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「玄関の方から聞こえるのって、タイガーちゃんと実乃梨ちゃんの声じゃないかしら?
出てあげた方が良いんじゃない?」
もう、ちょっとだったのに…良いところで…
あまりの間の悪さに、泣きたくなる奈々子であったが、
「話の続きは、後で聞かせて。」
と、保留の意志を告げる。苦渋の選択である。
「お、おう。」
言われた竜児は、一瞬、躊躇するが、
お願い。出てあげて。と奈々子に促され、ゆっくりと、腰を上げた。
背を向けて、玄関に向けて一歩踏み出そうとした、その時、
グイッと、強い力で後ろに引っ張られた。
見れば、奈々子が座ったままの体勢で、手だけを伸ばし、腰の辺りを掴んでいる。
「!?…香椎?」
「あたし、待ってるから…」
「……おう。すぐ、だから。待っててくれ。」
「うん。」
ニッコリと笑った奈々子の目尻には、涙が溜まっていた。
それでも、パッと手を離して、行ってらっしゃい、と、送りだしてくれた。
自分はこの子に心を預けよう。もう迷う事なんか無い。
そう、決めたのは、この笑顔だった。

***

「こんばんは、高須君ッ。
いやぁ〜スマンネ。スマンネ。
高須君だけ、置いてけにして、行っちゃってさ〜
大河の奴が、お腹減りすぎで死んじゃう〜っとか、いうもんだから…
ほれ、お詫びに肉まん買って来たから、コレで許してくれぃ。」
「結構、待ってたのに、帰って来なかった竜児だって悪いのよ?
まあ、それでも、みのりんが可哀想だからって、お土産買ってきてくれたんだから…
せいぜい、感涙にむせびながら、噛み締めるが良いわ!!」
「あ、その、スマン。ありがとな。」
「ヘッへッヘ。良いって事よ。
って、そんな大袈裟なもんでも、無いんだけど…
それ、コンビニの肉まんだし。
……ん?おやぁ?何か靴が一個多いね。
先客さんかな?見たトコうちの高校の靴みたいだけど…
私が、思うに…あ〜みん、かな?」
「なにぃ!?アンタ、また、ばかちー家に連れこんで…
ったく、何してんのよ、この発情犬がッ!!
ばかちーにも、一言言って来てやるわ。
コルァ〜ばかち〜ッ!!」

無遠慮にズカズカと、居間へ勇んで来た大河を待っていたのは、
意外な人物だった。(大河的に考えて)
「こんばんわ。どうしたの?タイガーちゃん…
そんなに驚かなくたって良いじゃない。」
大きな瞳をまん丸にして、口ポカーン。相当な、マヌケ面だった。
そりゃそうだろう、大河にとって、香椎奈々子は、同じクラスのお色気その一、位のポジションであった。
まさか、留守中に、竜児が、たらしこんだ(未遂)女が、
奈々子だとは、つゆとも思わなかった。
想定の範囲外にも程がある。てっきり、亜美だと思っていたし、
え?そんな選択肢あるの?みたいな、
一周クリアしないとフラグ立たないキャラ、みたいな、
まさにそういう感じだった。
勿論、そんな事は奈々子自身、十分に承知している訳だが、
「何だか、傷付いちゃうわ。」
口元に手を添えて、わざとらしく言う。
ちなみに、先の脱衣オセロで、乱れた箇所は、キチンと元通りにしている。
覚悟を決めた奈々子は強かった。虎に臆さず堂々と正面から向き合える。
元々、大河が、腹芸だの、顔芸だのを苦手としている事もあって、
「あ、あああアンタ…」
と、奈々子が優勢であった。そこへ、
「ありゃりゃ〜てっきり、あ〜みんだと思ってたけど…
靴の主は、奈々子さんでしたかぁ〜
夜更けに密会とは、何だか怪しい雰囲気ですな〜
てか、お二人ってそんな仲良かったっけ?」
親友のピンチを見かねて、腹芸も顔芸も得意な女が割り込んできた。
「今日、仲良くなったのよ。けど、別に怪しくは無いわ。
あたしが、家の鍵無くしちゃってね。困ってた所を高須君に助けて貰ったのよ。」
ね?っと竜児に向かってwink。
2人だけの秘密。目と目だけで通じ合うと、
何だか、照れ臭くて、思わず、赤くなる。
「ほほぉう。そいつは大変でしたな〜。」
と、にこやかに実乃梨。しかし、目は全然、笑っていなくって…
「ウフフ。そうでもないわよ。今日は随分、楽しかったもの。」
勿論、奈々子も笑ってはいない。
あとは、互いの視線と視線とが、ぶつかり合って、高須家に雷鳴を轟かせる。

***


「………と、いう訳なの。」
鍵無くして、教室掃除して、ご飯作って、オセロしていた顛末を、奈々子なりに説明した。
「ふぅん。そうなの。」
ふぁ…お腹いっぱいだから、ねみゅい…
と、面白くもなさそうに大河。
「なるほど高須君が帰って来なかったのは、そういう訳でしたかぁ〜
てか、大河が、弁当箱忘れたのが、イケないんじゃん!?
こらッ大河!!メッだよ!?
二度と忘れて帰ったりしない様に。」
と、実乃梨。
「えぇ〜そんなのムリだよぉ〜。」
「おだまりっ!!」
などと、一連のコントに対して、
「まぁまぁ、お陰で、あたしは助かったんだから、実乃梨ちゃんも、その辺で。」
と、奈々子が無粋に横槍を入れたりして(勿論、わざと)
終始、和やかなムードで、会話は進んだ。
流石に、女3人寄れば、かしましく、話は尽きない様に思われたが、
「あ、イッケネ。もう、こんな時間かぁ〜
じゃ、来たばっかで悪いんだけど、
私は、そろそろおいとまさせて頂きやすぜ。」
と、意外と早い時間に実乃梨が、脱退の意志を告げた。
「親がうるさいとか、そんなんは無いんだけど、
見たいテレビがあってさぁ。」
ニヘヘ、と舌を出しながら、付け足した、次の瞬間、
「お、おう。せっかく来てくれたのに悪いな。
お茶も出さなくて。暗いから、気をつけて帰れよ。」
意外な竜児の対応に、
ありゃりゃ?これは、もしかして……
これだけで、大体の筋書きが読めてきた実乃梨。
もう。何、気の利かない事言ってんのよ!!バカ。
『テレビなら、うちで見ていけよ。
今、お茶淹れてくるから、ゆっくりしてってくれ。
あ、プリンとか食うか?(注・奈々子が美味しく頂きました)』
くらい、言いなさいよ。まったく。
「え?みのりん、もう帰っちゃうの?もっとゆっくりしていけば良いのに…
ちょっと竜児。アンタ、みのりん送って行ってあげなさいよ。
夜道、みのりん一人じゃ不安でしょ?
今こそ、アンタの目つきの悪さが役に立つってもんだわ。さあ、行けッ!!」
竜児の気の利かなさに、呆れつつも、彼の恋路のため、
さりげなく、助け舟を出してやる大河。

無意識の内にでも、心を削りだした、大河の健気な助け舟も、
「え…いや、でも…」
「……そんな、良いって良いって。
私は、一人で、大丈夫だから。」
竜児の煮えきらない態度によって、ご破算になりかけたが、
「せめて、下まで見送りしてあげたら?ね?」
「お、おう。櫛枝、じゃ、下まで送ってくよ。」
「……む?そうかい?すまんね。」
奈々子の一言で、一命を取り留めた。
違和感バリバリの竜児に、いつもと何かが違う。
とは、思いつつ。一体、何が、どう違うかは、未だ、理解し得ない大河であった。

***

カツン。カツン。と、錆びた階段を降りて、
竜児と実乃梨の2人は、ひんやりと張り詰めた空の下に並んだ。
季節は、もう、すっかり秋だ。
「ねぇねぇ、高須君?
ちょっと話があるんだ。良いかい?」
と、実乃梨が切り出した。
実乃梨から、こんな事を言われれば、本当にドキドキものだ。
実際、何度、想像し、妄想し、夢想した場面か知れない。
ただ、今日からは、事情が違った。
この時、竜児が感じたドキドキは、以前とは種の事なるドキドキであった。
「私、高須君に謝らないとイケない事があるんだ。」
「え?……何の話だ?」
「私が、始めの頃、大河を泣かしたら許さない。
大河を捨てたらお仕置きだべぇ〜。って言ったの覚えてる?」
「…お、おう。」
「それ、もう、忘れて。」
「…は?」
「考えてみれば、ヒドイ話だよね。
高須君だって、自分の幸せを手に入れなきゃイケないんだよ。
なのに、私、高須君に枷をはめる様な事した。
それを、謝りたかったんだ。
つまり、これから、高須君は、誰かの為じゃなくて、
自分の為に、思う通りにしな、って事。
それだけ。じゃ、おやすみなさい。明日、学校でね。」
言うだけ言って、スタスタと、自分の道を歩いて行く実乃梨。
途中、一度だけ振り返り、
「あ、高須君が大河いらないんだったら、私におくれ。
なんつって。アハハハ。ジョーク。イッツ・ジョーク。
ここは、ジョーク・アベニュー。」
などと、言いながら、角へ消えて行った。
今の、櫛枝の言葉はどういう意味だったんだろう?
実乃梨の言葉がどうあれ、今は、
実乃梨を前にしても、胸が痛まなくなった事実の方が
竜児にとっては重要であった。


***

一方その頃、高須家では、
「ねぇ?大河ちゃん、少しお話があるの。
とても、大切なお話。良いかしら?」
「…うん?何よ?」 奈々子が大河に仕掛けていた。
「単刀直入に言うわ。あたし、高須君の事、好きになっちゃったの。」
「………ッ!?はぁ?アンタ正気?」
「大マジよ。だから、大河ちゃんにだけは言っておくべきだと思って。」
「………ふぅん。アンタも物好きな奴ね。
てか、なんだって、私に言う訳?
本人に言いなさいよ。そういう事は。」
「勿論、そのつもり。」
「………一応、教えておいてあげるけど、
アイツ今、好きな人居るよ?」
「そんなの、関係ないわ。」
「……そう。別に、止めはしないわよ。
もし、アイツがアンタを受け入れたって、振ったって…
それは、アンタ達の問題。私の知った事じゃない。」
「ええ。そうね。」
「フン。あんな奴…どこが良いんだか…」
バカみたい…呟く大河の言葉は、己の胸に、楔の様に突き刺さった。

***

「私、帰るわ。今日はもう、お風呂入って寝る。
「あたしも、そろそろ家に帰るわ。
もう、お父さんが帰ってる時間だと思うから。」
実乃梨を見送り、戻った竜児に2人は、こう告げた。
「お、おう。そうか、じゃあ、家まで送って行くよ。」
竜児の言葉に、大河は、あからさまにイヤそうな顔をする。
「いいわよ。んなモン。1人で帰れるっつの。
アンタは、この子だけ送って来な。
私は勝手に帰るから。ほれ、早く、行った、行った。」
半ば、強引に、2人は大河によって、家を追い立てられた。

***

道すがら、他愛もない雑談に、秋の空気が、より深くなっていた。
「香椎、そこ曲がった所に公園があるんだけど…
ちょっと、寄らないか?…話もあるし。」
「ええ、いいわよ。」
夜の公園は、誰も居なかった。
地面に、散らばるスコップやバケツ、半分、崩れた砂の城が、余計に寂しさを演出し、
今、世界には、2人しか居ない。そう、感じられた。
隅っこでポツンと佇むベンチ。
「ここ、座ろうぜ。」
「うん。」
そうして、2人だけの世界が始まった。

「さっきの話の続きなんだけど…
俺は今、香椎が、好き…」
ボスン。
「だ……え!?」
竜児が最後まで、言い切る前に、奈々子は竜児にもたれかかった。
顔を竜児の胸に押し付け…埋め…
「あたし…もよ。あなたが…好き。」
竜児の胸の中で、奈々子は、ふるふると、力弱く震えていた。
「寒い…のか?」
震える奈々子を、慈しむ様に、二本の腕でしっかりと抱きしめる。
「あったかい…」
今宵、奈々子にとって、一生で一番、暖かな夜であった。

***

「ありがとう。送ってくれて。
ホントは竜児君をお父さんに紹介したい所なんだけど…
また、日を改めて…ね?
そうだ。今日のお礼に一度、ちゃんと、あたしの家に招待するわ。
あ、アドレス交換しておかないと。
竜児君の携帯、赤外線付いてる?」
竜児はポケットから、携帯を取り出し、しげしげと見つめつつ
「え、と…付いてるの…か?
確か、付いてるハズなんだけど…」
頼りない返事。
奈々子にサッと、手から携帯を取り上げられ
「どれどれ。あ、コレね。
送信…と。これで大丈夫ね。
コレがあたしのアドレスと番号だから、登録しておいて。はい。」
そして、ポンと携帯を手渡される。
ああ、これだ。これが、恋人同士って感じだよな…
竜児は、初めて出来た恋人との甘い一時を噛み締めていると…
「ねぇ、竜児君。ちょっと耳貸してくれない?」
「お、おう。何だ?」
奈々子の言葉を聞き取りやすい様、膝を曲げて、
奈々子の口元に耳を添える。
「大好きだよ。」
そっと、囁かれる甘い声に惚けていると、
チュッ、と。唇を塞がれる。
「んん…」
甘い甘い、恋人達の時間。
「俺も大好きだよ奈々子。」
一息ついて、もう一度。

***

それじゃあ、おやすみなさい。
おう、おやすみ。
竜児の姿が見えなくなるまで、手を振っていた奈々子は、
実に、久片ぶりに家へ入った。
ホントに、今日は、色々あって、見慣れ我が家も
なんだか、新鮮な気分だ。
ちなみに、父は未だ帰宅して居ない。
奈々子は自分の鍵を使って家に入った。

実は、ポケットに入っていた。
灯台元暮らし。探し物は手近にあるのが世の常である。
ジャージに着替える時、チャリ〜ンと姿を表したのだが、
今更、恥ずかしくて、結局、最後まで、言えなかったのだ。
途中から、意図的に隠し、竜児を引き留める材料にしていたが、
別に悪気がある訳ではない。この、乙女の可愛い嘘には、閻魔様だって目を瞑る事だろう。
ベッドに腰掛け、竜児の温もりと、キスの余韻に浸り、
しばらくして電話を掛けた。
父親不在を良いことに家電で。
だって、もし、電話中に、竜児から、電話かメールがあったら困るじゃない。
「もしもし?麻耶?
うん。ちょっとね。
実は、今日、彼氏出来ちゅったの。
え?うん、マジだよ。相手は、ねぇ〜……」
そうして、一晩かけて、ゆっくり、親友に自慢してやった。

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