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450 名無しさん@ピンキー sage 2011/01/27(木) 19:43:26 ID:gpX621oY



流動する情勢に従って株価はいとも容易く変動し、電気の信号は休まることなく通信の網を駆け巡り、目下のところニュースは食傷を訴えるぐらい飛び込んでくる。
何億年も前から降り注ぐ太陽光が大地を恵み、気温と湿度の相互効果で風向きは気まぐれに変わり、月欠け満ちて潮騒ぐ。
非常にどうでもいいことだ。どこか遠い世界の話だろうとさえ思う。
そう、そんなのは非常にどうでもいいの。昨日の天気よりどうだっていい。
わたしが今気にしていることはといえば、ただ一つ。


「心配ね、ブサコ。最近じゃ鳥もインフルエンザに罹るんだって」
インベーダーにしてプレデターたるあの抉れ胸から、いかにしてか弱いこの身を守り通せるかということに尽きる。
麗らかな昼下がり。いつものようにごはんを用意していた竜ちゃんは、途中でどこかに出かけていった。
たぶん買い物かなにかで、それはいいの。
よくないのは、これまたいつものように居座り、お客様気分全快でごはんを待っていた抉れ胸が、暇つぶしの材料としてわたしに目をつけたこと。
抉れ胸はポータビリティーで機能的、それでいて通気性のよすぎるわたしのお部屋を無造作にテーブルに置いてからというもの、なにが面白いのか、一方的に口を動かしている。
頬杖つきながらテレビを眺め、お里が知れるような品のなさでおせんべいを黙々と噛み砕いているだけだったらいいものを、出てくるのはせんべいくさい二酸化炭素と、わたしを震え上がらせるような意地の悪い台詞ばかり。
ひたすらに鬱だわ。いい加減本気で嫌になる。
我慢の限界はとうのとうに迎えてるというのに、一向に嫌がらせは終わらない。
「でもま、あんたには関係ない話よね。元々インフルエンザ拗らせてるような顔してるんだし」
本当にもううんざり。だいたい、それと病気と何の関係があるというんだろう。
どれだけこじつけてみようとしてみても、わたしにはこれっぽっちも納得いきそうにないというよりも納得いかないむしろ絶対納得なんかしたくない。
「にしても、おっそいんだから、竜児。もうお腹と背中がくっつきそうだわ」
五枚も六枚もおせんべい齧っといて、いや、七枚目に手を伸ばしておいて、いったいどの口が言うんだろうね。
ていうか、そのままおっぱいと背中がくっついて全てに絶望すればいいのに。
そんな風なことを考えつつ、憎しみで人がころっと逝っちゃうなら三回は逝かせられるだろうこと請け合いなくらい鋭さを増すわたしの視線は、
本人に直接ぶつけてやってもいいけど、合わせようものなら心臓麻痺を誘発させそうな抉れ胸の目つきは本能に訴えかけてくるくらい、怖い。
しかも彼我の体格差は絶対であり、圧倒であり、もし万が一相手の機嫌を下方修正させてしまった暁には、きっといたいけなわたしは強制的に巣立たされるか、はたまた、腹を空かせたそいつの胃袋に納められるかもしれない。
おぞましくって生々しい未来予想図に鳥肌が立つ。串刺しにされて火炙りにされるなんて真っ平ごめんだ。


仕方なしに窓に映る憎いヒンチチを睨んでやるしかなく、そして向こうが何をほざこうと無視を決め込んでやるのがわたしなりのささやかな反抗だった。
「なによ、珍しく静かにして。なんか喋んなさいよ。こっちは暇だしお腹へってしょうがないんだから」
隙間から進入してきた人差し指に、爪弾くようにして頭を小突かれる。
しまった。ささやかな反抗は微妙に裏目に出た。あちらは確実に苛つきの度合いを増している。
何をしても機嫌を損ねる上に何もしなくってもどっちみち機嫌を損ねるんだからこの女は手に負えない。
ああ、早く帰ってきて竜ちゃん。
じゃないとわたし食べられちゃう──猟奇的な意味で。
「たく」
さもつまらないと言わんばかりに、半円にまでなったおせんべいを放り込むようにして、一口で平らげた抉れ胸がふて腐れた声を出す。
「あんたはいいわよね。いくらブサイクで気持ち悪い顔してたってご飯は勝手に出てくるんだし」
だから顔は関係ねえっつってんだろ。あんまりしつこいとその内てめえのそのツラ啄ばむぞコラ。
あとさっきから失礼なことばっかり言って、わたし全然気持ち悪くなんかないんだから。
だって竜ちゃんが世界一可愛いって言うんだから、それがこの世の真理。
抉れ胸の美醜感覚が麻痺してるだけでしょ。
おっぱいだけじゃなくっておつむも可哀想なんだから、まったくやれやれだわ。
「それに、なんにもしなくったって、何があったってずっとここに居られるんだし」
ふいに、いたずらに突っついてくるだけだった指先が頭上までやってきて、振ってきた指の腹が触れると、前後にかすかに揺れた。
「あんたのご主人様だって、可愛がってくれるしね」
時間にしたらわずかに数秒のこと。
ちょっとだけ羨ましいわと、抉れ胸は柄にもないようなことを呟いてから、撫でつけるその指先を引っ込めた。
甚だ意外なことに、抉れ胸は留守を預かるこのたかだか十数分たらずで、寂しさから人恋しくなっちゃったみたい。
なんてお子様なんだろうか。見かけよりもよほど幼い精神年齢をしてるんだろうか。
まったく本当にやれやれだわと、心優しくて大人なわたしはその指を追いかけて、大きく嘴を開け、おもむろにかぶりついた。
そうして、普段竜ちゃんにしかしない愛撫を特別に披露してやる。
甘辛くてべたついているのはおせんべいのせいなんだろう。いささか不快な味と舌触りを、けれど目を瞑ってやり、優しく舌を這わせる。
ありがたく思いなさいよ抉れ胸。こんなサービス、滅多にしないんだからね。
と、そのとき玄関が開く音がして、いくらもせずに竜ちゃんが入ってくる。
「ただいま。なにしてるんだ」
「あっ、竜児。見てよこれ、こいつ噛みついたのよ。インフルエンザになったらどうしよう」
「はあ?」
いまのいままでの物鬱げな態度が嘘のように、抉れ胸はじゃれつく猫そのままに竜ちゃんに飛びついていった。
少しでも心を開いてやろう、慰めてやろうと思ったわたしがバカだった。
もしいつか本当にインフルエンザにでもなることがあったなら全身全霊でこいつにうつしてやろうと固く決意した、そんな麗らかな昼下がりの話。

                              〜おわり〜

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