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330 暖かく、甘く、とろける様な感覚は sage 2010/02/02(火) 01:26:35 ID:m3j7nCmf





いくよー、おとうさーん

おーし

それー!

おっ、とどいたじゃないかー!!すごいぞ、りゅうじ!

目を閉じて夢うつつになるときに広がるその光景は、現実ではかなわない父とのキャッチボール。
寂しく、悲しい時に眠りにつくと最近見るこの場面。彼は心地よくなる。
だがどうしてなんだ?
どうしてだ?
どうして?・・・・・どうして?・・・・・・・

自分を捨てたあんな父親を・・・・・!




目が覚めた。目の下だけが空気に敏感だ。そこを触ってみると湿っている。
寝ている間泣いていたようだ。馬鹿か、と心の中で自分を嘲笑する。
ベッドからまだ目覚めきっていない体を鬱憤とした心と一緒に起こしてやる。
襖で隔たれた母の部屋からは寝息が聞こえる。
あんな夢を見てしまったと少し申し訳ない気持ちがあるからか、いつも以上に起こさないように配慮して静かに歩く。
窓の傍まで行きカーテンを開ける。眩しい朝日が部屋と少年を照らした。
少し気分が晴れてきて表情が柔らかくなる。もっとも彼、高須竜児の顔からは生まれつきの強面のせいで
悪だくみを閃きニヤニヤとしているようにしか見えないのは言わずもがなである。
お日さまを拝んだら顔を洗いにいく。今日はいつも以上にきちんと洗う。これで気持ちがよりすっきりするものだ。
「おし、飯、つくるかな?」
いつもの調子に戻ってきた。竜児はいつものように朝食を作る支度から始める。予約していた弁当用の白米もちょうど炊けた。
実にいいにおいだ。米の甘くもみずみずしい香りは竜児の心を気持ちよくくすぐる。気分を上々とさせながら竜児は料理を作っていく。
今日はスーパーで安かった食パンを使った料理だ。この食パンに海苔と納豆、そしてチーズを乗せる。こうしてオーブンで焼いたパンは非常にうまいのだ。
そしてサイドメニューにブイヨンスープ、しゃきしゃきレタスと新鮮トマトがついたスクランブルエッグ、ひんやりとした牛乳を用意して支度完了である。

「いただきます。」

一人でこの言葉を言うと少し空しいものだと彼は気づいた。つい最近まではその向こう側に彼女がいた時は想像できなかったこの雰囲気。雀の鳴き声が外からよく聞こえてくる。

朝食を食べ終わった後は母、泰子の昼食と自分の弁当を作る。いつもならまわりを気にならないくらい集中できるものだが今日は静かな空間が彼をもやもやさせる。
頭の中で「彼女」が出てくる。

「大河、どうしているかな・・?」

大河・・・相坂大河は独り身の生活をしているため3食全般にわたって友である高須竜児の家でお世話になっていた。朝と夜は彼女が竜児の家にきて飯を食べる、
それがいつもの風景となりいつしか大河も家族の一員のような存在になっていた。
だが、ある日彼女は言った。「自分一人でやっていく。」と。竜児に頼らず自分のことは自分でやれるようになりたい、と彼女は決心したのだ。
竜児は困惑したが何も言えなかった。頼られているとは感じなかったし迷惑とも思っていなかった。だが「自立」という目的を邪魔することはできなかった。
何も、何も言うことができなかった。


それを今、竜児は後悔している・・・・そのことを思い出し彼は溜息をついてしまう。これでよかったのだと思えば思うほどこれでよかったのかという心の反動が大きく返ってくる。
それによりまた悩む・・彼はそういった悪い循環に陥っている。

そのせいか、

「あ!」

やってしまう。
無意識は習慣を出してしまう。
いつものように大河の分の弁当まで作ってしまった。もう必要ないものを作ってしまった。

「弁当、ふたつも食えないだろうが、俺!」

心地自分に憤りをぶつけても虚しいだけ。こういった余計な事が悪循環の遠心力をさらに強める。

「置いていっても・・・泰子は食べないよな。」

十二分な量を作った昼食がある。それに弁当は置いてって後から食べてもまずくなるだけだ。
結局「MOTTAINAI」精神の考えから竜次は学校に二つ弁当を持っていくことにした。「どうせ大河は結局弁当を作れず困っているだろう」と思えばいい。
少なくとも自分は納得する。そう思うことにした。

弁当も作り終わったので学校の支度をする。制服に着替え、教材をバッグにいれて準備完了。そろそろ学校を出るのにいい時間だろうと竜次は時計を確認すると・・

「おい、もうこんな時間かよ!?」

確認するといつもの30分ほど時計の針が進んでいる。いろいろと考え事をしすぎたかトラブルに戸惑っていたせいか、何の所為かまったく分からないが一つだけ分かることは今日の朝が非常に

「最悪だ。」

自宅のドアを荒く開けて竜児は飛び出す。アパートの階段を勢いよく降りて学校まで走り出した。
月は睦月、季節は冬。澄んだ空と葉が枯れた並木、気持ちよく響く雀の鳴き声・・・
こんなときに登校をする学生はよい心地になるのだが今日の高須竜児はそんな気分になれるはずがない。
1500m走のペースで学校に向かう彼はむしろ外の落ち着いた佇まいが邪魔なくらいである。とにかく必死必死必死。
たかだか遅刻でなぜ必死になるのか。竜児自身わからなかったが、彼は何も考えずとにかく走った。

が、心がそうしようとしても体が限界でついていかなくなってきた。目の前に学校が見えてきたところで竜児は疲れて走れなくなってしまう。
あまり運動していない習慣が仇となって出てきたな、と竜児は後悔する。冬なのに自分だけ真夏の太陽の下にいるような熱さを体が帯びていて、汗も土砂降りの雨に滴ったふうに出てきている。
バスを待っている間はしゃいでいる幼稚園児と何気ない会話を楽しんでいるその母親たち、ランニングする老人は良好な天気に後押しされて快走している・・・
そんななかいる彼は非常にその場から浮いていた。

チャイムが高校から鳴っている。竜児はそれを聞いた瞬間自分だけ重力が倍受けるような感覚に陥った。
「くっそ・・・・!」

せっかく遅刻をしないために必死でここまできたのにそれが水の泡・・・・
彼は悔しくて悔しくてたまらなかった。そんな彼の顔はとてつもなく凶悪な顔に見えた。例えるなら

「ヤクザも恐れ、第六天も退き、ベジ○ータも恐怖のあまり涙する」

ような表情である。

そんな顔だからはしゃいでいた園児も、くっちゃべていた親たちも、ランニングしていた老人もみんな泣き、恐れ、命乞いをしていた。
竜児はその場から浮くどころかその場をあきらかに不気味で異質な空間をつくりだしていた。


そんな事実など露知らず、竜児は「せめて一時間目には間に合ってやる!」
と言う意地を通そうと、再び歩を進め、歩はいつしか走となって足を動かしていた。
走っていくうちに先ほどとは違い気持ちよくなってきた。気負いしすぎるのを止めたのもあるし、ランナーズ・ハイというやつかもしれない。
朝から起きて初めていい気分になってきた。その瞬間、

「うわぁ!」「きゃあ!」

曲がり角を直進しようとしたとき、左側から衝撃を受けた。その衝撃で地面に倒れこむと今度は右側から衝撃が走る。
砂利つきのコンクリートにすべり込んでしまった。これはたまらなく痛い。
「ぐ、ぐっ・・・」

たまらず竜児は声なき声を出す。じーん・・・と痛みのあまり神経が麻痺してしまったような感覚が襲う。
その感覚がある程度緩和するまで待った後に竜児は立ち上がる。すると、肩を震わせながらうずくまっている一人の女子が目の前にいた。どこかで見たことある。
そして竜児は心当たりがあることに気づく。

うちの高校の制服、紫色のやわらかな長髪、ふとましいが女性らしく美しい体つき・・・
うちのクラスにこうした特徴を持つ女子が一人だけいた。

「お前・・香椎。香椎奈々子!」

思い出したように竜児は彼女の名を呼ぶ。しかし彼女の方はと言うと、
「ひぃ!?」
怯えていた。

「お、おいどうしたんだよ・・・?」
と竜児が問いかけても
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
と返ってくるだけ。しかしまあ、こういった反応をする原因は大体想像はつく。

「香椎・・・おれは別に怒っちゃいないぞ。」
「・・・へっ?」

やはり予想通り怒っているように見えていたようだ。
心外だ。

「ああ。ちなみに逆恨みで何かしようってわけでもないからな。」
「・・・・本当に?」

怒っているどころか憎しみに満ちた男として見られていたようだ。
実に心外だ。竜児はいつものことだし分かっていたとはいえすこし傷ついた。

「本当だよ。」
「本当に本当?」
「本当に本当だ。」
「本当に本当に本当?」
「本当に本当に本どぶぅ!!?」
同じ言い回しのせいで竜児は舌を噛んでしまった。これでは弁明にはならない。
「ぷっ・・・!」
「ん?」
「ぷふふふふふ・・・・!」
今の噛みが面白かったのか奈々子は思わず笑ってしまう。竜児の間抜けのおかげで奈々子は自分の誤解を理解したようだ。
「な・・・そこまで笑うことはねーだろうが・・。」
「ご・・・ごめんなさい。おかしくてつい・・・悪いことしちゃったね。怪我させちゃったし服だって・・・」
「ああ、たいしたことねーよ。かすり傷程度だし服も別に・・」
心配ないことを竜児は奈々子に言おうとしたが、その時今まで気がつかなかった違和感を感じた。
左足のズボンのところが何だか生温かい。
みてみるとふりかけのかかったご飯、香ばしそうな赤鮭、バター和えほうれん草が汚く混ざった物体がくっついていた。
「うぉっ!?」
どうやら奈々子の弁当が先ほどの衝突で散乱してしまったようだ。


「あ・・・これって、香椎の・・・」
「うん、あたしの弁当。ゴメンね・・」
「いや別にいいよ。気にするな。」
「でも・・・・」
「学校までもう少しだ。そこで体操服に着替えれば問題ないだろう?」
「そうだけど・・」
「こんなところで立ち話しててもしょうがねーだろ。遅刻してるんだ、とっとと向かおうぜ。」
そう言うと竜児は学校のほうへ向かいはじめた。
しかしさっき転んだときの所為か足が少々おぼつかない。その姿をみて奈々子はますます心配になる。
「だ、大丈夫?」
「気にするなよ。歩いているうちに大丈夫になるからよ。」
歩みを早くする竜児。
心配を他人に掛けるのは彼にとって大の苦手である。世話になることはなおさらだ。
だが自分がどれだけ大丈夫だとアピールしようとしても、傍から見たら無理をしているのが明らかである。その姿が目立つものだから、
フィールドワークに出ている小学生は本来の目的である自然でなく高須竜児という生物を観察している。
その視線に当然気付き、さらに無理をしようとする。そうなると当然、
「・・っっ!!」
激痛に襲われ立ち止まる。どれだけ体の負担を抑える努力を自力でしようとも本能の警告には逆らうことができない。思わず竜児は痛みの中心である右ひざに手をかける。
あれだけの衝突だから少なくとも青あざ以上になるのは当然であろう。

「高須君・・・やっぱダメじゃない。」
「つつつ・・・・確かに少しきついな。」
「だったら・・」
奈々子は早速手を貸そうとすると
「香椎、先に行っていてくれ。」
予想外の竜児の返事に

「はっ?」

と思わず鋭く刺すような感情で言葉を漏らしてしまう。
「このまま俺に付き合うと一時間目に出れなくなる。それだとお前は困るだろう。だから早く行きな。」
「でも、高須君は・・・」
「俺は大丈夫だ。心配するな。」
「でも・・・」
「大丈夫だって。」
「怪我が・・・!」
「唾つけておけば治る・・」
「もーーー!!」
高須竜児の態度についに奈々子は我慢することができなくなった。これには竜児も驚く。
「か・・香椎?」
「ほら、肩貸すから。」
「へっ?」
「いいから!!」
奈々子の強引な口調。竜児は流れに身を任せるしかなかった。奈々子に自分の腕を預ける。
左腕を彼女の左肩から巻きこみそこから体重の一部を彼女の体に乗せた瞬間、

その時竜児は感じた。
暖かく、甘く、とろける様な感覚が体全体に響いたのだ。
そして顔を預けている肩からはぬくもりが伝わってくる。
とても、とても心地良く、
その感情に彼は支配されていく。

「ご・・・ごめん、高須君。さ、さすがに・おも・・・い・・!」
この悲痛の声に竜児は行きかけた道から抜けることができた。
気がつくと彼女が必死になって自分を抱えている姿がそこにあった。
今の不可思議な感覚のせいでつい彼女に全て預けてしまった。
申し訳ない。
とりあえず無事な左足を主に、怪我した右足も少し使って自分の体重を支える。
「わりぃ、香椎!もういいよ。気持ちだけで」
「私なら大丈夫よ。もう平気よ。」
「けど・・・」
「大丈夫だって。」
「重いし・・」
「いいからいいから・・・」
「気持ちだけで・・!」
そのとき、奈々子は彼の右肩をしっかりつかみ、顔を彼女のほうに寄せ一歩歩き始めた。遠慮を主張していた竜児も、無意識に彼女と二人三脚をし始める。歩き出したあと彼女はにこやかに言う。

「無茶しないで。これで貸し借りゼロでしょ?」

「あ・・・・ああ。」

竜児は無意識に同意した。言葉だけではない。
このとき、歩き出した時なんだか気持のようなものが晴れて心から納得した。
感謝の言葉も無意識に出てしまう。
「香椎・・・ありがとな。」
「何言ってるのよ。悪いのはあたしだって。ひどい状況なのも高須君でしょ?あたしは運良く自分のバッグがクッションになってけがなし。あなたはコンクリートに直撃、それに弁当塗れのおまけつきでしょ。」
「まあ・・・な。でもよ。」
「でも?」
「なんだかわからねぇけど俺のほうが得をしているような気がして。」
「え?何で?」
「だからわからないって。」
「ふーん。ふふふ、変なの。」
「変だよなぁ。」
「ふふふ。」
「はは。」

心配を他人に掛けるのは彼にとって大の苦手である。世話になることはなおさらだ。
高須竜児はそういう人間なのである。
だが、この時は彼女に甘えることを望んだ。
それは暖かく、甘く、とろけるようなあの感覚のせいかもしれない。
これに酔いすぎるとまた彼女に負担をかけすぎてしまう。
竜児はそれを肝に銘じながらも、しばらく柔らかく、そして優しい肩の中で心地よい時間を味わうことにした。





335 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/02(火) 01:47:23 ID:m3j7nCmf
以上です。時間かかって済みませんでした。
限界容量についてまだ未熟だったので綺麗な改行ができずに読みにくいかと思いますが・・・・

次回はもっと読みやすくしたいと思います。

ちなみに続編ですが気分が乗ったら作ります。乗らなかったらこれで完結で。

多分、キャラ崩壊がもっと激しくなりますがね(苦笑)

では、失礼いたします。



329 名無しさん@ピンキー sage 2010/02/02(火) 01:23:00 ID:m3j7nCmf
はじめまして。初書き込みです。

題名:暖かく、甘く、とろける様な感覚は
設定:竜児×奈々子 2年の1月から
量:5レスです
注意:原作忠実度は期待しないでください。性格も含めてです。うる星やつらの原作とBDくらいの違いです。
初めてなので緊張しますがレッツ投函! 
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