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98 174 ◆TNwhNl8TZY sage New! 2010/02/17(水) 07:07:40 ID:UNDYhXo7

オロセ

みんながそう言った。
違う言葉を口にしながら、その中に全く同じ意味を込めて、みんながみんなそう言っていた。
お父さんは見たこともないような強張った顔で、その言葉を繰り返すだけで、何を言っても聞いてくれなかった。
お母さんは泣きながら話を聞いてくれて、親身に相談に乗ってくれたけど、でも優しい言葉の中には嘘があった。
友達は、見え透いた励ましをしてくれた子もいれば、中には真剣に怒ってくれた子もいた。
学校に知られた時は、薄っぺらい道徳と倫理観が煩わしくて、その日の内に退学届けを出した。
一番初めに伝えた人は、その言葉すら残さないで、一番初めに目の前から消えた。
一番傍に居てほしかったのに、ずっと一緒に居たかったのに、なのに自分じゃない、知らない女を連れてどこかへ行った。
嫌で嫌でたまらなかった。
誰一人喜んでくれなかったのも、祝福してくれなかったのも、捨てられたのも。
なにもかもが嫌で、でもそれ以上に怖くなった。
「これ」を捨てれば、少なくともこれ以上失望させなくてすむ。
「これ」を失くすだけで、今より怒られることはなくなるはず。
「これ」を手放すだけで、捨てられたりしなかったのに。
そんなことを考えている自分が否定したくても確かにいて、怖くなった。
少しずつ、だけど日増しに大きくなる赤ちゃんに合わせるように、頭の中を蝕む身勝手な考えも、心の中で渦を巻く恐怖心も肥大していく。
それを感じる度に後悔して、泣いて、自己嫌悪しながら過ごすのが、嫌なのに、だけど他にどうすればいいかもわからなかった。
一日中毛布に包まってるような日が続いた。
だんだん心が腐ってく感じがして、今度は当てもなく外を歩いた。
最初は気が晴れたけど、次第にどこへ行っても、何をしてても他人の目が気になって、その次はあまり人の目がつかない所へ足を運んだ。
そういう所に寄り付くのは結局そういう人たちばかりで、うんざりして引き返した。
いつしか公園のブランコに座って、ただ日が暮れるのを待っているようになった。
近所からの白い目は今に始まったことでもなくて、正直に言えばその頃になると向けられる視線も、聞こえてくる内緒話も、
いろんなことが、もうどうでもよくなっていた。
まだ目立ち始めてもいないお腹が、これ以上なく重く思えた。

「…がんばったよね」
なにを?
「…もう、十分だよね」
なにが?
「…ごめんね」
だれに謝ってるの?
「…だって、もう…」
どうして泣くの?
「………………」
赤ちゃんは、どうするの?

それでいいの?

「…やだよ…ほんとはいやだよぉ…そんなのやだぁ…」

だったら───………

あの日のことは、多分一生忘れない。
雲間に沈んでいく、初めて見るような紅い色をしながら揺れていた夕日。
夜になってから降りだした雨。
持てるだけの荷物とお腹を抱えて、バケツをひっくり返したようなどしゃ降りの雨に紛れて。
大切な人たちを残して。
誰にも何も告げずにやっちゃんはあの家を後にした。
それよりももっと大切な、まだ顔も知らない赤ちゃんと一緒に。

***

突発的に1レス小ネタ
とりあえず酒ください。

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