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106 〜亜美ちゃんのちょっぴり?な昼下がり〜 ◆/8XdRnPcqA sage 2010/03/18(木) 21:40:00 ID:NRNaMt+R






「それで?」
「……… だ、だから ……… すみませんでした。」

楽屋の壁にもたれたサングラスの男の手にはタバコ。
今時、楽屋も禁煙にしてほしい、と、八つ当たり気味に考える亜美。

たった5分遅刻しただけで、どうしてこんなに冷たく糾弾できるのだろう。
信じられない位に性格が悪い。
いくら、敏腕といっても、この性格の悪さ。 離婚の原因だって、絶対この男が悪いに決まっている。
あたしの事なんか、ただの金づるくらいにしか思っていないんだ…

その時、ボコンという間抜けな音が亜美の思考を中断させる。

テーブルには紅茶のミニペットボトル。 それは最近、新発売の文字に釣られて飲んでみたら気に入った商品だった。
そのペットボトルはハンカチで包んであった。
「すまん、もう冷えて無いかもしれんな。 ――― 今日はいい出来だった。」
確かに、遅刻したのはたった5分。 
……だが、今日で4回連続だ。

男はまるで興味を無くした様に、するりと亜美の前を通り抜け、楽屋から出て行く。
その男が、亜美に何かを与えたのは、おそらく初めてだった。
亜美は唇を噛み…
ドアから消えかけた男の背中に声を投げつけた。
「プロデューサー!」
男は立ち止まる。 しかし、振り返りはしなかった。
「なんだ。」
「遅刻して…すみませんでした…。」
「それはさっき聞いた。」
「…あ、あの……」
「 ……… ゆっくり休め。」
亜美にその言葉が届いた時には、もう、扉は閉まりかけていた。




     埋めネタ   〜亜美ちゃんのちょっぴり?な昼下がり〜




降旗P。
亜美には判らなかったが、なにかのゲームの影響らしく、業界内でもプロデューサーをそんな風に呼ぶのが流行っていた。
亜美の担当となったそのフリーランスのTV・映画プロデューサーの業界内での評価は両極端。
かたや、天才。
かたや、新人潰し。
亜美もデビューする際には、その名前を何度も耳にしていたが…。
よもや、自分が逆指名されるとは夢にも思っていなかった。
事務所の人間は『天才』の方を信じているのか、大喜びで受け入れた。
とりあえず、自身に決定権の無い亜美も大人しく受け入れるしかなかった。
だが、そのプロデューサーに付いて程なく、亜美は自分は間違いなく後者の方だと感じていたのだった。

親の七光りはデビューの時だけで、半年も経ったら同じ年頃の人気アイドルのセミヌードの話題で塗りつぶされた。
オーディションでは『ルックスは最強だし、演技もいいけど、優等生すぎる』なんてよくわからない理由ではねられた。
デビューして一年も経たないうちにスケジュール表には空白が目立つようになって…
人気はあるのに、仕事は無い。 そんな不思議な状態。 ……正直、きつかった。
そんな時に、かのプロデューサーがアポを取ってきたものだから、みーんな飛びついたのだ。
確かに、プロデューサーとしての腕は確かなのだろう。 それからは仕事が途切れることは無く、人気も確実に上がってきている。
だが、亜美にとっては、その男は悪魔そのものだったのだ…。



今回だって、遅刻してしまうのには訳がある。
別にたるんでいる訳じゃないのだ。

例の2−Cのみんなで集まった飲み会以来、亜美は表向きは元気でも、実は激しく落ち込んでいた。
大河と喧嘩して、危うく絶交しかけたが、それはまぁ、なんとか仲直りできた…と思う。
問題は、高須竜児だった。
完全に横恋慕なので、高須竜児の一番になりたい、なんて夢は諦めたつもりだ。
最初、奈々子の策略のお陰で、思いがけずいい雰囲気になって、亜美ちゃん、実はけっこう高須くんに好かれてる?なんて
思ってしまったのがいけなかった。
その後、大河が現れて、さらに実乃梨が現れて、自分の相対的なステータスがたちまち暴落するのを肌で感じてしまった。
亜美としては、かなり積極的にアプローチして、かなりぎりぎりの台詞も言ったはず。
ところが、当の竜児は亜美から逃げようとするばかり。
大河も亜美に攻撃してきたので、完全に亜美が淫乱悪女扱いになった。
半分はからかいだったから、それはある程度は仕方が無いと思う。
だが、二次会のカラオケで隣に座った亜美に、竜児は自分からは一度も話しかけなかった。
それどころか、結局解散になる間際まで一度も亜美の顔をまともに見ようとしなかったのだ。
せめて、別れ際くらいは…
実乃梨が帰るといったときの竜児の表情が、亜美の頭から離れない。
あんな残念そうな顔じゃなくてもいいから、バイバイしたなら、それらしい顔をして欲しかった。
けれど、ぎこちなく笑って手を振りかえして… 大河を待つ素振り。
悔しくて、苦しくて、歩き出せないで居るうちに、竜児と大河は喧嘩を始める。
それが飛び火して、今度は亜美が大河を罵ってしまうという最悪の連鎖になってしまった。
別に、本気で大河から竜児を盗ってやろうなんて思っているわけじゃない。
ただ、もう少しだけ、自分を見て欲しい。
一番にはなれないけれど、でも特別だったって、思わせて欲しい。
我侭だけど、それくらいなら望んだって罰はあたらないんじゃないか、と亜美は思っていた。

けれど現実はもっと残酷で…
最初のささやかな喜びだけを胸に秘めて、亜美は思いを封印する。
だって、もう自分にはなんの芽もないのだからと、悲しさを忘れ、微かな恋心をシャワーに流す。
あの日は楽しかったかと問われれば、みんな楽しんでいたのだからと、『楽しかった』と答えるだろう。
けれど、日々の仕事に疲れて、シャワーを浴びてベッドに潜れば…
どうしようもない劣等感にさいなまれ、まともに睡眠を取ることができないでいた。
これまでの人生で、こんな風に誰かに負けたと思わされる日々はなかった。
仕事ではライバルたちに負け、恋愛では同級生達に負けて…それでも毎日、馬車馬のように働かされる。

嫌で嫌でたまらない。
あの男の、サングラスの奥の怜悧な視線が、嫌で嫌でたまらない。
全てを見透かして、亜美の嘘も簡単に見透かしてしまうような、そんな視線が。

いつも、ビジネスライクな会話しかしない。
あくまで亜美を商品として、物として扱うような、そんな言葉しか投げてこない。
まるで人としての感情が欠落してしまっているかのようだ、と亜美は思っていた。
自分は傷ついているのに…自分の居場所が見つけられなくて苦しんでいるのに…
そんなのお構い無しに、『商品』として扱う男。
それは正に、悪魔そのもの…。


だが、今日は違っていた。
嫌な奴だという先入観があって気がつかなかった。
タバコの臭いが薄く消えた頃、男の言葉を思い返して亜美は違和感を感じた。
今日は、何かいつものやり取りと違っていた。
なんだろう?と会話の内容をもう一度振り返る。
………
………
数瞬後、亜美はハッとした表情で顔を上げた。
そうだ、降旗はこう言ったのだ。
「何があった?」と。
「寝坊した。」と答えても、「道が混んでいた。」と答えても…
「それで?」と。
慌てて、亜美は楽屋を飛び出し、降旗の背中を探す。
いつもなら、
いつもなら、彼はこう聞く。
「なぜ、遅れた?」と。
だから…

――彼が聞きたかった事は、言い訳じゃなかった。――

エレべーターホールまで走っても、その背中は見えなくて。
エレベーターのサインは、一機は一番下の階と、もう一機は今しがたこの階を通り過ぎて上へと向かっている事を示していた。
亜美は何度か下向きの矢印を押す。
だが、しまいに癇癪を起したようにボタンを平手で叩くと、近くに併設された階段を走り下りていた。

息を切らせて4階分の階段を駆け下りると、最近ようやく見慣れた背中が、今、正に建物から出て行くところだった。
「プロデューサー!!」
降旗は、特に驚いた素振りもなく、振り返る。
その落ち着きっぷりが小憎らしくも在ったが、それでも亜美はほっとした。
そのまま降旗は玄関口で立っている。
息を切らせて傍まで辿り着くや否や、
「どうした? 好みじゃなかったのか?」
「はぁ、はぁ… は、い?」
「確か『また買ってみよう』と言っていたと思ったんだがな…。」
紅茶の話かよ!と突っ込みたい気持ちを抑えて、亜美はもっと言わなければならないことを口にした。
「そんなことより、プロデューサー、済みませんでした…。 あたしのこと、信用してくれてたんですね……。 それなのに、あたし、
全然、気がつかなくて…」
「…何の理由もなく遅刻するとは思ってない。 だから、何か特別なことがあったんじゃないか、そう言ってくれてたんですよね…。」
「…別に、無理しなくていいぞ。 話したらもっと辛くなることだって…ある。」
「話さなくても、もう十分に辛いから… あたしも、プロデューサーを信じてみます…。」
「おいおい。 らしくないな。 明日は野外ロケだ。 雨は困るぞ。」
「ふふふ。 あたしは嬉しいかな。 だって、雨ならオフにしてくれるんですよね?」
「人為的な要素が絡む場合は約束は無効だ。 その場合、特別レッスンを組ませてもらう。」
「ケッ。 みみっちぃの… ってか、あたしが素直なのがそんなに珍しいってか?」
「まだTV局内だ。 地は出すな。」 「…はい。」 「よし。」
「………」
「………」
「………」
「…さて、ラーメン屋とそば屋と寿司屋、どれがいい?」
「そんなの…す「ちなみに寿司屋は回転寿司だ。」」
「…そば屋で…」
「いい心がけだな。 一番カロリーが少ない。」


クネクネと裏通りを辿って20分近く歩くと、ようやく目的の店に着いた。
小さな店舗には昼過ぎだからか、客はおらず、これでやっていけるのかと亜美は心配になる。
「昼は出前で繁盛してる。 夜は多少少なくなるが、まぁ、やっていけるくらいは客がある。」
亜美の心配を見通して降旗が口を開いた。
相変わらず、降旗は仕事以外は無関心といった風だが、こうして見ると、逆に何を話しても大丈夫そうな安心感があった。
しかし、それぞれ注文し、料理が揃うまで二人は沈黙のまま。
ようやく注文した料理が届いても…
「食え。 美味いぞ。」
またしても一言で会話終了。
そろそろソバが無くなるかという頃合で、ようやく亜美は観念して話し出した。
学校にいた頃の疎外感。
恋に破れた事。
その恋に未だに未練がある事。
そして、つい先日の飲み会での出来事。
最初亜美はそこまで話すつもりはなかった。
だが、一旦話し始めると、いつの間にか色々と喋ってしまう。
相槌といっても、「そうか」くらいしか言わない。
それなのに、その一言を聞くと、何故か安心するのだ。

そして全部話し終わってみると、なんだか昨日までの自分が馬鹿らしく思えてきているのに気付く。
くよくよしてても、なにもよくならない。 誰も助けてくれない。 何も変わらない。
そんな事は百も承知のはずなのに、自分の悲劇性に酔っていたのかもしれなかった。 
それは、簡単に言えば『僻み』だ。
「随分、すっきりしたような気がします。 有難うございました。」
「大切な商品は大切に磨くさ。 もっと高く売れるようにな。」
こんな台詞ですら、今は何故か腹は立たず、亜美は薄く微笑む。
すると…
降旗もまた、小さく笑った。
初めて見る笑顔に、亜美が驚いていると、降旗は更に驚くような台詞を口にした。
「お前はとびっきりのいい女だよ。 もっと自信を持っていい。 そうすれば今よりもっと輝ける。」
亜美は不覚にも頬を赤らめる。
「誰かと自分を比べても致し方あるまい。 人それぞれにいい所も悪いところもある。 お前が誰かに劣っているなんて
ことは無いさ。 その青年だって、間違いなくお前の事は好きだろう。 お前だけじゃない。 きっとその場にいた皆を、
それぞれに好いている。 そしてそれぞれ役割が違って、そしてその全部が必要なんだよ。 比べるなんて無意味だ。」
「そんな… それでも、やっぱり一番好きな人って…」
「そう思い込んでいるだけだ。 人生で一体どれだけの人と出会うのか? たかが20年やそこらで、『一番の人』と確実
に出会うのか? それとも未来のことが判るのか?」
「なっ、そんな事っ!」
「どうして一番だと決め付ける? どうして自分が劣っていると決め付ける? 本当に愛しているならそれでいいだろう?
本当に愛されているなら、…それでいい。 ………順番なんか、どうでもいい。」
「!!」
「だが、こういう事を言うと離婚するはめになるがね。」
…亜美は何も言葉を返せなかった。
きっと降旗の言うことは真実なのかもしれない。 けれどその結果、離婚するのもまた、真実なのだから。

「さて、そろそろ帰るか。」「はい。」
亜美を先に店の外に追い出し、勘定を精算する降旗。
なじみらしい年老いた店主がレジをいじりながら声を掛ける。

「珍しいねぇ、ふるちゃん。 ウチに『商品』連れて来るとは… よほど入れ込んでるね?」

「まぁ、な。 死に物狂いでも守りたい『商品』なんざ、久しぶりだよ…」

そう言って降旗は口の端を歪ませ、ゆっくりとサングラスを掛け直した。

                                                               おわり。



110 98VM  ◆/8XdRnPcqA sage 2010/03/18(木) 21:43:36 ID:NRNaMt+R
お粗末さまでした。
アダルト分10%増しでお届けしました。
さて、どこまで許容範囲なのでしょうねぇ。
では、また。

105 98VM  ◆/8XdRnPcqA sage 2010/03/18(木) 21:38:28 ID:NRNaMt+R

こんばんは、こんにちは。 98VMです。

埋めネタ、なかなかタイミングが合わずに落とせず。
あんまり放置しておくと間違って消しそうなので投下します。

この間のバレンタインネタで気に入ってしまいました…
『オリキャラ注意!』 です。

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