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きすして  sage 2009/06/17(水) 08:02:46 ID:OkG13OEe


 朝が来ても竜児の部屋にちっとも日差しが差し込まないのは、高須家が入居している
アパートのすぐ側に、相も変わらずそびえ立つ高級マンション様のおかげであり、
そいつは高須家から日照を奪い、湿度を上げ、カビの増殖を促進しまくっている
のではあるが、同時にそこは竜児にとっては思い出の場所でもあった。
 もう、二度とそこに立ち入る事は無いだろうし、そこに行きたいとも思わない。
その部屋で暮していた女の子にとっては、そこは悲しい場所だったし、春が来る前に
その娘はそこから出て行ってしまったから。
 それに、そこにいた女の子は、今はここに居るから。竜児のすぐ傍に・・・

 カーテンの隙間からわずかに差し込む陽光に反応して竜児はゆっくりと目を開けた。
秋の朝日はこの部屋の日当りの悪さも相まって一撃で竜児を叩き起こすにはいかにも
パワー不足だった。薄暗い部屋の中で光る二つの三白眼が最初に捉えたのは自分の
胸元でネコのように丸くなって寝ている女の子だった。
 小さなふっくらとした桜色の唇はわずかに開き安らかな寝息をたてていて、粟栗色の
髪の毛はほんのりと甘い香りを放っている。ふわふわの白いネグリジェの袖から覗く
小さな手は『逃げるんじゃないわよ』とでも言うかのように、竜児のパジャマの胸元を
しっかりと掴んでいた。
 その姿を眺めているだけで、竜児の胸の中は時間をかけて煮込んだスープみたいな
とろとろとした暖かさで満たされてしまうのだ。竜児は自分が彼女の居場所である
事が嬉しかったし、こうして自分が彼女の傍にいられることも嬉しかった。自分達が
互いにいるべき処にいるのだという事実が堪らなく嬉しかった。

 目覚まし時計を見ると竜児的にはそろそろ起きるべき時刻が近づいていた。日曜の
朝だからアラームはセットしていない。それでも決まった時間に起きてしまうのが
高校生主夫である高須竜児の悲しい性である。
 竜児は自分の胸元を掴んでいる少女の手を丁寧にほどいて、彼女の耳元に顔を寄せた。
「大河。朝だ、おきるぞ」
「んっ、ん〜」大河の小さな唇から声がもれ、ほんの数ミリだけ肩が揺れた。
 その瞬間、すかさず竜児は頭を後ろにスウェイバック。コンマ数秒の差でさっきまで
竜児の頭があった場所を空気を切るような音を立てて大河の拳が貫いた。まともに
食らえば大の男が二メートルは飛ぶという彼女の左ストレートアッパー。実際、
彼女の寝顔に牛乳臭い息を吹きかけたあげく、これを食らって居間の畳の上を三回転
ほど転がり襖に激突した男がいた、という伝説が、まあ、残っていたりする。

 いくら結婚を前提に付き合っているとはいえ、二人はまだ高校生の身である。
そんな二人が共に朝を迎えるのは一般論でいえば問題なのだが、大河の母親は大河が
高須家に泊まる事を許していた。二人の母親達は竜児と大河が目の届くところで
清く正しくセックスをしてくれた方がよっぽど安心で安全と考えたのだ。二人は
月に二、三回はこんなふうに一夜を共にする。それが、もう数ヶ月も続いていた。

 竜児は必殺のアッパーカットを放ったままの格好で寝ている大河の左手首を握り、
もう一度、彼女の耳元に顔を寄せた。
「大河、・・・大河」
 ゆるゆると大河の瞼が開いていく。
「あ、ぅん、りゅーじ」
 大河の意識が少しはっきりしてきたのを確認して、竜児は彼女の左手を彼女の胸元に
おいた。
「おはよう。大河」
「うっ、またやっちゃった?」
「ちゃんとよけたよ。遺憾なことにはなってねぇ。気にすんな」
 無論、遺憾な事になったこともあったりする。
 竜児は腕をついて上体を起こした。
「はぁ、よかった・・・ねぇ、りゅーじ」
 大河は再び瞼を閉じた。
「ん? 寝るなよ」
「いぢわる」
 竜児の口元が緩んだ。その表情は、今まさにどつき合いを始めようとしている
ちょっとワイルドなYAHさんにしか見えないのだが、実際は彼女のしおらしさにニヤけて
いるだけだったりする。
 竜児は身体の位置を少しずらして、腕で身体を支えるようにして大河に近づいていく。
わずかに開いて待ち構えている大河の唇に、同じように少しだけ開いた竜児の唇が触れた。
弛緩した軟らかい部分をやさしい圧力で密着させて湿っている部分まで触れ合わせるような、
互いの呼吸を混ぜ合わせるような、そんなキスを二人は楽しんだ。大河は二度、三度と
ついばむ様に竜児の唇を食み、竜児も大河の軟らかい感触を楽しんだ。竜児が顔を
上げて唇が離れると、大河の口から甘い吐息がもれた。

「ね、もう、いっかい」
 消えそうな甘い囁きに応えるように竜児の唇が大河の唇を塞いだ。長く、味わう
ように唇で触れ合う。竜児は右手を大河の頬に添えて、中指で耳朶を、小指でうなじを
くすぐるように撫でた。大河の小さな身体が微かによじれて、ふさがれたままの
唇から熱い息が漏れだした。竜児がゆっくりと頭を上げると二人の唇をつなぐ細い糸が
かすかに光ってすぐ消えた。

「おしまい?」
 大河は恨めしげな潤んだ瞳で竜児を見上げた。

「お、おぅ。いいかげんにしとかないと、その、やりたくなっちまう」
「・・・す、する?」
「ば〜か」
 竜児はそう言いながら大河の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「生理中だろうが。大体、朝っぱらからするかよ」
 それは大河にとってはちょっと遺憾な事態だった。
 昨日、予定より数日早く生理が始まってしまい、結局、昨晩は一年前の二人の
日常を再現したみたいな過ごし方になってしまったのだ。三年になって別クラスに
なった二人にはいくらでも話すネタがあった。春田は相変わらずアホなのか?とか
北村の脱ぎグセが悪化したとか、そんな友人達の近況などを交換しているうちに
夜は更た。二人は一つの寝床に仲良く収まって軽くイチャついてから寝た(睡眠
という意味で)。そんなわけで、二週間ぶりのお泊まりは二人にとって消化不良
気味に朝を迎えた。

 大河は上目遣いに竜児の様子を伺いながら、髪の毛を顔の前で指に巻き付ける
みたいにして弄っていた。
「ごめんね」
「なんで謝るんだよ。地獄アッパーは避けたぞ」
「ばか」
 大河の目が一瞬だけジトっと竜児を睨らみ、すぐに竜児から目を逸らした。そして、
口を尖らせてイジイジとした口調で話す。
「せっかくのお泊りなのに、その、させてあげられなくて、さ・・・」
「どっちがバカだよ。んな事、気にすんな」
 言いながら竜児も大河の髪の毛を弄る。
「・・・うん。ありがとね」
 大河は力なく微笑んだ。

「痛いんだろ」
「・・・うん」
 痛みに共感するのは難しい。
 だから、竜児は大河が痛さや辛さを隠さないで訴えてくれることが嬉しかった。

「そか、もう少し寝てろ。俺は飯の仕度を・・・」
 起き上がろうとする竜児のパジャマの胸元に大河の左手がしがみついた。
「りゅーじ。もうちょっと、ね。昨夜みたいに、して」
 大河に甘えた声で囁かれると、どうしたって竜児は逆らえない。
「大河・・」

 竜児はもそもそと元の体勢に戻って、左腕で頬杖をつくようにして大河を見た。
それから右の掌を大河の下腹にやさしくあてがった。竜児の掌から大河に温もりが
伝わっていく。ただ、手を当てるだけ。だから手当て。一番、原始的な治療法。
効くのか効かないのかわからないけれど、でも、嬉しい。優しさが伝わるから。

「あったかいよ・・・りゅーじ」
 竜児の大きな手で暖められて、大河の胸に甘い痛みが広がった。
 大河も竜児に抱かれたかったから、昨日の朝、アレが始まってしまった時はかなり
落ち込んだ。それで竜児に八つ当たりして困らせた。でも、それすらも受け止めて
くれる竜児の優しさに愛されている事を実感して、彼の事が、竜児の事が愛しくて
たまらなくなった。だから大河は、竜児の寝床を血で汚してしまってでも昨夜は
竜児に抱かれたかった。

「りゅーじ・・・きすして」大河は瞼を閉じた。
 竜児はバランスを崩さないように、右手に体重がかからないように慎重に、大河の
口元に自分の顔を近づけていった。ちょっと湿った音がして、唇がふれあった。互いの
唇を食んだり、竜児が引くと大河が少し顎を上げて追いかけたり、二人は戯れるみたいな
キスをした。竜児は一度離れてから、今度はかるく触れる様なキスを何度も繰り返した。
唇が離れるたびに吐息が混じり合った。竜児が頭を上げて目を開けると、大河の顔は
すっかり上気していて、瞳は溶けだしそうに潤んでいた。

「りゅーじ・・・したく・・なっちゃった」
「いや、まずいだろ」
 生理中にしちゃいけません、と泰子から言い聞かされている。その理由も知って
いる。そういうところは堅すぎるぐらいに堅いのが竜児である。勢いで駆け落ちする
ことはあっても、勢いでやっちゃう事は無い。
「・・・うん」
 大河の声は小さくて切なげだった。そういう風にされると竜児も切ない。
「もう少しだけ、するか?」
 大河はコクリと頷いて目をつぶった。竜児は大河のネグリジェのボタンを外して
いく。一つボタンを外すたび大河の白い胸元がさらけ出されていく。ボタンが外される
度に大河の唇から小さな声と息が漏れる。大河の香り、息づかい、声、コットンの
ラッピングから覗く白い肌、それらが竜児の理性を溶かそうとする。
 それでも竜児は踏みとどまった。竜児と大河の気持ちがそれを望んだとしても、
今の大河の身体は竜児を受け入れるべき状態ではない。そんな彼女を自分の欲望の
はけ口になんてできる筈が無い。
「下着・・・みないで」大河が泣きそうな声で言った。
「わかってるよ」
 竜児は四つ目のボタンを外し、ネグリジェを肩の方から大きくはだけさせた。
大河の細く華奢な肩から胸、くびれたウエストまでが露になった。

「きれいだ」
 思った事がそのまま言葉になって竜児の口から漏れた。
 きれいな白い肌、薄桃色に染まる首筋と頬、首から肩、肩から脇、胸から腰のラインの
美しさ、何度見ても見る度に竜児はそう思った。あまりに美しくて抱いている事に罪悪感
みたいなものを感じる程だった。

「やっぱ、はずかしい」
「んなことねぇ。すげぇ、きれいだ」
 確かに慎ましい大きさだけれど大河の乳房はしっかりとふくらんでいて、決して
哀れ乳などでは無かった。竜児は大河の胸に顔を埋めるようにして、鎖骨の付け根に
キスをした。竜児は両腕で身体を支えて体重が大河にかからないようにしながら
彼女に覆いかぶさった。
 竜児の唇が大河の身体を啄んでいく。首の付け根からみぞおちへ降りていき、左の
胸のふくらみへ。ふわふわとした柔らかい肉を食むように、時に湿った音を立てながら
キスが繰り返されて、大河の身体を竜児の唾と大河の汗が濡らしていく。
 大河は竜児の髪の毛を鷲掴みにして、荒い呼吸を繰り返している。時に、それが
乱れて言葉ではない声が漏れる。その音が竜児を急き立てる。桃色の小さな突起を
唇で、舌で、歯で弄ぶ。

「あたし、・・・たべられ・・ちゃってる」
 熱にうなされているように呟いた。竜児は乳房の下側から脇に向かって彼女の
柔らかいに肉を食べていくように唇を這わせていく。左のふくらみを食べ尽くすと
右側も同じように食べていく。竜児が乳房を食むたびに熟れた果物を食べる様な
音がした。竜児はこぼれた果肉を舐めとるように大河の肌に舌を這わせる。汗で
しっとりと濡れた肌に竜児の唇が触れるたびに、湿った音がして、その音が大河の
理性を舐り麻痺させていく。
 竜児は一度、身体を起こしてパジャマの上だけ脱いだ。もう一度、大河に覆い
かぶさり汗で湿った彼女の胸と自分の胸を合わせた。肌と肌が吸い合うように貼り
付いて、互いの鼓動が同期していくようだった。
 熱い息を漏らす大河の唇を竜児の唇が塞いだ。大河の舌が誘うように竜児の舌先を
突つく。それに応えて竜児は大河の中に入っていく。混ざり合う三十七度の体液の
中でお互いを味わうように、口の中で抱き合うように舌を絡め合う。大河の口元に
溢れた涎が流れ出て頬を濡らした。それが頬を伝う感触に大河の身体は短く震えた。
 竜児は一度頭を持ち上げて、大河の右の首筋にキスをした。唇を這わせていくと
大河の唇から苦しげな声が漏れ始める。耳もとへと唇が近づくと大河の身体は
ひくひくと震えだした。白いネグリジェに包まれている細い足が小さく暴れ、強ばり、
膝と膝を擦り合わせる様に切なそうに踊る。

「だめ、いっちゃう」荒い息に混じって弱々しい声が漏れだした。
「いいぞ」竜児は大河の本当に耳元で囁いた。
 大河の両腕が竜児をきつく抱きしめた。竜児は頭を上げて大河の左の首筋にキスを
していく。うなじに向かって湿った音を立てながら大河を食べていく。その度に大河の
身体はもだえ、震える。

「すきだ」竜児は大河の耳元で呟いた。
「りゅー・・じ」
 竜児は右腕で身体を支えたまま、左腕を大河の背中にまわして強く抱きしめた。
そのまま大河の左の耳朶を甘噛みした。大河は一瞬喘いで切ない声を漏らした。
顎を上げ、小さく反り返り、小さな身体が痙攣したように何度も撥ねた。まるで
そこが本当に竜児に貫かれていたかのように大河の腰がガクガクと暴れ、竜児の
背中に彼女の爪が食いこんでいく。二度、三度、四度と灼ける様な刺激が波のように
押し寄せて、その度に華奢な身体は竜児に抱きすくめられたまま、うなされるままに
暴れ続けた。大河の身体から熱が引いていくまでの間、竜児は大河を抱いていた。

***

「竜児。あんた、エロいわ。エロすぎよ!」
 落ち着きを取り戻した大河は竜児の方に背中を向けて寝転がったままぶつぶつと
文句を言っていた。
「もうすこし〜で良かったのよ。それをあんなに・・その・・はげしく・・」
「あ〜、悪かった悪かった」
「・・・べつに悪くないわよ・・・」
「どっちなんだよ?」
「もういいわ。その、まあ、気持ちよかったし・・・」
 大河はころん、と向きを変えて竜児の方を向いた。そんなに転がって大丈夫か?と
竜児は思ったのだが、今は彼女が着用している生理用ショーツ(お色気=ゼロ%)の
防御力を信じるより無い。
「でも、竜児はいいの?」
「お、おぅ、俺も気持ちよかったし、問題無い」
「これ、でっかいままじゃない。説得力ない」
 そう言いながら大河は竜児の股間を指先でくりくりと突ついた。
「突っつくな! 腫れてるだけだ、ほっときゃ治る」
 竜児は起き上がって寝床から出た。
「とにかく、メシだ、メシ。支度をしねぇと」

 竜児が部屋着に着替え終わる頃には腫れ?も引いて、『やりたい気分』もどうにか
収まっていた。まだ燻っている性欲も家事で身体を動かせば鎮火するだろうし、
大河が帰ってからさっきまでの出来事をオカズにしてセルフサービスで適当に処理
しておけば良いのだ。大河の事だ、次の土曜日にリベンジしに来るに決まってる。

「大河。汗かいたろ。先に風呂使うか?」
「いい。ちょっと休憩。ご飯できたら起こして」
「へぃへぃ。寝るなら汗拭いてからだぞ。身体、冷やすんじゃねぇぞ」
「わ、わかってるわよ」
 竜児は彼なりに微笑んでから大河に背中を向けた。それが微笑みだと分かる人間は
相変わらず凄く少ない。勿論、大河はその中の一人だ。

「りゅーじ」
 部屋を出ようとする竜児を大河は呼び止めた。
「どうした? 大河」
 竜児は立ち止まって振り返った。
「・・・すき」
 頬を紅く染めた大河はそれだけ言って毛布に潜り込んだ。

「・・・だから、身体を拭いてから寝ろって・・・だぁーっ、もう・・・」
 外から漏れてくる竜児の声に、毛布の中で大河は悪戯っぽく微笑んだ。
「だから、すき」

(おわり)

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