中風

(1)病因は病理である

本文
 内経、移精変気論に、岐伯の曰く、これを治するに、一に極まる。
 帝曰く、何をか一という。
 岐伯曰く、一は因これを得る。言う心は、一は天地の至数、万物の本根たり。医の病を治するも、また一の道に極まる。
 すなわち、病因、その一の道を得るなり。医として、よく因を得る者は、独り視て、独り聞き、神に通じ、変に応じ、正行をして聞くことなく、問うことなく、陰陽をわきまえ、死生明らかにして効を得ること、止水形を移し、洪鐘響きを答えるがごとし。
 いやしくも、病因いまだ詳らかにならずんば、何を以てか治法を弁ぜん。古人の謂う神聖工巧は、何にかあるや。皆その因を察すべきの儲けのみ。病因明らかなる則は、治法の要、ここに著し。補瀉よく施して、十全の効を得るべし。故に余、不敏なれども、ひそかにこの集を編みて、庸医、昧(くら)うして因を得難き者の便りすること左のごとし。
注釈
内経、移精変気論 『黄帝内経素問』移精変気論篇第十三
至数 重要な道理
止水 流れない水。静かに澄んだたまり水
超訳
 診断治療する上で大切なことの第一は、病気の原因を知ることです。病因をしっかりつきとめられる医者は、病気の根本が分かるので、病の陰陽虚実が正確に把握できます。そして、あらゆる病変に対応でき、病の軽重ひいては患者の死生をも判断できます。
 病因が分からないと、どのように治療してよいか分かりません。古来伝えられてきた診断法は、すべて病因を知るためのものです。病因が明らになれば治法が分かり、それに応じて補瀉を施せば十分な効果が得られます。
解説
 病因とは病理である。池田政一先生がよくおっしゃる言葉である。
 もう少し詳しく言うと、病因を知るということは、何らかの要因により身体に起こった変化を知るということであり、大切なのはその要因そのものを知ることではなく、身体に起こった変化がどのようなものであるかを知ることである。経絡治療では、身体に起こった変化(主に気血津液の虚実状態およびそれによる寒熱の波及)を病理(病気の理屈)と名付け、陰陽・虚実・表裏・寒熱を知る手立てとしている。だから病理を知ることは、的確な治療方針を立てることができる。
 病因とは、何の邪が入ったかとつきとめるものではなく、邪が入った事による身体の変化を知る上で大切なものである。

(1)中風の定義

本文
 それ中風の病因、古今の緒論、同じからず。けだし内経・仲景・思邈の謂う中風は、直ちに天の風邪に中りて、この症を致す者とす。
 河間は金の人なり。著すところの原病式に云う。中風癱瘓は、五志七情に因りて火を生じ、火よりして自ら風化を現して、しかる者とこれ火を本として、風を虚象(むなしきかたどり)とす。
 また、李東垣の説に曰く、中風の諸症、元気の虚より生ず。故に年四旬以上、この症多し。間、壮人にこの症ある者は、必ずその人肥白にして、元気の怯弱に生ずとす。
 丹渓もまた、方土を以て分かち云う。西北の土地、高くして湿なり。寒風常に行わる。故に、西北の人、中風を患う者は、外来真の風症たり。東南の二方は、土地卑しく、湿多くして寒風に薄し。故に東南の人、中風を病む者は、湿より痰を生じ、痰より熱を生じ、熱より自然に風化生じて中風をなすと。これまた風を以て虚象とし、湿痰を以て本として云う。
 元の昆山、王履安道が、溯狃(さくかいしゅう)に至って始めて中風の説を弁ぜり。曰く、中風は風に中るなり。内経・仲景・思邈の、謂う天の風邪に中りて致すところの者は真症なり。かの河間・東垣・丹渓の説の如きは、真の中風には非ず、これ病状は風症に似たりと雖も、実は風症に非ざる者なり。如何にしてその火熱・気虚・湿痰を本として生ずる者、中風と号(なづく)せんや。中風の名義、暗として明らかならず。河間・東垣・丹渓、ただその症状の類似を以て、中風と説きなす。故にその言、大いに昔人と異にして、後人をして狐疑して決すること能わざらしむと。安道、決して曰く、風に因る者は、真中風なり。火に因り、気に因り、湿に因る者は類中風にして、中風に非ざるなり。云々、これを以て、後世、真中風・類中風の名義、別れて治法各々分かち出ず。
注釈
仲景
張仲景(2〜3世紀前半)。後漢後期とされるが、正史にその名が見えず未詳の人物。『傷寒雑病論』の著者とされる。
http://www.wellba.com/wellness/doctor/contents/991...
思邈
孫思邈(581?〜681)。唐の人。『千金要方』『千金翼方』の著者。
http://www.wellba.com/wellness/doctor/contents/997...
河間
劉完素。金、河北省河間の人。よって劉河間と称される。金元四大家の一人。心火を瀉し、腎水を補益することを目的として、防風通聖散などを創案、多用したため、寒冷派と称される。『素問玄機原病式』などの著者。
http://www.wellba.com/wellness/doctor/contents/995...
http://www.hum.ibaraki.ac.jp/mayanagi/paper01/liuw...
癱瘓
中風の別名。四肢不仁。
丹溪
朱丹溪(1281〜1358)。元の人。金元四大家の一人。養陰派と称され、滋陰降火湯などの補陰剤を多く用いた。
http://www.wellba.com/wellness/doctor/contents/996...
王履安道
(1332〜1391)元末、明初の人。医学を朱丹溪に学ぶ。『医経溯狃検戮覆匹鮹し、後の温病学に大きな影響を与えた。
http://homepage3.nifty.com/shouhakudou/29ouri.htm
超訳
解説

このページへのコメント

KRwHVg Awesome blog post. Great.

0
Posted by stunning seo guys 2014年01月23日(木) 07:10:26 返信

2iJ3eb I really enjoy the blog article. Really Cool.

0
Posted by seo thing 2013年12月20日(金) 19:50:54 返信

こんにちは。今病因指南の本でも、コピーでも欲しいなと思ってぐーぐる見てたらたどり着きました。すごい分かりやすく、超訳はすごい!。京大のページでダウンロードしよと思ったんですが訳分かりませんでした。ではまた。

0
Posted by さくら 2008年12月11日(木) 19:04:11
sakuragawa@shirt.ocn.ne.jp
返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

Menu

ここは自由に編集できるエリアです。

管理人/副管理人のみ編集できます