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楽屋に戻ると、携帯がチカチカとメールが入っていることを知らせてくれていた。
プライベートの携帯は、かつての大橋高校の仲間にしか番号を公開していない。
まぁ、それ以前にメールの主は判っていたが…。
折角のオフが台無しになったあの日以降、ときどき届くメールはいつも同じ内容だった。
『この間はごめんなさい、亜美ちゃん。 できればちゃんと会って謝りたいの。 もし時間があったら、今夜会えないかなぁ?
また、あの店でずっと待ってるね…』
奈々子からのメールだ。
『会えないかなぁ?』 の直後、『ずっと待ってる』かよ。 これって脅迫に近くね?
「なんか最近怖いよ、奈々子。」 
カリスマモデルにして、人気女優、川嶋亜美は誰も居ない楽屋で独りごちると、ぶるっと肩を震わせた。
奈々子の妖艶な微笑みは、もはや亜美にとってトラウマになりかけていた。
自分ではどちらかと言うと『S』だと思っていた。
だが、あの夜、奈々子に徹底的に蹂躙され、なすすべも無く朝までイかされ続けた。
あの夜、というか朝、亜美は…『女』としてのプライドというか、性能というか……
なんとなくそういう分野で半端じゃない敗北感に見舞われたのだ。
だから、できれば暫くの間、奈々子と差し向かいで会いたくはなかった。
だが、このひと月の間、奈々子からのメールはすでに二桁に達していた。
「でも、流石にずっと断り続けるわけにもいかないよね…謝りたいって言ってるんだもん…亜美ちゃん、そんなに心狭くねーし。」
亜美はけだるげな表情を浮かべ、何気なく髪を払おうとして。
その手が華麗に空振った。

      埋めネタ  〜亜美ちゃんのちょっとイイ事があった宵〜 98VM

数日後、またしてもプライベートの携帯がチカチカ光っていた。
それを見ただけで、亜美は思わず肩を落とす。
珍しく収録が早く終わって、せっかく夕焼けを自宅から見れそうな週末の午後なのに、気分が急降下する。
「はぁ…」 予想通りの奈々子からのメールに溜息が漏れる。
が、しかし。
今日のメールの内容はいつもとちょっと違っていた。
『2−Cの仲良しグループで飲むことになったんだけど、もし暇だったら、亜美ちゃんも来ない? 場所は… 時間は… 』
願っても無いチャンス! みんな一緒なら、自然と奈々子との関係修復が図れる!
亜美は速攻で返信した。
こんな日にたまたま仕事が早く終わるなんて、なんてラッキー。 きっと亜美ちゃん、神様にも愛されてるのね〜♪
などと考えながら……。

約束の時間の10分前、そそくさと指定された店に入っていく亜美。
「いらっしゃいませー。」
「えっと、香椎で予約してある…」
「はーい、香椎さまですねー。 こちらでーす、あ、クツはこちらでお預かりしますので、そのままお上がりくださーい。」
こういう庶民的な店は不慣れで、すこし戸惑う亜美だったが、店員に導かれやがて奥まった個室に通される。
言うまでもないことだが、奈々子様はそれほど甘くない。
当然、罠だった。
しかし、それは亜美にとって、とびっきりの嬉しいサプライズ。
「お…ぅ、 か、川嶋か?」 「えっ、高須くん?」
亜美はてっきり、女の子同士で飲むものとばかり思っていた。
硬直する。
わりと広めの部屋に居るのは、奈々子と高須、そして亜美。
言葉が何も出てこない。 卒業してから2年、亜美は高須に一度も会っていなかった。
昨年開かれたという同窓会も、亜美は仕事で行けなかったのだ。
「ひ、久しぶりだな、その、元気だったか?」「う、うん。 高須君は?」「お、おぅ。俺も、大過なかった、うん。」「そか。」
「……」「……」
明らかにキョドっている二人を見て奈々子は目を細める。
その表情が雄弁に語る。 『計画通り…』 と。 奈々子はわざと高須と亜美だけ開始時間を30分早く告げたのだ。
みんなが集まればすぐにばれるだろうが、その時にはもう、そんな事は追求できる環境ではないだろう。
そして、毎日傍にいれば麻痺しても、2年ぶりともなれば、亜美の破壊力は計り知れないというのも、奈々子の計算通りで、
案の定、高須竜児は笑えるくらいに動揺していた。
そして、おもむろに奈々子は携帯を取り出して、ミッションを第二フェーズに移行した。
「あ、麻耶からだわ。 ちょっと電波が悪いみたい。 外で電話してくるね。」
「え、あ、うん。 わかった。」
そうして二人だけが安い居酒屋の割には間接照明と凝ったインテリアがムダにムーディーな部屋に取り残されたのだった。

亜美はめちゃくちゃ緊張して、真っ赤になってしまっていた。 部屋の明かりがやや暗いのがせめてもの救いだ。
高校時代よりも、高須竜児はいくらか男らしさが増して、ファッションもなかなかきまっていた。
おそらく彼の事だから、鏡の前で何時間も悩みぬいて選んだ服装なのだろう。
そんな彼と不意打ちで二人っきりになって、亜美はぶっちゃけノックアウト状態だった。

一方の竜児も……
「お、お前、髪のきぇ…おぅ…」
テンパッていた。

それもその筈、亜美は高校卒業後、本格的に女優デビューして、瞬くうちに男達の心を捉えた。
そのボーンナチュラルビューティーっぷりは昨今の改造美女とはやはりオーラが違う。
いつもTVの向こうで輝いているかつての級友を見て、改めてその美しさを客観的に認識させられていたのだ。
その彼女が目の前に、全くの自然体で居る。 しかも二人っきりで。
流石の竜児も動揺せざるを得ない。
例え、大河というきまった人が居ても、である。 男とはそういう生き物なのだ。

そんな竜児を見て、亜美はやっとのことで自分を取り戻した。
自分は、高須竜児にとって、『ちょっと綺麗なクラスメート』でしかないことを思い出したのだ。
ゆっくりと深呼吸したあと、ようやくまともな会話を始めた。
「髪、切ったんだ。 どう? 似合ってる?」
「おぅ。 そ、その、似合ってると、思う。」
「そう、よかった。」
「………」
「大学、どう? 面白い?」
「お、おぅ… そうだな。 色々な人が居て、勉強になる。 なんていうのか……世界が、こう、広がった感じだな。」
「へぇ。 そっかぁ。 やっぱり高校とは違うんだろうね。」
「ああ、全然、別物だ。 そうだな、やっと、お前の、…川嶋が見てた世界に追いついてきた感じだよ。」
「え? どういう意味?」
「ああ、なんていうのかな、社会ってものがすこしづつ見えてきたっていうか…色々と簡単じゃねーのが、判ってきた。」
「ふーん。」
「もっとも、芸能界なんて厳しい所で生きてるお前にゃ敵わないと思うけどな。」
「あったりまえじゃん、この超絶美少女の亜美ちゃんと張り合おうなんざ、100年早いって。」
「はははは。 変わらないな。 やっぱり川嶋だ……うん。 …川嶋だ。」
憑き物が落ちたように、急に落ち着いた表情になった高須を見て、亜美は直感的に彼に何かあったことに気がついた。
「どうしたの? 高須くん、元気ないじゃん。 ってか、なんでタイガー一緒じゃないの?」
言いながら亜美は、たぶんそれが答えだと感づいていた。 きっと、大河と何かあったのだと。
「おう…。 実はな…。」
「うん。」 なんだろう、すごく嫌な感じがする。 亜美は努めてゆっくりと返事をした。
「ここ3日、大河と会ってねぇんだ……。」
「………」 
はぁ?3日? 3日って言ったよね? それがなんだってんだ? 亜美ちゃん、難聴になったのかと思っちゃったよ…この
バ カ ッ プ ル め が ぁ !
「で?」
「…おぅ?」
「だぁからぁ、それがどーしたんだっつの!」
「い、いや、川嶋、最後まで話を聞いてくれ!」
「なに?」
「いや、最近、大河がやたらと俺がなにかしようとすると拒むんだよ。」
「なにかって、エロイこと?」
「ちっ、ちがう! その、世話を焼こうとすると怒るんだよ。 どんな小さな事でも。 そしてついに3日前、しばらく会わないって
宣言された……。」
亜美は軽く眩暈がしていた。 あれから二年も経ってるのに、まだその段階なのか、この二人は、と。

成程、体は大人になっていても、心はまだまだゆりかごの中だったというわけだ。
そして思う。
今なら勝ち目あるかもしれないな、と。
しかし、亜美はすぐに思いなおした。
ダメになるときは勝手にダメになるだろう。 人として成長していく過程で捨て去られるものの代表選手が『恋』だ。
亜美は既に味わった。
もしかしたら、大河は自らそれを選ぼうとしているのかもしれないが、そこに口を出す必要はない。
そうなったらそれまでだ。 そうならなかったら、また全身全霊で二人を応援しよう。
大好きな二人だから。
ただ、それだけだ。
「大丈夫だよ。 高須君は自分の気持ちを見失わなければいいの。 大河のことが好きって、その気持ちさえあれば…」
「―――大丈夫。」
なんだ、あたし、ちゃんと抵抗無く言えるじゃん。 そう亜美は思って微笑んだ。 彼女が本来持っている天使の笑顔で。
その笑顔は、今まで高須竜児が見た笑顔の中で最も美しい笑顔。
高須は暫くその顔に見とれて、惚けていた。
「どうしたの? 高須君?」
「ああ。 すげーな。 やっぱり川嶋はすげーよ。 それに、信じられねぇ位、綺麗だ…。」
「え?」 
高須が亜美を綺麗だと言ったのは、もしかしたら初めてだったかもしれない。 
高須竜児と川嶋亜美はそれから暫く、無言で見つめあった。


そのすこし前、店の外では、奈々子が予想外に早くやってきた二人連れを発見していた。
手を握りたそうで、握れない、そんな感じの能登久光。
そして、何気なく握りやすそうな位置に手をぶらさげて、イライラしてる木原麻耶。
なんとなく、見てはいけないものを見てしまった気がして、奈々子は慌てて店に戻る。
さて、どうしたものか、と奈々子は小首を傾げる。
そして、悪いのは、珍しく時間よりかなり早く着いた麻耶だということに結論付け、店の奥に引き返した。
頃合的には丁度いい頃合だとは思ったが、心の中で申し訳程度に亜美に謝って扉を開ける。
はたして、部屋の中にいた二人は、距離こそ互いの手が届かない程離れていたけれど、今にも口付けを交わしそうな雰囲気
で見詰め合っていた。
『作戦通り』と奈々子はほくそ笑む。
亜美はこれが誰が仕掛けた罠か当然もう気付いている。
これできっと亜美の奈々子に対する警戒心は下がるだろう。
薄手の夏服は亜美の完璧な体を浮き立たせる。
甘い女の香り。
官能的な体。
そして奇跡のような美貌。
これだけ揃っているのに、見つめるのが精一杯なんて、高須君って不能なのかしら?と奈々子は思いながら…
亜美の形のいい胸の先端、微かな突起に視線を這わせる。
二人の会話に混ざりつつ、
その妖艶な唇を微かに舌で塗らした事に ――――― 亜美は気付かない。

                                                              おわり。

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