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埋め。「二代目」


後はまかせたぞ!


――えぇ!?ぼ、僕がですか!!?

あぁ、他に誰がいる?

――でも、僕には相手がいますから…。だから継ぐことは出来ませんよ。

将来のことを考えろ!

――別れろっていうんですか!?

それが自然だ。

――どこがですか!?先輩はそんなこと言う人じゃなかったのに。何かあったんですか?

いや、託せるのがおまえだけなんだ!もちろん、引き受けてくれるよな?

――だから無理ですって!

なんでだ?

――その肩書きは僕には重過ぎます。

お似合いだぞ。

――似合いませんよ!

ちゃんと目の前の事実を見るんだ!

――ただでさえ色んな不幸を背負ってるのに…。そこまで不幸になったら僕には救いがないみたいじゃないですか!?

それはそうだろ!

――ちょっと、それは酷すぎますって!

どこがだ?

――いや、全部が!

どうしてだ?

――どうしてって…。

認めた方が楽になるぞ?

――そんなこと認められませんよ。

なぜだ?

――なぜって…。僕にはさくらちゃんがいます!

いつまでだ?

――ずっとですよ!

そんなこと信じてるのか?

――し、信じてますよ。

まだまだだな。

――僕はこれからもずっとさくらちゃんと一緒にいるんです!

そう、なのか?

――そうです。

何があってもか?

――はい。

…そうか。おまえの意思がそこまで固いとは思わなかった。

――いや、意思の固さなんて関係ありませんけど…。

最後にもう一度聞く。失恋大明神を継いではくれないのか?

――は、はい。継ぐことはできません。

いつなら継げる?

――いつになっても継げませんよ!

なぜだ?

――さっきも言いましたけど、僕にはさくらちゃんがいますから。

別れないのか?

――別れませんよ!

そうか…。そこまでの決意があるとは…。

――さっきから何言ってるんですか?先輩らしくないですよ。

いや、ちょっとな…。

――ちょっとでさくらちゃんと別れろとか言わないでくださいよ!

ま、気にするな!

――よくわかりませんけど…。気にしないことにします。

物分りが良くて助かる。じゃ後はちゃんとおまえの想いをあいつに伝えてやれ!

――はぁ。

付き合っているとは言っても相手の気持ちが心配になる時はあるもんだ!だからちゃんとおまえの口から伝えてやるんだぞ!

――あ、はい。

できなければ失恋大明神を継ぐことになるから覚悟しておけ!

――はぁ。


物陰に隠れて二人のやり取りを見ていたさくらは胸を震わせ喜んでいた。
幸太とさくらが付き合い始めてから、しばらく経つ。
さくらはあまり気持ちを口にしてくれない幸太がわからなくなり、心配で北村に相談した結果がこれだった。
初めはハラハラして聞いていた。
別れろなんて言うとは思わなかった。
でも結果からいうと、自分を想ってくれる幸太の気持ちが確かめられた。
その上、今度はさくらに対してハッキリと今の想いを伝えてくれるという。
さくらは胸を高鳴らせ、少し緊張しながら北村にメールで礼を言い帰路に着いた。

北村が失恋大明神を継ぐものが現れることを祈るはずはない。
北村はさくらからのメールを見て、顔を綻ばせながら去って行った。

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