竹宮ゆゆこスレ保管庫の補完庫 - 大掃除 〜抗えない運命
大掃除 〜抗えない運命〜 2009/11/29(日) 20:04:05 ID:L2a5/pvz


ま、まただ。またヤツが来た。
凶悪犯のような顔面を持ち、三白眼の奥を光らせ、不気味な笑みを浮かべ、平然と仲間達の命をさらっていった死神。
手には僕の仲間達を死に追いやった奇妙な棒を持っている。
マスクの下の口端はきっとおかしいくらい上がっていることだろうことは容易に想像できる。
なんとか難を逃れてきた僕もとうとうこの男の手にかかるらしい。
うっ。み、見つかった!?
くそぉ。不気味に光ったヤツの眼はさらに輝きを増し、僕を見つけた喜びに満ちているようだ。
ん?
いや、ヤツの視線の先に僕はいなかった。
端に隠れていた仲間が見つかったのかもしれない。
……やっぱり。
やっぱり物陰の奥に隠れていた仲間が見つかってしまった。
ヤツは小刻みに不穏な動きを繰り返す。
「や、やめてくれ―――っ!!」
耳を塞ぎたくなるような仲間のいたたまれない悲鳴が聞えてきた。
「さ、斉藤―――――っ!!」
僕は無意識の内に叫んでしまう。
その声が聞こえたのか斉藤の息の根を止めたヤツは僕の方へ身体を向ける。
……近づいてきた。
さっきよりもずっと凶悪な笑みを浮かべて。
次は僕の番らしい。
僕を倒しにやってきた。
時間稼ぎをできるはずもなく、されるがまま蹂躙されるしかない。
身体が動かない僕が必死に生きてきたこの場所。
ヤツはそこから追い出そうとするわけではなく、僕という存在を闇へと葬ろうとしている。
同情の余地くらいないのか?
僕はヤツに何もしていないというのに!
なんだ?
なんなんだ、この理不尽な暴力は!
四月にヤツがこの家にやって来るまでここは僕らにとって楽園だった。
それなのに――ヤツが現れた瞬間、ここは地獄と化した。
早々に忘れたい記憶だったが、簡単には忘れることはできなかった。
僕達の縄張りにズカズカと入って来たと思ったら部屋の中を見渡した瞬間、嬉々とした表情をし、どこからか出してきた凶器で僕達を排除しにかかる。
薬を捲き、窒息させた。
ガザガザの布で拭い、水の中に溺れさせた。
機械を使い、次々に飲み込ませていった。
僕らは突然訪れた地獄に飲まれ、パニックに陥り、何も出来なかった。
残ったのは僕と一握りの仲間達。
その仲間達も次々に葬られていった……。

なんとか今までヤツの手から逃れてきた僕の命も残りわずからしい。
悔いはあるがそれが僕の運命なんだろう。
それを受け入れるしかない残酷な運命。
僕は今ほど自分の無力さを呪ったことはない。
ぐあっ!
気が付いたら僕の身体が削り取られていた。
僕の顔が苦痛で歪むほど、ヤツの顔は狂喜で歪んでいく。
どうやら僕の命はここまでらしい。
ただ僕は生き……たかっただけ…なのに……。
な…んで………。
僕が最後に見たものは、ヤ…ツの歪んだ……笑みだった―――。


「ふう、これで最後か。今回の敵は結構なもんだったが、終わっちまうと少し虚しいな」
竜児はかつてない程の大掃除に歓喜し、頼まれもしないうちに大河の家を綺麗に掃除してしまった。
満足したのか、綺麗になった家に興味がなくなったのか、掃除道具を持って早々に立ち去っていった。

おわり。