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26 98VM ◆/8XdRnPcqA sage 2010/03/16(火) 23:12:13 ID:tMBgTPXZ




フィウミチーノを飛び立って11時間と30分。
シベリアの大地はまだ凍てついているのか、雲間から覗く地上は灰色だった。
しかし、日本海が見える頃には、眼下には茶色の大地が広がる。
やがて見えてくるはずの故郷の大地は、季節柄か、厚い雲に覆われていた。
晴れていたなら、きっと萌黄色の山々と、すっかり緑が濃くなった里の様子が見えただろう。
やがて機内アナウンスが流れ、シートベルトのサインが点灯する。
AZ784便が高度を下げ始めた時、予想外に緊張している自分に気付く。
念の為言っておくが…。
別に雲に突入した時に機体が揺れたのが怖かったわけじゃない。
いくら俺でもそこまで小心じゃ無い。
かといって、一人前になるまで、この国の土は踏むまいという意志を曲げるのが残念だったからでもない。

機体にあたる雨は激しく、最近あやふやになってきた季節感を思い出させてくれる。
梅雨時の日本は、たしかこんな空だったはずなのだ。
ところが愚かにも傘を忘れてきた。
今回の帰国は泰子には知らせていない。 もちろん大河にも。
だから、空港で傘を持って待っていてくれる人は居ない。
すこし気鬱になったところで、突然、窓の外が明るくなった。
遠くに灰色にくすんだ街が見える。

それは… およそ3年ぶりの東京だった。




      ローマの平日 sei




空港の到着ロビー。
誰も迎えの居ない帰国。
こころなし、自分の居場所じゃないような気さえする。

飛行機を降りると、ますます緊張してきた。 へんな汗が出ているし、よほどヤバイ顔をしているのか、先ほどから
空港警備員が緊張した表情で行ったり来たり。
俺の周りは空白地帯になっている。

そもそもなぜ、俺が日本に帰ってきたのか?
それは一通の手紙だった。
亜美が長い休暇を終えて日本に帰り、一月ほどたったある日、突然届いた手紙。
内容はいたってシンプル。
『ぜひ一度お会いして話がしたい』
かいつまんで言えばこうだ。
特段、問題の無い内容だ。 別にとんでもない要求って訳でもない。 ローマに来てくれるなら、だが。
しかし、違った。
呼びつけられたのだ。
飛行機代はもちろん持ってくれたが、それにしてもわざわざイタリアから呼びつけるとは不遜極まりない。
…が。
それが川嶋安奈となれば話は別である。 いくら腹立たしくとも、会わない訳にはいかないよな…。
そうだ。 そういう事なんだ。
俺がここまで緊張しているのは、これから亜美のお袋さんと会わなくちゃいけないからなんだ。
そして更に、今から電話をして、次に何処に向かえばいいのか聞かなくちゃなんねーんだよ!
なんで手紙に書かないんだよ… ぜってー意地が悪いだろ…これ。
俺は意を決して、手紙にあった番号を震えながらダイヤルした…。



『はい、川嶋です。』
呼び出しがなるや否や出た。 ええ。びびりましたとも。
「あ、お、た、たっ、たっ」
『高須さんね?』
「…ハイ。 タ、タカスリウジデス」
『ごめんなさいね、どうしても都合がつかなくって、遠くから呼びつけてしまって…。』
いやー、絶対悪いと思ってないですよね? ね? ね?
「イエ、ソンナコトハ…」
『荷物、無くならなかった? 私、一度アリタリアにはやられたのよね。 直通だからって、舐めてたわ。 アリタリアクオリティ。』
あれ? 意外とフランクな感じ? ってか、親しみやすい?
「あ、手荷物のみにしましたので。」
『ああ。 なるほどね。 男の人はいいわよね… 荷物少なくって。』
「ええ、まぁ。」
『でもね、エールフランスも酷いのよ。 東洋人をバカにしてるのよね、きっと。』
「はぁ…」
『やっぱり、ヨーロッパ行くならフィンランド航空がいいわよー。 でも、ローマ直通はないのよね。』
「あの…」
『ん? なーに?』
「いえ、それでお…私はどちらに伺えばいいんでしょうか?」
『あら? 言ってなかったかしら』
やっぱり親子だよなぁ… 絶対確信犯だよな、これ。
『そうねぇ… 高須さんは、日本、久しぶりなのでしょう? そしたら… あそこがいいかしらね。』
「はぁ…」
『ちょっと待ってね。』
「………」
なんだか、別な電話に持ち替えて誰かと話をしているようだ。
少しだけ声が聞こえてくる。
やがて…
『よかった。 とれたわ。 じゃ、よろしくね。』
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
『はい?』
「いや、場所聞いてませんが…」
『あら♪』
絶対からかってるだろ……。
「…どこですか?」
『えーっとね、箱根♪』




箱根の駅に着いたら電話をすることになった。 
先に着いてるはずだから、との事。
どうやら、川嶋安奈は伊豆の別荘に居たらしい。
俺は電車を乗り継いで、箱根に辿り着いたのは午後3時近かった。
箱根湯元駅を出ると…
電話をするまでもねぇ。 ライトブルーメタリックのオープンツーシーターがこちらにケツを向けて停まっていた。
こんな梅雨の時分におもいっきりルーフを開け放って、駅前で目立ちまくっている。
まぁ、確かに緑の匂いが心地よい季節だし、薄日も差してきてはいたが。
そして、普通の車には必ずあるはずの物が無い、独特のリア。
並んだアルファベットは『TESLA』
『ママって、変な所にこだわりあるから、あたしから見たらすっげー無駄遣いばっか。』
亜美がこんな事を言っていたが、その言葉に説得力を与えるには十分すぎる。
ルームミラーで俺を見つけたのか、振り返りもせずに、真上に伸ばした手がひらひらと振られた。

「…始めまして、高須竜児です。」
車の横に行って直立不動の体勢で挨拶する。
彼女は高級そうなサングラスに、セレブ臭バリバリの服、どう見ても7桁ですよねって感じのアクセに身を包み…
…DSi LLで脳を鍛えるトレーニング理系編を楽しんでいらっしゃった。
…わからねぇ…どんな人なのか、いまいち掴めねぇ。 
亜美がそのまま母親になったと思えばいいのか? 

サングラスを外して微笑む、とても4○歳には見えない綺麗で若々しい顔立ちは、確かに亜美とよく似ている。
「始めまして、亜美の母親の安奈です。 こんな所までお呼びたてしちゃってごめんなさいね。 都内じゃ目立っちゃうから。」
ここは笑うところなのか? つっこむべき所なのか? 
すでに車からしてめちゃくちゃ目立ってるんだが…
……いや、ここはあくまで俺のペースで常識的にいこう。
「いえ、私もお話がしたいと思っていました。 お母さんのお仕事を考えれば、私が帰ってくるほうが現実的です。」
普段使い慣れない言葉遣いだが、練習した甲斐があって、スムーズに喋れた。
「うふふふ。 そう言っていただけると助かるわ。 とりあえず、お乗りになって。」
「は、はい。」
かなり緊張して右側の座席に乗り込む。
「この車ね、英国の友人を経由して注文したのだけれど、3年も待たされたのよ。 しかも間に人をはさんだから中古扱いだし。」
「はぁ。」
想像よりもハデなモーター音を上げて走り出す。 さすが、加速感は並みじゃない。
「この車、とってもエコなのよ♪」
そう言って嬉しそうに笑う彼女を見て、可愛いと思ってしまったのは、既に俺が川嶋安奈の術中に嵌っているからなのか…
いやいや、呑まれちゃいけない。
あの亜美をして、『意地悪な魔法使い』と言わしめる川嶋安奈だ。
どんなに警戒しても、警戒しすぎという事は無い!

「高須さんは、車はお好き?」
「私はオープンカー好きなのよね。 ほら、なんだか風になったような気がしない?」
「は、はぁ…」
「私、力も体力もないから、オートバイの免許は諦めたのよ。」
「でも、オープンカーだと周囲の空気が感じられるでしょ? ヘルメットもしなくて良いし。 バイクよりかえっていいかもしれないわ。
…ねぇ、そう思わない?」
「は、はぁ…そ、そうかもしれないですね。」
…というか、とりあえず、なるべく前を見て走ってほしいなー。

だが、その願いは叶えられる事なく。
俺はそれから暫くの間、箱根のワインディングをキュンキュン駆け登る車の助手席でシェイクされていた。



「早速だけど、高須さん。 亜美と別れて欲しいの。」

和風モダンにしつらえられた高級旅館の一室。
デザイン家具で統一されたリビングの木製チェアーに腰掛けて俺達は向かい合っている。
俺に先に座るように促し、俺にコーヒーと、自身に紅茶を淹れて腰掛けた彼女の第一声がそれだった。
予想通りといえば予想通り。
彼女は穏やかな笑顔を浮かべている。 とても台詞には似つかわしくない、穏やかな、笑顔。

―― テラスの向こうには鮮やかな緑につつまれた箱根の山々 ――
―― 部屋つきの露天風呂に注がれるお湯の音と、ホトトギスの鳴き声 ――

胸の鼓動を落ち着ける為の短い沈黙の後、微かに息を吸い込んで俺は答える。

「それはできません。」

ともすれば頷いてしまいそうになる笑顔の重圧の中、俺は力強く、明瞭にそう答えた。
何故なら、ある一つの予測があったからだ。

日本に帰ってくる飛行機の中、考える時間は十分にあった。
別れさせるだけなら、俺をわざわざ呼びつける必要なんてない。
大体、なんの話なのかも告げずに、イタリアから会いに来いとは、さすがに非常識な話だし、それが判らない人とも思えない。
それでも俺を呼びつけなければならないとしたら… いや、実際、俺は『会いに来た』…
どうして、俺は亜美のお袋さんに会いたかったのか? 
……おそらく、その答えが、彼女の思惑でもあるに違いない。 つまり、『別れろ』というのは話の入り口に過ぎない。

俺の答えを聞いても、彼女の表情は全く変わらない。 まるで感情の読めない、穏やかな笑顔。
だが、彼女の第一声が『別れてくれ』だったことで、俺の予測は確信に変わった。

「絶対に、できません。」
「…ふぅ。 いいこと?高須さん。 これは貴方にとっても悪い話じゃないのよ?」
「貴方のこと、色々調べさせてもらったわ。 失礼だけど、正直、亜美に相応しい家庭環境にあったとは思えない。 判るかしら?
世の中には分相応、っていう言葉があるの。 御伽噺ならいざ知らず、現実には階級差っていうものは実際にあってね、それを
乗り越えるのは… それはもう、大変なことなのよ。」
「………」
急に冷徹さを滲ませる視線に変わる。 表情一つで相手を飲み込んでしまう。 これが女優の力なのか。
「お母様、泰子さんだったかしら。 随分と苦労なさったのね。 そうね…貴方が亜美を諦めてくれれば、あるいは貴方のお母様も
もっと楽になれるかもしれなくてよ?」
「………」
ほんの少しだけ、彼女の眉が動いた。
「それと、貴方のお父様… ああ、お父様の事はすでに私の方が詳しいかもしれないわね…。 でも、判るでしょう? 血は争え
ないって言葉もあるってことは。」
「………」
今度は明らかに、眉が動いた。
「なにも、タダで別れろと言うつもりはないわ。 それなりのものは用意させてもらうし、…そうね、なんならキャッシュでもいいわよ?」

それから、川嶋安奈の口撃は延々と続いた。 辛辣で、俺を馬鹿にしきったような台詞の数々。
亜美を見慣れていたお陰で助かった。
普通なら怒ってしまうであろう言葉でも、彼女の心の裡を想像すれば、むしろ可哀想にすら思えてきた。
そのせいだろうか?
どうやら俺は微笑んでいたらしい。
「怒らせようとしてもムダですよ。 亜美は母親似なんじゃないかって思ってたんですが…… どうやら当たっていたようです。」

…そんな俺の台詞を耳にすると、彼女はなんとも微妙な表情を浮かべて、木製チェアーに沈んだ。



「はぁ…… 私もヤキがまわったかしら? 普通はこんなに簡単に見抜かれないんだけれど……。」
「いやぁ… 亜美…さんに鍛えられていますから。」
「…似てるかしら?」
「似てる…と、思いますよ。 わざわざ悪役をかってでるのが好きなところが特に。」

一旦目を伏せた後、外の景色を眺めながら彼女が話し出す。
「……亜美ね、気がついていると思うけれど、すこしばかりカウンセリングが必要な状態なのよ……。」
「……はい。」
「…どうして……こんなことになってしまったのかしら……ね。」
死んだ紅茶の入ったカップを口元まで運んで……口を付けずにまたテーブルに戻す。
なんとなく解る。 この人もまた、傷ついているのだろう。
きっと亜美が心の病になるほど追い詰められてしまったのは自分に責任があると思っているのだ。
「あの子のためと思って、いろいろ手を尽くしてきたけれど…」
「………」
「悔しいけれど、母親の私に出来なかったことが、貴方には出来てしまうのね。」
「それは…判りません。 ただ、亜美さんと一緒に歩いていくのは、並大抵の覚悟じゃ出来ないって事は判っているつもりです。」
「そう……。 さっきはごめんなさいね。 酷いこと沢山言ってしまったわ。 当初予定の3割増しくらい。」
「いえ、気にしてません。」
「ふふふ。 有難う。 大人も子供も、ここの中身はあんまり変わらないのよね… 可愛い一人娘を盗られちゃうと思うと頭の中
ぐっちゃぐっちゃで。 素人にもすぐに見抜かれちゃう演技しか出来ないなんて…だめねぇ……。」
自分の胸を指し示しながら、すこし情けない笑顔で彼女は言う。
そして、そんな子供っぽい表情は一瞬の後には消える。
亜美同様、本当にころころと表情を変えるのはわざとなのか、それとも天然なんだろうか?
そして、そんな余計なことを考えると、すかさず不意打ちしてくるのも、亜美同様だ。
「結婚、するつもりなのかしら?」
「うぉ、お、俺は、そうしたいと思って…います。」
あ、やべぇ、少し地がでちまった。
「愛する事と、結婚することは違うわよ?」
「結婚ってね、ミニマムの社会を作ることなの。 愛が無くてもその社会は破綻しないわ。 けれどね、計画性が無いと簡単に破綻
したりするの。 どんなに愛し合っていてもね。」
「家族構成、収入、支出、将来の展望。 若い貴方たちにこんな事を言うのは酷だけど、亜美はもう、事実として『普通』じゃないから
……難しいわよ。」
「だからこそ! だからこそ、俺は今日ここに来たんです。 その覚悟を決めるために。」
「そして、恥ずかしい話ですが、お母さんや、お父さんの力も貸して欲しいんです! …俺は、私はまだまだ半人前で、お母さん
が言われる通り、将来にはなんの保証も無く、社会的ステータスでは到底亜美さんには釣りあいません。 でも、一緒に生きて
いきたい。 亜美さんが夢を叶える姿を見守りたい。 そして、私が夢を叶える姿をあいつ…亜美さんにも見せてやりたい…。」
「それが正しいことなのか、亜美さんにとっての幸せと言えるのか、それはまだ判りません。 単なる私のエゴに過ぎないのかも
しれません。 けれど、それでも私はその先の未来を信じたいんです。」
「もしも、亜美さんが応えてくれるなら、たとえどんな困難が待ち受けていても、私はそれを乗り越えて行きたい。 自分達だけの力で、
なんて事は言いません。 その時は、力を貸して…欲しいんです。 私は今まで多くの人に助けられて生きてきた。 私の知人には
実の親からすら力を借りることが出来ずに、苦しんでいた人がいます。 だから、判るんです。 一人じゃ、自分達だけじゃ駄目だって
ことが…。」
「これはまた……あの子も難儀な男に捕まっちゃったみたいね。 ふふふふふ。」
つい熱くなってしまった俺をさえぎるように安奈さんが、明るい声をあげた。
「あ、そうそう。 もう一つ結婚生活で大事なのはね、『我慢』よ。 どんなに相手の事理解してたつもりでも、必ず合わない所って
出てくるから。 両手の指では足りないくらいにね。」
「そこは… 結構自信があるっていうか… あいつと、亜美さんと一緒にいると、合う合わない以前に『我慢』は必須ですから…。」
「ぷっ。 確かに高須さんの言う通りかも。 あの子、根っからのお姫様体質ですものね。」
そうなった原因の一端は自分自身にあるっていうのは…まぁ、自覚しててなお、こう言うんだろうけど…
「…それと、言葉遣い、あんまり無理しなくっていいわよ?」
それからは急に機嫌がよくなった安奈さんに、俺はからかわれっぱなしだった。




結局、川嶋安奈は、旅館で俺と一緒に夕食を楽しんでから、帰っていった。
「今日はこんな立派な宿を取っていただいてありがとうございます。」
「いーえ、こちらこそ楽しかったわ。」
「近いうち…とはいかないかもしれませんが、いずれまた改めてご挨拶に伺いたいと思います。」
「もっとも、亜美さんがOKしてくれればですが…。」
「まぁ、あの子、変に頑固で意地っ張りだからねぇ… タイミングは計ったほうがいいと思うわ。」
結局、安奈さんは、俺にどれほどの覚悟があるのか問い質したかったのだろう。
どうやら、俺はそのテストに合格できたようだった。
「あ、そうそう。夫は割合紳士的だから、取り乱したりはしなけれど、とりあえず、一発殴られると思うわよ。」
「え?」
「さ○まさしのファンなのよね……。 小芝居うっても笑わないで殴られてやってね。 なんか楽しみにしてるようだから。」


* * * * *


それから約2ヵ月後。
俺はフィウミチーノ空港の到着ロビーに来ていた。
もうすぐ、4ヶ月ぶりであいつに合える。

思えば、この街で再会してからおおよそ一年が経とうとしていた。
亜美の乗った便の到着を掲示板が告げてまもなく、綺麗な黒髪が人ごみの中に翻る。
両サイドに黒のリボンで結わえられた髪が、亜美をいつもより幼く見せた。

「りゅーじ♪」
手荷物制限ぎりぎりの大きさのキャリーバッグが先ず俺に向かって突進してきて…
「うがっ」
脛に痛打を与える。
一瞬遅れてのフライングボディーアタックは、キャリーバッグより大質量だったが、十分なクッションが二個も備わっていた。
潤んだチワワ眼。 身長差はあまりないので顔がすぐ近い。
同時に、むせ返るような『亜美の匂い』が鼻腔を刺激する。
「りゅーじ♪」
もう一度名前を呼ばれる。
何かを期待するような表情に、俺は必死で正解を探った。
「えっと、おぅ……今日の髪型、可愛いな。 ツ、ツインテールっていうのか?」
一瞬喜色を現すが、すぐにむくれ顔になる。
「ち、が、う。 これはツーサイドアップっていうの。 ほらっ!」
そう言って回れ右をする。 たしかに後ろ髪は下ろしたままだ。
だが、まぁ、不正解だったが、正解だったらしい。
もう一度向き直った亜美の表情は… なんともいえない優しげな笑顔だった。
「…会いたかった…。」
時々電話では話していたし、最近俺達はスカイプを導入し、お互い離れていても顔を見て話すことは出来ていた。
けれどやっぱり…
「おう。 俺もだ…。」

すると亜美は腰の後に手を組んで、ちょっとだけ前かがみになり、顎を上げて…
おもむろに眼を閉じる。

ここが人が溢れかえる空港のロビーであっても、そんな天使のキスのポーズに俺があがなえる筈も無く。
気恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じながら
……俺はそっと、俺だけの天使に…口付けた。

それは……最高に幸せな、そんなローマの点描。


                                                                    おわり。



32 98VM  ◆/8XdRnPcqA sage 2010/03/16(火) 23:18:11 ID:tMBgTPXZ

お粗末さまでした。
前回、本作の作風はライトノベルにはちょっと合わないんじゃないか、という趣旨の意見を
いただきました。 実は、こういう具体的な意見がいただけるととても嬉しかったりします。
意見を下さった方は、重箱の隅とおっしゃっていましたが、実は核心と思っておりますw
いつもけっこう気にしているんですよね〜 「あー、なんかカラーが違うなぁ」と。
でもまぁ、ニッチ作家を自覚しておりまして、こういう芸風もいいのかな、と思っております
ので、本作は大体こんな感じでいこうかと。 コメント有難うございました。
では、また ノシ


25 98VM ◆/8XdRnPcqA sage 2010/03/16(火) 23:11:20 ID:tMBgTPXZ
こんばんは、こんにちは。 98VMです。

後半戦開始です。後半戦では前半戦のテンプレ(3レス、「どこ?」「○○○だ」、結びの言葉)
のうち、レス数については解除します。 ストーリー重視ということで。
今回は全体のストーリーとしては必要な話と思っていますが、キャッキャウフフが見れればいい!!
という益荒男な方は「* * * * *」まで読み飛ばしても問題ありませんw

前提: とらドラ!P 亜美ルート90%エンド、ローマの祝日シリーズ
題名: ローマの平日6
エロ: なし
登場人物: 竜児、亜美、あみママ
ジャンル: 覚悟完了!
分量: 6レス

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