竹宮ゆゆこスレ保管庫の補完庫 - 雪
雪 98VM sage 2009/12/17(木) 20:28:50 ID:pd4BFU01
最近になって、ようやく仕事が戻ってき始めた。
暇モデルとか言われて腹を立てていたが、年が明けるまでは実際仕事は少なかったのだ。
久々に法律ギリギリの時間まで撮影があって。
寒さにかじかむ手を揉み、肩を竦めながら、
撮影スタジオから出た。
そういえば、今日の天気予報はみてなかったっけ…。
どおりで寒いわけだ。
夜空を見上げると、白いものがふわふわと舞い降りてきていた。
雪 98VM
「わぁ…」
微かな感嘆の声をあげ、空を見上げる。
街灯の明かりに照らされて、漆黒の夜空に白い雪が映える。
かじかむ手を差し出す。
ひらり。
舞い降りたそれは、たちまちのうちに溶けて水滴になった。
ひらり、ひらり。
掌が濡れていく。
「ふっ…」
溜息とも、笑いともつかない息を吐く。
掌ばかりではない。 アスファルトの道を、石畳の公園を、濡らしていく冬空の贈り物。
雪は積らないうちから、淡く消え去っていくばかり。
『まるで、あたしの恋みたい。』
……あと2月もすれば、新学期がやってくる。
あたしの頭じゃ、彼と同じクラスには逆立ちしたって行けっこない。
そしたら、後の席から見つめる事さえ出来なくなる。
もともと一つの分岐も無いあみだくじみたいなものだった。
それでも、当たらないのはやっぱり残念だし、悲しいのだと知った。
もうやめにしよう、いつもそう思う。
けれど、ふとしたきっかけで、こうした狭間に落ちることがある。
コートの襟を立て、薄いサングラスをかける。
最後に一つだけ、と思って掌で受けた雪は、直ぐに水滴となって心を濡らした。
街の明かりを鏡のように映し出す道に、舞い降りては溶けていく雪。
降りしきる雪の中を歩き出す。
彼女の頬の雪は ――― まだ 溶けない。
了