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144 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/17(日) 12:51:10 ID:0v4KXpke




最初の数日から見れば、夏休みの終わりは、永遠といった時間の果てにあるもの。
だから夏休みの終わりが世界の終わりに等しいというのも、意外ながら論理的な結論。
何世代経ってもこの浅ましい概念に囚われ、歴史からなにも学習していない。

まあ、ソレも人間の性ってヤツさ。

「なんでなんで〜〜!?なんで明日九月一日なのっ!?
 うえぇぇぇ〜〜〜パパ、何とかしてよ〜〜」

お恥ずかしいことデスガ、目の前に見っとも無くパニックしている女の子は俺の娘。
もう中学三年生なのに、色々小学生みたいなのが困る。身体は大きく成長して
いるが、考え方にしては幼児そのものだ。アレで成績がよかったりもするから、普通に
教育したくても、何処から手を掛けるか分からないから、かなり手ごわい。

しかし、この年になって「パパ」って呼ぶ子はそうそういないから、どちらかというとお得、かな。
思春期に入った娘に「オヤジ」って呼ばれて、俺に電話して一晩中泣き言吐く北村を
思い出す。あの子は親思いのいい子だし、母に似て豪快的だっていうより、きっと照れて
いるだけだから、何も泣くことはないと思うが。

というか、俺に当たるな。

「幾ら俺でもそれは無理だ。もう時間ないから、さっさと残りの宿題をやれ。」
「いやよ!まだ遊びたい〜パパだからできるじゃん!日付変えるぐらい!
 ホウテイに居たときなんか、真実を捻り変えたりするクセにぃー」

その尊敬の気持ちはくすぐったいけど、コイツは明らかに俺の職業の本質を誤解している。

「コラ。弁護は、真実を依頼者の立場から解析して主張することだ。違う角度から見れば、
 違う色の真実も見えるってのも、そんなに珍しいことじゃ────」
「うぇぇぇぇ〜〜〜またそうやって直ぐに理屈っぽくなるんだから〜〜」

俺からは何も手助けもないことに納得したか、俺のセリフを中断して、捨て文句だけ残し、部屋に飛び込んだ。隣に座り、ずっと観察していた亜美は俺の手を絡み、身体を寄せてくる。

「頭がいいのは竜児譲りで、外見も私とそっくりだけど、
 なんで性格はタイガーみたいになんのかな。」
「おう、性格だけは遺伝子に詳しく登録されてないものだな。
 でも、大河ほどは心配することもないと思う。」

小さい頃は大河に世話してもらったこと多いか、価値観を含む精神面は、俺と亜美よりも
昔のアイツの方に似ている。ただ、学校では「容姿端麗で才色兼備にして礼儀正しい」
という、絵にも描いたようなお嬢様キャラで通している。何だかんだ社会人としてのスペックは
期待できる方だから、かつての大河よりずっとマシだった。

猫かぶっている件については、「犯罪者の子供も犯罪者になりやすいな」と嘆くしかないが。

「ん?私の顔に何か?」

……「別に」と答えて、誤魔化しにキスしてやった。
そしたら、娘はまたバタバタ小走りして戻ってくる。

「逢坂小母さんの悪口い・う・な!ママと違って可愛いし、腹黒くもないし!
 あと、パパとくっつけない!イチャイチャすんな!」

おっと、話を聞かれたか。
尊敬(?)している人生の先輩の名譽を守って怒鳴る娘はまだご愛嬌だけど、
「パパとくっつけない」と言われて、尚身体を密着してくる亜美はちょっと怖い。

「へー、なんつって?アンタ、顔は私と同じだから可愛げないっていえねぇじゃん?」
「全っ然違うっ!あたし、顔に皺なんかないもん!ほらっ!」


顔を前に突き出し、亜美に見せ付ける。子供だから皮膚がいいのは当たり前だが、
その上疵一つもないというのは流石、セレブ家系秘伝のスキンケアスキル。

「こーんのぉクソガキがっ!仕方ないっしょ、もう!あんただって十年ぐらい経てりゃ
 肌に悩まれまくりだっつーの!ケアも一々甘いし、あたしよりもずっと早く!」

口論になると精神年齢が十年以上退化する亜美だった。

「あたし、パパの血を流れているから、ママの年になっても、泰子ばあちゃんみたいに、
 永遠の23歳で通せるもん!」

論理メチャクチャで、キャーキャー煩く吼える二つの近所迷惑。二人は友達感覚で
フツーにケンカしているんで、大した心配はいらないだろうが、そのテンションに圧倒され
てる俺の髪の毛には、もうちょっと気を使って欲しい。

にしても。

この構図を妙に懐かしく感じている俺が居る。ノスタルジアといったものかな。
好ましくない事情だと思いつつも、心のどこかに傍観し続ける願望を持つ。で、
「介入すると反発されたら痛い」という配慮もあって、調停せずにオロオロしてたら、
部屋から出る息子と目が合った。

『勉強に、集中できない。』

と目線だけで伝えてくる。

――――同情はしてる。しかし、女性の方が優位に居る我が家に、俺はとても非力である。
傷を舐めあうぐらいしか出来ないが、ソファーを立て、とにかく息子と付き合うことにした。
キッチンから二人分の飲み物を持ち出し、露台に出た。

残夏の風は面に向かって掠ってくる。もう直ぐ終わるとはいえ、流石は夏。
冷房から出たばかりの冷えた身体に、ゆっくりと沁み込む微熱。
長くは居られないが、数分間ぐらいなら結構心地いい感触だ。

居間の騒ぎを背で流し、夜の景色を眺める。平常心を戻すべく深呼吸。
手にしているビール缶を開き、一口啜る。

「勉強お疲れさん。休みを取る機会だと思ったほうがいいじゃないか。でも、
 十分成績いいんだから、なにもこんな時まで勉強しなくてもいいだろう?
 身体壊しちまうぞ。」

フォローのついでに軽く忠告した。だが、肝心な息子はこう答える。

「偏差?は良くても、無限にある知識の前じゃあ何もないよ。」

物理学家目指している、好奇心の強い、大変勉強熱心な息子。
真面目で大人しい性格だけど、何時もムッとしているから、ある意味その妹よりも難しい。
しかも目つきは俺と同じだから、常に近寄りがたいオーラを纏っている。

「……」 「……」

娘みたいな幼稚園児じゃないけど、コイツは成人しているどころか、もうそんな段階を
スペースジャンプで飛び越え、爺ぃみたいになってた気がする。

「……ん?」

俺達の無言の中で、騒いでいる背後は静かになっていく。振り向けば、仲良く抱き合って、
楽しく話をしている亜美と娘が居た。まだ一分も経っていないだろうに。


「やれやれ。」
と、息子は俺の気持ちを代弁した。まあ、そんなモノだ。でも、この仲直りのスピードを
目にしたら、また昔のことを思いだす。高校の時、あの二人は亜美と仲良くケンカして、
直ぐに仲良く仲直りしていた。俺と交際初めた頃でも、亜美はあの二人と一緒に居る
場合は多かった。

思えば、亜美と結婚して、駆け落ちみたいな形で町を出て行ってから、早々十八年。
その間、特にこの十年には、高校と大学の仲間達と偶々しか会っていなかった。皆も自分の人生のトラックを全力で奔る、再会する度、心が遠さがっていくの痛いほど感じていた。
どう盛り上がろうと頑張っても、歳を取ったせいか、学生だった頃の気持ちを思いだせない。

────いや。その言い方じゃあ安過ぎる。誰彼も同じく、お互いの知らない時間を過ごし、
本来の青臭い心を、あらゆる出来事に磨耗されたって、そう解釋した方がいい。
でも、

「北村はアメリカから帰国するらしい。」
「北村さんが?もしかして、その一家も?」

とりあえず口から出た話題だったが、まさか、あの無愛想な息子の興味を引かれる。
だから出来る限り奮発して、話を引っ張ってみたい。

「そうだ。奥さんが日本の大学に学部長として雇ってもらえたって。
 『もう大した新しいもの作れない歳だから、アメリカに長居したって無用だ。
 いままで積んでいた技術と経験を祖国貢献に使わせてもらうぞ』とか言ってた」

学者としては、まだまだ若い歳なのにな。自分の創造力を厳しく評価するあり方は、
さすが元・M〇T教員だ。ちなみに、北村は考古学者を辞めて、高校の教師として
働くつもりだ。自分だって凄く優秀な学者だったのに、妻をサポートするために自らの
可能性を断ち切るのはちょっと勿体無いが、当人達だけのことで、干渉することもない。

それに、亜美も同じだったから、俺からは何の文句言えない。

「あ、そう。」

あまりにも短すぎる返事と、あっけなく閉ざされた会話の可能性。

いや。相も変わらず淡々とした口調だったが、どこか嬉しそうに聞こえる。
気のいい年上の友達、北村が帰ってくるので喜んでいる────なわけない。
科学者としての先輩と交流する機会が出来た────というのもなんか違う。

息子の顔を伺おうとしたが、微妙にこっちの視線を避けている。まるで表情を隠している
ようで、逆に何考えているのを勘ぐってきた。流石に鈍感な俺でも分かる。
しっか、よりによって北村、というかアノ女傑の娘とは。こりゃ苦労するだぜ、息子よ。

ちょっと背中押してやろう。

「帰国する日に空港で迎えてやるってのは、どうだ?」
「うん、いいよ。」

……コイツがこうも素直になれるんだなんて、恋ってすげぇな。
無造作に、息子の髪の毛に手を伸ばす。嫌がっているけど、強く反抗はしなかった。
少し人間性を付いたなぁ、と思って、頭を掴んで少し乱暴に撫で撫でしてやった。
自分は大人気取っているが、俺から見ればまだまだ子供。恋もしたことないから、
なお更ガキだ。

ずっとほって置いたビール缶から、また一口飲み、ゆっくりと味わう。
本来は素早くぐっと喉に飲み込むモノだが、機嫌が良いときに限って気まぐれは起こるさ。

これで、クリスマスに家族用事は出来た。
ついでにもう一度、皆集まって忘年会やるか。
(おわり)



147 ◆ZMl2jKQNg0m5 sage 2010/01/17(日) 12:55:30 ID:0v4KXpke
以上です。

お読みしてくださる皆さん、ありがとうございました。
保管庫の管理人さんもご苦労さまです。
coma、昏睡したってことかw
そうでしたorz
ご指摘ありがとうございました。

それでは、また。



142 ◆ZMl2jKQNg0m5 sage 2010/01/17(日) 12:43:31 ID:0v4KXpke
こんにちは。今から投下します。
ちょうど三スレ分です。


143 ◆ZMl2jKQNg0m5 sage 2010/01/17(日) 12:49:15 ID:0v4KXpke
申し訳ありません。前置きの作法をうっかり忘れてました。

短編連作シリーズ第二弾、《夏秋》
CP傾向は勿論亜美。注意書きは特に必要ないと思うが、
オリキャラのちわドラ娘と息子は出ています。

では、本番いきます。

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