事くらいは、ニブい竜児にも理解出来た。

放課後。お食事会のメニューを優柔不断になかなか決められなかった大河が、
ちょっとだけ遅れて、旧校舎の3階生徒会室の扉をガラリと開けた。
「やあ逢坂! 本当に来たんだな、嬉しいぞ! 歓迎する!」
眼鏡をキラリ、爽やかに、朗らかに、副会長の北村は大河を迎え入れる。
「き、北村くん……わたし、ききき、田村くんのお手伝いさせて頂きます」
「逢坂。なんだ田村くんって。誰だ? どっかで聞いた事あるような気もするが、まあいい。
 じゃあ、来てもらって早速だが、逢坂、てめえは来月の体育祭のスローガンを考えてくれ。
 過去の生徒会活動誌を参考にしてもいい。おい北村。逢坂に教えてやれ。次に村瀬と幸太。
 てめえらは職員室に行って昨日決めた、体育祭スケジュールを提出してこい」
そう、すみれが指示を出し終わる前に、北村は書棚に向かい、村瀬はファイルを取り出し、テキパキ動きだす。大河はその様子を見て、生徒会での権力の均衡状態を理解した。
「逢坂、これが去年の資料だ。ちなみに去年のスローガンは『一致団結』だ。
 まあ、過去にとらわれず、逢坂が自分で思いついたスローガンを書き出そう」
「う、うん! わたし頑張るね!」
すみれに命令され、イラっとした大河だが、北村が隣に座った事で、猫化し、おとなしくなる。
そしてガバッと机にかじりつき、レポート用紙に次々とスローガンを書き出していった。
「ものすごいペースだな逢坂! どれどれ、俺に見せてくれ」
北村は身体を乗り出し、レポート用紙を覗き込む。そのとき北村の腕が、大河に軽く触れる。
ドキッとして大河はシャーペンの動きを止めると同時に、心臓が止まった。息の根も止まる気がした。
そんな大河のビンカンな変化にも気付かず、北村は大河の考えたスローガンを声に出して読む。

『肉を切らせて骨を断つ。ここは貴様の墓場だ』
『絶対に負けられない闘いがそこにはある』
『ハッスルDynamiteクライマックスやれんのか』
『今日からお前は富士山だ』
……とか。

「さすが逢坂! 予想を遥かに超える出来じゃないか! スローガンだけで闘志がみなぎる! 
 特にこれ。『OHASHI BOM-BA-YE』とか、男汁MAXで、すばらしいぞ!」
そ、そうなか……と、照れる大河だったが、すみれがイエローカード。
「てめえら、悪ノリするんじゃねえ。スローガンっていってんだろ? 暴走するな。
 ふむ。そうだな……去年といっしょで、四字熟語にしろ。いいな? おおそうだ、
 あしたの町内掃除大会の打ち合わせに校長室に行くんだった。逢坂に北村。
 わたしが戻ってくるまで考えとけよ。書記。てめえも一緒にくるんだ」
わたし? と、自分を指差す、最近バンド活動に気を取られ気味の二年生書記女史。
バンドスコアを閉じ、すみれに連れられ、いそいそと生徒会室を去った。
……そして北村と大河は生徒会室にふたりぼっちになる。

「叱られてしまったな、逢坂。いやあ、すまんすまん。少し調子に乗ってしまったぞ。
 しかし逢坂がここに居るのは不思議な感じだな。庶務になるって、いつ決めたんだ?」
「うん。竜児がね。そうしろって……迷惑、かな?」
北村は、首を横にふる。大河は初めて北村を近くで見つめる。はっきりした顔立ち。
くっきりした彫りの深い二重まぶた。澄んだ瞳。数秒、大河は見蕩れてしまった。

「迷惑なんて、そんなわけあるかっ! 俺は逢坂と一緒に働けて最高にハッピーだ!」
好きな男子からの口撃に、大河は胸がキュンキュン、萌え死にしそうになってる。
しかしいつまでもイチャイチャできない。すみれが戻るまでにスローガンを考えなくては。
思いついた四字熟語を、手当り次第にレポート用紙に埋めていく。北村は見守っている。
『真剣勝負』『正々堂々』『元気溌剌』『勇猛果敢』『不屈不絆』……とか。

「なんか、北村くんのこと書いちゃってるみたい……真面目で、頼もしくて」
「ん? これが俺のこと? そんなこと逢坂に言われると、なんか光栄だな。ありがとう。
 それじゃあ……そうだな。逢坂はズバリ『純情可憐』だな! お前にぴったりだぞ」
「わ、わたしが可憐? ほんと?」
「そうだ。お前は、綺麗だし、正直だし……光風霽月、閉月羞花っていうのも合うかな」
「えへっ、照れちゃう……あんま意味判んないけど……」
シャーペンをクルクル廻す大河。デレデレして顔がトロけている。もちろん、可愛らしい。
さすがの北村も心臓を射抜かれ、ふたりの関係の核心に、話題を移した。
「……この前のことなんだが、逢坂……今月は、体育祭や、一年のバスハイクやら、
 結構、生徒会は多事多端でな。あの続きなんだが、もう少し、待っててくれないか。
 俺が頑迷固陋な奴で、狐疑逡巡な感じで申し訳ない」
「……うん。でも四字熟語はもういいかな、北村くん。ふふ」
「すまん。ははっ」
お互い柔らかい気持ちになり、心が解け合っていく。ふたりでゲラゲラ笑った。
大河はその時、ほんとうに楽しかった。北村もほんとうに嬉しかった。
涙まで出てくる。何で笑っているのか判らなくなるほど、笑い声は止まらなかった。

***

ちなみに校長室のすみれは、用件を済ませたにもかかわらず、
いつも以上に校長に饒舌になり、いつも以上に校長室に居座っている。

***

「お〜い竜児くんっ、こっちだぜよっ」
お食事会の買い出しを終え、竜児は、実乃梨と大河が待つ、いつもの通学路に到着した。
荷物いっこ貸しなっ! と、実乃梨は竜児が両手に持っていた荷物の片方拾い上げる。
「いや〜、竜児くんの手料理、久しぶりだよねぇ」
「今日は鮭、焼くの?」
「うーん……ムニエルにするかな。塩コショウして粉振って、
 バターで揚げ焼きとか。ケチャップで食うとうまいんだよな」
「それいい! おいしそう!そうだ、私サラダ作ろうかな」
「「え?」」
竜児の手から、荷物が滑り落ちそうになるが、地べたスレスレで実乃梨がキャッチ。
「うおおっ! どうしたの大河! 料理すんの? スゲーじゃん!」
「そ、そうかな? みのりん……えへっ」
「……い、いや……無理しなくていいぞ。実乃梨もいるし……」
「なによ! 私だってサラダぐらい作れるもん! 簡単! まず、葉っぱむしるでしょ?
 ちぎるでしょ?お皿に乗せるでしょ? マヨネーズかけるでしょ? ……ほらできた」
「だめだな。レタスは冷水で締めないと食えたもんじゃねえ。ドレッシングはどうした」
竜児は断固、首を横に振る。しかし、実乃梨が大河に加勢する。
「竜児く〜ん、せっかく大河がヤル気だしてるんだから、尊重しようぜ」
やがて三人は最後の曲がり角。大河のマンションの前までたどり着く。だがその時、
「やっと追いついたあっ!」
背後から声がした途端、竜児と実乃梨の間にいた大河が、そいつと入れ替わる。
「さっき見かけて、走って追いかけてきたの! お願い……友達のふりして!」
「……あ……え? 川嶋?」
「……どうしたの川嶋さん?」
息を切らし、白い顔を曇らせる川嶋亜美だった。
「あいつ……」
汗ばみ細かく震えてもいで、尋常な事態ではなさそうだ。慌てて亜美の目線の先を追ってみると、
「……なんだ、あれ」
少し先の曲がり角、電柱の影。不自然に佇む男の姿があった。思わず顔も引きつる。
この辺ではまったく見ない奴で割とスラリとした体格、こざっぱりした服装は一見して大学生風。
それにしては荷物が多い。じっと隠れて立っている様子はどう考えても普通ではなく、
それが逆に奇妙な雰囲気となってその男を周囲から浮き立たせている。
「川嶋さん……あの人、もしかして……」
「普通の知り合い……じゃあなさそうだな……」
男は見ていることがバレても構わないのか、亜美を凝視することを一向にやめようとはしない。

「そうね、そろそろ……決着、つけましょうか……」
そんな中、さらに怖いものがその背後にはスタンバイしていた。
おそらくは、飛び込んできた亜美に吹っ飛ばされて、
道の端に転がっていたのだろう大河が、ゆっくりと身体を起こし……
「このバカチワワ……潰してやるぁあああっっっっ!!」
傍らのゴミバケツを驚異的な脚力で蹴り上げた。
重いはずのそいつはドォォン! と宙で回転し、三人の頭上を越えて不審人物へ一直線、
数メートル吹っ飛んで轟音とともにその足元に叩きつけられる。
「……!」
ワールドクラスの壁越えフリーキックにビビった男は、数歩後ずさり、
そのまま方向転換。猛然と走って逃げ去った。

「ん? ……なに、あいつ!?」
大河もようやくその存在に気がついたらしい。膨れ上がった殺気は瞬時に散って、
「変態くさっ!」
嫌悪感てんこ盛り、身も蓋もない呟きがその唇から放たれた。
亜美はようやく息を継ぐ。だがその足元はふらふらと頼りない。

「ねえ、川嶋さん大丈夫?」
「あ、うん櫛枝さん……久しぶりに、超本気で走ったから……やだ、膝が笑っちゃった」
冗談めかして笑って見せるが、その笑顔も硬く強張っている。
「……なんなんだよ、あの男は。川嶋、よかったら聞かせてくれよ」
手を貸してやりながら尋ねるが、亜美は曖昧に肩をすくめ、

「その……ええと……放課後、麻耶ちゃんと奈々子ちゃんと……スドバに行ってて、
 そこでふたりと別れて、それでなんか、絡まれて……多分、変なファンの奴……
 ね、お願い。ここから一人で帰るの怖いの……家に匿ってくれない? お願い!」
亜美は、仮面チワワ顔ではなく、あくまで本気の表情。竜児は一瞬考えて、
「……いまから大河のマンションでお食事会するんだ。川嶋も一緒にどうだ?」
「大河、いいよね? 川嶋さん、なんか、かなりヤバそうだし」
「……うん。川嶋さんも来なさいよ。緊急事態だし。しばらく隠れてた方がいいと思う」
「え……あんたのマンション?……いいの?」
亜美は犬猿の仲である大河に警戒したが、そんな状況ではないのは明白。

「ええもちろんよ。川嶋さん、私たちいろいろあったけど、今は一時休戦よ」
亜美はそれでも少々躊躇っているような様子ではあったが、
四人はマンションのエントランスへ足を進めた。

***

「竜ちゃんのお友達、ひとり増えてるぅ〜☆や〜ん、またまた可愛い娘でやっちゃん嬉しいかも〜☆」
「やだあ、高須くんのお母様ったら!お上手ですねっ! わたしなんか普通ですって!」
さっきの切迫した表情はどこへやら。亜美は、泰子と亜美はぶりっこ仮面装着で歓談中。
こういう亜美は安心して傍観できる。さすがオトナの中で仕事しているだけはある。
そして竜児は実乃梨とメインディッシュとスープを料理中、大河は、思案中であった。

「ドレッシングって、これと……これを、掻き混ぜて。そんで……閃いた! こいつだっ!」
「大河、ストーップ!! なんで牛乳混ぜるのさっ!」
「ええっ? みのりん、おしょう油入れすぎて、真っ黒になっちゃったのっ。だから……」
「だから白い牛乳を入れて中和? ブモー! ドレッシングは絵の具じゃねえよっ大河!」
「……大河。お前はよくやった。あとは俺にまかせろ」
ポンッと肩を叩く竜児。大河は負け惜しみを吐く。
「チッ……気安く触るなセクハラ野郎。慣れない事したから疲れた。特別に代わってやるわ」
「じゃあ大河ぁ。テーブルに飲み物持っていってよ。重要な任務だぜっ、健闘を祈る」
そういって敬礼し、実乃梨はティーセットを大河に渡す。大河は素直に言う事を聞いた。

「へ〜、亜美ちゃん雑誌のモデルさんなんだ〜。お肌もちょ〜ツルツル〜っ! 触っていい〜?」
「そんな〜っ。恥ずかしいですよお。ぜんぜんそんな事ないのに! 泰子さんもお若いですよね?
 もしかして23歳くらい? あたり? やったあ、なんか亜美ちゃん、今日はツイてるみたい!」
相変わらず、仮面装着で笑ってみせる亜美の隣に、キッチンを追い出された大河がやってきた。
「やっちゃんっ、これ食べて。おいしーのっ……ほれ、バカチーも食っていいぞ」
器用に声色を変える大河。クッキーが目一杯詰まったピンクの缶を持って来た。
「誰がバ……あれ? うっそ? ちょっとこれマジやばい。村上開新堂のクッキーじゃん。
 あんた、どうしたのこれ? 普通買えないじゃん……まあ……親が金持ちってことね。親が」
「なによ。そーよ、親が送って来たの……そんな事どうでもいい。あんた、なんか芸できないの?」
「芸? 出来る訳ないじゃん。わたしはモデルなの。芸能人。芸NO人」
「きゃはははっ☆亜美ちゃん、おもしろ〜〜いっ」
「へぇ、そう。二重人格なあんたは、モノマネとか、上手そうなんだけどねえ。プププ……」
何かを企んでいるような含み笑いをする大河。その背後にあるキッチンでは、
まるで新婚さんのように、仲良くサラダをつくる竜児と実乃梨の姿があった。
「♪アッアッアッア〜スパラにっ、タッタッタッタマ〜ネギギッ! ふふふふ〜ん♪
 旬の食材をきっちりチョイスするところなんて、さすがだよね〜、竜児シェフ」
「いやいやなんのなんの。こいつは微塵切りにして、ポタージュにする」
「ほう、微塵切りとな? 一説によると竜児くん、このタマネギ、10秒で粉砕する、
 噂のスタープラチナのスタンド使いだと耳にしたのだが、そいつぁ、本当かね?」
「10秒は無理だな……でも、15秒あればなんとか」
おっ、言うねえ言うねえ! と、驚く実乃梨が声を皮切りに、竜児はタマネギの皮を剥き、
スタタタタタタタタタタッとリズミカルに包丁を入れる。その間実乃梨は竜児を、
オラオラオラオラッ!無駄無駄無駄無駄っ!オラオラオラオラッ!っと、応援する。
あっという間に微塵切り完了。タイムは10秒フラット。レコード更新。
「……やれやれだぜ」
「くぅ〜、決めてくれたぜ! 竜児くんっ」

「またね〜☆」
泰子は同伴出勤で少し早く出掛けていった。それを見越してなのか、実乃梨が口火を切る。
「あーみんよおっ……さっきのあれって……ストーカー、だよねぇ?」
亜美の顔から血の気が引き、明らかに動揺しているのが分る。
「え? ああっ……だから熱狂的な……ファンっていうか……その……」
ファンというあたりに違和感を感じる。ストーカー。間違いないのだろう。
「あんた、このメンツに今更取り繕っても意味ないじゃない。だいたい匿ってもらって、
 夕食も食べさせてもらったんだから、訳くらい話しな。……わたしは興味ないけど」
大河にしてはもっともな意見だ。亜美は溜息と共に重い口を開く。
「私がこっちに引っ越してきたの、あいつのせいなんだ。うち、ママも芸能人でしょ?
 ママの事務所から、自宅付近を変な男にウロつかせるのは困るって言われちゃって
……私だけこっちの親戚の家にお世話になることにしたの。パパも仕事が忙しくて、
 都心の事務所離れられないし。でも……まさか、引越し先まで突き止められるなんて」
「そう、だったのか……」
ハードな現実に一同黙り込む。この際、亜美はこいつらに悩みをぶちまける事に決めた。
「うん。引越してきたことは仕方ないって思うんだけど、でも……怖いんだよね。
 親とも離れちゃったし、ほとぼりが冷めるまでモデルの仕事も休むことにして、
 事務所もいったん休むことにしちゃった。だから、守ってくれる人がいないの。
 前はマネージャーがいたから車で送り迎えもしてもらえたんだけど……ああもう、
 信じられない……こっちに来てまであいつに追いかけられるなんて……」
そりゃ怖いだろう。男の竜児でさえ寒気がするほど怖いのだから、
亜美は憂鬱すぎる事態を話し終え、なんとなく気まずそうに白い顔を俯ける。
「とにかく……とにかく、一度警察に……」
「もう相談してあるってば……。他の事務所の子で、被害届を出した子もいるらしいんだけど、
 あの男ってずる賢くて、身元の手がかりになるような証拠は残さないんだもん……
 この程度のことじゃ、警察だって本格的には捜査してくれないし……」
人差し指を突き上げ、唐突に声を上げたのは実乃梨。大きく瞳を見開き、これしかない、と語りだす。
「警察がそいつを捕まえられないのは、身元がわからないからなんだね?ならさ、
 こっちが逆にそいつをストーキングしてやるってどう? あーみんのあとを、
 スト〜クスト〜クしてるところを、写真とかビデオとかで証拠として押さえてやるの。
 それを警察に持ち込んで、人物特定させて、捕まえてもらおうよ。それならいいよね?」
竜児は割って入らずにはいられない。……いや、自分も手を合わせたいわけではなくて。
「お、俺も微力ながら協力するぞ。おい大河。北村の幼馴染みが困っている。意味分るな?」
「くっ……そうね。いいわよ。ただわたし、変態野郎なんかに手加減する自信ないわよ……」
しかし亜美は憂いに沈んだ顔のまま、声もなく唇を噛んでいる。それに気がついて、
「大丈夫か?」
思わず問いかけた竜児の声に、亜美は弾かれたように顔を上げた。そして素早く笑顔を取り繕い、
「……え、うん! みんなが助けてくれるんなら、あたしも元気百倍だよ! ありがとう!」
妙に軽いその言葉が、広い室内にむなしく響いた。


***

「あーみん、まだ大河んちにいるのかい?わたしたち帰っちまうけどよ」
実乃梨はカバンを持って立ち上がっていた。竜児も帰る準備が済んでいる。
「まだ、8時でしょ? もし伯父さまの家がバレたらまずいし。もう少し匿ってもらうわ」
「そうしたほうがいいわ、川嶋さん。 もし間違いがあったら私も寝付きが悪いものね」
「お前……いいやつだなあ」
「こんなときだもの。わたしだって鬼畜ではないわ。遠慮しなくて結構よ。おほほほほほ」
必要以上に鷹揚に笑う大河に一抹の不安を感じたのだが、実乃梨を伴い、竜児は玄関を出る。


「あ」
大理石のエントランスから外に出ると、マンション前の公園のベンチに、男が俯いて座っていた。
夜の公園に照明に照らされ、不気味度が増している。その男は、例のストーカーだった。
ケータイをパチンと閉じ、ストーカーは大橋駅の方向へ歩いて行く。
たぶん8時を廻り、諦めて帰るのであろうだ。
「ねえ、竜児くん。わたし尾行する。ストーカーのアジト、突き止めるよ」
「……ひとりでか? 尾行ってのは、二人でするもんだろ? 俺もいくからな。
 ただし、危険だから、気付かれたら諦めよう。それでいいよな?」
「うん。深追いはしねえよ、相棒っ! なんてな」
即席の刑事コンビは、捜査開始する。

「あーみんの実家は東京でしょ?どんなに遠くてもそれ位でしょ。ほら、360円だって」
駅に着き、実乃梨はストーカーが買ったキップの料金を表示されたディスプレイで確認。
竜児と実乃梨は駅に着いてすぐ買った、Suicaを手に、ストーカーを追い改札を抜ける。
「ねえ、竜児くん。刑事ドラマとか好き?」
「ドラマ? あまり見ないからなぁ。好きか別にして、コロンボとか? 実乃梨は?」
「わたし? ギャバンかな」
「ギャ……外国人?」
「ううん。宇宙人。宇宙刑事。今度教えてあげるよ。竜児くん、電車着たよ」
尾行中というのに、マイペースの実乃梨。実乃梨は怖くないのか?
平然を装ってはいるが、情けない事に、竜児は怖かった。実乃梨の器の大きさに感動。
実乃梨も実は、結構怖かったのだが。


***

竜児と実乃梨は、都内の環状線のホームにいた。
少し先に、ストーカーがケータイをチェックしながら電車を待っている。
「すごい人だな。これ全員、電車に乗れるのか?」
「さすが都内だねえ。同じパンフ持ってる人もいるし、なんかイベントでも、
 あったんじゃないかな。竜児くん、はぐれないように気をつけようぜっ」
駅のアナウンスが響き、電車がホームに入ってきた。
竜児は、思わず実乃梨の手を握った。もちろん、はぐれない為だったのだが、
よく考えたら大胆な行動。慌てて手を緩めるが、実乃梨はその手を強く握りかえしてきた。
「み、実乃梨。俺、手汗すごくねえか? 悪りい……」
「え、そう? わかんないや。わたしも手に豆が出来てるけど、気にしないくれい」
という実乃梨の手が、微妙に震えているのだが、竜児は気付くほどの余裕がなかった。

電車の扉が開き、車内の熱気といっしょに、次々と人が、吐き出されていく。
そしてカラッポの車内に、吐き出された以上の人数が、車内に吸い込まれていった。
ストーカーも電車内に入る。続いて、竜児と実乃梨も乗車するのだが、
人波に揉まれ、繋いだ手が離れてしまった。おうっ、と漏らし、竜児は、実乃梨を探す。
すると正面の人の壁を掻き分け、実乃梨が竜児の胸に飛び込んできた。
「ふあっ、すごいラッシュだねえ……ぐはっ!」
プシューっと、電車の扉が一旦閉まりかけた時、扉の方から、強く押され、潰されそうになる。
竜児は、守るように実乃梨を両腕で囲う。つまり、抱きしめる体勢になる。電車は発進した。


「み、実乃梨、すまねえ……混んでて……苦しくないか」
「ヘーキだよ、竜児くん、でもラッシュってスゲーよね? さすがTOKIO、鉄腕DASH」
そう話す実乃梨の吐息が、竜児の首にかかる。さらにアゴに触れる髪先。
つまり実乃梨との距離は0cm。ピッタリくっ付いたカラダ。
ドキドキして、全身が心臓のようになってしまうのだ。
……いつか、もしかしたら、実乃梨と生肌で抱きしめる時がくるかもしれない……
そんな邪念が湧き出すと、17才の下半身は素直に反応してしまう。慌てて邪念を振り払う竜児。
「し、色即是空、空即是色……」
「おおっ、BY 錯乱坊(チェリー)……」
なんとなく竜児の身体の変化に気付いてしまう実乃梨。それ以上ツッコミできない。

「……こんな時に俺って奴は……修行が足らねえ」
「え? なに? ごめん聞いてなかった」
実乃梨は、竜児に抱かれ何を思うのか。
「駅に着いたね。ちっとは空くかな」
電車の扉が開き、数人がホームに降り、少しは余裕ができる。
それでも密集しているのには変わりなく、実乃梨との距離が0センチから1センチになったくらいだ。
電車が走り出すと、隙間ができた分、バランスが取り辛くなってしまい、グラついてしまう。

「あいたっ!  あ、ヘーキヘーキ……」
電車の揺れで、実乃梨の鼻が、竜児の肩に当たった。
さらに電車は、急ブレーキで大きく揺れる。キ━━━━━━ッッツ
「!!っ ふぐおっ! 実乃梨すまねえ!!」
「うわあっ! ぶねえっ!」
アナウンスで、電車が赤信号で急停車した旨を伝える。
そして、そのせいで、竜児は倒れかけて、実乃梨の腰に抱きついてしまった。
あろうことか実乃梨の胸に般若顔を押し付けたまま、竜児は動く事が出来ないのだった。
「ああああっ! ……す、すまん……俺は自分がなさけない……!」
「おぅふっ! いいんだぜ……気にすんなよ!」
謝れども謝れども無様度はアップするばかり。恥ずかしいことこの上無し。
「すまん、すまん、ごめん、ああ……申し訳ねえ……っ!」
でもって、焦れば焦るほどグリグリ押し付けるばかり。魅惑の感触を悦しむほどの余裕はなかった。
「……高須くん、あのー、本当の本当に気にしなくていいんだけどね。あせらなくていいし」
「いやいやいや、すすすすすまん! 今すぐに立つから!、ちょっと待ってくれ!」
竜児はとにかく起き上がろうと必死に手足を動かす。しかし状況は悪化するばかりだ。
「……実は、竜児くんが手を動かすたびに、私のケツが捲られて、パンツが晒されてしまうのだ」
「俺はなんということを……! こんなに恥ずかしいことを……もうだめだ、生きてはいられない!」
「恥ずかしいのは私の方なんだけど? まあいいからとりあえず落ち着けや。な」
「ああ……実乃梨にこんな辱めを……俺、責任取るからな、埋め合わせするからな」
実乃梨は、自分の尻の危険より、周囲の乗客の目線が気になってきた。
「そ、そうかい? 竜児くん見えてないだろうけど、只今大注目を浴びております……」
満員電車の中、とんでもない態勢の二人を、周囲にニヤニヤ見られてしまう。
わざわざ読んでいた雑誌を閉じ注目する人もいる。
「実乃梨! こうなっちまったらもう、俺……そうだ、俺と一緒のお墓に入ってくれ」
「ちょちょっとおっ…… 。お墓ってなんぞ? だから……恥ずかしいっての!」
「恥ずかしくなんかねえ! お墓だ。一緒の墓って事は、お前をお嫁にしたいって事で、つまり……」
「ギャーオ!! 竜児くん! 急にこの前の続き? フオオッ!ふたりきりの時にしよーぜ?
 てか、お嫁さんになる前に彼女にして欲しいんだけどさっ」
そんな、目も当てられないやりとりを始めた二人に、乗客たちは、
混雑しているなかでも、空間を作ってくれた。
やっと上体を起こせた竜児が今度は、乗車たちの視線を集める。
車内にいる乗客全員が、竜児に顔を向けている。ストーカーもだ。これは恥ずかしい。
実乃梨にそんな思いをさせたと、今更ながら反省。
実乃梨は、よっぽどだったのだろう、竜児の胸におデコをくっ付けている。
ここで決めなかったら、それこそ死ぬしかない。やったる。

「責任とるからじゃねえ。実乃梨。お前が好きだ。だから、彼女になってくれ」
「も〜、こんなところで…… うん、わかった!……ふつつか者ですが、ヨロシクなっ」
ブワッと、竜児を睨むように見上げる実乃梨は、真っ赤になっている。
『おい、若いの。幸せにしてやれ』
『よかったわねえ、おめでとう!あーん、羨ましい』
『カワイイ彼女、泣かせんなよ。ガンバってな』
狭い車内で、歓声、拍手まで聞こえた。突然始まったプロポーズを祝福してくれている。
どさくさに紛れて、告白してしまった。写メまで撮られる。ストーカーも、笑顔を見せている……
これで、こんなんで良かったのだろうか。そう呟く竜児に実乃梨が締めてくれた。
「これでいいのだ! でしょ?竜児くん!」

という訳で、尾行は失敗に終わった。

***

「ただいMA〜X。お母さん、風呂空いてる?」
「お姉ちゃん、お帰り。お風呂、あんたが最後だからね……今日は遅かったのね」
櫛枝家。テレビを見ていた母親が無地帰宅した娘、実乃梨を迎える。時間は夜10時。

「大河んちで飯食ってくるって、メールしたっぺよ?  あたしゃあ風呂風呂〜っと」
タオルをブンブン振り回し、実乃梨は浴室へ向う。しかし毎日、部活やらバイトやらで、
色っぽい話がない愛娘……ルックスは良いんだけどね……わたしに似て。うふふ。
「あら、カバン出しっ放しじゃない。もう、お姉ちゃんはっ」
っと、母親が娘のカバンに手を伸ばしたその時、カバンからケータイの着信音。
無視していたのだが、なかなか鳴り止まない。もしかして緊急事態? カバンを開ける。

ケータイのサブディスプレイに『りゅうじくん』の文字。あららあの娘ったら、いつの間に。
「もっしもーし、誰だい?」
実の母親には娘のモノマネなど楽勝なのだ。バレるまで、ちょっと話してしまえ。
『おうっ、実乃梨……いま電話大丈夫なのか? なかなか出なかったけど』
呼び捨て……これは……面白い。笑いを堪え、母親はモノマネを続行する。
「いま風呂出たところでさ、もう大丈夫だぜっ。なあに、りゅうじくん」
『まあ、用事ってほどじゃないんだが……声、聞きたくって』
きゃ〜っ、いいじゃんいいじゃんっ! 母親は忘れかけていたドキドキ感を想い出す。
「も〜っりゅうじくんてばっ。でも嬉しいぜっ」
『そ、そうか、よかった……あのさ、さっきのことなんだけど……俺、本気だから』
なになになにそれ? 聞いてないぞっ。当たり前だけど。
「さっきの事って?」
『え? ああ、その……告白ってか、プロポーズってか……』
そうですか、ああ、そんな事があったのですか。いったいどんな彼氏なのかしら?
「わたしもりゅうじくん、だ〜いスキだぜよ。ねえ、今度さ、ウチにおいでよ」
『実乃梨の家? またお食事会か? いいけど、迷惑じゃねえか? ご両親に』
へえっ、お食事会ってのは本当だったんだ……この前絶賛していたのは、彼の料理なのか?
「お母さんに話したら、竜児くんの料理食べてみたいって、しつこいんだよ。どーかな?」
『そうなのか? そうか……わかった。大河も呼ぶか?』
「大河には悪いけど、りゅうじくんだけ来て欲しいって。今週末は? 家デートしよーよ」
『お、おうっ、初デートが家でいいなら、わかった。でもご両親に逢うのって、緊張するな……』
そうそう。緊張するんだよね〜……ふはは。安心しな。お母様はりゅうじくんの味方だ!
「ちゃんと紹介するから安心して。特にお母さん、りゅうじくん気に入っちゃってさっ」

「……何が気に入ったって? マーマ」
母親が振り返ると、お風呂から出て来た実乃梨が仁王立ちしていた。
「わあ! お姉ちゃん早っ! ちゃ、ちゃ、ちゃんと洗ったの?」
「シャンプー切れていたから、取りに来たんだけど……わたしも、キレそうなんだけどね……」
バシッとケータイを奪い取る実乃梨。むおおおおおっっ! 機嫌悪い。そりゃそうだ。
「竜児くん? ごめん、今のお母さん。なにか余計な事言ってなかった?」
『は? な、なんだ? 状況がつかめないんだが……週末、実乃梨んちでお食事会するって』
ジロリと実乃梨は母親を睨みつける。ペロっと舌を出す。この母親は……
「ご、ごめんね、お母さんシメておくから。今日は遅いし、また明日ね? じゃあねっ」
「お姉ちゃん、タオル一枚で風邪引くわよ?……あははは、ごめんなさ〜い」
ゴゴゴゴゴゴゴ……娘のカラダから何かが出てる。何かが。
「くおらあああっ! 娘にやっとこさ彼氏出来たんだから、邪魔すんなって!!」
「謝ってんじゃない。それに邪魔してないわよ。うわ〜楽しみ〜! お赤飯炊かなきゃ!」
ルンルンの母親。こんな母親に逢わせても竜児に嫌われないだろうか……
余計な心配が増えてしまった実乃梨であった。

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