web上で拾ったテキストをこそっと見られるようにする俺得Wiki



133 CHU2byo sage 2010/04/12(月) 01:20:07 ID:c8Bd8pq2



例えば防音のような機能など無い普通の部屋なはずなのだが、保健室という空間は妙に落ち着く。
この場所はとても静かで、居心地がよく、嫌なこともやけに和らぐところだ。
考え過ぎのように思えるが高須竜児は保健室をそのように定義している。
だからこそ病気やけが以外の理由で、辛い時、面倒な時、サボりたい時に学生はここに来るのだと彼は思っている。

「先生、あとはよろしくお願いします。」
「はいよ。奈々子ちゃん、ご苦労様。」
そんな保健室の先生が竜児に軽い手当てをしている最中、奈々子はそう言いながら座っていた席を離れ、荷物を手に取った。
さすがにこれ以上授業をすっぽかすわけにはいかないのだろう。
「ごめんね、高須君。先に教室に戻るわ。」
「おう。てか、ごめんは俺のせりふだ。ここまで付き合ってもらってすまねぇ。」
「気にしないで、って言ったでしょ。それじゃ、ね。失礼しました。」
「はい、言ってらっしゃい。」
静かにきちんと扉を閉めていって彼女は保健室をあとにした。竜児はその扉をしばらく見ていた。
「どうした、高須君?ぼーっとしちゃって。」
そんな彼に保健室のおばちゃんが声をかける。
彼女は漫画・アニメによくいるセクシャルな美人先生でなく、
芯がとても強そうでそれなりの皺や白髪を持ち合わせた40代のおばちゃんだ。
生徒とのコミュニケーションをとることが大の得意である。
「あ、いえ別に。」
「ガールフレンドがいなくなって寂しいの?」
しゃべりながら先生は足に包帯を巻いている。お手の物だ。
「ちがいますよ。てか彼女はガールフレンドじゃないっすよ。」
「ああ、なるほどね。今高須君が気になる子ってことかー。でも良かったじゃない。こういう形で接近することができて。」
「それ以上いうと、セクハラですよ先生。」
図星なのだろうか?竜児にはよくわからないがとりあえず話題の芽を摘みたい気持ちを先行させた。
この先生はこういう仕事をしているためコミュニケーション能力が高い。その分こういった余計なことも聞くのも得意なのだ。
「あらあら、これは失敬。でもまあ奈々子ちゃん、すんごく美人だから狙っているとしたらがんばりなさいよ。」
「はいはい。」
「あ、こういうのってセクハラだっけ?ゴメンゴメン。・・・よし、できたよ。軽い捻挫ね。大した怪我じゃないから2、3日で直りそう。
でも今きちんと歩こうとすると結構痛むはずだから一応松葉杖を貸すわ。今日一日過ぎれば歩けるから我慢して使うのよ。」
「はい、わかりました。」
「じゃあお大事に。」
「はい、失礼しました。」
保健室の先生にかばんを肩にかけてもらい、慣れない松葉杖を突いて保健室をあとにした。
少しずつ移動しているうちにだんだんと杖の使い方に慣れてくる。
すると頭に余裕ができてくるのだがその余裕の容量内に浮かんでくるのは先ほどの保健室のおばちゃんの一言だ。

「今高須君の気になる子かー。」

もう9ヶ月くらいはクラスメートとして一緒にいるが友達といえる仲では、香椎奈々子とはない。
しかし、確かに高須竜児は今日の一連の出来事で彼女を意識するようになったのは確かだ。
暖かい微笑み、甘い優しさ、そしてやわらかいその体・・・・竜児の脳裏に焼きついていた。
だが「気になる」とはいえそれは果たして恋なのか?自分が櫛枝実乃梨に抱いている思いと一緒なのか。
思い過ごしだろう・・・竜児はとりあえず考えをそう帰結することにした。


一時間目・・・・竜児のクラスは静かに授業を送っている。先生としては非常にやりやすい環境だ。
もっとも、だからといって全員が全員真面目に勉強をしているわけではない。
全生徒の二割しかきちんと受けていなくて、
あとはもっぱら睡眠時間にあてていたり、内職をしていていたりする人がほとんどである。
例外として竜児の席が空いていることにそわそわしている女の子たちが数人いる。

金髪長髪で人形のようにかわいらしい少女が時々ちらちら座席を見ていて、
活発そうなショートヘアーの女の子はなぜだか申し訳なさそうに彼の席を見てはため息をつくという繰り返しの行為をしている。
美しいマリンブルーの髪を持つ今小町はどうやら元気なさそうに、
しかし竜児の座席への視線に思いを募らせた様子がうかがえる。
そして香椎奈々子も竜児のことが気になっているようで、右ひじを机に置きその手で顔を支えながら目をやって思いふけている。
先に行ったことがむしろ学生の責務としては正しいのだが、
加害者としての責務は如何なものかと悩んでいるだけなのだろうか?

と、そんな風に時間が流れ授業が進んでいる時に教室の後ろ側からゆっくりと扉がスライドする音がした。
高須竜児が教室に来たのだ。
「すいません、遅れました。」
慣れない松葉づえを腰にうまく掛けて片足立ちのまま開けているためだろう、何とか自力でできている様子だ。
声にもそのつらさが出ている。
「高須君!?大丈夫なの?!」
担任である恋ヶ窪先生はその様子に驚きを隠せていない。4人の彼女たちも心配そうに驚いている。
松葉杖というのは痛々しく人物を見せるものなのだ。
「あ、はい。2,3日で治るって言っていたので心配ないです。」
「でも、歩くのがつらそうよ。」
「いや、まあ慣れますよ。」
とは言ったもののノロノロと不器用にしか進めていない姿を見てもなにも説得力がない。
「誰か、高須君に手を貸してあげて。」
恋ヶ窪先生がそう言うと、4人は反応し動こうとするが・・・
「ほら、高須。背中に乗れ。松葉杖も俺が持とう。」
学級委員長北村祐作が一歩早かった。とっさに高須の前に出てきて対応する。
こう言うところが彼のいいところであり、頼れる人物として見られている要素だ。
「すまねぇ北村。」
「気にするな。困った時は何とやらだ。」
北村に手伝ってもらい竜児はようやく席につくことが出来た。その後は一分もしないうちにいつもの授業風景に戻っていた。
ただ4人の少女たちはどことなくいつもと違うままであったが。

「高っちゃーん!!大丈夫?」
「よう、高須。」
授業が終わり休み時間、竜児の席によってきたのが同性クラスメートの春田と能登だ。
強面な彼が心を許せる友達の二人である。
「おっす。さっき先生に言った通り2,3日で治るってよ。」
「本当かー?さっきあんなに歩きづらそうだったジャン。」
春田は少し心配そうな感情をこめて聞いてきた。
「まあさっきはな。でも座って授業を受けているうちに痛みも引いてきたし足の感覚も戻ってきたから心配ねーだろ。」
「それならいいけどさー。」
「しかし、高須。いったいどうしてそれだけの怪我をしたんだ?車とか何かか?」
もし事情を知らない人がこの怪我を見たら交通事故の類と思い込むだろう。能登が勘違いするのも無理はない。
「いや、人とぶつかっただけだ。遅刻しそうだったから急いでいたら偶然交差点で香椎とぶつかったんだよ。」
「ええぇ!?奈々子様とぉ!?」
この驚き声は春田だ。能登も能登で口をあんぐり目をまんまる開け驚いている。
「おまえ・・・よく無事だったなぁ。」
「はぁ?」
大げさに言うものだ。正確には無事でないが。
「だってよぉ、あの奈々子様だぜー?タダものじゃないじゃんか。ちょっとからかっただけでも恐れ多いぞ。」
「高須、お前がヤンキーでタイガーが猛獣なら奈々子様は極妻、または女帝・・・・
そんな存在なんだぞ。いくらお前でもひとたまりもない相手だろうが…」
どうやら春田も能登も香椎の存在を勘違いして誇張をしているようだ。自分と境遇が似ているな。
竜児はちらっと眼をやった。向きはもちろん香椎奈々子のいる席だ。3,4人の女子生徒と楽しそうに話している。


別に香椎はそんな怖い存在ではない。あまり話したことはないが今朝交わしたコミュニケーションから断定できる自信がある。
笑顔が温かく、やさしさを包んでくれる凛々しくも寛容な女の子だと竜児は思っている。
「それはねーよ。第一おれが不注意だったからいけなかったんだよ。あとあいつの弁当もパーに・・・」
否定の言葉を言っている最中に彼は思い出した。
そう、弁当のことだ。自分のせいで彼女の一日の昼食を台無しにしてしまった。
このあと奈々子が昼食を選ぶために選択する手はおそらく学食しかないだろう。
しかし、学食でそれなりものを食べようとしたらいくら安く食べられるとはいえ500円は普通にかかる。
500円!!
そう500円がたった一回の食事で飛んでしまう!500円さえあったら一日分の食事を用意できる。
さらに言えば1人分だったら2,3日3食を賄うことができてしまう大金だ!それをたった一回の食事で失ってしまうとは。
ああ、なんて残酷な話なのだろうか!?MOTTAINAI精神を掲げている高須竜児にとってはこの罪は極刑ものだ。
とてもじゃないが許させるものではない。A級戦犯としての罪を洗い人として浄化をしなければならない!
高須竜児は本気でそう思う人間だ。
そこまで考えて高須竜児はそういえばと、自分の弁当箱を見る。
あの作りすぎた二つの弁当箱だ。
もちろん次の行動はそのうちの一つを手に取り、そして立ち上がることだ。
「わりぃ、能登。松葉杖をとってくれないか?」
こういったことを頼むのも申し訳ないのだが、座ったままでしかいられない竜児では床に置いてある松葉づえに手が届かない。
「おう。・・・ほらよ。」
「わりぃな。」
「たかっちゃん、手ぇかそっか?トイレとか行くんだろ?」
「いいよ、春田。ちょっと香椎の所に行くだけだから。」
この言葉を聞いてまたしても驚きの表情を二人は浮かべた。
「ま・・・まさか高須、お前奈々子様に一戦おっぱ」
「んなわけねーだろ。」
みなまで聞くのも面倒なので能登が言おうとした勘違いな危惧を一蹴して彼女のほうへ向かった。
様々な話し声が飛び交う休み時間中でも、松葉づえの床を突く音は教室全体に目立って響くものだ。
そんな音が近づいてくるので、話を弾ませていた女子たちもその音源のほうを向く。
奈々子や彼女の親友である木原麻耶などは呆然と見ていたのだが、
マリンブルーヘアーの今小町、川嶋亜美はなぜだか少し不機嫌な顔をして竜児を見ている。
「香椎、ちょっといいか?」
竜児は奈々子の椅子の後ろで声をかけた。対象である香椎奈々子は
「高須君、どうしたの?」
と普通に応答したのだが、周りの女性はかなりおびえている。
彼女たちの目には「いい体しているなぁ。ちょっと校庭裏に来いよ。」
と奈々子の体目当てで強引に連れ込もうとしているようにしか見えないのだろう。
麻耶も奈々子の袖をつかんでわずかに涙腺を緩ませながら、恐怖と抵抗のサインを発している。
川島亜美はと言うと、やはり不機嫌なままだった。むしろその度合いが強まっている風なそぶりを見せている。
そんなことは露知らず、竜児は用件を述べる。
「おう。あのよ、朝ぶつかっちまったときに弁当、駄目にしちゃったじゃねぇか。だからそのお詫びといっちゃあ何だが・・・」
そう言ったあと、竜児は右手に持っていた弁当箱入れを可能な限り上に動かす。
松葉杖で脇を抑えているため少ししか上げることができないのが少し痛々しい。
「弁当・・・?い、いや別にいいわよ。」
「気にしないでくれ!
どうせ余ったもんだから誰かに食ってもらいたいって言う俺の気持ちと俺の申し訳なさがたまたま重なっただけだ。
むしろお願いだ。・・・食ってくれねぇか?」
「お願い・・?」
「そう、お願いだ。」
少しキョトンとした顔を奈々子はしたあと、彼女は微笑んだ。
「ふふふ・・・高須君って面白いね。お願いなら受けなきゃね。でも、うれしいから一言だけ。ありがと。」
「ああ、こちらこそ。・・・邪魔して悪かった。じゃあな。」
満足した顔をして竜児は奈々子に背を向け、去っていった。
奈々子はしばらくその慣れない手つきで松葉杖を扱っている竜児の姿をうれしそうに見ていた。
彼からもらった弁当箱を大切そうに持ちながら・・・・




「たっかすくーん!!皆でランチタイムを共有し、フィーバーしないかい!?」
昼休み。今度は元気印の赤髪ガール、櫛枝実乃梨が勢い良く彼の机のほうに向かい誘い文句を投げつけた。
「お、いいのか?」
「モチのろんろん!!大河や北村君たちをここに連れてくるから怪我人の君はおとなしく待っているのだぞ!!」
「ああ、頼んだ。」
「任せなさい!スクランブルぅー、ダーッシュ!!ダダッダー!!!!!」
そういって元気に自分の席を実乃梨は離れていった。
傍から見れば竜児は普通に彼女と接しているように見えるが、心中は複雑な思いでいっぱいであった。
何せ去年末に振られた女性とコミュニケーションをいつも通り取るというのはよくある話だが誰だってつらいものだ。
いや、正確には違う。竜児と実乃梨の場合はもっと性質が悪い。
竜児が告白しようとしたときに、実乃梨はその告白を聞く事さえも拒んだ。
彼女は、前提として竜児を男性と位置づけることができないという結論を付けたのだ。
竜児にとってこれほど大きいショックはない。
しかし、かといって無視するとか嫌悪な態度を取るとかはしたくない。
本当はそういう気持ちもないかといえばまったくの嘘になるのだが、
彼にとっての矜持、というよりも彼女の気持ちを尊重したい気持ちが強いためできないでいる。
言ったところでスッキリすることもないし、今までの関係でいい思いをしていると自分では納得付けて彼はどうにかやっている。
竜児がそんな思いの葛藤と戦っているうちに、彼の周りに友達が集まってきた。
北村や能登、春田たち男子たちのほか女の子も3人集まってきた。
一人はもちろん櫛枝実乃梨、もう一人は先ほど不機嫌な顔を見せていた川島亜美、
そしてもう一人はかわいらしい見た目をしている凶暴少女、「手乗りタイガー」の異名を持つ逢坂大河だ。
6人はそれぞれ雑談をしながら弁当箱を広げ始めた。
その最中、竜児は大河のいつもと違うところに気がついた。
というのも両手が包帯で汚くそして大げさに巻かれているのだ。
両手を見ていると更なる異変を発見した。弁当だ。あの大河が自分で作った弁当を持ってきたのだ。
「いただきます。」
大河が弁当と向き合い手を合わせてそう言った。逢坂大河は今まで竜児が食事に関して世話をしてきた。
彼女はそれくらい料理ができなかった。それがどうだ。
見ると飾りつけは綺麗ではないがきちんと料理として成り立った弁当を作ってきたではないか!
1ヶ月前の彼女の料理の腕前を知っている竜児は口を開けたまま固まっていた。
「どうしたのよ、あんた。さっきからボーっとしててさ。」
竜児は大河をそのような状況で凝視していたので彼女はすぐに気がつき問いかけてきた。
「いや、お前が弁当を作ってきたからビックリしてんだよ。」
「うぇ!?この弁当はメイド・イン・タイガーなのかい?!」
竜児の言葉に実乃梨が反応した。大河はにこやかに答える。
「まあね。まだきちんとできないけど作っているんだよ。」
「いやいや。その心意気、その達成だけでおぬしは立派じゃぞ!いい子いい子!!」
「へへへへ・・・」
実乃梨に頭を撫でられて大河は嬉しそうにしている。
男子三人もいつも高須が大河のを作っている位は知っていたから関心を示している。
ただ川嶋亜美だけは彼女らに対して白けた顔をしている。
というよりも、竜児が見るからには怒り、呆れ、失笑といった感情が合わさり含まれた顔をしていた。
さっきから彼は彼女の明るい顔を見ていない。
とりあえず竜児は、大河の偉業にとても関心をしたので讃辞を送ることにした。
「すげぇな、大河。今までできなかった料理をちゃんとやったじゃねぇか。びっくりしたよ。」
「たかだか料理でしょ。
今までできていなかったのが普通はダメなんだからこれは当然のこと。これからはあんたに頼っていた分、頑張んないとね。」
大河の言葉に
「おお、大河の姉御!!いいこと言いやしたなぁ!」
「なんかかっこいいー。」
「努力家なんだなぁ。俺こそ見習うべきかな?」
「逢坂、すばらしいじゃないか!」
と、感銘を受ける一同。とくに北村に褒められてさらに大河はうれしくなっている。
その時、川嶋亜美が口を開いた。
「いい子だねー、プチトラちゃん。」
明らかに嫌みたらしいその言葉。表情も態度もそのように出している。


「ありがと。あんたみたいな高飛車女に褒められるなんて、今から雨でも降りそうね。」
「きゃー!そんなに牙をむき出して怖いよー。あたしの血の雨が降るのかしらー。」
嫌味と嫌味の応酬。竜児含む周り5人はおろおろしているだけだ。
正確には北村と櫛枝は間に入ろうとしているが、二人だけの世界にはその隙間がなかった。
その隙間はプレッシャーで埋められているからだ。
しばらくするとすこし和らいだ表情で、
「でもよかったんじゃない?おままごとごっこが楽しくなるんじゃないかしらね。
さっきの二時間目の休み、いなかったから知らないでしょうけど・・・せいぜいお遊びは楽しくね。」
かつ重い感情をこめて亜美は大河に言葉を置いていく。
「ごちそうさま。」
中途半端にしか食べていない弁当を亜美は片づけ、立ち上がる。
机と椅子を持った状態で、ふと亜美は目線を実乃梨に向けて一言。

「ダーターファブラ。」

何か奥深いものを含んだにこやかや表情をしながらそう言ったあと、
すぐに自分の席を元の場所に戻して教室から出て行ってしまった。
竜児の周辺のコミュニティーの空気は当然悪くなる。
特に大河と実乃梨は先ほどの明るい雰囲気が嘘のようになくなり複雑な表情を浮かべている。
「ふへー、亜美ちゃんこえー。」
その悪い空気の中、最初に口を開いたのは春田である。正直な気持ちなのだろう。そのあとに北村が言葉を紡ぎだす。
「ふぅ・・・皆すまないな。亜美はああいうところもある奴なんだ。気分を悪くしたかもしれない。
許せとはいわないが気にしないでくれ。昼休みはまだ三十五分もある。
暗い気持ちで食事もしていてもしょうがないじゃないか?だから、あいつのことはとりあえず忘れて楽しく飯を食おう!な?」
「北村君・・・・。そ、そうだね。」
「応!北村総統の言うとおりだな!!じゃああらためて・・・・いっただっきまーす!!」
北村のおかげで空気は何とか戻った。彼の言葉に呼応した女性二人も先ほどのような雰囲気に戻って再び雑談を楽しんでいる。
春田と能登も同じだ。好きな食べ物の話で盛り上がっている。
「やれやれ・・・」
「よくやったな、北村。いつもらしくねぇことしてくれてビックリしたけどよ。」
「高須・・・まあな。あいつがああやって衝突してどうたらこうたら、っていうのは日常茶飯事なんだが・・・
なんか今回の亜美は怖くってな。」
「怖い?」
「ああ。空白の期間があったとはいえあいつとは長い付き合いだからな。
なんというか的を得すぎているというか核心だっているというか・・・・」
「どういう意味だ?」
竜児にはまったくわからない。
「俺だってわからないさ。考えてみてもわからないことだろう。男と女の壁を感じたよ。」
「男と女の壁・・・」
敗北感と言う意味が篭った発言に竜児は聞こえた。確かにそういわれると去り際の川島亜美はどこか威厳があり、
芯が入った強さが見られたような気がした。
そんなことを放心しながら思っていると、自分の弁当に箸が侵入していた。
そして獲物をキャッチし目標の口内へとすばやく移動した。
「お、おい!何すんだよ、春田!」
「まあ、いいじゃないか一口ぐらい。・・・・ん!?」
と春田が竜時の弁当にあった春巻きを口に含んだとき、さらにもう一膳、箸の影が!
「あ、能登まで。」
サラダを能登に取られてしまった。
「右に同じだ、高須。おっ。」
二人は口に含んでから何か呆然としている。竜児は混乱している。
「どうしたんだよ、お前ら・・・?」
「う・・・うめぇ。」
「ああ、うめぇ。」
どうやら舌鼓を打っていたようだ。
「これ本当に弁当!?すげぇな。」
「俺たちの親が作った、手抜きのそれとは違うな・・・・見事だぜ、高須。」
おのおのが大きな賛辞を送ってきた。
「大げさだな、これくらいで。」


「いや、彼ら二人は程々とか程度で褒める奴らじゃないからな。
俺はこれ以上高須の弁当を取るとお前の食う分がなくなるから取らないが、次回ぜひ食べてみたいものだ。」
口に入れていない北村まで褒めてきた。竜児は少し照れくさくしている。しかし少し大げさではないかとも思っている。
「いやー北村、これだったら俺も欲しかったよー。たかっちゃんの弁当。」
「なんだよそりゃ?」
「春田の気持ちがわかる。俺も一食ぐらい欲しいものだ。奈々子様が羨ましいぜ。」
この発言を能登がしたとき、二人だけで話していた女性陣が反応する。
「ああ、そういえば二時間目の休みだったか香椎たちの方に向かっていったが・・・高須、そういうことだったのか。」
「ま、まあ・・・あいつに詫びなきゃいけなくてな。」
「なんだい、詫びって!?叔母ちゃん、噂話とか気になっちゃうよ!!!」
突然、櫛枝実乃梨が話に割ってきた。あまりにも唐突で顔が近く大声だったので、竜児は驚いた。
「い、いや。ただ香椎と登校中にぶつかっちまってそんときあいつの弁当を駄目にしちまったから・・・
作りすぎた弁当をやっただけだ。」
「ふむ、つまり偶発的愛妻弁当と呼称されるものですな
・・・・高須君、やりおるのぉ・・・。ヘイヘイヘイ!!時には起こせよムーブメント!・・ってかぁ!?」
口調はそれなのだが高須竜児は、櫛枝がただからかっているだけに見えなかった。
ちょいちょいと左肘を自分の二の腕に当ててくるのだが、なぜか痛いくらい強くぶつかってきている。
怒っているのだろうか?だとしたらなぜ?
そんな実乃梨よりもわかり易く切れている女性が、目の前でとてつもない覇気を噴出しながら立っていた。
まさに猛虎。今にもぼろ雑巾に引き裂かれそうな殺意を出している。
「た、大河・・」
そう、逢坂大河である。
「あんたねぇ・・・!!!」
と言った刹那である、大河は喰らうように竜児の首に彼女の腕を挟み込んだ。
そして彼の側に顔を近づけた。大河は小さな声で竜児に声をかけた。
「あんた・・あの女にあげたってどういうことよ・・」
「はぁ?さっき言っただろうが。香椎と登校」
「そうじゃないわよ!みのりんのことよ!」
「櫛枝?」
「そうよ!詫びだか錆だか知らないけどみのりんに印象が悪くなるでしょ!
いくら事情があるとはいえ女の子に弁当をあげるなんて・・あのホクロ女に惚れているって勘違いを生むでしょうが!!
あんたそれでいいの!?」「あ・・・・いや・・・」
竜児は言葉につまってしまった。理由は大河が竜児の玉砕と言う事実を知らないからだ。
しかもいくら小声で大河以外の誰にも聞こえないとはいえ、
櫛枝実乃梨の前で「告る事さえも断られました」と言うことを口から出すことはかなり抵抗がある。
何よりも自分自身が傷つく。
「ま・・・まさかアンタ鞍替えをしたんじゃないでしょうねぇ・・!!!!」
黙りっぱなしの理由を勘違いした大河はさらに怒り出す。
「な・・・ち、ちが」
「アンタねぇぇぇぇ!!!」
竜児に向けた言葉とともに首の締め付けも強くなる。竜児はかなり苦しそうだ。
もはや二人の会話は忍んでいない状態だ。
蚊帳の外であった四人はいきなりなものだから当然驚く。驚いたものだから暫くその場を見ているだけであった。
「た・・・たい・が・・!!くくるじぃい!!」
「どんだけ盛ってんのよ、こんの馬鹿犬!!!あのおっぱいお化けのどこがいいっていうのよ!!?
あいつに色目つけられて騙されているだけかもしんないでしょうが!!それもわからないほど盲目なのね、エロ駄犬は!!?」
「そ、それは勘違いだ!!は・・離せって!!!」
竜児は必死で抵抗するが、負けじと大河も必死で襲いかかる。竜児にはなぜここまで彼女が必死になるかがわからなかった。
確かに櫛枝との仲を良くしようと助言してくれたり、手伝ってくれたりしてくれた。
しかし此処までして他人の恋愛に対し必死になるのが信じられなかった。竜児の考えすぎ、思い過ごしなのだろうか?
「おいおい!逢坂!」
「タイガー、ストーップ!」
「何があったか知らんがまずは落ち着け!!」
ようやく事態を理解した男性3人陣が間に入りなんとか抑えようとする。


彼らのおかげで肉体的衝突は免れたが、しかしこの後大河は竜児の一言一言に食ってかかってきた。
その食い言葉に皆が明るく対応したので先ほどまでの重い雰囲気は薄くなったものの大河と、
そしてなぜか実乃梨も今日一日竜児に対する視線が冷たくなってしまった。
片方視線を避けようとするともう片方の視線が刺さり、その方を避けるとまた元の視線が刺さる。
まな板の鯉とはこういったものでもあるのかな、と考えながら竜児は何とか今日の授業を乗り切っていった。


放課後。今日の天敵である二人は早々に下校していた。
櫛枝実乃梨は部活に行き、逢坂大河は北村佑作と一緒に帰っていった。
何でも他校の学生との交流会があるそうで逢坂はそれに付いていくらしい。
人見知りである彼女がこういった交流に行こうとするとは、大河も努力をしているのだろう。
竜児は感心したがそれ以上にほっとした。これ以上冷たい視線を突き刺されるのは心が痛んで適わない。
掃除当番も今日は怪我ということで本来あった役割もパスできる。なので今日は早く帰ることに竜児はした。
荷物を一旦自分の机の上に置いてその後に松葉杖を両腕で持ち各々の恥に直立させる。
そしてそれを支えとして両腕の力を使い、竜児は立ち上がる。
立ち上がったらすぐに脇を松葉杖に載せる。最後に荷物をとって準備は完了だ。一日もあれば松葉杖の使い方も慣れてきた。
九十度回って教室の外へ向かおうとすると今日特に馴染みのある女性の声が聞こえてきた。
「高須くん!」
左の方から聞こえて来たので振り返ると思った通りの人物がいた。
「香椎。どうしたんだ。」
「あのね、弁当の件なんだけど・・・」
「ああ、別にいいって。さっきも言っただろ、詫びだって。」
もうお礼は先ほど聞いたし別にいいだろうと遠慮をする。
「ああ、そうじゃなくて・・・」
「ん?」
「高須くんのお弁当・・・すごくおいしいね!」
この時の香椎奈々子の表情は興味と関心を浮かべていた。竜児はその顔に照れを通り越して少したじろいだ。
「ああ、これか?そうかなぁ・・・?」
「そうよ!本当においしくって私ビックリしたわ。お母さん、すごく料理上手ね!」
どうやら香椎奈々子は勘違いをしているようだ。
「あ、いや泰・・・母さんじゃなくて俺がそれ、作ったんだよ。」
「・・・・えっ?ほ、本当に?」
竜児の発言に奈々子はとても驚いている様子だ。
「ああ。」
「だってこれ・・すごいじゃない。どう考えても安い素材だけだしそれでこのおいしさを引き出しているでしょ・・・。」
「良くわかるな。うちは家計とかの事情であまりいい食料品を買う事ができないからな。
そういう生活しているうちに慣れてきてこうなっただけだ。別段たいしたことねーよ。」
「いや、大したことあるわよ。私も弁当の費用を抑えて作っているんだけど味は粗末だから・・・何か工夫をしているの?」
「ああ、まあそれなりにだけどな。」
「だよね。じゃないと納得できないもん。・・・」
奈々子は何か考え込んでいる。竜児は先ほどからの一連の彼女の食いつき方に魂消ていた。
端から見ても朝の様子を見ても実年齢に比べて大人であると竜児は印象付けていた。
だが今の彼女は年相応にハキハキしていて少し子供っぽいように見える。
この差異は中々可愛いものであるとつい思ってしまう。すると彼の頭の中に大河のあの強面が厳つく現れてきた。
竜児の思いが一気に冷めてしまったのは言うまでもない。
「高須くん、お願いがあるの。」
今まで黙っていた奈々子が突然竜児にお願いを迫ってきた。
「ん?」
「その・・・弁当を、安くても美味しくできるように料理する方法を教えてくれない?」
「え、俺が?」
「ええ。もちろん高須くんよ。ダメかしら。」
「いや・・・別にいいけど。」
奈々子からの懇願を断る理由がないが・・・先ほどから竜児は戸惑うばかりである。


「本当!?・・ありがと。いきなり教えてくれ、というのもやりにくいと思うから明日私が作った弁当を食べてもらっていい?
そこからどうすればいいか、を教えてくれた方が私としても高須君にしてもいいと思うんだけど?」
「ああ・・・まあそうだな。」
戸惑いすぎて呆然としているので、竜児は気がなく、何となくな返事をしてしまった。だが奈々子はうれしそうにしている。
「ふふ、じゃあ決まりね。今日高須君に頂いた弁当箱で作ってくるから。明日まで貸しといてね!」
「おう。香椎の弁当、楽しみにしているぞ。」
この返事で竜児はようやく、彼女に対してキチンとした言葉を紡げたような気がする。
「高須先生のお教えも、ね。そろそろ帰る?」
「ああ、今出ようと思ったところだ。」
「じゃあ途中まで帰ろうよ。帰り道が一緒のところまで荷物運んであげる。」
「え?いいのか?」
「もちろん。明日から受講する高須先生への授業費の一つと思ってください。」
こう言われてしまうと竜児に断る理由はない。それに少し甘えたい、というのが正直な気持ちだ。
それじゃあ、と言おうとしたその時女の子の声が寸前で被さってきた。
「奈々子、その授業料私がツケておくよ。」
突然、川嶋亜美が話に割ってきた。良すぎるタイミングである。
「亜美ちゃん・・・?」
奈々子は話の訳がわかっていない様子だ。
「私、これから仕事があるからタクシーで撮影場所に向かうの。
その途中に高須くんの家を通りそうだから載せてあげていった方が奈々子も彼も楽でしょ?」
「え?・・うーん、まあそうね。私が荷物を持っても高須くんが歩くことには変わりないし。タクシー乗っていった方がいいか。」
「じゃあ決まりね。高須くん行きましょ。・・奈々子、後は任せて。」
「ええ、ツケは任せたわ。高須くん、明日からよろしくね。」
「お、おう。じゃあな。」
何だか知らないうちに淡々と自分の帰り方が変わってしまった。
亜美に自分の背中を軽く押されながら竜児は教室を出て行く。
教室を出て、日差しでずいぶんと明るい廊下を暫く歩いていると川嶋の顔が竜児の右前方にいきなり出てきた。
「ごめんねー、高須くん。奈々子とのデートを邪魔しちゃって。」
香椎との関係を勘違いされる事が今日は多すぎると、竜児は思わずため息をつく。
そういうときのお決まりの返事をとりあえずしておく。
「ちげぇって。別に香椎とはそんなんじゃねえよ。あいつがいい奴を通り越して世話焼きなだけだろう?」
「あれほど男子と絡む彼女、一年間の付き合いで始めて見たけど?」
「俺が香椎に弁当の作り方を教えるからだろ?それ以上の深い意味はないに決まってるだろう?」
「いくら授業のためとはいえ二人きりで帰るなんて・・・ねぇ?」
亜美の絡み方はいちいち二人が怪しい関係じゃないかと言っているようなものだ。竜児は理解に苦しむ。
女の子はこういう話題が好きな印象があるが、川嶋亜美のそれは少し違うような気がした。
明るくもなく、かといってどす黒くもない。
とにかく彼には彼女の発言の意図がまったく理解できないでいる。
「何が言いたいんだよ、おめーは。」
心に思っている一番のこと、率直なことを竜児は聞いてみた。しかし亜美は、
「まあ奈々子がどう思っているのかはどうでもいいか。」
とはぐらかすだけだ。それどころか
「問題は高須君がどう思っているか、よね?」
さっきの話よりさらに嫌な会話内容が出てきてしまう。
「はぁ!?お・・・俺が香椎のことをか!?」
「そ。高須君が彼女のこと。ああ、靴履かせてあげる。」
そう言われてようやく竜児は校舎一階の下駄箱まで着いていたことに気がつく。話に夢中というか、話のせいで我を失っていた。
「何で、そんなこと聞くんだよ!?」
少々あわてた口調で竜児は答える。
「ああ、変に動かないで。靴履かせるのに手間取るじゃん!」
まだまだ言いたいことがあったがとりあえず彼は閉口しておくことにした。
靴が履けなくなるのは困るし、このまま話していたらさらに厄介な展開になりそうで怖いからだ。とりあえず頭を冷やす。
外へ出る。


校庭であわてて部活の準備をする部員たちによる人波をよけながら竜児は言葉を選んでいたが、
選んで出す前に先に亜美に言われてしまう。
「高須くんさ、奈々子と弁当のことで話していた時、あたしや大河や実乃梨ちゃんと絡んでいるのと全然違ったから。」
「ど、どう違ったんだよ?」
実は図星を突かれて戸惑っている竜児。
確かに彼女ら三人と比べて香椎奈々子とは少し接し方が違っていた気が自身でもした。
どんな感じかは説明できないが。
「うーん・・・なんていうかね、高須君がアピールしているんだよねぇ、自分からさ。」
亜美の発言になぜか竜児の背筋が凍りつく。
「そういう気持ちがあのお弁当を渡すとき篭っていたんじゃないかな、って私は思っているんだけど?」
きりっとした眼差しでそのようなことを亜美は言って来た。
醜悪な顔をしてきた彼女はこのようなことを考えていたのは竜児には少し信じられない。
「ち、ちげーよ!俺は」
「ちょっと待って。今から予約していたタクシーに連絡するから。」
実は、竜児はこれ以後の言葉は詰まって出なかったので彼女の待った、の一言に少し助かった。
この間に彼は頭を冷やして考えてみることにした。自分は今、香椎奈々子をどう思っているのだろうか?
好きと一言で言えるような感情ではないような気がする。モヤモヤしているが何か暖かいもの・・・と言うことしかわからなかった。
何度も何度も考えても、つかめる物は霧のように有耶無耶な存在である。


タクシーに乗ってからは、先ほどまでの話題に亜美は触れないでいた。
なので、高須竜児はもう面倒なやり取りをやらなくて済むと思い安心していた。が、暫くすると亜美が一言口にする。
「で、高須君。そういえばまだ聞いていなかったわよね。奈々子のこと。」
ここで来て欲しくない一言が出るとは竜児は思ってもいなかった。無理やり冷静を装って彼は応える。
「別にどうだっていいだろうが、そんなこと。」
冷静を見せておいて言葉の内容は強引に一蹴である。
言ったあとに彼は思ったのだが、こんな言い方ではあの川島亜美に通用するわけがない。
覚悟をしてじっと亜美を見詰める竜児。しかし、見た限り亜美はこれ以上突っ込む意志を出していない。
「まあ、確かに奈々子のことが好きなのかどうかなんて別に聞かなくってもいいんだけどね。」
言葉も同じであった。うれしい誤算に竜児も驚きを隠せていない様子だ。さらに、亜美はさらに意外な事を言う。
「あたしね、実は今日高須君のこと見直したの。」
「はぁ?」
まったく訳のわからないことを彼女は言ってくる。
「とても素直に、女の子と向き合えていてさ。ビックリしたんだよ。」
お前の言っていることのほうがいつもと違ってビックリだ、というのは余計な一言なのでそれを言わないことにした。
亜美の言っていることを行う人間というのはごく一般的であると竜児は考えているが。
「そうか?」
「そうよ。私だってそう考えてみると今までは素直に振舞えなかったもん。
今までの環境と、チビ虎や実乃梨ちゃんに悪影響を及ぼされていたのかもね。」
苦笑いをしながら亜美はさらに一言漏らす。
「ダーターファブラ、ダーターファブラ。」
彼女の笑いの感情が少し強くなる。竜児は妙にその一言が心の芯まで響いたので、その言葉について亜美に聞いてみた。
「ダーターファブラって何の事だ?」
「ギリシャ語よ。」
亜美はそれ以上何も言わなかった。竜児もそれよりほかに聞かなかった。
少しだけ夕焼け色になっている空がとても美しかったので、竜児はタクシーの窓からそれを眺めて過ごすことにした。

歩くと20分もする道のりも、タクシーだとものの5分もしないうちに到着してしまう。
亜美は撮影までにまだ時間があるので好意で荷物を自分の家の玄関前まで持ってくれている。
「わりいな、助かるよ。」
例を言うと亜美は
「こちらこそありがとう。」
と返してきた。もちろん彼は何のことだか分かっていない。
「高須君、私もう無意識の偽善にとらわれるのは止める。正直に生きる努力をする。
少しでも・・・対等になれるように私からもがんばってみる。」
今日始めて高須竜児に、川嶋亜美は明るい表情を見せた。その表情はダイヤモンドのような輝きを見せた。
美しい空のせいではない。今までの表情との差異のせいでもない。
彼女の洗われた綺麗な心がその姿を美しく色づけているのだ。
彼女の凛とした眼差しで見つめるさまは竜児の中で強く目に焼き付いた。
「また、明日ね。」
「あ、ああ。」
高須竜児は高ぶる気持ちを表に出さないように、ただ突っ伏して亜美の背中姿を見つめていた。
胸が熱くなり頭の中がなぜか竜児はこんがらがっているのだ。去り際の川嶋亜美の魅了されてしまったからだと竜児は思う。
タクシーも竜児のアパートの前から去ったあともしばらく立ちつくしていた。
今の亜美に対する気持ちも思い過ごしだろうと、竜児は考えを帰結させる。
ドアを開け家に入るとき、高須竜児には心に願っていることが一つあった。

今夜は夢見る夜でいたいものだ、と。



144 CHU2byou sage 2010/04/12(月) 01:34:48 ID:c8Bd8pq2
以上です。
最初のほうは不備があってすみませんでした。
名前にタイトル入れるのを忘れ、途中から入れたら今度はレス数を書くのを忘れ・・・・
次回は気をつけます。
これを作っていて思いましたが、僕もあーみんは好きですねぇ。
やっぱ可愛いもんだと思いました。
実は僕もこの物語の結末がどうなるかわからないのですがまた続きを書けたらな、と思います。

次回は、この続きか亜美モノを1本書きたいと思います!
では失礼いたしました!!



132 CHU2byo sage 2010/04/12(月) 01:18:59 ID:c8Bd8pq2
お久しぶりです。前回、奈々子ものを書いた者です。
前は名無しだったのですが名前をつけることにしました。よろしくお願いします。
題名: 思い過ごしも何とやら
(前回の「暖かく、甘く、とろけるような感覚は」の続きです。因みに私が前の名無しの作者です)
エロ: なし
登場人物: クラスメートのほとんど
ジャンル: 日常。ただし設定などが原作とは大きくかけ離れていますのでそういうのが苦手な方は注意
分量: 10

では、投函しまーす!!

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

竹宮ゆゆこスレ18皿目以降

■タグ一覧

亜美

複数、他

フリーエリア

管理人/副管理人のみ編集できます