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〜手乗りタイガーの嵐のちくもりの夏の夜〜  sage 2009/09/19(土) 17:38:34 ID:lIXLs1Pr


鬱蒼と茂った密林の奥から見上げる空は。
木々の緑に遮られて、その奥に広がる空が、白いのか、青いのか、わからない。
ただ、森の奥が暗ければ曇りで、少し見通せれば晴れだとわかる。
仲間に出会うことさえ稀な深い森。
孤高の王者は、独り空を見上げる。

そこには―――
高層ビルの航空識別灯がゆっくりと瞬いていた。
星の光でも見えたのならば、少しは慰めになったのだろうか?
しかし、空は無常にも墨を流したように真っ暗で。
手を伸ばしても、果てしなく…真っ暗だった。

深い森の中
空を見上げる王者には、やはり空は遠すぎる。
だから、当たり前なのだ。
天駆ける竜には
この牙も、この爪も届きはしない。
きっと、
きっと、初めからそうだと、決まっていたんだ…。


     埋めネタ  〜手乗りタイガーの嵐のちくもりの夏の夜〜


将来を約束したものの、現実を見つめなおした結果、色々と自重して3年。
結局一人では何も出来ない自分が嫌になって逆ギレしてから僅か3日。
そして、かつての仲間たちがみんな揃うのに行かないわけにはいかぬと言い訳して、たった3日で前言を翻すことになった。
あまりといえばあまりの情けなさ。
そして、それ以上に、いかに自分が彼に頼りきっているかを思い知る。
だからだろう。
楽しくやっているようで、きっと私は凄くイライラしていたのだ。
自分自身に対して。
だから、それは完全に八つ当たりだった。
彼を一人で追い返して…
それを咎めた友人を、ひどく傷つけてしまった。

あるいは、みのりんが居たなら、馬鹿な私を止めてくれたかもしれない。
けれど、もう言ってしまった。
時間は戻せない。 取り返しはつかない。 
私は彼女を酷く傷つけてしまったのだ。
初めて見る瞳だった。 …あれは……憎しみ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ふん、そんなに欲しいんなら、あんなエロ犬、いくらでもくれてやるわよ!」
「……あんた、何言ってるかわかってんの?」
「あ、あたりまえでしょ! あんなバカ犬、私はもう要らないの! あんなの居なくたって、私は独りでやっていけるんだから! 
そうよ、お望み通りエロ犬同士で盛ってればいいんだわ! あんたなんか、どうせソレしか頭にないんでしょ!」
「…そう。 あたしに向かって、そんな事言うんだ……。 まるで相手にしてもらえなかったあたしに……言うんだ…。」
「…! う、ぁ、そ、そんなの」
「解った。 もういいよ。 そんな風に思ってたんだ。」
「え? あ、ぅ…」
「知らないよ? 高須君だって、少しづつ変わってる。 …大人になってるんだ。 三年前のようには行かないかもね。」
「………」
「サヨナラ。」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

捨て台詞よろしく吐かれた彼女の脅し。
―竜児を失うかもしれない―
そんな恐怖を抱かせる言葉。
…けれど、違う。

彼女の姿が見えなくなったとき、胸を襲った恐ろしいまでの空虚さ。
何かが完全に失われた時の狂おしいほどの寂しさ。
取り返しのつかない事をしてしまった時の激しい後悔。
すべてごちゃ混ぜになって襲い掛かってくる。
涙が噴き出した。
いつの間にか地面が目の前にあった。
雄叫びのような泣き声が、深夜の公園に木霊した。

―竜児を失うかもしれない―
違う。
…この胸の痛みは、この涙は、違う。
そうだ。 私は…
―川嶋亜美を失った―


時間の感覚が無くなって、とぼとぼと公園を出た時にはとっくに終電は無くなっていた。
行く場所は無い。
行きたい場所も無い。
高層ビルはまるで墓標のようで、気鬱になる。

林立する建物を下から見上げると、近頃は嫌な幻想に悩まされていた。
密林の幻想 ………今夜は特に激しい。

涙は枯れたのか、ようやく溢れ出るのを止めたようだ。
時々、赤い文字が通りを流れていく。
こんな時間でもこの街はせわしなく生きている。
周りのもの全てが面白くなくて、通り過ぎる車に悪態をつく。
まるで、リストラされたサラリーマンのように。
けれど、そうでもしないと、胸が苦しくて崩れてしまいそうなのだ。
みんなには黙っていたが、実は卒業してからも、何度か彼女を呼び出したことがある。
きまってそんな時の用事なんて、実質ただの愚痴なのに、呼び出せば大抵彼女はやってきた。
今はもう暇モデルでは無い筈なのに、だ。
お礼なんて言った事が無い。 つい喧嘩腰になってしまうのは、今思えば甘えていたのだろう。
やっぱり、私はガキなのだ。
彼と、高須竜児と…
手を携えて行くにはまだまだ足りない。 届いていない。
『愛してる』なんて、言うだけなら誰だって出来る。 好きになるだけなら誰だって出来る。
けれど、何をどうしたらいいのか分からなくて…
いつもそんなガキの背中を押してくれたのは、見守って、助けてくれたのは、
みのりんや、北村くんや、ばかちー……だった。

また、空を見上げる。
もう、この手は届かないのだろうか?
全てを間違えてしまったような気がして漆黒の闇に手を伸ばした。 
闇に手が溶けていく幻想。
しかし、車のライトがその手をまた浮かび上がらせる。
…手はまだそこにあった。

通り過ぎる筈の車が真横で止まる。
不審に思って虚ろな目を向けた。
いかにも高級そうな外車の後部座席の窓がスルスルと下がって、その奥に見知った顔を覗かせる。
「あんた、何してんの? 天体観測?」
「え? …ばかちー?」
「とっくに終電ないでしょ? ってか、そっち方向は暫く駅ねーし。」
「な、な、なん…」
「乗りなよ。 こんな時間に一人歩きは流石のタイガーでも危ないって。」
「え? で、でも…」
「あんた、今日は手持ち少ないんでしょ? タクシーも乗れないんじゃない?」
「な、バカにしないでよ! それくらいはあるわよ!」
「あっ、そ。 でも、折角だし、乗っていきなよ。 お金もったいないじゃん。」
ドアが開かれ、なかば強制的に車に引っ張り込まれた。
それよりも、なぜばかちーがここにいて、私に話しかけているのか、理解できない。
恐る恐るばかちーの方を見た。
彼女の表情は読めない。 ただ、その瞳から憎しみの色は消えていた。
「む、迎えに来させたの? い、いい身分よね。」
なんで、私はこう、ばかちーと話すと喧嘩腰になるんだろう。 最低だ。
「ふん。 当然じゃなぁーい? ま、これが亜美ちゃんクオリティってやつ?」
「いってろ…」 「ふふふふ。」
「………」
「………」
それから気まずい沈黙が続く。 早く謝らなくちゃ、と思いながら、言葉が出ない。
そうこうするうち、先に口を開いたのは亜美だった。
「さっきは… ごめん。 あ、あと、最後のは冗談だからっ。 ほら、亜美ちゃん、ちょーモテモテで、逆ハーレム状態だし…。」
「だから、あたしの方こそ、あんなヤンキー面のおばさん男なんかいらねっつーか…うん。 そう、からかっただけってか…。」
「ばかちー……」
胸が熱くなる。 あまりに申し訳なくて、声が詰まって、それ以上何も言えなくなる。
「うっ。 うぅ… うぁぁぁぁぁぁ」
そして、もうどうしようもなくて、恥も外聞も無く泣きながら抱きついてしまった。
「なっ、ちょっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
「な、なんなのよ、もう………」
「うっ うっ ご、めん、な、さい… ごめ、ん、な…… うっく。」
「はぁ… もう、顔ぐしゃぐしゃ。 みてらんねっつの… ばぁーか。 ……うふ…ふふふっ。」

「ぐしゅ… ぐしゅ…   ………ちん!」
「うわっ! キッタネ! なにすんのよ!このバカとらぁー! このジャケ日本未発売のブリオーニなんだからね!」
「…感動のシーンなんだから、いいじゃない、けちけちすんな。」
「ケチじゃねーっつの! 120万よ、120万! クリーニング代よこせーー!」

結局、喧嘩せずには数分ともたない二人だった。

                                                                    おわり
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