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Happy ever after 第2回
朝の時間はとても貴重だ。
私、川嶋亜美にとってもそれは例外では無い。
8:30から始業だと言うのに律儀に早めにやって来るあいつの為に8:15には校門に
到着しなくてはいけない。
早くても、遅くてもいけないので、時間管理はシビア。
6:00には起床し、シャワーを浴び、髪を整える。その後は30分かけてメイクをする。
ベース、ファンデを手早くすませ、チーク、グロスには少し時間をかける。
勝負所はアイメーク、自分の武器は最大限に生かさなければならない。
目をなるべく大きく見せる為に、イメージを固めたら、ぶれないようきっちり一気に引く。
ライナーが濡れているうちに目を開けるとよれてしまうので、鏡の前で目を半開き。
直立状態で乾くまで待つ。こんな姿、絶対他人に見せられないな。
朝ぱらから、なんでここまで気合いれてるんだろとふと思うこともしばしば。
一番重要なのは自然に、けっして恣意的なメイクになってはいけない事。
なぜなら、それはまったくの逆効果だからだ。あのおばさん体質男には。
高須くんは不自然を嫌う。なんでも、上辺を装ったり、誤魔化したりしない私の方が魅力的だとか、
高校生なんだから必要以上に化粧なんてする必要ないんだって。
馬鹿みたい。それは嘘じゃなくて、自分をどう魅力的に見せるかの技術なんだって。
その証拠に、念入りにメイクすれば気づか無いくせに。何を見てるんだか。
まぁ、仕事が押して寝ないで学校に行った時は気づいてくれたから、ちょとは見てくれてるのかな?
心配するかと思って、いつも以上にメイクに時間かけたんだけど・・・・
「今日は体調完璧、お肌ピカピカ、お化粧の乗りも良いから気分いい♪ 攻略準備は万端」 
登校時は不自然を感じさせず、高須くんにモーションを駆けられる数少ないタイミングなのだ。
高校3年ともなると、どうしても進路によって、クラスが分かれる。
文型・理系は元より、学力によっても編成が分かれてしまうのだ。
高須くんは理系選抜クラスのいわば学力トップクラス、私は文型クラスA、ノーマルな人たちのクラス。
さすがに再転校の際、芸能人だからと言ってそのトップクラスに入れてもらう事は出来なかった。
高須くんのくせに生意気だ と少し思うけど、まぁ能力が高いことはそう悪いことではない。
けれど、クラスが違うという事はなかなか不便なもので、なかなか高須くんと一緒の時間を取れない。
せいぜい登校時、下校時、後は廊下ですれ違ったり、偶然、自販機スペースで会えるぐらい。
後は難癖つけて蜂蜜金柑を飲む時程度。
という訳で高須くんを口説き落とす機会は限られてしまう。
毎日、登校、下校のタイミングを計ってるなんて、これじゃ私がストーカーみたいじゃない。
軽く自己嫌悪。
「ただ、いくら準備したって、高須くんと会えるかは運次第なんだよね」
結局、学校までの道ゆきで高須くんに会うことは無かった。
軽い失望感を内側に押さえ、笑顔で周りの挨拶に答えていく。
なんで、私はこうも非生産的な朝を繰り返し、無駄な労力を割いているのだろう。
その声を掻き消すように、騒がしい話し声が聞こえてきた。
今日は当たりだったようだ。もっとも当然の如く余計なこぶがついているが。
「何であんたもっと早く迎えに来ないのよ。」
「いつも通り迎えに行ったぞ。何度起こしても起きなかったお前が悪い。」
我侭天性お嬢様こと、逢坂 大河(くやしいけど、あれこそ天然)と、その保護者兼下僕
(こっちも生まれつきに違いない)の高須 竜児だ。
「なによ、この時間に来れるなら、朝ごはんもっとゆっくり食べれたじゃない。」
「で学校まで長距離走な、めざせ日本記録っていう絵が想像出来るぞ。俺は」
ちびトラ、お前のせいで時間が読めないっての。
あーもう、タイガー >>> 肉親の絆(偽)>>> 川嶋亜美 ってのをすごく感じる。
なんだかんだ言って、高須くんの優先順位は常に、ちびトラが第一位だ。
そしてタイガーも本当は高須くんの事を・・・
違う、違う、そんな事解かってた事、その上で私はスタートラインに立ったんだ。
たとえ出遅れているとしても。
「竜児、お・は・よ・う。朝から飼育員は大変だね!ついでに逢坂さんもおはよう↓」
「お!....おぅ。川嶋か」
「うわバカチーだ。朝から発情犬の無駄フェロモンに当てられる。気持ち悪い。」
「大河、お前のは朝飯食いすぎなだけじゃねえか」
相変わらず、にぶちんの高須くんに、憎まれ口言いのタイガーめ
「いいのよ、わざとフェロモン振りまいてるんだから、ねぇ、竜児」
「....まぁ、朝は平和でいたいよな」
縄張りを主張するように唸るタイガーに、目の前の現実から逃れるように目を逸らす高須くん。
「それにしても、竜児、相変わらず毎朝タイガーの朝食用意してるんだ〜、へ〜」
何となく高須くんを苛めたくなった。
「当たり前でしょ、家事は馬鹿犬の数少ない取り柄なんだから、
 飼い主様に食事で奉仕するのは当たり前のことよ」
「あのな、お前一人じゃろくな食事をとらないからじゃねえか」
私の朝食は殆どがサプリメントだけ。ろくに食事なんか取って無いっての、
何でこの女は三食手料理を食べてるのよ。
「いいな、私も忙しくて朝ごはん最近食べれてないんだ」
ふと、本音が口から漏れてしまう。
「川嶋、朝食はしっかり取らないと駄目だろ。1日で一番大切なエネルギー源なんだぞ」
え、興味持ってくれてる?それも心配そうな顔で。これってチャンスじゃん。
「だったら、本当、たまにでいいんだけど、私も.....」
「いいのよ、太りやすい体質の女優(ハート)様は、コンビニ神拳によって
 脂肪しないように、ダイエットを宿命付けられているのよ」
高須くんと話してるのに、横槍を入れるなタイガー
「秋肥りしたあんたに言われたくないわ。竜児、逢坂さんが酷いよ」
「う〜ん、秋肥りは俺にも責任があるわけで、だからこそ健康的で、
 美味しく美しいカロリーコントロールをだな」
「だから私のコントロールもして欲しいな。竜児、身も心も」
上目遣いでおねだりモードを全開してみる。高須くんは、ちょっと引き気味で少し寂しい。
それに対し、タイガーのイライラは明らかだ。
しょうがない、いつも通り、大河をからかう事にするか。
「ね、逢坂さんもいいと思うでしょ」
「・・・・・ねぇエロチワワ。さっきから、その猫なで声で竜児、竜児鳴くの止めてよね。気色悪い」
「あら〜?どうしたのかな?もしかして認めたくないの?逢坂さん以外が竜児って呼ぶの?」
「な、お前、妙な言い方するな」
「ふ、ふん、あんたのイヤらしい言い方にサブいぼがたつだけよ」
「ふふ」
タイガー可愛い反応。とりあえず勝ち誇った笑顔でもしてみるか。
余計、撫すっとした顔になるタイガーと、おろおろする高須くん、楽しい♪
「逢坂、亜美、なんだ朝からレクリエーションか?」
「北村くん!」、「祐作」
そこに、腐れ縁の幼馴染、北村祐作がやって来た。こいつは朝からいつも元気そうだ。能天気な事で。
「うん、うん、仲良きことは美しけり だな。お、竜児もいたか。怪獣大集合って所か」
「怪獣って、俺の事は否定せんが、自分もはいるのか?」
ここまでくるとグダグダ.....、高須くんにアプローチ出来る雰囲気じゃないし、
友達同士としての会話でも楽しみますか。それにしても祐作の奴。
         ******
朝の数少ないチャンスを潰された亜美ちゃんは奥の手を出すのでした。
高須くんのクラスにいる女の子で、麻耶ちゃんの友達を紹介してもらったのだ。
これで、高須くんのクラスに行く大義名分を獲得!
名前は覚えてない、とりあえずA子ちゃんとしとく。
チャンスは待つものではなく作るもの。覚悟してね、高須くん。
さて、まずは確認、高須くんは教室にいるようね、ふ〜ん、祐作と話してる所か
私は教室に入ると、取り合えずその子の所にいった。
「こんにちは、A子ちゃん」
「え、亜美ちゃん? どうしたの?」
「ほら、この前、すごく似合うリップ持ってるって言ったでしょ。
 今日持って来たんだ。はい。」
「そんなすぐに持って来てくれるなんて、亜美ちゃん、話通り本当いい人だね」
「そんなことないよ。ほらこれ、A子ちゃんすごく可愛くなると思うよ」
なんて、どうでもいい会話をしつつ、高須くんの様子を伺う。
「・・・・という訳なんだ、竜児」
「北村、その場面でなんで裸になるんだ?」
「そうでもしなきゃ収まらんだろ」
高須くんと祐作の会話に入っていくタイミングを伺っていると
能登君と春田君が入って来た。
「大先生、さっきの体育の時話した件どうだった?」
「能登か、まだ逢坂たちにしか話してないが、OKのようだぞ」
「さすが大先生、竜児は?木原たち3人には声かけた?」
「いや、すまん。木原や香椎と会うチャンスか無くてまだだ」
「え、亜美ちゃんから誘ったら一発じゃん。竜児頼むよ」
「川嶋にか?う〜ん、もう一回木原たちの所行って来る」
高須くんが立ち上がろうとするのを、肩に手をやって止める。
「あ〜れ、竜児、亜美ちゃんに何かお誘いする事があるの?」
川嶋!と驚きの表情を浮かべる高須くん、
対照的にうれしそうな顔をしてくれる能登くんと春田くん
「お、おぅ、えーと、春田」
「竜ちゃん、俺が言うの? えーとね亜美ちゃん、クラスも分かれちゃって寂しいから、
 久々に元2-Cプチ同窓会集まろうって話してたんだ。
 ぶちゃっけカラオケ行かない?」
「もちろん。麻耶ちゃんと奈々子には私から言っとくね」
なんで、こんな事くらいも言ってくれないんだろ。
高須くんの方を見るがこっちを見てくれずじまいだった。
それにしても能登くん、春田くんまで。
         ******
「あれ,次って誰の歌?入れた人誰?」
 麻耶ちゃんが周りを見渡す。
「俺が入れた、UNDER THE COUNTERってアーチスト、知らない?
「能登の入れたのマニアックでわかんないんですけど、
 ねぇ、奈々子、なんか通ぶってて嫌だよね」
「もうちょっと解かりやすい方がいいかな」
「そんなマイナーじゃないよな、な、竜児」
能登くん、ちょっとがっかりした顔、見せ場だったのかな?
でも駄目だよそんなんじゃ。自分が歌いたい曲じゃなくて、麻耶ちゃんが聞きたい曲を
選ばないと意味ないよ。
高須くんは一生懸命、能登くんをフォローしてるが、あまり効果はないみたい。
「ねぇ、竜児、次デュエットしようよ」
能登くんとの友情もいいけどさ、私の事も気にか掛けてよ。
「一緒に歌うのか?俺はいいよ」
高須くんは明らかにその気がない表情。
なんでよ、だってさっきは
「え〜、タイガーとは歌ってたジャン」
「しょうがねえだろ、あいつは一人じゃ歌えないって言うんだから」
何時だってタイガーの事は特別なんだ。その含みのない顔が余計腹立つ。
「じゃあ、亜美ちゃんだって恥ずかしくって一人じゃ歌えねぇ」
「じゃあって何だよ。大体乗り乗りで歌ってたじゃねえか」
「あ〜あ〜、歌って損した」
私は倒れこむようにソファーに腰掛けた。但し、高須くんの隣に
背もたれに体を預けると同時に右回転、高須くんの耳元に唇を寄せる。
「でもさ、私の歌聞いてくれてた?」
「そりゃ、聞いてたが」
固まってる、固まってる。ふふ。
「ねぇ、上手かった?可愛かった?」
「ま、まあな」
私は笑ってみた。ううん、自然と笑顔をする事が出来た。
伝わってるかな?この気持ち。
「この曲、だれ?」
「おう、それ俺だ」
高須くんが手を挙げる。タイミングの悪い。でも逃がさない。
「えー、この曲、私も好き」
「さすが亜美ちゃん。この曲の良さを知っているのはここじゃ俺と竜児だけだと思ってた」
 能登くんごめん、初めて聞いた。本当は。
「うん、実はちょっと聞いただけで、あんまりよく知らないんだ。だからね」
 マイクをもらって、再び高須くんの横にちょこんと座る。
「竜児、私よく知らないからリードしてね」
「だからって、わざわざ横で歌わなくたっていいだろ」
「だってよくわからないんだもん。横に居た方がタイミングとれるし」
イントロが流れ出す。緊張してる顔かわいいな。
その時勢いよくドアが開いた。
「おくれてすマンモス,みんなやっとるかね」
「みのりん、やっと来てくれた。歌いたい曲たくさんあるんだよ」
実乃梨ちゃんだ。歌いだすタイミングを逃して、曲だけがただ流れる。
「悪い悪い大河、おいらを待っていてくれるなんて泣けるね、友情だね。
 お、竜児くんが熱唱中だったか、いいね、それ竜児♪竜児♪」
え、なんで実乃梨ちゃんまで。
高須くんを見るが、私の時みたいに、キョドったり、顔を背けたりしていなかった。
         ******
実乃梨ちゃんが来た時から、高須くんにアクションを取る元気が無くなっていた。
もちろん、それなりに盛り上がってるような態度は取っていた。私、大人だし。はぁー。
そしたらカラオケからの帰り道、高須くんが声を掛けて来た。
「川嶋、なんか急に元気なくなってたがどうした?体調悪いのか?」
だから言ってみた。
「蜂蜜金柑が飲みたい」
で、日を改めて、高須くんの家に来ている。当然二人きり。
高須くんが2杯の蜂蜜金柑のお湯割りをもって来てくれた。
とりあえず、不満げな顔を作って、顔を上げてみた。
「今度は何を心配したんだ?」
「なんで、祐作も、能登くんも春田くんも、竜児って呼んでるの?」
「お、おぅ?そんな変な事か、お前だって、大河だって」
こいつしらばくれるつもりなの?なんかスイッチ入っちゃった。私の声の高さが1つ上がる。
ていうか感情的になりやすいな、高須くんに対しては。
「実乃梨ちゃん」
「櫛枝がどうした?」
「実乃梨ちゃんも竜児って言ってたよね。それで竜児はニコニコしてた」
「ニコニコなんかしてねだろ。至って普通だったと思うが」
被っていた不満の仮面は、いつしか本物に変わっていた。
「その普通ってのは何、じゃ、私の時は普通じゃないよね、顔背けたり、
 まともな返事してくれなくなったり。2年の時とは大違い。
 私がどんだけ無理して竜児ってよんでるか解かりもしないくせに」
高須くんは少し思案顔、その後、子供をあやすような顔をして話しかけてくる。何様だろう?
「川嶋、あれは俺が頼んだんだ。竜児って呼んでくれって」
「・・ゆっくり忘れるって言ってくれたけど、やっぱり実乃梨ちゃんの事好きなの?」
すこし覚悟をして聞いてみた。
「そういう意味じゃねえよ。聞いてくれ川嶋。
 お前に名前で呼ばれると、確かに緊張しちまうんだよな。それは悪いと思ってる。
 だから、その慣らしというか、普段から竜児って呼ばれれば、それが普通に
 なるんじゃねえかと思って、みんなに協力してもらってたんだ。」
何言ってるんだろう?一瞬言葉を失った。
それが高須くんなりの思いやりと気づいて笑いがこみ上げてくる。
「極端、それって極端、私に竜児って呼ばれるの、どれだけ大変なの?、
 ふふ、あはは♪ 呆れる、けど面白い、本当、高須くんて馬鹿」
 で優しいな。本当、無駄な事に労力を割く奴。
声を出して笑ったらすごく落ち着いた。
改めて高須くんを見ると、まだ子供を見守るよな顔で見つめているって....
笑ってた間ずっと見てたって事?羞恥心がこみ上げて来る。ドキドキする。
苦し紛れに強く出てみた。
「それで努力の結果はどう?慣れそうなの?高須くんとしては」
「いや、みんなに名前で呼ばれてるのと、お前に言われるの、なんか違うんだよな。
川嶋の言い方が他のやつとは違うのか?お前はどんな気持ちで名前を呼んでるんだ?」
こいつ、私に何を言わせようとしてるんだろう。もしかして逆襲?
「亜美ちゃん、解かんな〜い」
と澄ましてみたが、自分がかなり動揺してる事が解かる。
感情のふり幅が大きすぎてコントロール出来てないみたい
「そう言えば、川島も無理して竜児って呼んでるとも言ってたよな。だったらお前...」
高須くん、まだ追い詰めてくるの?私に正面から心情を告げろって?
胸が苦しい。声が出ない。
ただ、ただ、自分の指をギュッと握り締め、次の言葉を聞く準備をする。
彼が発するかもしれない言葉が、もし私が、怖がり期待するものだったら、
もう偽りの自分を維持する事は出来ない。私は高須くんに改めて告げなければならないだろう。
「無理しないで今まで通り 高須くんって呼び方でいいんじゃねえか」
「全然わかってない!」
握り締めた拳は高須くんの頬を正確に捉えていた。
END
Happy ever after 第2回 追伸
「じゃ、はじめようか,竜児♪」
「おう、覚悟は出来た。やってくれ」
川嶋のでかい目が俺を見つめてくる。その唇が俺の名を告げる時、艶まかしく動く。
と言っても、これ以上の進展は無い,ただ川嶋が俺の名前を連呼するだけの展開
ただ、それだけでしかない。
俺と川嶋は一つの賭けをした。賭けの内容は呼び方についてだ
俺 :昔のように、高須くん でいいのではないか
川嶋:絶対 竜児 の方がいい、でも不自然な態度の竜児は嫌だ。
川嶋の言い分は、俺は名前で呼ばれるのを慣れてないからだそうだ。
それも他の誰かに言われるのではなく、川嶋の言い方に慣れなければならないとの事だ。
なので、今日一日、川嶋が俺の名前を呼んで、俺が自然な態度に向かった
(と川嶋が判断した)ら、竜児を継続、駄目だったら、高須くんという言い方に戻る事を
前向きに検討する。
事になった、どう考えても俺の方が不利な条件に思えるが。
「いくよ?大丈夫、恥ずかしい事じゃないんだから、ただ名前を呼ばれるだけなんだよ」
「解かってる」
「じゃあいくよ、竜児。どう?」
「お、おぅ」
「竜児、かわいい、体がちがち」
「竜♪児♪」
「目見開きすぎ。名に身構えてるの?それも可愛いけど」
 俺はなんでこんな拷問OKだしちまったんだろう
「ねぇ、でもなんで竜児って言い方抵抗あるの?大河とか泰子さんには
 いつも呼ばれてるジャン」
「しょうがねえだろ、あいつらは家族ってかんじなんだから」
 にやにやしながら、川嶋が問いかけてくる。そうかと思えば今度は泣きまね。何だ?
「亜美ちゃんより、タイガーの方が大切なのね」
「だから、そういう比較の問題じゃねえ」
「私の事気に掛けてくれてる?」
 ああ、もちろんだ と答えてみる。こいつは俺をからかうのが趣味なのか。
 と、泣きまねをした手の間からこっちを見て、どれくらい と問い掛けて来た。
「んー、あ、そうだ。大河と同じくらい、お前の事を気に掛けてる」
「・・・・高須くん、その言い方で私が喜ぶとでも」
 やばい、こっちをガン見してやがる。
「すまん、気の利いた言い方とか苦手でな、お、そう、お前に気を掛けすぎてるから、
 言葉まで回らん」
 それなんてとんち?とお姫様は呆れ顔
「まぁいいわ、普通の男だったら、一発レットカードものだけど、朴念仁の竜児の事を
 加味して、執行猶予を付けてあげる。
 はやくいい男に成長してくれないと、執行猶予きれちゃうよ」
「よく解からんが悪かった。ま、なんだ。それよりな続きしないか」
「竜児が続けたいんならいいよ、付き合ってあげる」
しまった、立場逆になってるじゃねえか。
「・・・・竜児」、「りゅうじ」、「リュウジ♪」
「もう、やだ顔真っ赤。それに体がピクって。竜児で言葉攻めに弱いタイプ?」
「しょうがねえだろ、体が勝手にだな」
「体は正直よのう、ふふ、本番が楽しみ」
 何だそれは と川嶋に問いかけてみた。こいつ、けっこう下品なネタすきなのか?
「べ〜つに♪なんでもないよ竜児
 ふ〜ん、今度は体は動かなかったね。むりやり力入れてる。でも鼻の穴大きく
 なってるよ、 そっちの方が笑える。ねぇ、竜児」
「・・・・・・」
「は〜い、耳が動きました。次はどこがピックとするのかな、竜児」
「・・・・・・」
「息止めない。死んじゃうよ。ねぇ、タカスキュン!」
「ばか、変化球なげんな、声真似までして。駄目だ、限界、ちょっと休憩させろ」
「え〜、つまんないな」
「すこしは休ませろ、本当に死んじまう」
深い息をして呼吸を整える。これはいつ終わるんだ?
いっそ竜児て呼ぶのOKするか って、これからずっとこんな状態か?
と考えてると川嶋は、いつものにやり笑いをした、これ以上、悪い事にならなければいいが
「亜美ちゃんいいこと思いついちゃった」
思わず嫌だなという気持ちが顔に出ちまった。
当然、いつも顔色を伺ってる気弱なお姫様はそれに気づく。
「だって、亜美ちゃん意地悪っ子だもん、高須くん的には素直じゃない子?
 で〜も〜、外面用の亜美ちゃんじゃなくて、素の亜美ちゃんが竜児の好みなんでしょ
 生まれながらの亜美ちゃんがすきなんて、このす・け・べ ふふ」
「変な言い方するな、川嶋は川嶋だろ」
「あ、悪いと思った?だったら、ちょっと付き合ってよ、簡単な事。
 竜児ばっかりは悪いから、私の事も呼んでみて、私が求める名前で」
川嶋が呼ばれたい言い方?
川嶋っていうのはいつもの言い方だし、そう言う事じゃないよな
たぶんもっと距離を詰めた言い方を求めてるんだろう。
とすると、木原たちみたいな言い方か?亜美ちゃん?
川嶋が竜児で俺が亜美ちゃん? どんな下僕だ俺は。
これからの人生つらいだろ、60点くらいに。ん、案外高いな点。
そうでは無いとすると櫛枝の言い方か、あーみん?こえーよ。
となると残りは・・・・・
答えを決めて、川嶋を見ると
おい、こいつは何で期待した目になってるんだ、表情は斜に構えているが、
ばればれじゃねえか。これは外せねえ。意を決して俺は言った。
「バカチー?」
「ありえねえつーの!」
白い閃光が走った。
「いて〜、スカート姿で正面蹴りの方がありえねえと思うのだが、川嶋さん」
ちょっと恥ずかしそうにスカートを調えている川嶋
「高須くん、わりとサド?」じと目で告げる川嶋。
「大河とかかわるようになってマゾじゃねえかと怯えていたが、
 お前といるとサドぽくなるな」
「解かってるよ、もう一回だ」
というか、あいつの弱い顔みて気が付いた。
「心配するなよ、亜美」
「・・・・!」
「どうした、川・・、亜美、顔赤いぞ」
「ごめん、高須くん、高須くんの言ってた事少し解かった」
顔を赤くして、顔を下に向ける川嶋
「ママにも、パパにも、祐作にだって、亜美って呼ばれてたけど、別に気にならなかったけど、
 他の人に言われたらこんなに動揺するものなの?」
「俺の経験則からいうと、かなり動揺するものだと思う」
「え、マジで、これってやばくない、女優として致命的じゃね?たかが名前で呼ばれただけで」
「確かに、みんなはそんな事なさそうだが」
「私たちが異常なんだって、高須くん特訓しよう!」
「特訓?」
「高須くんじゃなかった、竜児、いいから名前でよんで、私がなれるまで」
「解かった、亜・・・・、亜美」
「竜児、その、その感じでお願い」
「いや、なんか・・・お前の特訓はかまわんが、俺の事は竜児じゃなくていいだろう」
「私だけ特訓するなんてずるいじゃない、竜児、ほらお願い」
「亜美」
「竜児」
なんで、二人で顔つきあわせながら、真っ赤になりあって、名前を呼び合ってるんだ?
しかもエンドレスで、こっちの方が異常な感じがするぞ。
インコちゃんまで、俺を馬鹿にしてる気がする。ほらあんな感じで
「バカ犬?バカチー?バ、バ、バ、バ、バカばっか!」

END

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