web上で拾ったテキストをこそっと見られるようにする俺得Wiki

257 M☆Gアフター8(中編)  ◆9VH6xuHQDo sage 2010/07/25(日) 23:27:15 ID:5tWG/49K


 ***

「……さっきよりだいぶ小さくなった……かな?」

 月曜日の放課後。
 大橋高校三年生、高須竜児は既に彼の定位置と化している、夕暮れ色に染まるグラウンドの
バックネット裏で息を潜めるようにして、己の後頭部に出来ている小さなタンコブを、文字通
り腫れ物に触れるようしてスリスリと擦っているのであった。
 しかし竜児の柔和な性格に相反する、好戦的で周囲を威嚇しまくる任侠ヅラのせいで、その
姿はまるで手負いのヒットマンがグラウンドで練習しているソフトボール部の選手たちを今に
も襲撃して、グラウンドの施設を木っ端微塵に破壊しようとするように見えてしまうわけ
なのだが、もちろんそうではなく、竜児はただ大人しくソフトボール部の練習を見学している
だけなのであった。

 竜児が後頭部にこさえてしまった悩ましいタンコブの原因は今日の昼休みのこと、校舎の屋
上で竜児が昼飯を食べようと、屋上への扉を開けようとした瞬間、目前の扉がもの凄い勢いで
突然開き、モロにぶつかって吹っ飛ばされた竜児は階段からゴロゴロと転げ落ち、階下の踊り
場の床に、思いきり後頭部を打ち付けたからだった。
 幸いにも、無意識に竜児は受け身を取っていたようで、親友で加害者の能登久光におんぶさ
れ、励まされながら運び込まれた保健室の先生の診察によると、
「一応、大丈夫でしょ? 一応っ」
 ……と言うことだし、なにより扉を豪快に開けた張本人、能登が、
「心配だよ高須っ、心配だよっ!」
 ……と竜児が恐縮するほど平伏していた事もあり、多少の痛みくらいガマンしなければなら
なかったのだ。そこに一陣の風。

 ヒュウッ!

「おうっ? 風強えなっ……こりゃ、ひと雨くるか……」
 突然の強風に、反射的に竜児は眼を顰める。辺り一面に砂ぼこりを舞い上がらせる五月の突
風は、午後から次第にその強さを増していき、ふと見上げた空は、今にも泣き出しそうな灰色
の分厚い雲に次第に浸食されていたのだった。そこへ、

「うおーい! 竜児く──ん!」
 耳ざわりのいい、元気のよい声が、竜児の鼓膜を揺らす。
 バックネット向こうに広がるグラウンドから、生き生きとランニングしている集団からひと
り抜け出し、引き締まった身体の輪郭を夕陽色に煌かせたソフトボール部部長……そして、竜
児の恋人、愛しの櫛枝実乃梨が竜児の方へ近づいてきた。
 近づくにつれ実乃梨の眩しすぎる笑顔がはっきりと視認できる。竜児の目には、まるでそこ
だけスポットライトが当たったかのように輝いて見えてしまうのだった。

「おう実乃梨、まだ練習残ってんだろ? どうした?」
 少し驚いた竜児は、ふと、己の後頭部の痛みがウソのように消えていくのに気付く。これは
一体、なんのチカラなのか……よく分らないが、実乃梨のお陰であることは間違いないであろ
う。
 そんな竜児の高鳴る乙女心を知らずに実乃梨はバイザーのツバをクイッと捻り、珍しく眉を
ハの字にする。
「いやー、そーなんだけどさぁ……今日は私だけ、部活早上がりするのだよ。実はこれから来
 週予定している隣町の学校との練習試合の打ち合わせに行くんだけど、通例で部長が直接行
 くならわしになっててさっ。面倒なんだけど、まあ、そんな雑用すんのも部長の辛れえとこ
 なんだわさっ」
 と言い切ると実乃梨は舌を出し、二年のときから少し伸びた柔らかい髪をぽりぽりと掻く。
そうすると砂の匂いがする風の中に、実乃梨の汗の匂いが混じってくる。
 その匂いを竜児は深く肺に吸い込んでから実乃梨に切り出した。
「なんだお前一人で行くのか? ……俺も一緒に行ったらマズいのか?」
 すると少し驚いたようにピョコンと跳ねた実乃梨は、大きなドングリ眼を細め、柔らかい表
情に変わった。


「竜児くんも一緒に来てくれるの? 本当に? やた……っ! あっ、でも、嬉しいけど、
 竜児くんってば買い物あるでしょ? 隣町っていっても結構距離あるし、帰んの遅くなっち
 まうよ?」
 そう竜児に気を使う実乃梨は、寂しげに足元に視線を落とし、上目遣いに戸惑いがちな瞳を
竜児にチラチラと向けてくる。そんな可愛らしい仕草をされてしまうと、彼氏として大至急実
乃梨を抱きしめたくなってしまうのだが、ギリギリでその欲望を押さえ込むことに竜児の理性
は成功する。
「大丈夫だ。最近買い物はまとめ買いするようにしているし、泰子がお好み焼き屋から帰って
 くんのは夜十時ごろだし、それまで帰宅すればいいからな。実は実乃梨に話したい事もある
 んだ」
 と、竜児は咄嗟にウソをついた。買い物と母親の泰子の件は本当だが、特にかしこまって実
乃梨に話すことなど特に無かったのだ。
 ただ竜児は、最近二人だけの時間が取れない実乃梨と、少しでも一緒にいたかっただけなの
だ。あえて何か話すとすれば、ここ数日、将棋の対戦相手にさせられている同じ三年生の女子、
香椎奈々子のことくらいだろうか……そう竜児が思慮していると、実乃梨が腕を振り上げる。
「話したい事? そうなのけ? いよっしゃーっ竜児くぅーん! したらば一緒に隣町の学校
 に行こうぜよ! 私ソッコーで着替えてくっから、ちょくらそこで待ってておくれっ!」
 気のせいだろうか? 竜児には、ほんの少しだけ実乃梨の顔がピンク色に染まったように見
えた。ただ、確認しようにも実乃梨は既にランニングしている部員たちの元に戻り、一言二言
話しかけると、弾丸のように部室棟へと突進しているのであった。
 ……気のせいでもいい。竜児はそう思う。そして熱くなる己の頬に手をやり、ニヤニヤとし
た視線を竜児に集中砲火するソフトボール部の部員たちにクルリと背を向けたのだった。

 ***

「おうっマジかよ! ……ゲリラ豪雨」
「……とは、予測出来ない突発的な局地的な豪雨の事を言う。ねえ竜児くん、珍しいよねえ?
 春にこんな雨降るなんてさ!」
 練習試合の打ち合わせを終えた竜児と実乃梨は、振り出した突然の雨に大橋駅の構内で、足
止めをくらっていた。駅前のロータリーでは、アスファルトが雨で色を濃くし、雨水が川状に
絶え間なく流れ続けていた。
「ああ、すげえ雨だな。ツイてねえ」
 竜児は同じように雨宿りする乗客たちと共に空を溜息がちに見上げるのだが、その横で実乃
梨は、
「でもさ? でもですよ? 五月にゲリラ雨に遭遇するなんて、すっごいレアじゃん! ある
 意味ラッキーなのかもしんねえよ! うわはははーっ!」
 そんな感じで明るい声を聞かせてくれる。素敵だ。素敵女子だ。
 だから実乃梨といるときの竜児の心はこんな天候の中でも、晴れ渡っているのかもしれない。
「そう言われるとそうかもしれねえな? でもまあ実乃梨。用事済ませた後で良かったよな?」
 と、斜め下の実乃梨に視線を移すと、実乃梨も竜児を見上げていた。
「そうだねー? それはそうと竜児くんこれからどうすっか? 予定より早く打ち合わせ終わ
 ったし、スドバまで走って雨宿りしていかない? なんなら競争しよっか?」
 実乃梨は腕を前後に振り、はにかんだ笑顔を左右に振る。そんな実乃梨の頬に掛かる髪を竜
児はそっと手で拭いながら、
「おう? この雨の中をか? ……俺は別に構わねえけど、お前は来週試合なんだろ? 万が
 一、風邪でも引いたらどうすんだよ?」
 と忠告する竜児に実乃梨はアゴに手をやり、
「ヘーイ竜児くん。私はそんなにヤワに出来てねえよ? てか、そんなふうに私を真っ当な女
 子らしく気遣ってくれんのは世界中で竜児くんだけなんだな! ふはは、ありがとうね!」
 ニカッ! と笑顔をこぼし、竜児の手をぎゅっと握ってきた。それに竜児の胸はキュン!
と高鳴るのだが、手を握り返し、平静を装う。
「な、なんだよそれ、そんなの普通だって。……てか実乃梨、マジでスドバまで競争すっか?
 じゃあ負けたほうがオゴリな?」
 すると実乃梨の明るい笑顔はニヤリとした不敵な笑顔に変わり、今度は竜児の脇腹あたりを
軽く肘打ちしてきた。


「ほうほうオゴリとな? あはは竜児くん! そうきたかぞなもしっ! おーっし! その勝
 負受けて立とうではないか! 勝負となれば竜児くんといえど、手加減なしだ! ガチンコ
 勝負でいくぜ! お先!」
 と、実乃梨は繋いだ手を離し、豪雨の中を盛大に水柱を立てながら駆け出していった。
「わー、思ったより雨強えー!」
 とか喚きながら全力で加速していく。油断していた竜児も実乃梨を追い、豪雨の中に飛び込み、
叫んだ。
「おうっ待てよ実乃梨、それってフライングじゃねえか! ズルいぞっ!」
 前を走る実乃梨の耳に音速で追いついた竜児の吐き出したクレームは、実乃梨の足を一旦止
めて、雨に濡れた前髪の下に太陽のような笑顔を晒す実乃梨の顔を振り向かせた。
「ふわーっははははは! 勝負は無情なのだよ竜児くーん! 悔しければ追いついてって……
 ありゃ?」
 その場で足踏みをしていた実乃梨が何かを見つけ、突然フリーズする。竜児も実乃梨の視線
を追うと、その先の車道に漆黒のポルシェを見つけた。
 ポルシェの車体を叩く雨の音。そして車体から立ちのぼる湯気。その情景に竜児は軽い既視
感に襲われる……。確かこのポルシェは……その時、滑らかにポルシェの左ウインドウが開く。

「竜ちゃん、実乃梨ちゃん、こんにちは。昨日はありがとうね。とりあえず二人とも乗って」
 やはり大河の母親だった。竜児は実乃梨と顔を見合わせる。そして竜児。
「こっ、こんにちは。大河のお母さん……。でも俺たちこんなにビショ濡れですし、ご好意は
 嬉しいっすけど、かなりご迷惑では……」
 すると表情を変えずに大河の母親は、真っ赤なルージュを引いた薄い唇を開く。
「ノープロブレムよ。……いえ、実はあなたたちに大河の事で、お話しがあるの。お願い、乗
 って」
 その真っ直ぐな視線に困惑する竜児だったが、ややあって竜児のビショ濡れの制服の裾を実
乃梨が引っ張る。
「竜児くん、大事なお話らしいし、乗せてもらって聞かせてもらおうよ!では大河のお母さん!
 遠慮なく同乗させて頂きます!」
 実乃梨はいち早く車道へ出てポルシェの助手席のドアを開く。竜児も後を追って狭いポルシ
ェの車内に乗り込んだ。
「おうっ? これは、どこに座れば……」
 網の目のように鉄パイプが張り巡らされた後部座席……ていうか、座席というものが無い。
「乗り難くてごめんなさいね。竜ちゃんは後ろに上手く座って。実乃梨ちゃんはシートベルト
 の締め方わかるかしら?」
「はいっ。ええっと……やっぱわかんねーや。このシートベルトってどうやって締めるんです
 か?」
 実乃梨の身体を包み込むような硬いシートに、紅いシートベルトが縦に二本ぶら下がってい
る。大河の母親は手を差し伸べ、実乃梨の腰の辺りでシートベルトのバックルをカチャリとは
め込む。竜児はそれを、低い天井に何度か頭をぶつけながら覗いていた。
「これでヨシっと。発進するわね」
 するとポルシェが本気を出す。ブゥオオッ! ……ブウウオオオオッッッッ!
「ど「わはあっ!」痛え!」
 後ろから追突されたかのような強烈なポルシェの加速。竜児は車内の後部でひっくり返って
しまう。そして若干実乃梨より派手に叫んでしまった竜児は、なんとなく気恥ずかしくなり、
すっ転んだ体勢からすぐさま起き上がり正面を見ると、視界に入ったバックミラーには、大河
の母親の心配そうな顔が映っていた。
「あ、竜ちゃんついクセでごめんなさい。……遺憾よね」
 と、大河の母親は己の娘の口癖を呟き、緩やかに車速を落とした。
「いや、油断してました、大丈夫っす! それに掴むところいっぱいあるから平気っす。でも
 まあ、雨で視界も悪いですし、安全運転でお願いします……」
「そうね竜ちゃん。込み入った話もあるし、ゆっくり走るわね?」
 とはいうものの周りの車と比べてハイペースなのは変わらず、竜児はなんとなく、以前実乃
梨と遊園地で乗ったジェットコースターを思い出していた。

 ***


「竜児くーん、お風呂出たよ! シャワー貸してくれてありがとー! っふー、気持ち良かっ
 たぜ〜!」
 台所の奥にある風呂場から実乃梨が出てきた。実乃梨は竜児が用意した竜児愛用のバスタオ
ルを頭に撒き、これまた竜児愛用のスウェットを着ている。
「おう実乃梨。お前の制服、ドライヤー使って乾かしてたんだが、まだちょっと湿っぽいんだ。
 シャツとスカートはアイロン使ったから、だいぶいい感じに乾いたぞ? どうだ」
 と竜児は居間の卓袱台の下にキレイに折り畳んだ実乃梨の制服をアゴで指し示す。すぐさま
実乃梨は竜児の背後をすり抜け、卓袱台の前にペタンと座り、自分の制服を広げる。
「うおおっ、この短時間で竜児くんてば! ……いい仕事しますなあ。ありがとう!」

 結局、大河の母親は高須家まで竜児たちを送ってくれた。その道中、激しかった雨はウソみ
たいに止み、フロントガラスに映る西の空はキレイな茜色に染まるほど晴れ渡るのだが、高須
家までの中途半端な距離では竜児と実乃梨の、まるで着衣スイマーのように下着まで湿らした
制服を乾かすまでには至らず、竜児は自宅に入るなりほぼ強制的に実乃梨をバスルームに連行
していったのだった。
 そして実乃梨がシャワーを浴びている間、竜児は華麗なフットワークで、自室に戻って着替
えたり、実乃梨の着替えを用意したり、ちゃんと実乃梨に了解を得てから彼女の制服を脱衣場
に取りに行ってハンガーに掛けたりと、狭い2DKの中をいそいそと奔走したのだった。
「ねえ、竜児くんもお風呂入っちゃいなよ!」
 そんな実乃梨を尻目に、竜児も台所から二人分のカップをお盆に乗せて居間に戻った。
「俺はもう下着まで着替えちまったし、髪もドライヤーで乾かしたから大丈夫だ。それより実
 乃梨。ホットミルク作ったから飲め。次は身体の中から温ったまんねえとな?」
 竜児は片膝でしゃがみ、布巾で卓袱台を軽く拭いてから、お盆に乗せたカップを卓袱台に置
く。それを実乃梨は目で追いながら、風呂上がりで火照った頬を軽く緩める。

「わーおー、流石竜児くん! 相変わらず気が利くねえ、お主は。えへへ……では早速っ!
 いっただっきまーっす! んっ……ぐはっ!! ぉ熱っちー! 熱っちーけど、うめーっ!」
 と、実乃梨は叫んだと思ったら、そのまままたカップを口にし、イッキに飲み干す。
 そして空になったカップを高く掲げた。そんな実乃梨に思わず開口してしまう竜児だったの
だが、すぐに我に返り、己の分のカップを差し出した。
「だ、大丈夫かよ実乃梨? ミルクくれえいくらでもあるからそんなに慌てて飲むことねえぞ?
 ほら、俺のをやっから」
 すると実乃梨は目を細め、首を横に振る。
「んーん、平気。ほらだって、風呂上がりのミルクってのは、腰に手を当ててイッキ飲みする
 ってのが、お決まりじゃんさあ。てへへっ……話変わるけど、竜児くん、大河のお母さんの
 お陰で早く戻ってこれて助かったよねえ? スドバまでの勝負はお預けになっちまったけど、
 よく考えたらビショ濡れのまま店に入ったら須藤さんに迷惑だったしね?」
 コトッ、と実乃梨は現役ウェイトレスならではの柔らかい仕草で卓袱台にカップを戻した。
竜児も一度手に取ったカップを口にする事なく、その隣にそっと置いた。
「そっか? ……ってマジだ! まだ五時前じゃねえか。確かに全然早えなっ!」
 そんな感じで竜児が居間の時計を確認していると、竜児の隣に、実乃梨が体育座りして寄り
かかってきた。すると竜児の鼻先に実乃梨の体臭が漂い、触れた柔らかい実乃梨の肌の感触に、
もの凄くモヤモヤしてきてしまう……のだが、ガンバッて自制する。そして我ながら思う。
 俺ってジェントルだよな、と。
「しっ、しかしさっきは驚いたよな実乃梨? ほら、ポルシェの運転もビックリだったけど大
 河のおふくろさんが偽乳バッドの再作成依頼料にって。小切手出してきたじゃねえか。俺、
 生まれて初めて小切手ってもん見たぞ?」


 そうだったのだ。大河の母親の要件とは、偽乳パットの再作成の依頼だったのだ。
 なんでも大河の母親は、先日大河の擬乳パッドを、間違って乾燥機に掛けてしまい、さらに
操作を間違っちゃって、黒焦げにしてしまったので、大河に内緒で、プール開きの六月までに、
新たにパットを作ってくれないかと頼んできたのだ。
 親子でドジで、ごめんなさいねえ……などと平伏しながら。
「だね? 私も初めて見たぜよ! そんでもって、『ここに好きな金額を入れて頂戴……』
 って言ってたよねえ? うっはー! 恰好えーわ! 俺も死ぬまでに、一回くれえそんな台
 詞、言ってみてえぜ〜っ!」
 実乃梨は、大きな身振り手振りで竜児の肩にガシガシぶつかってくる。しかし竜児はそれが
なんだか心地よく思えるのだ。
 決してマゾっ気がある訳ではないのだが。
「それもそうだが、お代は結構です! って、即答した実乃梨だってなかなか恰好良かったぞ?
 まあ、もともと原材費タダみてえなモンなんだけどな」
「あはは。本当は私だけじゃなくって、竜児くんにも手伝ってくれたモンだし、勝手にタダっ
 て言っちまってよかったのかなぁーって内心思ってたのだよ。やっぱり優しいねぇ? お主は」
 そんなふうに実乃梨に褒められた。さらに実乃梨は竜児の腕に絡まってきた。荒くなる息。
竜児のテンションが上がり、自制心も揺らぐ。だから竜児は話題を変えてみた。

「そ、そういえば俺、昨日からなんか大河の態度がおかしいと思ってたんだよ。大河のヤツも
 しかしたら母親が偽乳パット焦がしちまった知らねえで、らく〜じゃ言った後に、自分で無
 くしちまったと思ってるんじゃねえのか? それで辻褄が合う」
 組んでいたあぐらを解いて、竜児は思いふけるようにして天井を見上げる。すると実乃梨が
猫のようにして、さらに竜児にくっついてきた。軽快にフフ〜ン♪ と鼻歌混じりに、
「はっはーん。そういえば大河、三年になってから一回、らく〜じゃでパット使ったよねえ?
 竜児くんの推理、結構当たってっかもね? 大河ったら、そんな事気にしないでいいのによ
 ーっ……でもなんか、そんなに気にしてもらって、嬉しいかも〜!」
と言って、さらに実乃梨は竜児に体重を乗せてくる。ヤバイ。何がヤバイかって、自制心が保
てられなくなってきた。そして、
「そうだ実乃梨。晩飯食ってかねえか? 最近一人で食ってるから、実乃梨が一緒だと嬉しい」
 竜児は実乃梨を夕食に誘ってみた。竜児の言った通り、母親の泰子が昼の仕事、お好み焼き
屋『弁財天国』を始めてから、高須家の夕食タイムは遅くなったのだ。転勤当初は律儀に泰子
が帰宅するまで竜児は夕食を食べるのを待っていたのだが、帰りが夜十時を過ぎる日も多く、
「竜ちゃん先に食べて〜☆」と、最近泰子からのお許しが出ていたのだ。
「ええ? マジっすか? やべえ超うれしーかも! 竜児くんの手料理、ちょー久しぶりだか
 らよ! 食べる、食べるに決まってんよ! ちょっと待って? 家にメールすんよ!」
 実乃梨は竜児と離れ、居間の隅に立てかけていたカバンに飛びついた。そしてカバンからケ
ータイを取り出し、メールを打ちはじめる。それを横目に、竜児は落ち着くためにミルクをひ
とすすり、
「週末にスーパーヨントクでシャケの切り身が特売しててな。焼いてもいいし、蒸しても美味
 いぞ? でもその前に……なあ実乃梨」
 竜児は実乃梨の背後に近づいて、そして実乃梨を抱きしめた。振り返る実乃梨。柔らかい髪
先が、竜児の頬にかかる……甘い匂いと一緒に。これが決定打だった。
「なあに竜児くん? 重いよーっ」
 ゴクリ。竜児の喉仏が上下に動く。そして。理性が吹き飛んだ。

「その前に……俺の部屋に行かねえか?」

 ***


「あっ……」
 強く引き寄せられる私の身体。そのときの私は、彼のベッドの上で彼と並んで座っていた。
「……もっと早くこうしたかった」
 そう耳元で囁く彼の頬に、私は短いキスをした。
「私も……」
 と、自然と私は本音を洩らす。そして改めて彼への熱い恋心に気づかされる。なんとなく……
なんだけど、お腹の奥がムズムズしてくる。抱かれている私の肩に触れる彼の胸。その体温の
温もりに、どうしようもなく飛び込みたくなってくるんだ。

「実乃梨……」
「んっ」
 チュッパ。私は彼の唇に吸い付いた。そして息のかかる距離で見上げた彼は目を細め、その
まま私の肉体に視線を走らせてくる。私の太もも、胸、そして首の辺りに。その視線が……熱
い。うん、感じる……そんな私の首筋に彼がキス。
「ん! あっ……竜児くん、最近部活とかで、その……放っておいて、ごめんなさい」
 私の肩にあった彼の指先が、すーっと下に降りてきて、私のカラダの線を優しくなぞる。ち
ょっとくすぐったいけど……イヤじゃない。
「いや、すまねえ。そんな意味で言ったんじゃねえんだ。お前のこと責めてる訳じゃなくって
 ……なんていうかその……いや。なくねえな。でも実乃梨……」
 言葉を選ぶようにして彼は視線を落とす。そんな彼の次の句を、私は黙って待った。でも彼
の手の甲に、私は手を重ねていた。
「淋しいのはお互い様だろうし、そんなんでお前の足で纏いになりたくねえんだ」
「竜児くんが足で纏いだなんてそんなこと……ねえ竜児くんっ」

 抱いて……。
 無意識に私はそうなふうに言ったと思う。そんなふうに言ったはずなのに、私から彼の襟首
に両手を廻し、ギュウと、愛おしい彼を強く抱いてしまった。
 私の二つの胸が、彼の胸で押し潰されるのがわかる。
 もともと彼の部屋は薄暗い。だから私は唇で、彼の表情を確認する。
彼の眉、彼の鼻先、彼の頬、そして重なる唇。
 どんなアロマより官能的な彼の匂い。それは元来奥手な私の心に激しい火を灯す。そしてム
ニュ。んっ! ……彼の指が私が着ているスウェットの中に侵入してきて、下着を着けてない
私の胸に食い込んできた。感じちゃう……あっ。
「はあんっ……竜児、くんっ。んふっ」
 その指で、私のおっぱいは持ち上げるようにして彼に揉まれ、食い込んだ指の一つが、おっ
ぱいの先端を、グニュンとボタンのように押し込まれる。んはっ! ……身体に光が走る。そ
して火のついた私の心は強烈な炎となって、からだ全体を包んでいった。
「あんっ……っ! あっ、あっ、あっ、くぅっ、あはぁんっ!もうっ」
 ……とろけていた。だって、さっきから竜児くんの指先が、私の下半身の一番敏感な中心を
まさぐっていたから。今の私はどんなエッチな顔をしているんだろう。湯気が出るほど顔中が
熱い。

「おう……」
 くちゅくちゅと、彼の指先が動くたび、私の下半身からそんな音がする。すっげー恥ずかし
い。そう思いながらも、私は彼に身を任せる。私の身体が軽くなっていって、宙に浮かぶ。そ
う感じる。
「あんっ! あんっ! あはぁっ、んっ、んアッ!」
 そして、彼の生肌が恋しくなり、私は彼のTシャツを捲りあげる。夢中で吸い付いた彼の乳
首は、少ししょっぱかった。
「おおうっ! ……なあ実乃梨。服、全部脱いじまおう」
 途端、彼は、彼らしくなくほど乱暴に服を一気に脱ぎ捨てた。私も同じようにして彼に半分
捲られていたスウェットを自分の手で剥ぎ取った。
 そして私たちはお互いに一糸纏わぬ、全裸になる。

「あァんっ、竜児くん、竜児……くん」
 飛びつくようにして私は汗ばむ彼の身体に抱きついた。それでもなお、彼は私の下半身から
指先を離すことはなかった。
「実乃梨っ」
 チュ、チュ、チュ……と私の名を呼ぶ彼にいっぱいキスをする。そして裸で抱き合う心地よ
さを存分に味わう。竜児くんのおっきくなったところが、私のむっちりした汗ばむ太ももと擦
れる。で、またキスをする。肌をぴったりくっつけているのに、もっとくっつきたくって、私
は彼の背中をまさぐる。同じように彼も私のいたるところをモミモミしてくる。
 ……そうしているうちに私の身体は感電したかのように何度もピクッと反応しちゃうんだ。

「はあっ、はァン! あぅぅ……き、気持ちーよぉ……」
 大好きな彼にアソコをいぢられ続けたせいで、爆発しそうなほど、頭の中が、ハートマーク
でいっぱいになっていた。理性とか、そんなもんは全て投げ捨てちゃって、信頼する彼に、エ
ッチな自分を曝け出す……もう、わけわかんねー。
「あああっ、んあっ! くくっ……あんっ、あん、あふぅ、あはぁっ!!」
 止まらない彼の指。ぐちゅぐちゅの私。腕にしがみつく。あっ、はあ、はあ、ビリビリする。
そしたら口に中に彼の舌がニュルリと。
「チュパッ……ちゅるるるっ。あはぁっ! はあっ! はあっ! いっ……くううっっ!」
 ぎゅーん! とした。アソコが。そんな感じ。
 いぢられていたアソコを中心に身体が縮こまっちゃう感じ。それが限界までいって、そして。
「はあっ! あはあっ! やんっ! やぁああっっ! いっ、いくうぅっ……!」

 ピクンピクンッ! って私のカラダが跳ねた拍子に、意識がまぶしい光に包まれて、ふっ、
と力が抜けて、ベッドの奥に沈んで行く。イッちゃった……。恥ずかしくって、じゅん……っ
て、おデコから汗がでる。はあっはあっ、私の粗い息が彼の部屋に響いてる……。

「実乃梨、お前のそんな表情も。好きだ」
 やさしく彼は私のおデコにキスしてくれた。それでまた、ポカポカした彼への愛情が波紋の
ように広がる。でも、私ばっかりじゃ……と思って覚悟を決める。


「もうそんなこと言ってぇ! 竜児くんいぢわるっ! 次は、櫛枝のターン……」
 とりあえず私も彼のおデコにキス。そして首、胸板、おへそとだんだん下のほうへとキスを
してって……彼のカタくなっているアソコ……。くんくんっ、なんかエッチな臭い……がする。
 その、彼のアソコをキュッ! と握り、私はアソコの先っちょを舌先でチロチロする。
「お、おくうっ!」
 彼の喉の奥から喘ぐ声が漏れる。私は一度顔を上げ、彼の股の間から、彼の表情を覗き見
してみる。すごく真っ赤だった。
「んふっ……竜児くん。いっぱい気持ちよくなって?」
 そう言ってまた、彼の肌にチュと吸いついて快感を煽ってみる。
 すると彼の手は、私の胸の先端を強く摘んできた。ンぁっ! ……刺激が強すぎて、声が漏
れそうになっちゃう。でも私は彼の熱いアソコを深く咥えることで、自分の口を塞いだ。ヨダ
レがいっぱいでちゃった……じゅるり……と。
「んっんっ、んんっ……チュパっ……ちゅるん」
 舌をころがし、吸い付き、夢中でしゃぶしゃぶする。さっきまでふにゃふにゃしていた、
彼の袋っぽいところがパンパンに引き締まってる。私はそこも、舌先でチロチロなぞったりし
てみた。

「ん、んんっ……ちゅるる、ちゅぱんっ……竜児くん……すごく固いよ……んんっ」
 口の中で勃っている彼のアソコに、私は舌を絡めて、そのカタチを確認してみる。チロチロ
……ちゅぷんちゅぷん……アソコのエラの張った部分、そして根元の浮き出た血管の脈動が激
しくなっていくのがわかる。
「おうっ! ……み、実乃梨っ!」
「んぁっ……竜児くん……チュパ」
 時折、彼は大きく身をよじり、振りほどされそうになるけれど、夢中で私は彼の太ももを胸
に抱いて、その行為を続ける。私の口から流れでた涎が、彼のお尻のほうまで筋になって、流
れていく。
 その筋に私は指先を、つつつ……っと滑らせたりしてみた。ヌルヌルして、糸を引いてて、
まるで蜜のようになってる。
「くはっ! や、やべえ……気持ちよすぎる」
彼のアソコがビクビク疼く。彼が感じている。そう思うだけで私の毛の奥にあるアソコも、
ウズウズしてくる。
「ちゅぷ、ちゅぷん……はぁっ、はぁっ、ちゅぷぷ。あんっ!」
 私の髪を撫でていた彼の手が、びっしょりと汗に濡れた私のおっぱいをムニュムニュと激し
く揉みしだく。そろそろイッちゃうかな……と、思ったら彼は、
「おううっ! ……実乃梨。実乃梨、俺、挿れてえ」
 と、私を欲してくれる。もちろん私も同じ気持ちだった。ビンビンに大きくなった彼のアソ
コを欲しくなっていた。
「うん竜児くん……いいよ……私をいっぱい愛して」
 そう言って私はベッドに仰向けになって、両手を広げてみた。両脚を広げ、私のトロトロに
なった入り口を彼に晒した。
 薄明かりに浮かぶ彼の表情はとっても優しく、そしてとっても素敵だった。早く、挿れてほ
しい……彼が欲しい。ひくひくしちゃう。……今すぐ……ほしい。
 愛する彼と、私はひとつになりたいの。


──To be continued……





266 ◆9VH6xuHQDo sage 2010/07/25(日) 23:46:08 ID:5tWG/49K
以上になります。お読み頂いた方有り難うございました。
ねり難うございました。久しぶりなので、手間取ってしまいました。
また、上げてしまって申し訳ございませんでした。
次回、完成次第投下させて頂きたく存じます。
失礼いたします。


256 ◆9VH6xuHQDo 2010/07/25(日) 23:25:40 ID:5tWG/49K

投下させて頂きます。先月投下させて頂いた。
>88 M☆Gアフター8ー15からの続きです。

題名 * M☆Gアフター8(中編)
時期 * 三年生の五月。第3月曜日。母の日の翌日の午後。
設定 * 竜×実。付き合って十一ヶ月。
物量 * 8レスになります。
注意 * 原作とカップリングが違うので、みの☆ゴン未読ですと不快かもしれません。
     また主要キャラの母親が出て来ます。独自の解釈でのキャラ設定なので違和
     感あるかもしれません。宜しくお願い申し上げます。

コメントをかく


ユーザーIDでかく場合はこちら

画像に記載されている文字を下のフォームに入力してください。

「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

×

この広告は60日間更新がないwikiに表示されております。

Menu

竹宮ゆゆこスレ18皿目以降

■タグ一覧

亜美

複数、他

フリーエリア

管理人のみ編集できます