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大潮の夜に(予告編) 2009/11/28(土) 08:02:39 ID:n9E5w2dt


(前略)

「何だか、飴と鞭って感じだな…」

 竜児のぼやきに、亜美は苦笑した。

「あんた、飴と鞭を誤用してない? 飴と鞭ってのは、譲歩と弾圧とを併用して行う支配または指導の方法でしょ。でも、あたしたちは同志なんだから、
一方が支配とか指導する関係なんかじゃない。相方が苦しければ、助けてやって、相方が怖気づいているときは叱咤してでも励ましてやる。
それをお互いがする。そういうものなんだわ。それに…」

「それに?」

 亜美は、ちょっとだけ躊躇うようにうつむいて、言葉を継いだ。

「ママとの確執は決定的だけど、パパともそうなったと決まったわけじゃない。さっき、あんたは、憂鬱そうに自分のことを“悪い虫”とかって卑下したけど、
ママよりも分別がありそうなパパなら、竜児のことを、適切に評価してくれるんじゃないかって気もするのよ」

 そう言って、亜美は、遠く、沖合いの方に目を向けた。
 竜児も、亜美に倣うようにして、視線を海へと向けてみた。絵に描いたような真夏の青い空と紺碧の海原がそこにあった。海原は折からの陽光を
受けて、水面がきらきらと輝いている。
 シビアではあったが、亜美の言うことはもっともだ、と竜児は納得した。際限なく甘え、甘やかすといった関係は、結局は長続きしないのだろう。相互
に尊重し合うがこそ、時にはシビアに接することも必要なのだ。
 それに、亜美の父親とは、いずれ相まみえることになる。自己を卑下して、それに怯えるよりも、避けがたい現実として堂々と受け止めなければならない。

「わぁ、風、風よ…」

 午後になり、照りつける強い日差しで陸地の方が海面よりも温度が高くなったのか、海からは心地よい浜風が吹くようになっていた。
(中略)
 竜児の手を引いて歩を進めていた亜美は、水位が膝頭に達したところで立ち止まった。

「ここで、いいかしらね…」

 水深は子供の水遊び程度の深さだったが、夜間となれば、これ以上深みに嵌まるのは得策ではないと亜美も思ったのかも知れない。
それでも、遠浅のせいで、波打ち際からはかなり離れ、穏やかな入江の中に、竜児と亜美だけが、ぽつんと取り残されたような錯覚に襲われる。

「月の輝きがもの凄いな…」

 二人の真上には、真夏の満月が、青白く輝いていた。その光は、水面を貫き、水底の竜児と亜美の足元まで明るく照らし出していた。
 穏やかな波が二人の脚を、ちゃぷ、ちゃぷ、と洗っている。その音と、浜辺に打ち寄せる波の音以外には、何も聞こえなかった。
 亜美は、他のものの気配を確かめるように、周囲をぐるりと見渡してから、天空に輝く満月に暫し見入っていた。

「この入江に存在しているのは、あんたとあたしだけ…。そのあたしたちを、この海と、空と、月が見守ってくれているんだわ…」
(中略)
 竜児は、改めて川嶋安奈からの手紙に目を通した。

「お袋さんは、俺たちのことを許した訳じゃねぇが、認めるつもりはあるらしい…。しかし、美人だけど傲慢で陰険なだけのオバサンかと思ったが、
意外に思慮深いんだな。おみそれしたよ…」

「結局、あたしたちは、ママの手の中で踊らされていただけだったのかもね…。その点は、ちょっとムカつくけど、あたしたちの夢の実現を願って
くれていることは分かったわ…」

 亜美は、川嶋安奈は完全に善意からバラの花束と手紙を送ってきたと思っているらしい。だが、竜児は、川嶋安奈の真意に気付いていた。
 それを言うべきか否か、一瞬、竜児は躊躇したが、二人の間に隠し事は宜しくないと思い、率直に告げた。

「だがな…、これはお袋さんからの挑戦状でもあるんだぜ」


(後略:本編は次レスにてトータル80レスにて、濃厚エロありで投下予定)

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