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350 sage 2010/09/01(水) 02:04:35 ID:wohRvHsG



事件と生理は忘れた頃訪れる。



『あたしのこと………どうでもいいなら誘わないでよ!!』
失言だった。
(あれじゃ告白してるも同然じゃん… どう聞いても特別扱いしてくれって言ってるようにしか聞こえないって…)

見栄っ張りな亜美には、同級生に恋の相談なんて出来る筈がない。
そうなると、友達の少ない亜美に残された選択肢はモデル仲間しか居ないわけだが…
これは同級生以上に論外な選択肢だった。
その結果、誰にも相談できないまま、竜児の誘いを待って一ヶ月以上が経過して…
今はギンギンに冷房が効いたスタジオで秋物の撮りの最中。
学校は既に夏休みに入っていて、受験対策で補講を受ける同級生達とは異なり、亜美は連日の仕事に追われていた。
あれ以来、結局竜児からのお誘いは無く、かといってプライドの高い亜美は自分から言い出すことも出来ず、悶々と日々を
過ごしている。

「どったの? なーんか暗いぞー?」
ぽんぽんと頭を撫でられ、はっと我に返る。
最近、ローティーン向けの雑誌から卒業しつつある亜美は、彼女と一緒の仕事が増えていた。
「まぁ、亜美の『最強』は憂い顔だとは思うけどさー。 それって私と被るんだよねー。」
「だからあんたにゃいつもキラキラしててもらわないと…」
(…被ってねーじゃん。 あんたの『最強』は、その鋭い目つきで睨みつける挑発顔でしょうが……)
「べつに… 暗くなんかなってないです。」
「んふふふふ。 そう? ま、いいけどね。」
「………」
(なによ、その余裕たっぷりのにやけ顔は… むかつくー。)
「ちゃんと… ちゃんとやるべき事をやってればさ。 必ずそれなりの結果がついてくるもんだよ。」
「え?」
「望んだ通りじゃなくっても、納得はできるから。 だから後悔するより、想いのままに行動してみなよ。格好悪くてもいいから。」
「怖くなるのってさ、それってまだ勝負がついてないって思えるからなんだよ。 だ、か、ら、……勇気だして頑張れ!」
そんな勝手なことを言って、ポンと背中を叩く2つ年上の先輩モデル。
(相変わらず余計なお世話なんだけど… でも無視できないっていうか、役にはたってるのよね…)
そう思いつつも、ジト目を送る亜美。
(でも、余計なお世話には違いないから、お礼は言わない!)
そんな意地っ張りな亜美を見ると、彼女はいつものようにニカッと相好を崩すのだ。
その顔がまた魅力的で、余計に腹立たしい。
「さーて、じゃ、休憩終了。 さっさと撮影終わって、私はデート、亜美はは独りエッチね。」
「ちょっ! んなことしねーっつの!!」
つい激高して地が出てしまう亜美だったが、相手はカラカラと笑うだけで、全然動じない。
(あう、つい地が…… でも、ま、いっか。 もうばれてるっぽいし…)
猫かぶりがばれたところで、彼女なら特に問題は無いだろうと思いなおす。
そんな風に思えるのは、この勝手に恋愛相談に乗ってくる先輩モデルのことを気に入っているからかもしれない。
「撮影再開しまーす。」「「はーい。」」
実際、彼女のお陰でさっきまで竜児の事で沈んでいた気持ちを切り替えて撮影に戻ることが出来た。



そして、次々とポーズを決めながら頭の中で考えている事は…
(確かに独りエッチはするけど… どうしようかな… なんかしゃくだから今日は止めておこうかな…)
なんて事だったりするのは、流石のエロチワワ。
実のところ、液多めの亜美はお風呂でイたしているのだが、最近はお風呂とセットメニューになりつつあった。
(さすがに毎日ってのはヤりすぎだよね…… ヤりすぎると馬鹿になるって言うし…)
迷信です。
(でも、毎日シちゃうのは高須くんが悪いんだ… あれっきり全然誘ってくれねーし……)
哀れ、高須竜児。 なんか、すごい事で悪者にされてます。
(ああ… 高須くんにぎゅっとされたいなぁ… いっそのこと食事なんかじゃなくって…)
(胸さわられたり、あんなこととか、こんなこととか… あまつさえ、あーんな事とかっ! 更には勢いあまって、し、縛)
「いいねーー! 亜美ちゃん、今日は凄いイイよー。 色っぽくて全然高校生になんか見えないなー。 もう、こっち(OL向け)
主力でいいんじゃない?」
「へ? あ…、ハイ。 ありがとうございまーーす♪」
危うく問題発言(妄想)が出るところであったが…
そんなこんなでこの日の撮影も、やがて何事も無く終了へ向かうのだった。

******

やがて撮影を終えて帰ってきた亜美だったが、大橋駅におりると、微かに遠雷が響いてきた。
空を見上げると、西の空は晴れてオレンジに染まりつつあったが、ちょうどこのあたりの上空だけ暗い雲が覆っている。
(なんか夕立がきそう……本屋に寄るのはやめて、コンビニで飲み物でも買って帰ろ。)
そうして亜美はサングラスをチョイと直すと、やや俯き加減で歩き出す。
撮影中は少しだけ立ち直ったが、やっぱり竜児に誘われないのは寂しかった。
ほとんど毎日のように自販機スペースで出会うのに、誘ってくれない。
ましてや、夏休みに入って会う機会が少なくなれば絶望的だろう。
先輩モデルに言われたように、自分から行動するにしても、具体的に何をしたらいいのか、なかなか難しい選択だ。
そんな訳で亜美は、またしても悶々と考え事をしながらとりあえずコンビニへ向かったのだった。



ちょうどその頃。
高須竜児は彼にしては珍しいことに、亜美の行きつけのコンビニの店内をウロウロしていた。

彼は酷く真剣に迷っていた。
コンビニの雑誌スペースに置いてある、女性向けファッション誌をちらちら見ながら、酷く真剣に迷っていた。
その雑誌は、先日撮影を見せてもらった亜美の水着特集が載っている雑誌で、表紙は清楚なノースリーブワンピ姿の亜美。
ぶっちゃけ、カマトト仮面装着の亜美はべらぼうに可愛い。
そして、その表紙をめくれば、あの撮影の時の水着姿の亜美が載っている筈なのだ。
(正直、見たい! だが、女性誌を手にするのはかなり恥ずかしいぞ…。)
そんなわけで、竜児は眉間にシワを寄せながら、あたりの視線を小心に窺いつつ、行ったり来たりしているというわけだ。
だが。
そんな姿を第三者が見れば…
眉間にシワを寄せためちゃくちゃ目つきの悪い男が、あたりにガン飛ばしながら、時折舌なめずりをしているのである。
レジの女子大生のバイトちゃんなんか失禁寸前、客だって寄り付きません。

そんな事はつゆ知らず、竜児は一心発起。
(い、今がチャンスか? 客が切れたぞ!)
ささっとその雑誌を手にとって、そわそわしながら中身をチェック。
(おおおおぅう)
そこにはセクシーな水着姿の亜美が大量に…
水着を見せるのが目的なので、グラビアのような胸アップとかはなく、自然に体全体を前後左右から捉えた写真が多い。
だが、亜美のようなパーフェクトボディの場合、その方が体のラインがよくわかってエロかった。
水着もそれに拍車をかけるように体にぴったりとフィットするタイプのものばかり。
(うお、こ、これは… このあたりやこのへんの膨らみが……なんともエロイ…エロすぎる!)
もちろん、やりたい盛りの高校男子がそんな雑誌を冷静に見れるわけも無く、もはや恥ずかしさより、欲望が優先。
さくっと買い物籠に投入、目を血走らせてレジに向かった。
(な、なんだ、このお姉さん、なにぐずぐずやってるんだ? 早くレジを打ってくれーーー! 他の客に見られたら恥ずかしい!)
なんて思っているが、それは無理ってもんです。
血走った目で動きを追われた上に、イライラした様子、レジのバイトちゃん、マジびびりまくって手が思うように動きません。
ようやくレジ打ちが終わって、電子マネーでご決済。
『ピヨョョ』
ほっとした竜児は、マイバックに雑誌とダミーで購入した生活小物を叩き込んで、足早に出入り口に向かう。
そして…
恥ずかしさからか、あまり顔を見られたくなくて下を向いていたのが災いした。
扉を引こうとしたら、丁度同じタイミングでやっぱりぼけっとして扉を押し開け店内に入ろうとした女が居た。

『ガツン!!』
「おがっ!!!!」
奇妙な悲鳴と供に尻餅をつく竜児。 手にしていたマイバックから中身がはみ出る。
「きゃっ」
「あっ! す、すみません!! 大丈夫です…か… って、高須くん!?」
「お、おぅ… か、川嶋!!」
そう言うと、慌ててバックの中身を確認する竜児。 しかし、その時亜美の注意もその中身に注がれてしまった。
「…あ」
「だ、大丈夫だ、気にすんな、じゃな!」
あからさまに慌ててその場から逃げようとする竜児は、自分が鼻血を吹きだしていることに気がついて居ない様子。
一方、店員はこれから凶行が行われるであろうと妄想してか、腰を抜かした模様。
そして亜美は慌てて竜児の後を追う。



コンビニから出ようとした竜児はあっという間に扉の所で捕縛された。
亜美はそのまま一緒に店の外に出る。
「ほらっ、鼻血がでてるよ!」
そして竜児を引っ張って入り口からよけると、その鼻にハンカチを押し付けた。
「なに逃げてんだっつーの!バカッ!!  あっ、額も…」
ガラス扉の角でもあたったのか、よく見ると額もすこし切れている。
「ごめん、ちょっと自分で持ってて。」
「お、おう…」
(こ、このハンカチ… ブランドものじゃねーか? …エルメス… おいおい、2万以上するだろ、これ!)
「ん…かわしま、これはんかち…」
「ほらっ、ちゃんと押さえてなさいって、もう…… あれ? ない… ない…」
「あんだ?」
「絆創膏。 いつも持ってるのに… なんでこういう時無いのよ…」
「っていうか、はんかちならおれのを」
「はぁ? なんでわざわざ2枚汚す必要あんのよ? いいからあんたは鼻おさえてな。 あたし、絆創膏買って来る。」
「いや、ちょっとまて」
「いい? 逃げないでよ。 逃げたら今度会った時ぶっ飛ばす。」
竜児の話なんか全然聞かずにコンビニ内に戻る亜美。
(や、やべぇ… 雑誌、川嶋に見られたんじゃないか? そしたら… や、やべぇ。 ど、どうする?)
(だが、逃げたら川嶋怒るだろうな… 一応俺の治療をしようとしてくれてるんだし… こ、困ったぞ。これは…)
ここで逃げれないのが高須竜児である。こういうところで変な気遣いをする。
そして、亜美はすぐに戻ってきた。
早速絆創膏を取り出して、竜児の額に貼り付けようとする。
「ごめん。 あたし、ぼうっとして扉ぶつけちゃって… ……動かないで。」
(って、近い、近いデスよ!カワシマサン!)
いつもの制服姿とは異なり、ごく薄着の亜美の胸の先端が竜児の胸に触れた。
顔はもう少しで口付けできそうなくらいの距離。
竜児、大ピンチです。 主に下半身が。
「ホント、ごめん。 さっきも怒鳴ったりして…あたしが悪いのにね…」
「い、いやそんな事は…」
と、その時だった。 先ほどから遠雷が響いていたが、ついに空が泣き出した。 ポツポツと大粒の雨粒が落ち始め
たちまちのうちに本降りになる。
「ちっ… 降ってきちまったか。」
「あたしは傘持ってるよ。 小さいのだけど。」
「しかたねぇ。 ビニール傘を買うか、上がるのを待つか… どうせ夕立だろう。 俺はここで待つとするか…まだ鼻血
も止まらねーし…」
(ど、どうする? ここであっさり独りで帰るの? ううん、そんなんじゃダメ。 ……勇気を出すんだ、あたし!)
「だ、だったらあたしも、つきあおう…かな。」
「いや、さっきの事故はお互い様だろ。 そんなに気にしなくていいぞ。」
「べつに…そういうわけじゃ……」
「そ、そうか…じゃ、………いや、なんでもねぇ。」

夏の夕方らしい強い雨が地面を打ちつける。 西の空は夕日に染まっていて、なにか不思議な光景だった。
そんな景色に見とれるように、二人はそれ以上言葉を続けなかった。



10分程だろうか。
そのまま二人はなにか息苦しいようで心地よいような、不思議な緊張感とリラックスの狭間を過ごした。
「ねぇ。さっきさ、見えちゃったんだけど… あたしが載ってる雑誌、買ってなかった?」
「!!」
不意にそんなことを言い出して、悪戯っぽい笑みを浮かべる亜美。
怒っているわけではないらしく、竜児も少しほっとして白状した。
「あ、ああ。 やっぱ知り合いが載ってるし、その…そう!なにより撮影してるところ見たから興味があったんだ。」
そうは言って見たものの、年頃の男子がそういうものを買う目的というのは大体察しがつく。
「ふーん。 『なに』に使うの?」
「うくっ… な、なにって、なんだよ。」
「んふふふふふ。 なーに焦ってんのー?」
「べ、べつにあせっちゃいねーよ。」
「うふっ…あのさ…亜美ちゃんの水着見て、そういう風に思ってくれるんなら、あたし、ちょっと嬉しいかな…」
「へ?」
「だって、それって高須くんが亜美ちゃんの体に魅力を感じてくれてるってことでしょ?」
「お、おまえ、なんつーことを…」
(せめて体だけでも、好きになってくれるんなら… それでも嬉しいよ……。  …こんなこと絶対言えねーけど。) 
「雨、止まないね。」
「え? あ、ああ。」
「あたしの傘で帰ろうか?」
「はぁ? いきなり話が変わったな…」
「いーじゃん。相合傘。 こーんな超美少女と相合傘なんて、多分竜児の一生で一度きりだと思うよ?」
「なんだよ、それ…」
「ね、どうよ? この亜美ちゃん様と相合傘。 普通ならお金払ってお願いするところ只でいいんだよ?」
「はぁ… しかたねーな…」
といいつつも、ちょっと頬を赤らめる竜児。
「よし、じゃ、先ずあたしの家ね。 そのあとは傘貸してあげる。」
「おう、りょーかい。」


二人が歩き始める頃は少し雨脚が遅くなっていた。
しかし、亜美の折りたたみ傘は小さく、二人で差すには少々小さい。
竜児は亜美が濡れないように傘を傾ける。 結果、亜美の反対側の肩は傘から大きくはみ出す。
もちろん、亜美はすぐにそれに気がついた。
しかし…
(あたしを濡らさないようにしてくれてるんだ… どうしようかな…)
(譲り合いになったら、男の子はカッコつかないよね… ここは何も言わない方がいいかな。)
会話が途切れないよう、下らない話を一生懸命続ける竜児を横目で見ながら、ちょっと幸せな気分の亜美はそんな風に
考える。
そして、確かに竜児に対してそれはいい判断だったようだ。
二人の短い相合傘の道のりが終わる時、亜美を濡らさなかったことに、竜児は大きな達成感を感じていたから。

亜美の家の前で立ち止まる二人。
微かに遠く夕日が残るものの、暗くなったアスファルトの道路に街灯の光が映る。
まだ夜の暗さに目が慣れず、お互いの表情もわかり難い。
「それじゃ、ここで。」
「おう。」
傘を竜児に引渡し、竜児の濡れた肩をじっと見つめる亜美。
「やっぱり高須くん、やさしいね。 ありがとう。」
「なに言ってんだよ…」 竜児は血で汚れたハンカチを見つめる。
「落ちるかどうかわかんねーけど、なるべく綺麗に洗って返す。 ありがとな。」
「どういたしまして♪」
竜児は立ち去ろうとしたが、足が動かず…
「えっと、なんだ… やっぱりお前って… すげー優しいよな。 …嬉しかった。サンキュ。」
「! 本当?」
「…こんなことで嘘ついてどーなるんだよ…」
「うふふふ。 やっと亜美ちゃん様の魅力に気付いちゃった?」
「…おう。 かもな。」
「!! ち、ちょっと何言ってんのよ…ば…か。」
「おいおい、あんまりバカバカ言ってくれるなよ…。」
「だって、あんたがバカなこと言うから…」
「バカな事言ってるつもりはないんだけどな。」
「………」
「………」
「ね、ねぇ。 一つだけ聞いていい?」
「お、おう。 なんだ。」
「ちゃんとあたしの顔見て言って。」
「お、おう。」
「ちゃんと見て。」
「こ、こうか?」

「…うん。 よし!」
「亜美ちゃん、今日も可愛い?」

            〜 亜美ちゃんの平凡な一日 6 〜                            どっとはらい。



356 名無しさん@ピンキー sage 2010/09/01(水) 02:08:40 ID:wohRvHsG
いじょ。
ちょっと長くなってきた。いくない傾向なり。
次回はもっとシンプルにしたいでやんす。

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