竹宮ゆゆこスレ保管庫の補完庫 - 勝手にチワドラP 修学旅行前の日常編 前編
チワP〜修学旅行前の日常〜前編 2009/05/13(水) 03:34:51 ID:qq9cPpvi



北村との会合より、さらに数日後。
その日は休日で、俺は、昨晩の疲れもあり、と、いっても単に、曇っていた鍋を磨いていただけなのだが、
昼前だというのに、だらしなく惰眠を貪っていた。
我ながら、自堕落だとは思うのだが、泰子は、まだ寝ている様で、飯の準備や洗濯は既に終えているし、
掃除については、まぁ、掃く、拭くはしてある。掃除機をかけて泰子を起こすと悪いからな。
等と、ひとしきり言い訳をしておいて、布団の中で安穏としていた訳である。
だが、そういう時間は長くは続かず、そう、具体的に言えば、携帯の着信音によって、終わりを告げた。
ディスプレイに『あ〜みん』と、表示されていなければ、
少し、不機嫌になったか…事によっては、居留守位の事はしたかもしれない。
人間、脳が半分、眠っていると、何をするか解らないから、怖いものである。
『もしもし?』
「…おう。」
『あれ?何か、元気ないね?』
「今、起きたトコなんだ。」
『竜児が寝坊?珍しいなぁ〜調子良くないの?』
「いや、昼寝だよ。寝坊じゃねぇ。
別に調子は悪く無いぞ、心配してくれてありがとな。」
『うん。問題ないなら良かった。』
「おう。そういえば、亜美、この時間に電話出来るって事は、もう帰って来てるのか?」
『うん。昨日の晩に。
ホントは、すぐに電話したかったんだけど…
家に付いたら、倒れちゃって…気付いたら寝ちゃってた。』
「おう。お疲れ様。
てか、亜美の方こそ大丈夫か?」
『うん。いつもの事だもん。これでも、一応、プロだし。
それで、今から会えないかな?』
「おう。いいぞ。
どこで、待ち合わせにする?」
『…ん…とね、その…亜美ちゃんの家まで来て欲しいなぁ〜なんて。』
「おう。かまわないぞ。
って…言っても、俺、亜美の家、どこにあるか聞いてなかった気がするが。」
『うん。まだ、言ってないもん。
大橋で待ち合わせしよっか?近くなんだ。』
「おう。それじゃあ、お土産に何か作って行くから、30分後に大橋で良いか?」

『…今、スグが良い。スグに会いたい。』
「俺だって、早く会いたいけど…
手ぶらって訳にはいかないだろ?」
『イイよ手ぶらで。
今、家の人居ないからさ。』
「え?お前1人なのか?」
『そうだよ。』
「女の子が1人の時に他人ん家に上がり込むなんて…けし−
『からなくないから。
てか、こないだ、初めての女の子に あ〜んなハードな事しといて…
そんな事、言う気!?』
「冗談だよ、冗談。解った。スグ行くから。大橋だな?」
『うん。待ってる。』
「おう。」

電話を切った俺は、泰子が飢え死にしない様、昼飯をテーブルに広げ、蠅除け篭を乗せ、
その横に、メモを残し、あと一仕事だけしてから、家を出た。

「おっそ〜い。」
亜美は、橋の真ん中で仁王立ちになり、悪態を付きつつも、
満面の笑みで、俺を迎えた。
「…ぜぇぜぇ…無理言うな…はぁはぁ…これ以上…走れるかよ…ごほっごほっ…」
柵にもたれかかり、持参した水筒から、ぬるめの烏龍茶をコップに注いだ。
へたりこんだ俺の半身を、亜美の影が、にゅっと伸びて覆った。
「なっさけないなぁ〜」
亜美の事だから、また意地の悪い顔で俺を見下ろしている事だろう。
まぁ、そんな亜美も嫌いじゃないから…と、頭を上げると、
「ほら、手。掴まって。」
天使の様な笑顔で、スッと手を差し伸べる亜美が、そこに居た。
「お、おう。」
「ふふふん。感動した?超イイ娘の亜美ちゃんに。この優しさに。」
手を取った俺が立ち上がった瞬間、天使の様だった口の端が、ニィ〜っと、意地悪く歪んだ。
おう。ここでくるのか。これだよ。この黒さだよ。これが亜美だ。
この時、亜美の黒さが愛おしいと、思える程には、俺は、亜美に慣れていた。
「おう。」
「あれ?おう。…なんだ?絶対、するか。だと思ったのに。」
「おう。色々、思うトコがあるんだよ。心境の変化っつーか。」
「へぇ…。じゃあ、良い娘の亜美ちゃんには、何かご褒美があるべきだよね?
…このまま家まで、手、繋いだままでいよっか?」
など、と言いつつ、手を握り変えて、見せつける様に、顔の高さまで上げた。
「おう、よろしく…」
「ヤダ、緊張してんの?
手、繋ぐ位、今更じゃん?もっとスゴイ事いっぱいしたよね?」

「お前だって…緊張してるんじゃないのか?声、上擦ってるぞ?」
「そ、そんな事…ないよ。」
「おう、あるな。」
「…可愛くねぇ奴。」
「…可愛い奴。」
「ふんッ。言ってろ。ばか。」
プリプリ怒りながら、大股で歩く亜美は、
一度も手を離す事無く、俺を家へと連れて行った。

***

……………
通された部屋は(中略)。
吉幾三ばりのないない尽くしで、生活感が特に無かった。
「大丈夫。実家はちゃんとオシャレだから。」
「いや、それは、まあ、良いんだが…
ここのスペースに何か違和感がな…」
そう。俺が座っている場所は、どうにも奇妙だった。
元々、在るべきモノが無いというか…其処にムリヤリ作られた場所…の様な。
「ああ、そこはいつも炬燵があるんだ。
今日は暖かいし、竜児が来るから、邪魔だと思って片付けたの。違和感は、それじゃない?
…てか、流石、変態掃除魔…初めて来た彼女の家で、
最初に気になる事が、それ?」
と、言いながら、俺の隣に腰を下ろす亜美。
「おう。ダメなのか?」
「別に。それが、竜児だし。嫌いじゃないよ。」
いつかの様に、肩に頭を預けてくる。
亜美の旋毛は…右巻きなのか…
女の子の髪の匂いって…何故こうも良い匂いなんだろう…
日本未発売の最新限定リンスだったっけ?
フワフワでポカポカな匂いに、俺は、少し微睡んでいた。
「何か…眠い…時差ボケかな?」
「俺も…まだ眠い。寝不足だ。」
「このまま…お昼寝しよっか?」
「初めて来た彼女の家で、最初にする事としては…どうなんだ?」
「良いんじゃない?かなりバカップルっぽいけど…」
「そうか。」
「そう。てか…もう、亜美ちゃん限界…おやすみ。」
「おう。おやすみ。」
そのまま、2人寄り添う様にして、泥の様に眠りこけた。
−そして、しばらくして、足が酷く痛み、俺が先に目を覚ました。
いつの間にか、アグラを掻いた俺の膝を亜美が枕にしていた。
足は、痺れて感覚が無くなりつつあったが、気持ち良さそうな亜美の寝顔を見ると、
起こす事が、とても残酷な様に思えて、…そのままにしておいた。

それでも…ヨダレはマズイだろうな、年頃の女の子が。
ましてや、こいつはモデルだし、起きた時、顔にヨダレの痕がついていたら、憤死するんじゃないだろうか?
そう思い、俺は、亜美を起こさない様に頑張りながら、
何とかポケットから、清潔なハンカチを取り出し、
そっと…その子供の様な、あどけない口の端を拭いてやった。
それから、さらにしばらく経って、流石に痺れが限界に達しそうになった時、
長すぎる睫毛に護られた瞳が、パチリと開いた。
キスもされていないのに、お姫様は眠りから醒めたのだった。
「おはよ。」
「おう。おはよう。
起き抜けに悪いんだが…頼みを聞いてくれないか?」
「え?何?」
「頭…上げてくれ。限界だ。」
「あ、あぁ!?ゴメン。スグどくから。」
お姫様は、あわてて飛び起きた。
「足…大丈夫?」
「おう。痺れてるだけだから、放っておけば、すぐ取れる。」
「ゴメン。いつの間にか…枕にしちゃって」
「気にすんなよ。疲れてたんだろ?」
「うん。ホント、ゴメン。」
「いいから。」
俺は、その場にスッと立ち上がり、ピョンピョンと軽く飛んでみせた。
「ほら、痺れも取れた。」
まだ、若干、鈍い違和感が、あるにはあるが、引きつる様な痺れは取れた。
「………」
すると、無言で亜美が、つん、と俺の足に触れてきた。
「おう?」
「ホントだ。いや、やせ我慢してるんじゃないかな?と思って。」
「…それで?してたらどうするつもりだったんだ?」
「竜児は、飛び上がったんじゃない?」
「お前は?」
「とりあえず笑う。あはははは。」
…何なんだ?一体。
「あははは。じゃねぇ。寝ぼけてんのか?」
「ん〜どうだろ?ちょっと、ボ〜っとしてるかも?」
「疲れてんのか?」
「ん…少し。竜児のおかげで大分リフレ−きゃあッ!?え、何?」
ホントにボ〜っとしていたので、不意打ち同然に、膝で半立ちになり、亜美の肩を抱いてやった。
「疲れてんなら…マッサージしてやるよ。」
「え?マッサージ?
……マッサージにかこつけて、いやらしい事する気でしょ?
シたいならシたいって言えば良いのに…」

「そんな台詞を吐いた事…後悔させてやる。
俺のマッサージは108式まであるぞ。」
「え?マジ?ガチマッサージ?
でも…それはそれでどうなのよ?
一緒の部屋に居て、そんな気が起きないなんて…あたしに対して、ものすごく失礼じゃない?」
「…いや、そんな気が、全く無くも無いぞ?二割位はある。
ただ、疲れてるみたいだから、とりあえずは普通にマッサージしてやろうと思って。」
「ふぅん。じゃあ、普通じゃないマッサージもするんだ?」
「…後でな。」
「二割っていうのが、気になるけど…解った。
あたしの身体、竜児に預けるから…好きにしてよ。」
「おう。」

***

「痛いッ痛い痛い。痛いってば…ちょ…聞いてる?」
「我慢しろ。痛いって事は、どっか悪いんだ。」
頭、顔、肩、腰、腿、と順番にもみほぐしている間、
ずっと静かにうたた寝していた亜美だったが、
足裏マッサージを敢行したとたんに、ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。
まあ、予想はしていたが…やっぱ身体の内側病んでたんだ…コイツ。
「信じらんない。親指一つでここまで、人を痛がらせるなんて。
マジ痛い。てか、どっかってドコ?」
「さあ?本でチラッと見ただけだからなぁ…
心臓だったか、肝臓だったか、胃だったか…腎臓だったかも?」
「ヒィ…痛い、イタタタタタ…アァ…ちょ、ヤメ…タイム、タイムだって…」
端正に整えられた顔が、苦痛に歪み…眉間には深い亀裂が刻まれていた。
何か…ゾクゾクする。
俺に、こんな趣味は絶対に無いはずだった。
人の嫌がる事をしてまで、己が欲求を満たそうとは、到底思わない。
でも…これは?俺は今、亜美の身体の為にツボを刺激している。
その結果、亜美の表情は苦痛に歪み、俺の加虐心を煽っている。
これは…何だ?
「くぅぅぅ……い、いい加減に…しろぉぉぉッ!!」

スパコ〜ン
と、勢いよく、頭を叩かれた。
「おう。は、俺は一体?」
「一体?じゃねぇ〜っつの。亜美ちゃんを殺す気?
もう二度と立てなくなるトコだよ。超、超、超、痛かった。」
「面目ない。つい。」
「もう。それで、今のって何のツボなの?
すっげぇ、痛かったんですけど。」
「ええと。……聞かない方が良いんじゃないか?
俺も、適当な本で得た適当な知識だし。」
「…気になる。言って。」
「いや…でも。」
「いいから。言ってみなって。」
「……卵巣。」
「は?え?ら、卵巣?」
それきり、亜美は、固まって動かなくなってしまった。
やはり、言わない方が良かったのかもしれない。
が、言ってしまったものは、仕方ない。後の祭り、という奴である。
そして、解凍された亜美が、
「それって…すごくヤバくない?え?でも、毎月、ちゃんと来てるよ?
そういうのとは…また別?うそ…どうしよ…」
などと、聞いてもいないのに、プライベートな部分を赤裸々に暴露していた。
「いや、だから、悪いと決まった訳じゃ…
俺は、医者でも何でも無いんだし、そんなに心配しなくても…
そんなに気になるなら、一度、検索受けてみたらどうだ?」
「うん。そうする。
けど、今すぐはムリだよね?」
「まぁ、急がなくても良いとは思うが。」
「今すぐ、検査する方法があるには、あるんだけど…」
「ん?」
何か、コイツが何を言うか、解るような…
「使えるかどうか…試してみれば良いんじゃない?」
やっぱり。
「いや…それはどうだろうな。
というか、疲れてるんじゃないのか?」
「疲れてるからこそ、シたいんじゃない。
…ヤなの?もしかして。」
「いや、望むところだけどよ。
何か、マッサージにかこつけて…になっちまったなぁと思って。」
「もう。つまんない事気にしないの。
あたしがシたい様にするんだから、竜児は横になっててよ。」
「お、おう。」
促されるまま、横になった俺の上に、
完璧、ヤル気満々な亜美が覆い被さってきたのであった。

つづく。