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9 2010/09/26(日) 20:01:18 ID:Qm7Zk6dM

事件と生理は忘れた頃訪れる。

夏休みが終わり、数日たったある日のこと。
夏休み中には、志望校向けの最初の個別模試も終わった。
奨学金制度を有利に運用したいと考えている竜児にとっては、より良い成績での合格を目指しているわけだが、その
意味でも試験の結果は納得のいくものであった。
それなのに、どうしたことだろう。
心の中には原因不明の焦燥感があった。
いや…
(原因不明…じゃねーか…  やっぱ川嶋のことだよな…)
あの撮影現場の亜美を見たときから、竜児のなかで亜美に対する何かが変わっていた。
何と言ったらいいのか、少し身近になったというか、逆に彼女のことを意外に知らないことに気づいたというべきか。
他の友人達と同じように接しているつもりで、その実、彼女の事はどこか別の世界の住人のように思っていたのではなかったか?
こうして意識して見てみると、意外なほどこれまでの認識と違う彼女がいた。
そして、そんな風に彼女のことが気に掛かるようになったのが、どこか怖い気がしていた。
(でも、約束しちまったんだよな。 …勢いで大河にも話しちまったし、やっぱいつまでもほっとく訳にはいかねぇ。)
などと考えつつ、いつものように自販機コーナーにいくと、やはり、いつものように亜美が現れた。
「よ。」
「おう。」
いつもの通りに挨拶し、いつもの通り紅茶を購入すると、いつもの通り隙間に挟まる。
ただ、いつもと違ったのは、座るときにスカートをタイトスカートのように引き寄せなかったことだ。
いつもは引き寄せて折り込んで座ることで、スカートが拡がることを防止しているのだが、それをしなかったのだ。
つまり、彼女の正面に居る竜児からは、スレンダーなふとももの隙間の、やせた体に反して肉感あふれる股間が丸見えだった。
(うおっ、か、川嶋のやつ、また俺をからかって……)
だが、そう思って亜美の顔を見ると、想像とは全く違った表情をしていた。
僅かに顔を赤らめ、目が合わないように視線をそらし、ちびちびと缶の紅茶を飲んでいる。

実際、亜美のほうもドキドキであった。
(さ、さすがにこれはあざといかな… でも、これ位のことしなきゃ、この朴念仁には伝わらない…)
実のところ、亜美としては竜児に会うたびにスキスキオーラを放っているつもりだったのだが、竜児は全然気が付く様子も無く、
また、以前した食事の約束も果たしてくれそうな気配も無い。
そこで止む無く、この大胆なアピール作戦を考案、実行に移したわけだが、思ったよりもずっと恥ずかしかった。
本来、こんな下品な事は亜美の好みではない。 しかし、たしかに効果は高く、こぶし二つほど開かれた膝の隙間に、竜児の
視線は強力に吸引されているようだった。
(こ、これは… シルクか? さすが川嶋、あの光沢は相当高級な生地に違いねぇ……って、そうじゃなくて!!  あ、あれは
 もしかして…、いや、もしかしなくても… あの微かに、いや、わりとはっきりと見えるのはっ …すっ、すっ、す、すじ!?)
(パンツ小さすぎたかな…… ちょっと食い込む… ってか、そんなにガン見されたら…)
缶のあけ口から外れた唇が、微かに音を立てて息を漏らす。
「ぁ…」
(ヤ、ヤバッ!! あそこがジンジンしてきた……)
「たっ、高須くん、目つきエロッ。 ドコみてんの!!」


羞恥に耐え切れず、怒鳴る亜美。
竜児にしてみれば理不尽極まりないが、こういう場面では無条件に男が悪と、国連憲章かなにかで決定しているっぽい。
「うおっ お、おおぅ す、すまん!!」
飛び跳ねるように横を向く竜児。
(ああああ。 これじゃダメじゃん、あたし! ど、どうしよう… またからかってるだけだと思われちゃうよ…)
しかし、さしもの竜児も、そこまで鈍くは無かった。
(さっきのはわざとだよな… それに最初は見られて嫌がってるって感じでもなくて… どういう事なんだ? まさか…)
ちらりと自販機の隙間を見ると、今は膝を閉じた亜美と目が合って、お互い慌てて目線をそらす。
(こ、この反応… やっぱり怒ってるわけじゃねーような……)
(ど、どうしよう、なんかフォローしとかないとまた高須くんに勘違いされちゃう…)
(そういえば、こいつ、俺と北村以外の男と話してる時って、全然雰囲気違うよな…カマトトってんじゃ無くて、妙にお行儀が
 いいっていうか…)
(ああっ 休み時間終わっちゃうよ。 ど、どうする亜美ちゃん!)
欲情ぎみで冷静さを失った亜美は、ほとんど無意識のうちに隙間から立ち上がって、竜児の隣へと移動した。
それこそ、腕が触れ合う距離へと。
恐るべしは女の本能か。 今、この時点において、竜児に対してその行動は極めて高い効果を上げた。
いつもの隙間から彼女が出てきたこと、それは何か象徴的な意味をもって竜児の目に映ったのであり、そしてそれは、彼女
自身さえも認識していない真実を含んでいた。
90気圧の濃密なフェロモンの雲をまとう、男を焼き焦がす摂氏400度の究極の肢体。  ………それは正しくヴィーナス。
全天で最も明るく輝く、スター。
だが、竜児は今始めて本当の意味で、彼女の美しさや経歴等を飛び越え、ただの同じ年頃の女の子、一人の同級生として…
臆病で寂しがり屋で嘘つきで、見栄っ張りで強がりな女の子として……感じていた。

誰も寄せ付けない、自分だけの場所から立ち上がり…

そして、微かに触れ合う腕から伝わる、亜美の熱。

(か、川嶋… どういう事なんだ… まさか、本当に俺に好意を?)
いつもなら、どや顔で迫ってくる亜美は緊張したように俯いていて。
(………もしも、このまま抱きしめたなら、こいつは応えてくれるんじゃ…… いや、駄目だ!そんな事したら止まれなくなっちまう!)

そう思った竜児は反射的に体を離してしまった。 
まるで逃げるように。

不幸なすれ違いだった。
それが彼女にどんなメッセージを伝えることになるか、竜児には想像する余裕はなかったのだ。

「!!!」
(……たか…す…くん…… …そっか… やっぱり、そっか…  こういうの嫌なんだ…   あたしじゃ………)

「だ… め… なんだ…」

「え?」
「…授業、始まっちゃう。 じゃね、高須くん。」

搾り出すような声でそう告げると、飲みかけの缶を空き缶入れに捨てて、亜美は走り去った。


その日の放課後。
亜美は進路指導の先生に呼び出されていた。
大学進学を希望しながら、具体的な目標が一向に定まらない亜美に郷を煮やしたのだろう。
先生は亜美に指定校推薦枠をあてがおうと考えていた。
大橋高校は進学校であり、指定校推薦枠があったが、中堅以下の大学の枠はたまに希望者が居ない事がある。
普通に受験しても入れる可能性が高く、より上を目指す生徒達には、ほとんど意味が無いからだ。
とはいえ、希望者が居ないと、次年度は枠自体が無くなる事もあるため、学校側としては漏れなく生徒をあてがいたいのだ。
本来の成績的には厳しいが、平均評定なんか実際どうにでもなる。
指定校推薦枠で、それが『川嶋亜美』だというなら、私立大学として嫌気する理由は無いだろう、というのが学校側の打算だった。
(正直どうでもいいんだけど…… さっさと終わってくんない?)
そんな亜美の態度に、最初は進路相談だったのが、徐々に説教に変わってきた。
亜美はそんなの聞いているような気分じゃなかったから、益々不遜な態度になっていく。
結局、指定校推薦を受ける、というシンプルで喜ばしい話が、無駄にこじれて時間を食ってしまった。
窓の外は、下校時間がこんな時間にさえならなければ、降り出していなかった筈の土砂降りの雨。
(最低。 天気まであたしの敵かよ……。)

亜美の恋心はもはや折れる寸前だった。 というか、いじけていた。
(ホント、何もかも上手くいかねー… 今、告ったら玉砕確定だし、かといって遠まわしにせまっても気が付きゃしねーし……。)
(思えば、学園祭でもクリパの時でも、高須くんはあたしのことなんか見ちゃいなかった。 沖縄行った時だって、大河に言われる
まま、なるべく高須くんにちょっかい出さないようにして…… たぶん高須くんは、修学旅行の間あたしの方から話しかけたことは
一度もなかったって…気付いていない……。)

「所詮、こんなもんか……… 結局あたしは……」

(異分子なんだ…)

窓辺ではバタバタと雨がガラスに叩きつけられる音。 …少しばかり風が出てきたようだ。
亜美は、そんな激しい雨を降らせる空よりもどんよりとした顔を窓の外に向ける。
(見た目じゃタイガーにも実乃梨ちゃんにも負けてない。 ってか、勝ってる。 要するに中身が駄目って事よね…… そんなの
どうしようもないじゃん。 いまさら変われないよ……性格なんて、そんな簡単に変えれない……)

そんな悲観的なことを考えながら、とぼとぼと昇降口に辿り着いたが、説教が長引いたせいですっかり人影がなくなっていた。
(ふぅ… 適当な男子に傘貢がせようと思ってたけど…  これじゃ無理か。)
……なにげにブラック亜美ちゃん化。
そのまましばらくは、ぼんやりと校門のほうを眺めて突っ立っていた亜美。

「はぁ………」
(もう、どうでもいいや。  濡れて帰ろ。)

やがて深いため息とともに、雨の中へ歩き出したのだった。


一方の竜児の方もかなり悩んでいた。
自販機コーナーで亜美の背中を見送った後、彼女のことが頭から離れなくなっていた。
そのため、受験を控えたこの大事な時期にこんな事ではイカンと、竜児は放課後、図書室にこもって自主学習に励むことにした
のだが……やっぱり勉強に集中する事はできなかった。
目を閉じれば触れ合った腕の感触が、膝の隙間から見えた光景が、脳裏をよぎる。

(あいつのいう事はいっつも判りにくくって…だから適当に聞き流した事もあるのは確かだ。それにいっつも俺をからかって、玩具
にして… けど、本当に全部が全部そうだったんだろうか? 中にはあいつが本心で言ったこともあったんじゃないか?)

(今日のはふざけている様には見えなかった。 確信は持てないが、あれは『素』の顔に見えたんだ…。)

(でも、本当にそんな事があり得るのか? 俺の自意識過剰じゃねーのか? だって、あいつは物凄い美人で、人気モデルで、
しかも本物のセレブなんだぞ? それがなんだって俺なんかに? ……そんなの…普通に考えたらありえねぇだろ……。)

「わからねぇ。」
(大体、仮に川嶋が俺に好意を持っていたとして、俺はどうしたい? 川嶋にどうしてもらいたい?)
それを考えると脳裏に浮かぶのは、修学旅行時に再チャレンジして見事玉砕した櫛枝の顔であり、いつも一緒にいる大河の顔
であり。
少なくとも竜児が頭で理解している範囲では、亜美は3番手ですらなく、ランク外、すなわち『友人』という位置づけの筈だった。
(やっぱり、俺にとって川嶋は… ただの…)
だが、そう考えようとした時、不意にここ何ヶ月かの亜美との時間がフラッシュバックする。
ぬいぐるみで遊ぶ亜美、往来でいきなり鼻血を吹いた亜美、撮影の時のプロの顔、食事に誘ったときの笑顔、そしてつい先日の
連続5回も『可愛い』と言わされた後に見せてくれた笑顔………
そしてとりわけ、

『…授業、始まっちゃう。 じゃね、高須くん。』

今日、別れ際に浮かべた、酷く悲しそうな笑顔が……。
(くそっ! なんなんだよ、この気持ち悪さは… さっきの川嶋の顔を思い出すと、無茶苦茶嫌な気分になる……。)
(どうしちまったんだよ、俺は!!)

頭を抱えて机に突っ伏したまま十数分。
本当は判っているのかもしれない。 ただ、潔癖症の竜児には心変わりは認められないだけで。

やがて図書室の窓を叩く雨の音に、竜児はゆっくりと顔を上げた。
(雨…か。 ずいぶん遅くなっちまったな。 そろそろ帰るか。 大体、川嶋の気持ちもわからねぇのに、こんな事考えたって無駄だ。)
とりあえず、今は考えることを放棄することで心を落ち着けた竜児。
(まぁ、変に意識しねーほうがいいだろ。 ただでさえ何考えてるのかわからねぇ奴だし。)
昇降口に辿り着くまでは、まぁ、そんな風に思っていたわけだが……
靴を履き替えて傘を取り出した丁度その時、竜児のいる場所からは死角になっていたのか、柱の影から細身の美しいシルエットが
土砂降りの雨の中へ踏み出した。
「!!」
(あれは…川嶋!? っあのバカ! 傘もささねぇで…)
声を掛けることも忘れ、とっさに竜児は走り出していた。


『ザザァァ』
雨の音が急に布を叩く音に変わり、亜美はきょとんとして空を仰いだ。
空を仰ぐ視線を遮っているのは……黒く大きめの男性用の傘。
隣に立った人影は…考えるまでも無い。 亜美にこんな事が出来るのは大橋高校に二人しかいない。 北村祐作か……
「高須くん……。」 高須竜児だ。
「おう。 お前な、こんな土砂降りの中、濡れて帰るつもりだったのかよ…」
「傘忘れたんだから仕方ねーじゃん……」
「あのなぁ… やり方なんかいくらでもあるじゃねーか。 たったこれだけでそんなに濡れちまって。 家までだったら…」
「いいの! 濡れて帰りたい気分だったの!」
「良い訳ねぇだろっ!!!  …風邪ひいたらどうすんだよ。 …まったく、お前は変なところでガキなんだからよ……。」
「!」

「………わり。 つい怒鳴っちまった。」
「…う、ううん…」
「ま、相合傘には色々と不満もあるだろうが、このままお前の家経由で帰るぞ。」
「え? 不満?」
「おう。 お前、この間言ってただろ? 俺の一生で一度きりだってよ。 でも、これで二度目になっちまったからな。」
「………は?」

(な、なにそれ…そんなの言葉のあやに決まってんじゃん… 何そんなの真面目に考えてるのよ………)

「…………。」
「な、なんだ?」
「なんでもね。 なんか、亜美ちゃん色々わかっちゃった。」
「何がだよ…」

(そうか…高須くんは高須くんであたしが言った何気ない一言で傷ついたり、クソ真面目に考えたりしてるんだ。)
(だからあたしもちょっとした言葉尻捉えて落ち込んだりしても意味ないんだ… だって、高須くんが本当はどう思っているか
なんて判らないんだもん…。)
(それに、現にこうして、あたしにだって優しくしてくれる。 ちゃんと気にしてくれてる。 それだけでも…あたし……)

「ん〜〜〜。 教えなーい。」

「まーたそれかよ…。 って、もうこんなに水が溜まってやがる。 足元気をつけろよ、川嶋。」

注意を促されて足元を見る亜美。
足元の水溜りにぼんやり映った自分の顔。 はっきりとは見えないがそれでも……
『あたしってば、現金なヤツ』などと思い、クスッと笑みを浮かべ…
竜児に聞こえないよう、小さな声で囁いた。

「…うん。 よし…。」
「亜美ちゃん、今日も可愛い♪」



            〜 亜美ちゃんの平凡な一日 7 〜                            どっとはらい。




14 名無しさん@ピンキー sage 2010/09/26(日) 20:05:35 ID:Qm7Zk6dM
いじょ。

本当は大河と竜児の会話も入れようかと思ったんですけど、
シリアスになりすぎると思って削除しますた。


8 名無しさん@ピンキー sage 2010/09/26(日) 20:00:23 ID:Qm7Zk6dM
新スレ おめ。
景気づけに第一投。

なお作中も結びの言葉は、亜美ちゃんが自分を励ますときの「おまじない」
みたいな感じです。

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