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「いらっしゃいませー! みのりん、今日はホタテと野菜のソテー・ハーブチキンのバンバンジー・超でっかいメンチカツの三択だよ!」
「うおう、今日も迷うな〜……よし、出でよ運命のコイン、お前のフェイス・オア・バックで、俺の運命(と書いてランチ)は、決まる!」
「コイントスで三択って、どう決めるの……?」「占い用にコイン2枚くっつけて、絶対裏が出ないコイン作ったドラマあったな」
「行くぜ! 表ならAランチ、裏ならB、コインが立ったら、Cーっ!」

ちゃりーん。

「竜児ー、Bランチひとーつ!」「おっしゃー!……って! え、え――――っ?!」

今日もランチしに来てくれた彼女――櫛枝実乃梨が、手に持つハンドポーチと、眩しい笑顔を、磨かれた店の床に落っことして。
だって彼女の目の前には、竜児や北村とお揃いエプロン、ウェイトレス姿の親友、手乗りタイガーが!

「……う、ウェイトレス? 大河が、ウェイトレスー?! えっ、ど、どうして大河がっ?! ま、まさか、店へのツケが膨れ上がって、身体で返すことに――」
「ならないって櫛枝。今日から逢坂、この店で俺と一緒に働く事になったんだ」
「そ、そーなのみのりん。はい座って座って、おしぼりとお冷や持ってくから」

『ドラゴン食堂』の先輩従業員(バイト代払ってないけど)北村は、まったく何の不思議も疑問も見せることなく、
キラッ☆と眼鏡を光らせながら「今日から頑張ろうな、逢坂!」「……う、うん」と新しいアルバイト、逢坂を受け入れ、
今こそ普通のOL、しかし実は高校の時から就職するまでファミレスでウェイトレスのバイトしてましたー、
それも、胸を強調するデザイン&超ミニスカートな制服で大人気のお店で!(「あんな衣装、もー無理!」・櫛枝談)……という実乃梨も、

「大河……そうか、お主もウェイトレス界に足を踏み入れる覚悟を決めたのか――。
では教えてやろう、【最強のウェイトレス】を決めるべく、年に一度行われる、裏の格闘技大会のことを――」
「……く、櫛枝、メシはいつも通り玄米だな?」「おー、白ゴマトッピングで〜」

などと、最初は驚いてたけど、晴れて脱無職・脱ニートの一歩を踏み出した親友に実乃梨も喜んで、
「笑顔で挨拶、笑ってお仕事! ビルの奴もそー言ってたぜ、さあ大河! 北村くんも! 俺様に、続けー!」……とか、箸片手に接客業の秘訣など教えてたり。

『いらっしゃいませ!』にこっ!
『ご注文はお決まりですか?』にこにこっ!
『またお越しくださいませ!』にっこり!

「だめだー! そんなんじゃベトナム行く前に営業時間が終わっちゃうぞー! もう一度〜!」

鬼軍曹ウェイトレス(客だけど)、実乃梨も笑顔、テーブル拭きながら、北村も笑顔。
まだまだぎこちないけど、逢坂も笑顔。厨房で包丁握ってる竜児だって、一緒に笑顔。

「うわっ、何その鬼般若ズラ?! 竜児、あんたは厨房で調理だけしてればいーの」「おう……」

***

手乗りタイガー……逢坂大河、よく毎日店に来てメシ食ってくなーと思ってたら、実はこいつ、『ドラゴン食堂』の隣に立つ十階建て超豪華マンションの住人。
一人暮らししてるマンションから店まで徒歩30秒、交通費支給の必要がなくて、竜児の財布にも優しい。

とても職住近接なもんだから、仕事明け、北村にバイクで家まで送ってもらったりすることもなく……逆に毎朝、遅刻しないように(11時開店だが)竜児がマンションまで、迎えに行くことに。
昼と夜、1日2食の賄いメシが、いつしか朝食まで竜児ごはん。……それどころか、日曜祝日の『ドラゴン食堂』休業日には、あろうことか「これも従業員の福利厚生よ!」と、二階の高須家でがつがつメシ食らってる有り様。

「竜児、おかわり!」「……休業日でも、店の大きな炊飯器でご飯炊かなきゃならんのか?」

いったいこの身長145センチの小さなお嬢さんの華奢な身体のどこに入ってるのか、おかわり3杯も。
――でも何だかんだ言って、「しょうがねえな……」とか口では言いつつも、こうやって自分のご飯を実に美味しそうに食べてくれるのは、すごく嬉しいのだ。
そうでなかったら、「竜児、ご飯!」とやって来る手乗りタイガーのために、逢坂用に茶碗や湯のみをわざわざ用意したりなんか、しないのだ。

毎朝、きれいに洗濯しノリのきいたエプロン持って、寝坊しないようマンションまで迎えに行く。
逢坂に支度をさせ、髪の毛も上手にやってやって(ポニーテールがかわいい)、一緒に家を出る。
店ではちいさな看板娘ウェイトレスとして頑張り、竜児と共に北村好感度アップ作戦を実行……でもまあ、日々失敗続き。北村の前だと緊張し過ぎて、テンパって、ドジや失敗ばかり。

これでは北村と逢坂に買出しを頼もうにも、あいつはどんなドジをやらかすことやら……もっとも、店の食材調達は、
「だめだ! あいつの眼鏡は曇ってる、材料の良し悪しを見抜く心眼を持たねぇ奴に、大事な食材の調達はまかせられねぇ!」と、いつも竜児が自ら買出しに行っていて――その車の助手席に、逢坂もいつも一緒に乗って。

だって竜児が『ドラゴン食堂』日替わりメニュー決めるのは、まずウェイトレスさんのリクエスト聞いてから。
そもそもこいつの賄いメシでもあるし、「ね、これ食べたい! 竜児、作って!」と言うのは、当然のこと。
……杏仁豆腐とか柚子寒天とか、新たに日替わりメニューにデザートがつくようになったのも、当然のこと。

「何かえらい大ドジをやらかすんじゃないかなー……って思ってたけど、大河、ちゃんとウェイトレスやれてんじゃん!
でも、夜な夜な古井戸から『お皿が一枚……二枚……』『九枚……一枚足りない……今日も割られた……あのドジに……』と皿を数える亡霊の恨めしげな声が聞こえ――ってことはないよね、店長ー?」
「だいじょーぶみのりん、お皿下げとかドジっても、来てくれるお客さんには迷惑かけてないから。……料理運んでる時にすっ転んだら、お客さんまた待たせるし、せっかくの美味しい料理はもったいないし、それに作ってる竜児にも悪いし」
「ほーお……なんかバイト始めて変わったねー、大河ー」

***

逢坂が働き始めて数ヶ月、最近近所では『ヤクザの店』から『小さいウェイトレスさんのいる店』になったと評判のお店。
夜の賄いメシは、夜のお勤めに出撃する泰子といっしょに(親子そろって『店長』なのだ。雇われママだけど)。泰子も、「大河ちゃん〜☆」と、逢坂をまるで我が子同様に受け入れている。
――最初、二階の高須家に連れていった時には、
「うわぁ♪……竜ちゃんがぁ、かーわいいおよめさんつれて来た〜!」「ち、違――うっ!!」なんてやり取りあったけど。

閉店後も逢坂はすぐマンションに帰らず、いつも店で余ったデザートを高須家で満足げに平らげながら、毎晩のように、

「竜児、小さいエプロンないの? 私には大きすぎるの」「そうだな、俺や北村サイズだもんな、今度作ってやるから」とか、
「それ、カロリー計算?」「ああ、試行錯誤して求められる完璧な数値! ……帳簿計算より幸せな瞬間だ……」とか、
「泰子から店のビール無料券貰ったけど、皆で行くか? 職場の慰安代わりに」「私お酒ダメだし、北村くん、酔うと……真っ裸に脱ぐ癖あるし……女の子いても」「あ・い・つ・は……!」とか。

――つまり高須竜児と逢坂大河、気がつけば職住近接どころか、ほどんど職住一致状態。
そんな共同生活を毎晩のようにしてたら、気づけば深夜居間の畳の上、2人してぐーぐー寝こけてしまってたり。

「起きろ、逢坂、自分ん家で寝ろー」
「う……んんー……」

規則的な寝息。安心しきった寝顔。……こんな可愛い顔を、するんだ。
逢坂、大河。人呼んで手乗りタイガー。実乃梨の親友。店の貴重な常連客。
北村に、想いを寄せている。凶暴だけど、結構ドジ。でも、とても頑張り屋。
ラブレターと木刀。エプロンとウェイトレス。三食ご飯、デザートつき。
『ドラゴン食堂』の、大事な大事な看板娘。朝から晩までずっと一緒。……いつしか店でも家でも、馴れ合い関係なふたり。

「……しょうがねえな」

ワンピース姿ですやすや眠るちいさな身体をお姫様のように抱き上げ、今日だけな……と、自室のベッドに寝かしてやる。
気持ちよさそうに寝てる逢坂を起こしたくなかったし……それに、寝てるこいつをマンションまで連れて行くのを誰かに目撃されたら、
「指名手配写真に載ってそうな顔の男が、深夜身動きしない美少女を抱えて! きっとクロロホルムを嗅がせて眠らせて……」とか、警察に通報されるんじゃないかと。いや俺が巡回中の警官なら間違いなく職務質問だ、俺を。

でも、何だろう。手乗りタイガーに毎日のように店で睨み付けられたり、以前木刀で襲われたりしたことが、まるで嘘みたいだ。
こうやって寝息が聞こえるぐらいの至近距離。結構まつ毛長いよなー、とか、うわうなじ真っ白だとか、なんだか甘い花みたいな匂いがする、とか。

竜児はまだ知らない。
……鏡の前でどんなに笑みを作ってみても、愛想よくふるまっても、礼儀よく接してもダメだったこの忌々しい『ヤクザ顔』が、
逢坂と一緒の時は、自然と優しい、いい笑顔になれてることを。

***

『ドラゴン食堂』開店まで、あと30分。今日も仕込みの寸胴鍋マスター、コンロに向かう表情は鋭く吊り上がり、
店のすぐ隣の豪華マンション、この小さな借家から日照権を奪ったブルジョアジー伏魔殿の住民に対して報復兵器を放つ、店長にして厨房の鬼神、高須竜児。
……貴様らの! 貴様らの存在のせいで、うちは一日中、日光が当たらないのだ!
この怒りを思い知れ、必殺・換気扇から食欲そそる、おいしい匂い攻撃! ――お前らも! 今夜は! カレーにしたくなる!!

一見「ヒャッハー! 住人を恐怖のカタストロフに叩き込んでやるぜ!」……って感じだが、実際はせいぜい、マンション印度化計画程度。
こんな禍々しい顔つきではあるが、竜児にできるのは全世界を巻き込むカタストロフなどではなく、美味しいストロガノフなのだ。

そのマンション住人であり、ウェイトレスである、逢坂大河。
週に1回だけの限定メニュー、スパイスや秘密の隠し味をふんだんに使った竜児特製カレーライスは大好きメニュー、いい匂いにちょっとお腹空いてきた、ちゃんと私のは甘口にしてね。
それに、今日の日替わりデザートは私の好きな自家製フルーツヨーグルトっ♪と、いつもより笑顔で、上機嫌にスプーンとフォーク、ぴかぴかに磨いてる。

「あっ、北村くん、おは――」
「よっ、逢坂! 高須もおはよう」「――おはようございまぁす」

そして、最近本業の大学院と副業のお店手伝いが逆転してるっぽい、北村祐作と……一緒にいる、いつも通りじゃない八頭身美人。
細身のデニムにシルクブラウスというシンプルないでたち、サラツヤ感たっぷりの柔らかストレートロング、
長身細身ながら出る所はしっかり出てるスタイル、誰もが振り返る、美しくそれでいて愛らしい、その美貌。
彼女こそ、北村の幼馴染で元モデル、現在押しかけ同居中の、川嶋亜美。

「あ、え、えっ……?」
「ああ、逢坂にはまだ紹介してなかったっけか。川嶋亜美。俺のいわゆる幼馴染って奴で、」「……」
「その、近いうちに『北村亜美』になる、予定です。よろしくね」「……!」
「――ということなんだ、皆に報告しようと思ってさ。って逢坂、今日は調子悪いのか?」

逢坂の顔色が、赤から青へ、そして真っ白へ。
ガチャチャチャン! と大きな音立ててスプーンやフォークを床に落とし、
「だ、大丈夫なの? 逢坂さん」と手を差し伸べた亜美の指に、きらりと光る婚約指輪が――。

ID:3n0sPQYA氏

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